中心市街地活性化三法改正とまちづくり


矢作 弘・瀬田史彦 編

内容紹介

狙いと課題を様々な立場、先行事例から提示

三法改正の狙いと課題を、国交省・経産省担当者をはじめ多様な立場から論じ、さらに「広域の都市圏構造をいかに再構築するか」「まちづくり組織はいかにあるべきか」について多数の事例により詳述する。寄稿者:石原武政、中沢孝夫、木田清和、光武顕、中出文平、北原啓司、服部年明、庄司裕、卯月盛夫、三橋重昭ほか多数。

体 裁 B5変・272頁・定価 本体3800円+税
ISBN 978-4-7615-3143-0
発行日 2006-09-10
装 丁 古都デザイン


目次著者紹介はじめに書評

まえがき

1部 法改正のねらいと課題

1・1 まちづくり三法改正のねらいと土地利用の課題

(大阪市立大学大学院創造都市研究科教授 矢作 弘)

1 まちづくり三法改正の背景
2 まちは急には変われない
3 大型店規制:米国発最新ニュース
4 改正都市計画法をめぐる争点

1・2 中心市街地活性化から見た三法見直しのねらい

(経済産業省商務流通G中心市街地活性化室、経済産業省中小企業庁経営支援部商業課)

1 見直しに至った背景
2 見直しの内容
3 今後の進め方

1・3 都市計画法等改正の本当の意味

( 国土交通省国土技術政策総合研究所都市計画研究室長 明石達生)

1 本当の目的は商店街の再生ではない
2 地方分権が目的だった98年の法改正
3 「都市計画法が機能していない」という批判
4 大規模店舗は市町村間の競合問題
5 少数の巨大店舗の甚大なる影響力
6 なぜヨーロッパのようにできないのか
7 都市計画のイニシアチブを取り戻す
8 広域行政庁の関与
9 公共公益施設の郊外移転問題
10 都市計画提案制度の拡充
11 都市の維持・運営コストを管理する

1・4 人口減少社会における広域都市計画の必要性と課題

(大阪市立大学大学院創造都市研究科助教授 瀬田史彦)

1 広域政府による大型商業施設の立地規制・調整
2 兵庫県:立地を誘導すべき地域を図示したガイドライン
3 山形県:市町村同士の調整を主眼とした要綱
4 法改正後の都市計画制度の課題

1・5 TMOへの期待と現実

(関西学院大学教授 石原武政)

1 TMOへの期待と意図
2 なぜうまくいかなかったのか?
3 新たな制度の下で

1・6 商店街はどのようによみがえるか

(兵庫県立大学環境人間学部教授 中沢孝夫、 兵庫県議会議員 栗原 一)

1 はじまりは地域へのご恩返し:ボランティア精神
2 山あいの肉屋さんの話:家族経営の強さと限界
3 アメリカ・バークレー市の事例:空家への強いペナルティ
4 新しい法律とまちづくり:求められる当事者の自律

2部 都市圏構造の課題

2・1 福島県商業まちづくり推進条例制定のねらいと広域調整の手法

(大阪市立大学大学院創造都市研究科教授 矢作 弘)

1 商業まちづくり推進条例の目的と背景
2 大型店広域調整の必要性と方向性
3 「中心地優先」とドイツの「中心地システム」
4 商業まちづくり推進条例の評価

2・2 尼崎市の商業立地政策

(尼崎市産業立地課参事 木田清和)

1 尼崎はものづくりのまち
2 ガイドラインはなぜ必要か
3 商業立地ガイドライン
4 実効性を確保するために
5 成果と課題

2・3 佐世保市への大型店進出問題を振り返って

(佐世保市長 光武 顕)

1 佐世保市のまちの変遷
2 大型SCの出店計画概要
3 佐世保市のまちづくりの考え方
4 佐世保市の商業の現状
5 今回の大型店出店予定地(相浦地区)
6 出店計画発表以降の市民の動きと佐世保市の対応
7 佐世保市の判断を振り返って

2・4 都市圏構造再構築をめざす長岡市

(長岡技術科学大学教授 中出文平)

1 拡大指向だったこれまでの経緯とその後に迎えた転換期
2 構造改革会議の提言とその後
3 都市圏再構築を目指して

2・5 コンパクトシティと街なか居住~青森市を事例に~

(弘前大学大学院地域社会研究科教授 北原啓司)

