<改訂版> 事例に学ぶマンションの大規模修繕


財団法人住宅総合研究財団・星川晃二郎・田辺邦男 他編著

内容紹介

管理組合・管理会社・設計者・施工者、必携

大規模修繕が必要になっても進め方が分からない管理組合が多い。そこで本書は様々なタイプのマンションで実施された工事から22例を精選し、工事に取り組む時にもっとも大切なパートナー選びから、工事予算の目安、竣工後の検査やケアまでを具体的に示し、また長期修繕計画や工事の進め方を簡潔に纏めた。好評に応えて大刷新!

体 裁 B5変・192.0頁・定価 本体3500円+税
ISBN 978-4-7615-3185-0
発行日 2010-02-25
装 丁 前田 俊平


目次著者紹介改訂にあたって

目次

改訂にあたって

第1章 マンションの長期修繕計画と大規模修繕への取組み

1 マンションストックと大規模修繕

1・1 大規模修繕を必要とするマンションが増大
1・2 都市部に多い小規模マンション
1)マンションの規模分類
2)近年,増大している超高層マンション

2 経年によるマンションの傷みへの対応

2・1 建物の傷みと計画修繕
2・2 経年による建物(マンション)の傷みと対策
2・3 建物・設備の経年劣化の具体的内容
1)建物の傷みの具体的内容
2)設備機器・配管の仕組みと傷みの具体的内容
3)建物・設備の傷みへの対応
2・4 建物・設備の日常点検・清掃と調査・診断
1)建物・設備の保守点検・清掃
2)建物・設備の調査・診断
2・5 物理的老朽化,相対的老朽化への対応
1)経年による物理的老朽化への対応 「大規模修繕工事,改修計画で対応する」
2)経年による相対的老朽化への対応 「物理的老朽化と併せ検討する」

3 マンションの長期修繕計画への取組み

3・1 マンションの長期修繕計画の現状
3・2 長期修繕計画の目的と策定のポイント
1)長期修繕計画とは(目的)
2)長期修繕計画の位置付け(日常管理と計画修繕)
3)基礎データの整理
4)長期修繕計画の策定(考え方と策定のポイント)
5)長期修繕計画の見直し 「長期修繕計画には柔軟性を持たせること」
3・3 長期修繕計画と修繕積立金
1)修繕積立金の設定
2)長期修繕計画について,管理組合が知っておくべきポイント

4 マンションの大規模修繕への取組み

4・1 大規模修繕工事はどのように進められてきたか?(準備から工事竣工までの作業の流れ)
1)準備段階から工事実施・竣工段階までの標準的作業フロー
2)作業の具体内容とポイント
4・2 大規模修繕工事実施の際のパートナー(管理組合は過去にどのような方法で行ってきたか)
1)管理組合は誰の協力を得てきたのか
2)工事発注方式とその特徴
4・3 大規模修繕に要する費用(工事費用と資金調達)
1)大規模修繕工事費用の特徴
2)大規模修繕工事の資金調達
3)長期修繕計画による資金計画の重要性

5 大規模修繕計画の今後の課題

5・1 高齢社会における高経年マンションの大規模修繕計画のあり方
1)高経年マンションが抱える課題
2)資金確保の手法と課題
5・2 マンションの耐震改修
1)新耐震基準と旧耐震基準
2)マンションの耐震診断・耐震補強
3)マンション耐震改修上の課題
5・3 マンション長命化のためのグレードアップ改修
1)グレードアップの必要性
2)グレードアップの目標値
3)グレードアップ手法と再生

第2章 事例に学ぶマンションの大規模修繕の問題点と留意点

・事例リストおよび分類
・事例
建築
01 傾斜地に立地する市街地1棟型の小規模マンションの大規模修繕
02 築17年目,初めての大規模修繕工事,設計監理方式で不具合箇所を一掃
03 バブル期マンションの第1回大規模修繕を請負金額増減なしの責任施工方式で
04 外壁,屋根・ルーフバルコニー防水等の全面改修,第2回目の大規模修繕
05 築32年目,第3回外壁等大規模修繕,バルコニー・窓手摺等更新
06 中層棟にエレベーター新設,高層棟既存エレベーターは改修
07 2,3階全戸ルーフテラスの防水,手摺を25年目で全面改修
08 築25年目,屋根セメント瓦を全面葺替えた第2回大規模修繕
09 責任施工方式から設計工事監修方式に変えた第2回大規模修繕
10 住戸玄関扉・バルコニー手摺を全面取換え,エントランスを完全バリアフリー化
11 築11年目,第1回外壁改修工事,瑕疵問題を併せ解決
12 エントランスを全面改修した超高層マンションの第1回大規模修繕
13 保育園併設タイル張り高層団地の第1回大規模修繕
14 外壁,屋根・床防水,玄関扉(等)の全面改修,第2回目の大規模修繕
15 外壁・屋根・玄関扉・窓サッシ・バルコニー手摺等を全面改修
設備
16 給水システムの変換,共用・専有部の給排水・ガス管の全面更新
17 築36年目,単独で行った電気設備全面改修工事
18 築27年目の共用・専有部を含めた給排水管の更新・更生工事
総合
19 外壁・建具更新,給水設備改修を行った築33年目の大規模修繕
20 都心複合マンションの外壁・屋上・給排水・電気の総合的全面改修
21 外壁・屋根,電気幹線,外構廻りも改善を行った第2回大規模修繕
22 築26年目の第2回大規模修繕,台所系排水管,電気設備総合改修

