建築デザイン発想法


平尾和洋/立命館大学平尾研究室 著

内容紹介

実際に使える発想法・整理術の21ノウハウ

豊富なアイデアを生み出せることは、天啓やセンスの問題ではなく、いかにしてひらめく状況をつくりだせるかであり、そこには効果的な技法がある。タネを増やす、改良・発展させる、意外さを生み出す、混沌を整理する、良し悪しを評価するなどのテーマで、建築/デザイン分野で使える21の発想法・整理術のノウハウを紹介する。

体 裁 四六・256頁・定価 本体1900円+税
ISBN 978-4-7615-1260-6
発行日 2009-09-10
装 丁 上野 かおる


目次著者紹介はじめにおわりに

はじめに

第1部 発想のための基礎知識

00 発想するということ
01 ひらめきの手順を知っておこう
02 常に問題意識をもとう
03 スケッチブックとポスト・イットをポケットに
04 前半は質より量を、後半は量より質を
05 図で思考しよう
06 広く・浅く・柔らかく・楽しく構えよう
07 質の違うアイデアを組み合わせてみよう
08 イメージで考えよう
09 人のアイデアを自分なりにアレンジすることが良い結果を生む
10 1人より2人、できればグループで発想しよう
11 デザインでは、類推・メタファーを活用しよう
12 幅広い領域でスケッチする意識をもとう
13 アイデア・メーカーを活用しよう
14 批判を恐れずアイデアを人に聞いてもらおう

第2部 21の発想法をつかってみよう

1 アイデアのタネを増やすための発想法

01 ブレイン・ライティング - 「沈黙」で行う驚異的なアイデア発散技法
02 フィッシュボーン・ダイヤグラム - カテゴリーを使ってアイデアのタネを増やす手法
03 属性列挙法 - 特徴などを列挙して対象を理解する技法
04 マンダラート/MY法 - 8倍ずつアイデアを増やしていく手法

2 アイデアを改良する・発展させる技法

05 チェックリスト法(SCAMPER) - メニュー化された操作を加える強制連想法
06 欠点列挙法 - 欠点に注目した現実的な改善技法
07 ポジショニング法 - 2つの軸で新しいポジションを探す技法

3 意外なアイデアを生む発想法

08 アサンプション・スマッシング(逆設定法) - 常識をくつがえして発想する技法
09 ワード・ダイヤモンド - 体系的にアイデアの組み合わせを行う手法
10 類推発想法 - ベース情報を操作して評価20%アップを実現する手法
11 NM法T型 - ステージ化された連想によってアイデアを出す方法

4 頭の中を整理する技法

12 マインド・マップ - シンプルでマルチな使い方のできる図解法
13 △□○(ストゥーパ)法 - 新しい概念(コンセプト)探しを手順化する
14 ペア・ミーティング - 親しい人と協力して10%成長する環境的技法
15 トヨタ式5W1H - 原因分析とコンセプト整理の技法

5 アイデアを評価する手法

16 PMI法 - 3つの視点から評価する手法
17 シックス・ハット - 6種類の思考モードで評価する方法
18 キャスティング法 - 役者になったつもりで評価する

6 アイデア発想のための刺激を得る手法

19 仮想状況設定法 - 未来志向でイメージを広げる
20 カタログ法 - 普段のストックを活用する
21 タウン・ウォッチング法 - 街の刺激によってアイデアのきっかけをつかむ

〈コラム〉

・創造性(クリエイティビティー)と独創性(オリジナリティー)
・ワラスの4段階説
・情報収集の5つのポイント
・デザイン問題は意地悪!
・創造力のある人の素養
・ギルフォードの「人間の知的構造モデル」
・発散技法の代表:ブレイン・ストーミング
・収束技法の代表:KJ法
・抽象思考のためのゴードン法
・SCAMPERの7メニュー以外でアイデアが思いついたとき
・ルービン(1970)の好意尺度(linking scale)の測り方

参考文献

おわりに

平尾和洋(ひらお・かずひろ)