1 東北地方のコンパクトシティ論
2 青森市における「街なか居住」の実需

2・6 交通政策と中心市街地活性化~京都・金沢・青森を例に~

(まち創生研究所・代表取締役 酒井 弘)

1 京都市の中心部の交通政策
2 中心市街地活性化と交通
3 クルマ依存の高い地方都市はどうあるべきか

3部 まちづくり組織の課題

3・1 TMO㈱伏見夢工房~住民と地域全体をまきこんだまちづくり~

(大阪市立大学大学院創造都市研究科 山田奈津)

1 厳しい旧まちづくり三法への評価
2 伏見のTMO活動の前史
3 TMOの指定
4 TMO㈱伏見夢工房の活動
5 TMO活動の成果と課題:住んでよし、訪れてよしの伏見へ

3・2 ㈱まちづくり長野~生活空間をまちなかに集積させる~

(中心市街地商業活性化アドバイザー 服部年明)

1 中心市街地活性化へ、行政・TMOが口火を切る
2 行政、TMOが口火を切ることで民間が動く
3 一歩ずつ進めるまちづくり、継続できるか
4 まちづくりは、自らが行動せよ

3・3 ㈱金沢商業活性化センター~TMOは街を個性化できたか~

(金沢工業大学環境・建築学部講師 遠藤 新)

1 タウンマネジメントの構図:金沢TMOがつなぐ二つの協議会
2 ハード整備の成果:魅力ある商業環境の形成
3 ソフト事業の成果:人・組織・街をつなぐTMO
4 個性あるまちづくりを補完するTMO

3・4 ㈱出石まちづくり公社~地域まちづくりの担い手へ~

(㈱出石まちづくり公社 上坂卓雄)

1 城下町出石の歴史と人、文化
2 出石のまちづくりの歩み
3 まちづくり公社の設立とTMO事業
4 観光協会のNPO法人化とこれからの戦略

3・5 まちづくりAnjo~地域ぐるみの組織づくり~

(まちづくりAnjo事務局長 鶴田伸也)

1 まちづくりAnjoとは
2 商店街、地域住民、関係者への周知啓蒙
3 まちづくりAnjoの主な主体事業
4 やる気のある商業者を集める「商業塾」
5 今後の活動

3・6 七日町通りまちなみ協議会~都市型観光と商店街の活性化~

(七日町通りまちなみ協議会副会長 庄司 裕)

1 街がよみがえる
2 TMOの設立、女性・若者との連携
3 歴史観光から都市型観光へ
4 まちづくりの課題

3・7 熊本市中心商店街~マチの素材を活かす地域連携とソフト対応~

(熊本大学大学院自然科学研究科(建築系)教授 両角光男)

1 若者で賑わう中心商店街
2 熊本市中心商店街のプロフィール
3 若者で賑わう商店街の秘密
4 賑わい創出のまちづくりに向けた地域の連携体制構築
5 中心市街地活性化のまちづくりのうねりを作る

3・8 高松丸亀町商店街~商店街による自律的再開発を目指す~

(四国新聞社編集局報道部記者 山田明広)

1 持続可能な商店街を目指して
2 高松市と丸亀町商店街
3 5年で一新:丸亀町商店街再開発事業の全容
4 タウンマネジメント・プログラムの策定
5 G街区の行方と今後の課題

3・9  新開地まちづくりNPO~本当に実践されるタウンマネージメント~

(新開地まちづくりNPO事務局長 古田篤司)

1 新開地まちづくりの意義:タウンマネージメントのフレームを提示
2 神戸・新開地地区の概要
3 地区主導のまちづくり展開へ
4 新開地から見えたタウンマネージメントの実践セオリー
5 果実が得られるターニングポイントに立つ

3・10 横浜元町エスエス会~50年におよぶタウンマネージメントの実践~

(NPO法人まちづくり協会理事長 三橋重昭)

1 元町商店街の歴史
2 街づくりの取り組みの経緯
3 タウンマネージメントの実践

3・11 自由ヶ丘TMOとまち運営会議~商業者の枠を超えた自治への模索~

(早稲田大学芸術学校教授 卯月盛夫)

1 自由ヶ丘の沿革
2 商店街の発展と地域の取り組み
3 TMOとまち運営会議:住民自治への試み
4 駅前広場の改善とトランジットモール構想

3・12 旧居留地連絡協議会~街のブランド化を下支えする企業コミュニティ~

(㈱地域問題研究所 山本俊貞)