第3章 大規模修繕計画の進め方

1 大規模修繕工事の進め方のポイント

1・1 準備段階
1)大規模修繕計画と工事の進め方
2)建物診断
1・2 工事内容の検討段階
1)修繕設計(または改修設計)
2)施工会社の選定
3)資金計画
4)工事実施の総会決議
1・3 工事実施段階
1)工事請負契約と工事対応体制
2)工事説明会
3)詳細調査と最終仕様・数量の確定
4)工事の検査
1・4 竣工以後
1)竣工図書の引渡し
2)定期点検とアフターケア
1・5 事例に見る大規模修繕のポイント

2 管理組合のパートナー選び

2・1 それぞれのパートナーの特徴
1)パートナーは大別すると3つになる
2)設計事務所等をパートナーとして選ぶ
3)施工会社をパートナーとして選ぶ
4)管理会社をパートナーとして選ぶ
5)マンション管理士をパートナーとして選ぶ
2・2 パートナーを探す
1)管理適正化法以降の状況
2)パートナーの探し方と紹介機関
2・3 パートナー選びのポイント
1)合意形成が取りやすいパートナー
2)パートナーの費用
3)最近の新しい傾向と留意点
長期修繕計画 資料編
資料・1 長期修繕計画の修繕項目と改善等の主要内容
資料・2 長期修繕計画策定事例

星川晃二郎(ほしかわ こうじろう)

第1章5節2,3項,第2章,第3章1節

1944年愛媛県生まれ.1966年京都大学工学部建築学科卒.一級建築士.現在(株)汎建築研究所専門役.(社)日本建築家協会メンテナンス部会元部会長,日本マンション学会理事など.著書(共著)『新・マンション百科』(鹿島出版会),『管理組合・実務家のための改修によるマンション再生マニュアル』(ぎょうせい),『耐震総合安全性の考え方』(技報堂出版)ほか.

田辺邦男(たなべ くにお)

第1章1~4節,第2章

1944年東京都生まれ.1967年関東学院大学工学部卒.一級建築士.現在,(一般社団)マンションリフォーム技術協会会長,(NPO)横浜マンション管理組合ネットワーク常務理事・技術者部会長,日本マンション学会東京支部幹事.著書(共著)『新・マンション百科』(鹿島出版会),『集合住宅のリノベーション』(技報堂出版),『管理組合・実務家のための改修によるマンション再生マニュアル』(ぎょうせい),『マンション設備改修の手引』(ぎょうせい)ほか.

山口 実(やまぐち みのる)

第3章2節

1950年東京都生まれ.1994年一級建築士事務所(株)改修設計を共同設立,同社代表取締役に就任.1996年建物診断設計事業協同組合設立と同時に理事長に就任.(財)マンション管理センターマンション技術検討委員,日本マンション学会学術委員等.

柴原達明(しばはら たつあき)

第1章5節1項

1939年東京都生まれ.1963年千葉大学工学部建築学科卒業.1963~1996年清水建設株式会社,1996~2007年(財)住宅総合研究財団(住総研).現在,一級建築士事務所集住計画代表.(社)日本マンション学会理事,神奈川県建築士事務所協会会員,住宅性能評価員,日本建築士会設計専攻建築士(集合住宅).著書(共著)『小規模マンション 困ったときの処方箋』(学芸出版社)ほか.

(財)住宅総合研究財団

全体調整,事務局

1948年,当時の清水建設社長,清水康雄が住宅の総合的な研究および成果の公開,実践,普及をめざして「新住宅普及会」として設立.その後,1972年に当財団内に「住宅建築研究所」を設置.創立40年を機に,名称を(財)住宅総合研究財団と改称し,「住」をめぐる「シンポジウム」や「フォーラム」など,学問と実践を繋ぐ研究の場の提供やその普及活動にも力を入れている.1998年,日本建築学会賞(業績)を受賞.
http://www.jusoken.or.jp/

初版当時(2001年)のわが国のマンション(分譲集合住宅)の状況は,東京オリンピックを境にその後幾度かのマンションブームを経て,都市型居住の典型としての地位が築かれ,当時の建設省(現国土交通省)の建築着工統計によると,2000年末で25年を超えるものが50万戸にもなって,社会的にマンションの維持・管理問題が重要な課題となってきた時代である.