立命館大学理工学部建築都市デザイン学科教授
1966年生まれ。京都大学工学部建築学科卒業、京都大学大学院修了。パリ建築大学ラ・ヴィレット校研究員ならびに京都大学工学研究科助手を経て、現職ならびにVIDZ/ヴィズ建築設計事務所パートナー。博士(工学)、一級建築士。編著書に『テキスト建築意匠』(学芸出版社)、共著に『日本の住宅戦後50年』(彰国社)など。

立命館大学平尾研究室

山本伊織
余田尚紀
北野奈緒美

本書は、「建築・都市・プロダクト分野」のデザイナーや学生諸氏向けに書かれた「発想法」の本です。最初に「発想法ってそもそもなに?」という方にお応えしておきますと、発想法は英語に直すとWay of thinking、つまり「思考の方法」のことを指しています。

基本的に、デザイン活動は頭脳を使って行われています。そうした意味で、デザイナーは考えることを仕事としています。しかし、仕事として思考し発想するにあたり、皆さんはペンやスケッチブックといった道具に加え、「思考の道具」を持っているでしょうか。基本的に、ただ紙やパソコンの前に座っていても面白いアイデアは浮かんできません。オリジナルなアイデアのためにはヒラメキの道具が必要です
私たち人間は、日常的に頭脳を使って何かを思いついています。スケッチなどのデザイン作業の最中にも、あなたのアタマは絶えず何かを発想しています。こうした「思いつきのステップ」を手順化し、精選したものが発想法であり、これに忠実にしたがって考えを進めると、思考が自然とクリエイティブな方向に流れていく効果が出ます。

一方、発想法の本をすでに手に取ったことのある方は、もしかすると、次のような疑問を持たれるかもしれません。「発想法って、広告企画や商品開発で使われる技法じゃないの?」と。確かに以前はそうした傾向が強かったと思います。しかしここ10年ほどで、状況は少しずつ変わってきました。書店の棚先には、近年、あえて分野にとらわれることなく、「考えること」には秘訣やテクニックがあることが当然であるかのように、多種多様なノウハウ・技法を紹介する本が並ぶようになりました。デザインの世界でも、有名デザイナーやデザイン・プロデューサーの発想プロセスを紹介する書籍が出てきています。今後10年くらいで、現役デザイナーやその卵たちが、積極的に「思考の道具」としての発想法を学んでいく必要性が高まっていく可能性すら感じさせます。

これまでは、仕事場や演習室で、「面白いアイデアを考えてみてくれ」と言われたことはあっても、その具体的なやり方を誰も教えてくれませんでした。現実の世界では、アイデアの面白い人、そうでない人がいるにも関わらず……です。こうした中で、人より面白いアイデアが出にくい人は、「俺には才能がないから……」と諦めてしまっていたかもしれません。

しかし、諦める必要は全くありません。アイデアマンになることは後天的なものです。ちょっとしたノウハウやツールを知ることで、発想がものすごく楽になり、その成果を上げることが可能です。本書を読めば、才能や置かれた環境よりも、むしろ自らの意識の方が大切であることがお分かり頂けると思います。

以上の考えは、約10年程度の実証研究の結果を踏まえたものです。発想法を用いた人の方が(用いない人に比べて)最終提案物の評価が高く、発言力も増えることが実証されています。と同時に、技法を強制的に使ってもらうと、スケッチ習慣などの学習・教育効果があることも確認されました。さらに初めて発想法を使った人のほとんどが、「また使ってみたい」とアンケートで応えています。

本書は、こうした活動成果によって得られた知見をベースに、発想法を思考技術として、少しでも多くの方に知って頂くことを企図して構成されました。第1部では、発想のための基礎知識が14のエッセンスとしてまとめられています。第2部では、数ある発想法の中から、デザイン思考にも活用可能な21の技法を、研究室独自のリファインを加えて紹介しました。デザイン系の教育現場では、第1部を講義教材として、第2部をちょっとしたアイデア出しや発想トレーニングの演習マニュアルとして活用していただけると思います。