1 近代神戸発祥の地「旧居留地」
2 企業市民の集まり「旧居留地連絡協議会」
3 企業市民による「街並みづくり」
4 企業コミュニティが可能とした「安全まちづくり」の計画策定
5 企業市民のまちづくり活動が支える旧居留地の活性化

付録

資料1:社会資本整備審議会 新しい時代の都市計画はいかにあるべきか(第一次答申)概要
資料2:中心市街地活性化法の改正の概要
資料3:新中活法における基本計画について
資料4:中心市街地活性化協議会について
資料5:中心市街地再生の推進:国土交通省の振興方策
資料6:平成18年度 経済産業省 中心市街地支援措置

矢作 弘(やはぎ ひろし)

大阪市立大学大学院創造都市研究科教授。1947年東京都生まれ。横浜市立大学卒業後、日本経済新聞社入社。ロサンゼルス支局長、編集委員を経て2002年から現職。社会環境科学博士。著書に『町並み保存運動in U. S. A.』(学芸出版社、1989)『都市はよみがえるか』(岩波書店、1998)『産業遺産とまちづくり』(学芸出版社、2004)『大型店とまちづくり』(岩波新書、2005)など。

経済産業省商務流通G中心市街地活性化室

経済産業省における改正中活法の窓口としての役割を果たすとともに、中心市街地の活性化を図るための予算等による支援の他、先進的な取り組み事例の普及や調査・研究などを行っている。

経済産業省中小企業庁経営支援部商業課

中小小売商業・卸サービス業の振興を図るため、中小小売商業振興法などの振興法や予算、税、低利融資などを通じた様々な支援を行っている。改正中活法では、にぎわい回復の軸となる中小小売商業者のまちぐるみの取り組みを様々な角度から支援する窓口として役割を果たしている。

明石 達生(あかし たつお)

国土交通省国土技術政策総合研究所都市計画研究室長、博士(工学)。1984年東京大学工学部都市工学科卒業。建設省入省。横浜市地区計画等担当課長、建設省都市計画課課長補佐、同都市計画課土地利用調整官などを経て、現職。著書に『検証・イギリスの都市再生戦略』(分担、風土社、1997)『都市計画の地方分権』(共著、学芸出版社、1999)など。

瀬田 史彦(せた ふみひこ)

大阪市立大学大学院創造都市研究科助教授。1972年東京都生まれ。東京大学工学部卒業、東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻修士課程修了、博士(工学)。東京大学先端科学技術研究センター助手、アジア工科大学客員助手、シュトゥットガルト大学客員研究員等を経て現職。著書に『新しい自治体の設計2:都市再生のデザイン 快適・安全の空間形成』(共著、有斐閣、2003)、『東京プロジェクト』(共著、日経BP社、2005)など。

石原 武政(いしはら たけまさ)

関西学院大学商学部教授。1943年京都市生まれ。神戸商科大学卒業、神戸大学大学院経営学研究科博士課程退学後、大阪市立大学商学部助手、講師、助教授、教授を経て、2006年から現職。大阪市立大学名誉教授。著書に『マーケティング競争の構造』(千倉書房、1982)『商業組織の内部編成』(千倉書房、2000)『まちづくりの中の小売業』(有斐閣、2000)『小売業の外部性とまちづくり』(有斐閣、2006)など。

中沢 孝夫(なかざわ たかお)

兵庫県立大学環境人間学部教授。1944年生まれ。立教大学法学部卒業。専門は地域活性化論、中小企業論など。著書に『地域人とまちづくり』(講談社現代新書、2003)『変わる商店街』(岩波新書、2001)『中小企業新時代』(岩波新書、1998)など。

栗原 一(くりはら はじめ)

兵庫県議会議員。1950年生まれ。明治大学法学部卒業。兵庫県立大学大学院博士課程(前期)修了。

木田 清和(きだ きよかず)

尼崎市産業経済局産業労働部産業立地課参事。1951年尼崎市生まれ。神戸大学工学部土木工学科卒業。1974年尼崎市役所入所。下水計画課、総合計画担当、都市計画課を経て、2003年より現職。

光武 顕(みつたけ あきら)