その後の変化を見てみる.法制面では,2001年にマンション適正化法が施行され,国家資格として,マンション管理士,管理業務主任者の制度が設けられた.2002年には「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」が施行され,引き続き翌年には「改正区分所有法」が施行,共用部分の変更に関する規定が改定されて,その形状または効用の著しい変更を伴わない一般的な大規模修繕工事の実施が過半数の普通決議で可能になった.そして,これらの法整備を踏まえ,2004年には「マンション標準管理規約」も改定された.また,マンションのストック状況を国土交通省の調査で見ると,2008年末現在,築後30年以上の高経年マンションの戸数は73万戸であり,5年後の2013年には128万戸となることが推計される.

このように大規模修繕工事が必要とされる高経年マンションが増大する中で,この間,上記のように法改正もなされたが,いざ大規模修繕の実施となると長期修繕計画が不完全であったり,修繕積立金の不足などによって合意形成が進まないケースも多く見られる.その上,修繕工事の実施が合意された段階になっても,具体の設計や工事予算,施工会社の選定等,その進め方がわからない管理組合が多いのが現実である.

改訂にあたっては,少数事例のサクセスストーリーではなく,数多くの事例を紹介し,読者に相応しい助言を与えることを配慮した初版の骨子を活かして,当時の「マンション大規模修繕研究委員会」のメンバーで編集にあたった.

・大規模修繕計画の事例を工事内容別に分類し,計画推進の手法・経緯を述べ,問題解決のポイントについて具体的に解説する.

・大規模修繕工事を管理組合独自で進めることは難しく,マンション管理士・管理会社・設計事務所・施工会社をパートナー(協力者)にして行うのが一般的である.しかし,パートナーによってそれぞれ特性があるため,選択の基準,計画への関わり方や,責任のあり方を明確にしておくことが重要である.本稿では,パートナーごとの進め方の特徴についても事例を通じて解説する.

・大規模修繕計画は,標準的なプロセス通り進まないのが実情である.事例を通して,標準通り進められなかった要因と問題点を明らかにして,各プロセスで見逃してはならないことなど留意点をわかりやすく解説する.

・なお,初版の事例に耐震改修が含まれていなかったこと,またその後耐震改修促進法(2006年1月に施行)等により環境が整備されたが依然として耐震改修事例が少ないため,今回の改訂版でも耐震改修の事例を取り上げていない.今後の大幅改訂時に加えるようにしたい.

以上の骨子に則り,全体を3章構成として章立てを次のようにした.
第1章では,マンションの大規模修繕計画に対する基本的な取組み方について,長期修繕計画の目的・策定・見直し,修繕積立金の目安,および修繕工事の各プロセスで発生する問題点・留意点を解説する.なお,文中に挿入された図表のデータは現時点のものに差し替えた.

第2章では,マンションの大規模修繕の実施例を22事例挙げ,どんな工事を,どの規模(戸数)で,誰をパートナーとして計画を進めたかにより分類し,多様な工事種別,マンション型式に応えられるようにした.そして,改訂にあたり,2回目の大規模修繕工事や,設備を主とした改修事例,超高層マンションの大規模修繕などを新たに加え,事例ごとに,全体の流れの中で,管理組合・パートナー・施工会社がどのように関わったかを示すため,様々な進め方の実態を同じフォーマットに収め一覧できるようにした.

第3章では,工事の企画・内容検討・工事の実施・竣工の各プロセスでの検討事項,問題点,留意点を解説した.そして,管理会社・建築設計事務所・施工会社・専門工事会社などをパートナーとした時のそれぞれの特徴について解説し,大規模修繕計画の今後の課題についても記載した.

以上,様々な形態のマンションでの大規模修繕計画に役立つよう,事例を中心に,経緯や特徴,工事費などできるだけ具体的に解説することに努めた.

最後に,初版および改訂版を作成するにあたり,資料提供などご協力いただいた管理組合,設計事務所,管理会社,施工会社などの方々に熱くお礼申し上げます.この本が,読者が直面している大規模修繕計画の策定や実施計画の推進に少しでも役立つことを希望します.

2010年2月

(財)住宅総合研究財団マンション大規模修繕研究委員会
委員長 星川晃二郎 (株)汎建築研究所
田辺 邦男 (社)マンションリフォーム技術協会
山口  実 建物診断設計事業協同組合
柴原 達明 一級建築士事務所集住計画(前事務局)
事務局 上林 一英 (財)住宅総合研究財団

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