発想の魅力は、問題を鮮やかに解決した時の達成感や、アイデア発散時のドライブ感、人にナルホド!と納得してもらった時の喜びなどがありますが、そこに通底するのは、「発想すること自体の楽しさ」そのものです。本書が、デザイン行為が本来もつ「楽しさ」を深めるきっかけとなり、その結果として最終的には、人間環境の新たなビジョン構築に向けた一助となれば幸甚です。

2009年7月

平尾和洋

──本製作を振り返って

平尾 本の製作に携わってどうやった?
山本 編集者とのやりとりが意外に難しかったです。執筆者と編集者という関係がクライアントと設計者との関係と同じなので、この作業はいい経験になりました。
北野 こつこつ作ってきた文章や図版が実際手に取れる形に出来上がるのは、感慨深いものがありますね。ものづくりをする様々な人にこの本を手に取ってもらいたいです。
余田 改めて、ホウレンソウ(報告・連絡・相談)の重要性を学びましたね。チームで物事を進める時はホウレンソウを意識することで仕事がスムーズに動くことを学びました。
山本 就活中に、作業が少しあったのは、さすがにやばかったね。
余田 そうですね。就活と平行してやるのは大変でしたね。何回も学校に泊まりましたし。
北野 私は計画性が身についていなくて怒られることが多かったですねぇ。
余田 でも、がんばったのは僕らだけではないですよね。
北野 実験に協力してくれた後輩の菊池君、島一生君、長柄君、高橋君、小原君、ウフィちゃん、友廣君、島敦君、石橋君、川崎君、本当にありがとうございます。

***

「発想法なんて、広告屋さんの専売特許」、著者自身のそうしたイメージを大きく変えることになったのは、実は10年ほど前のことです。知人のお手伝いで参加した日本デザイン学会の、「創造的デザイン手法」なにがしと銘打たれたシンポジウムへの参加がきっかけでした。当時の会場には、著名な電器メーカー、自動車メーカー所属のデザイナーや芸大系の研究者が集まり、「自分たちはクリエイティビティーを向上させるために○○の取り組みをしている」「デザイン思考を△△モデルと仮定すると、◇◇な技法が有効じゃないか?」といった活発な討議を展開されていました。家電や輸送機器のデザイナー達が、かくもたくさん、何らかの技法に注目し、思考技術的観点からデザイン向上を目指しているのか!と驚くと同時に、同じ人間環境に関わる建築ではこうした議論がなぜ少ないのだろう?と不思議に思ったことを覚えています。
もともと「設計プロセス」を研究テーマにしていたこともあり、著者自身には「デザイン思考」を研究することに違和感はありませんでした。「プロダクトで出来るなら……発想法を建築に応用したらどうなるだろう?」。本書の出発点は、そうした瞬間の思いつきにあります。
かくして立命館大学の研究室では、建築や家具などのデザイン・プロセスに、発想法を援用する実験が始められました。大学院生が中心となって行うアイデア・コンペやプロジェクト初期段階における、日々のデザイン作業の発想プロセスに諸技法が取り入れられ、スケッチやキーワード、会話データなどが分析にかけられる作業は、今でも続けられています。
本書は約7年間のこうした研究室活動の成果です。決して著者一人の活動ではなく、研究室メンバーであった下記の諸氏とのダイアローグと協働によって生み出されたものであることをここに明記したいと思います。

立命館大学 理工学部 建築都市デザイン学科 平尾研究室

山本伊織
余田尚紀
北野奈緒美

今井慎二
水谷好美
加藤直史
廣瀬 悠
勝田規央
小山雅由
小松隼人
加藤光彦
滝川 淳

山本直彦(旧講師、現・奈良女子大学)

また、デザイン実験に参加頂いた方々、提案書の評価にご協力頂いた関係各位、編集とアドバイスにご尽力頂いた学芸出版社・知念靖広氏に御礼を申し上げます。

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