佐世保市長。1931年生まれ。東京大学大学院社会科学系修士課程修了後、長崎県職員、長崎県議会議員(4期15年)長崎県議会副議長、衆議院議員を経て、1995年より現職。主な役職として、福祉自治体ユニット代表幹事、全国基地協議会会長、旧軍港市振興協議会会長。

中出 文平(なかで ぶんぺい)

長岡技術科学大学工学部環境・建設系教授。1957年生まれ。東京大学工学部都市工学科卒業。同大学院工学系研究科都市工学専攻博士課程修了。工学博士。東京大学工学部助手を経て、1989年長岡技術科学大学工学部助教授、2001年から現職。著書に『中心市街地再生と持続可能なまちづくり』(編著、学芸出版社、2003)『不動産事典』(共著、住宅新報社、2002)『既成市街地の再構築と都市計画』(共著、ぎょうせい、1999)『まちづくりの科学』(共著、鹿島出版会、1999)など。

北原 啓司(きたはら けいじ)

弘前大学大学院地域社会研究科教授、教育学部副学部長。1956年三重県生まれ。東北大学大学院工学研究科博士課程単位取得修了後、東北大学工学部建築学科助手を経て、1994年より弘前大学で都市計画、コミュニティデザインの研究と実践を手がける。一級建築士、博士(工学)。著書に『中心市街地再生と持続可能なまちづくり』(共著、学芸出版社、2003)『対話による建築・まち育て』(共著、学芸出版社、2003)、まちづくり教科書『まちづくり学習』(責任編集、丸善、2004)など。

酒井 弘(さかい ひろむ)

㈱まち創生研究所代表取締役。1955年兵庫県生まれ。立命館大学理工学部数学物理学科数学課程卒業後、社団法人システム科学研究所入社。調査研究部室長を経て、2003年に現在の研究所を設立。著書に『ポスト・モータリゼーション』(共著、学芸出版社、2001)など。

山田 奈津(やまだ なつ)

大阪市立大学大学院創造都市研究科後期博士課程在学中。修士(都市政策学)。1965年大阪市生まれ。大阪市立大学卒業後、自治体職員、民間企業などを経て、現在研究活動と同時にNPO活動のスーパーバイザーや大阪市市政改革本部アドバイザー、大阪市福祉・情報研修センター人材育成事業にかかわる非常勤研究員等を兼任。主な論文「ニューパブリックマネジメントと職員の意識改革」『地方自治職員研修』(公職研、2003)。

服部 年明(はっとり としあき)

㈲リテイルウォーク代表取締役。1964年三重県立四日市農芸高校卒、岡田屋(現イオン)入社、本社地域会社業務指導担当等を経て、1975年信州ジャスコへ出向(商品本部、新店開発、提携会社経営を担当、1985年、常務取締役)、2000年イオン㈱を勇退、同時に現職につき上田市に専門店とレストラン複合大型SCを開発、同年11月開店、運営管理にあたる。2002年中小企業総合事業団登録タウンマネージャーとして、長野TMO㈱まちづくり長野を指導。

遠藤 新(えんどう あらた)

金沢工業大学環境・建築学科講師。1973年愛知生まれ。東京大学大学院工学系研究科博士課程中退。東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻助手を経て2005年より現職。専門は、アーバンデザイン。著書に『都市のデザインマネジメント』(共著、学芸出版社、2002)など。

上坂 卓雄(うえさか たくお)

㈱上田屋油店代表取締役、㈱出石まちづくり公社取締役。1933年豊岡市生まれ。1980年出石ライオンズクラブ会長就任、1984年静思堂設立・代表幹事就任、1988年出石城下町を活かす会設立・会長就任、2003年観光カリスマの認定を受ける。出石町商工会顧問、NPO法人但馬国出石観光協会顧問、出石城下町を活かす会顧問。

鶴田 伸也(つるた しんや)

「まちづくりAnjo」事務局長。1956年安城市生まれ、朝日町在住。アート・ミューズ代表「T’s gallery」を経営する傍ら、本通り商店街振興組合青年部「壱番会」のリーダーとして、商店街の活性化に向けた様々な活動を行ってきた。現職のほか、安城中央商店街連盟会長、安城まちづくり市民会議副議長、安城南中学校PTA会長、安城市小・中PTA連合会長も務める。

庄司 裕(しょうじ ひろし)

