図解 ここが見どころ!古建築

妻木靖延 著

内容紹介

春日大社、法隆寺、桂離宮…誰もがその名を知っている古建築の「見どころ」だけを、時代の流れにそって、完全図解。専門用語にはすべて振り仮名を付し、実際の見学の順番に沿って解説しているので、建物の特徴と「意味」が具体的に学べる。「見どころ」がわかれば楽しさ倍増。本書を片手に、もう一度、古建築を見に行こう!

体 裁 A5・124頁・定価 本体2000円+税
ISBN 978-4-7615-2626-9
発行日 2016/09/01
装 丁 KOTO DESIGN Inc. 山本剛史


目次著者紹介はじめにイベント
はじめに

神社①住吉造住吉大社本殿 切妻屋根の直線美

ポイント 住吉造は背面から見るとよくわかる
見どころ① 直線を強調した屋根
見どころ② 神明造・大社造との共通点と違い
見どころ③ 大嘗宮・寝殿造との共通点
○神社のはじまりはお米の倉庫?

神社②春日造春日大社本殿 「反り」に見る仏教建築の影響

ポイント 妻入一間社の前面に庇をつけた春日造
見どころ① 反りのある屋根と庇
見どころ② お神輿を思わせる構造
見どころ③ 境内の若宮神社も必見
○各地にある春日造の神社

神社③流造上賀茂神社本殿 片側に延びた屋根がつくる人の空間

ポイント 片方の屋根が流れるように延びた流造
見どころ① 身舎と庇部分の違いに注目
見どころ② 下鴨神社との違い
○本殿周辺も必見

神社④日吉造日吉大社本殿 三方に出た庇と神仏習合の影響

見どころ 本殿の三方に庇がついた日吉造
○本殿が二つに分かれた八幡造

神社⑤八坂造八坂神社本堂 神と人の空間の一体化

見どころ 本殿と礼堂が一体になっている
○神の空間と人の空間が一体化していく過程

寺院①飛鳥様式法隆寺西院伽藍 仏の教えを運んだ雲形の組物

ポイント 後の「和様」につながる飛鳥様式
見どころ① 軒下を見れば飛鳥様式がわかる
見どころ② 最も飛鳥様式の特徴が揃う金堂
見どころ③ 鎌倉時代の大工が適当に?改造した回廊
○伽藍配置の変遷―重点は塔から金堂へ

寺院②和様興福寺五重塔 三手先組物の典型

ポイント 「和様」にもいろいろある
見どころ① 柱の上に「組物」、梁の上に「間斗束・蟇股」がある
見どころ② 柱を「長押」で連結
見どころ③ 垂木と「野屋根」
○平安時代の和様の展開

寺院③大仏様東大寺南大門・大仏殿 挿肘木がつくる力強いデザイン

ポイント 純粋な大仏様を伝える南大門
見どころ① 柱に穴を開けて貫・肘木を通している
見どころ② 和様とは異なる垂木の使い方
見どころ③ 大仏殿は純粋な大仏様ではない
○純粋な大仏様を伝える浄土寺浄土堂

寺院④禅宗様大徳寺三門・仏殿・法堂 曲線の多用と密集する組物

ポイント 宋から導入された当時最先端の建築様式
見どころ① 細い柱・梁と軒下に密集する組物
見どころ② 曲線を強調したデザイン
見どころ③ 反った屋根と詰組が壮観な三門・仏殿・法堂
○部位別!和様・大仏様・禅宗様の違い

寺院⑤折衷様鶴林寺本堂 様式美のカオス

ポイント 和様を基本に大仏様・禅宗様の要素が混在
見どころ① 和様に大仏様・禅宗様が混じる本堂
見どころ② 様式の混在が極まった外陣
見どころ③ ほぼ禅宗様の厨子
○双堂から本堂へ

書院造西本願寺書院 格式を表現する天井・欄間・座敷飾

ポイント 武士が格式を表現する儀式の場
見どころ① 部屋ごとに格式がある
見どころ② 三段に区分された対面所
見どころ③ 欄間の様式で空間に差がある
○西本願寺と並ぶ書院造の最高峰・二条城二の丸御殿

数寄屋風書院造桂離宮御殿群 格式・規格を排した自由なディテール

ポイント 格式・規格を排した数寄屋
見どころ① 時代順に数寄屋の要素を強める三つの書院
見どころ② 天下の三棚―桂棚・霞棚・醍醐棚
○修学院離宮の数奇屋建築

茶室曼殊院小書院・八窓軒茶室 数寄の精神を伝える茶室建築の典型

ポイント 自由な精神による茶の空間
見どころ① 「小さな桂離宮」と呼ばれる住宅
見どころ② 小書院と八窓軒茶室のディテール
○遊びの気分に満ちた茶屋建築―高台寺傘亭・時雨亭

おわりに

妻木靖延(つまき やすのぶ)

妻木建築設計事務所所長。大阪ガス㈱リフォームコンサルタントスタッフ。京都林泉協会理事。
1935年生まれ。1957年大阪工業大学第一工学部建築学科卒業。坂倉準三建築研究所所員、妻木椅子工場経営を経て、1967年妻木建築設計事務所を開設。1986年、大阪ガス㈱リフォームコンサルタントスタッフとなり、リフォーム教育を一手に手がけ、現在に至る。この間、大阪工業大学高等学校建築科、摂南大学工学部建築学科、武庫川女子大学生活環境学科他の非常勤講師を定年まで勤めた他、松下電工株式会社宣伝部アドバイザー、松下電器産業株式会社HA事業部建築関係のアドバイザーを務める。また、庭園と縁の関係に着目し、建築家故西澤文隆とともに、20年余りにわたり庭園実測を行った。著書に『新訂日本建築』(学芸出版社)。

古くから古社寺を訪れる人は多く、ほとんどの場合その目的は信仰のためであったが、近年になって文化財的興味から古社寺を見て歩くことが盛んになってきた。

ただ、せっかく実際に有名社寺の建築を目の前にしても、大きいとか、立派だとかの感想を持つことはできても、どこがどう素晴らしいのか、何が見どころなのかといったことは、勉強していないことにはなかなかわからないものである。そこで、いろいろな資料に当たってみることになるのだが、社寺のパンフレットに「○○造」 「○○様式」などと書かれていても、どこがそうなのかわからない。ガイドさんやお寺さんの説明もそこまでは詳しくない。趣味人のホームページ、ブログや専門の本は、読み方すらわからない専門用語がどんどん出てきて、そもそも建築のどこの部分の話をしているのかすらわからない。大学の先生の書いた文章は、日本建築史の基礎的な知識を前提として書いているので、ついていけない。

本書は、そういった読者のために、日本の伝統的な建築を知る上で欠かすことのできない有名な社寺等を時代の流れに沿って題材として取り上げ、その「見どころ」だけを解説し、日本建築の要点を会得していただくことで、他の多数の日本の伝統的な建築を見るときの判断の基本にしていただこうという本である。

事例として選んだ建物は、比較的交通の便がよく、かつ各時代の建築様式の特徴を典型的に示しているものとした。それぞれの「見どころ」を知る上で必要な関連の知識は随時その箇所で紹介した。専門用語にはすべて振り仮名をつけたので安心してお読みいただきたい。
本書が、「何となく」で終わっていた日本建築への理解の助けとなれば幸いである。

妻木靖延

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