㈲企画キャップ代表取締役。1947年会津若松市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、テレビCM制作会社、地方新聞社を経て、71年に企画キャップの創業に参画し、01年から現職。94年七日町通りまちなみ協議会、96年いにしえ夢街道協議会設立の発起人として会津若松市のまちづくりに関わり、現在両協議会の副会長を務める。

両角光男(もろずみ みつお)

熊本大学大学院自然科学研究科教授。1946年東京都生まれ。早稲田大学大学院修士課程、プリンストン大学建築都市計画大学院建築都市計画修士課程修了後、74年、熊本大学助手、同助教授を経て91年より現職。サテライト研究室「まちなか工房」の代表者として、中心市街地活性化の研究やまちづくりの活動に取り組んでいる。出版物として『新時代の都市計画:高度情報化と都市・地域づくり』(分担、ぎょうせい、1999)などがある。

山田 明広(やまだ あきひろ)

四国新聞社編集局報道部記者。1965年香川県生まれ。香川大学経済学部卒業後、四国新聞社入社。整理部、報道部、編集委員室、報道部(県政キャップ)などを経て、2004年から報道部(広域・経済キャップ)。共著に『新瀬戸内海論-連鎖の崩壊』(四国新聞社、2000)。

古田 篤司(ふるた あつし)

特定非営利活動法人新開地まちづくりNPO事務局長。1971年大阪府生まれ。立命館大学産業社会学部卒業。同志社大学大学院総合政策科学研究科修了。(社)岩泉町産業開発公社(岩手県内のむらおこし三セク)事務局次長代理、㈱COM計画研究所研究員などを経て、現職。立命館大学大学院政策科学研究科・都市プランニングプログラム非常勤講師。中小機構中心市街地商業活性化アドバイザーなど、実践に基づいた講演・現場での指導多数。

三橋 重昭(みつはし しげあき)

NPO法人まちづくり協会理事長。1944年神奈川県生まれ。神奈川大学卒業後、URAP、鈴屋を経て商業・流通システム研究所設立。NPO法人日本都市計画家協会理事。著書に『地域小売店のカード戦略』(ダイヤモンド社、1997)『中心市街地活性化の進め方』(日本マネジメントリサーチ社、2000)『地方分権時代のまちづくり』(編著、中小企業診断協会「中心市街地活性化研究会」、2000)など。

卯月 盛夫(うづき もりお)

早稲田大学芸術学校教授。1953年生まれ。早稲田大学大学院卒業後、ドイツ・シュトッツガルト大学留学。世田谷区都市デザイン室、世田谷まちづくりセンター所長を経て、1995年から現職。作品に「馬事公苑前けやき広場」「グループホームあおぞら」。著書に『まちづくり読本』(共著、ぎょうせい、2004)『走れ、まちづくりエンジン』(共著、ぎょうせい、2004)『参加による公共施設のデザイン』(編著、丸善、2004)『ミニ・ミュンヘン』(萌文社、2005)。

山本 俊貞(やまもと としさだ)

㈱地域問題研究所主宰。1947年京都市生まれ。大阪市立大学大学院修士課程(都市計画専攻)修了。まちづくりコンサルタントとして、旧居留地や北野・山本地区、三ノ宮南地区など、神戸都心地域を中心に活動。

わが国は人口減少社会を迎えた。既に地方での高齢化は急ピッチだが、国全体の高齢化も急進展する。人口減少時代の都市形態をどのように描き、そこに暮らすひとびとの価値観とライフスタイルがどのように変化するのかを見極めなければならない。一方で環境容量が枯渇してきている。それらのことを考えれば、これまでのような拡張主義的な都市づくりから脱却しなければならないことは明らかである。既存の都市資源を有効に活用しながら、環境負荷を軽減する方向で都市構造を再編しなければならない。それが持続可能な都市づくりにつながる。また、21世紀前半に日本社会が対応を求められる急迫の課題でもある。

今度の中心市街地活性化三法(*)の改正にも、そうした時代認識がある。20世紀後半以降最近までの少なくとも4半世紀の間に、欧米諸国都市で共通して観察されるようになった都市づくりの傾向は、都市規模を限りなく拡散するような開発主義に対する反省である。具体的には車に過度に依存することなく、公共交通機関を活用し、できる限り歩いて暮らせるまちづくりであり、歴史的空間を保存し、緑地空間を再生することであった。大型店の郊外立地についても共通して規制強化に向かっている。その意味でまちづくり関連三法、特に改正都市計画法が中心市街地重視の姿勢を明確に打ち出したことは、欧米諸国と足並みを揃えるものであり、評価に値する。

編集にあたっては、当該法令を所管する関連省庁の担当者らに法改正の背景、狙い、課題などについて執筆していただいた。改正された条文の解釈、あるいは条文の行間を読み解くのに役立つものと思う。ほかに筆者は地方自治体の行政マン、まちづくりコンサルタント、まちづくりNPOの市民派活動家、ジャーナリスト、そして大学人など広範囲に及ぶ。肩肘張った学術的な論文集とするよりは、実際にまちでなにが起きているのか──まちづくりの成功譚、失敗話を現場発で報告してもらうことを重視したためである。

先端的な中心市街地活性化の取り組みや条例づくりを豊富に紹介している。当然のこととしてそれらの事例について学問的な意味解釈も記載するように努めた。事例を通して学び、読者のまちづくりに生かしていただきたいというのが編者の願いである。海外の話題も随所に散りばめることによって日本との比較考慮できるように心がけた。

したがって読者層としては研究者に止まらず、行政職員、まちづくり運動家、商業者、デベロッパー、地方都市商業の再生に関与している地銀や信金などの金融職員、商工業団体職員などを想定している。本書の出版が潤いのある、豊かな都市空間の形成に幾分かでも寄与することができれば編者の喜びとするところである。

2006年7月末
矢作 弘・瀬田史彦

*中心市街地活性化法、改正都市計画法、大規模小売店舗立地法。まちづくり三法とも呼ばれる。

『地域開発』((財)日本地域開発センター)2006.11

今年6月に都市計画法が改正になり、大型店の立地が都市計画区域の9割以上で制限されることになった。これまでは同区域の9割で自由に立地できたとされるから大きな変化である。90年代以降都市計画が規制緩和の道を歩んできたと受け止められているので、この変化は注目に値する。しかし、テーマは中心市街地活性化、中でも中心商店街の活性化である。そう簡単ではない。評者は中小企業庁がまとめたがんばる商店街77選の選定に加わったのだが、様々な試みが功を奏して商店街や中心市街地が実際に元気になったところを選ぼうとするととても大変なので、ともかく商店街や中心市街地を活性化させようと意気込みの感じられる事業を企てたところは他の参考になるとして取り上げることにした。それでも目標の100を選ぶのは大変で、次善の切りのいい数字77に落ち着いた。

本書は、そんな商店街や中心市街地の抱える問題を考え、また参考になる試みを知る上で格好の書である。「法改正のねらいと課題」という第1部では編者たちのものを含む6本の論文が商業問題(大型店に抗して在来商店街が売り上げや集客を伸ばせるのか?)と都市構造(都心の空洞化を伴う郊外化に歯止めがかかるのか?)に関わる諸論点に深みのある議論を展開する。特に、法改正の中心となった経済産業省と国土交通省の担当者による寄稿と研究者のそれとが組み合わされることによって、問題の深さが立体視できる。第2部(都市圏構造の課題)と第3部(まちづくり組織)では事例が取り上げられている。全部で18の豊富な事例紹介によって、各地で様々なアイデアが生まれ、実践に移されてきた経緯を俯瞰的に理解することができ、大いに参考になった。東京の事例の一つとして紹介されている自由ヶ丘でサンクスネイチャーバスと称して廃食用油を原料としたバスが複数の民間事業者の共同事業で来客サービスとして走っているのは知らなかった。合併により兵庫県豊岡市の一部となった出石町では、町民の手で城を復元した経験を生かし、株式会社組織の出石まちづくり公社を結成し、共同店舗事業で収益をあげ配当を行っている。ここまでのTMO成功例があるのは実に心強い。

現在、国では中心市街地活性化本部を設置し、基本方針を策定、市町村による活性化基本計画の作成を促している。計画ができれば、国による種々の支援が行われることになるが、評者はその際に中心商店街を構成する商店の淘汰が行われることは必須と思っている。商店への期待は、いいものを、豊富な品揃えで、安く提供してくれることに尽きる。このどこかが欠けている店は、結局長続きしない。その意味で、今回の中心市街地活性化三法の抜本改正は思い切った改革と思うが、商業に関してはこの根本問題を等閑視してはうまくいかない。そうならないためのヒントが本書にはいっぱい盛り込まれている。是非早めに手に取ることを薦めたい1冊である。

(東京大学・大西隆)