100円商店街・バル・まちゼミ

長坂泰之 編著

内容紹介

従来の単発イベントやハード整備、空き店舗対策に代わり、「100円商店街」「バル」「まちゼミ」の「商店街活性化三種の神器」が爆発的な広がりを見せている。「来街者」ではなく「来店者」を増やすにはどうすればよいのか?それぞれの事業の「生みの親」「育ての親」が、自身の経験をもとにその神髄をあますところなく語る。

体 裁 四六・256頁・定価 本体2200円+税
ISBN 978-4-7615-2542-2
発行日 2012/12/01
装 丁 上野 かおる


目次著者紹介はじめに推薦書評
推薦の言葉 石原武政
はじめに 長坂泰之

序章 商店街活性化「三種の神器」の登場~まちづくりの新しい風 長坂泰之

・東日本大震災は私たちの意識を変えるチャンスである
・「三種の神器」は時代の風雲児
・「三種の神器」はまちのポジティブな生き残り策

1章 究極の販促事業・100円商店街 齋藤一成

1 100円商店街のはじまり

・商店街活性化事業「100円商店街」
・100円商店街の三ヶ条
・隠されたトラップ“決して踏んではいけない地雷”
・初期の100円商店街の弱点

2 進化する100円商店街

・「マンネリ化しない100円商店街」への進化
・「マンネリ化しない100円商店街」がもたらした予想外の効果

3 知力の結晶!個性派100円商品の事例と解説

・体験系100円商品
・肉体系100円商品
・廃棄物系100円商品
・権利系100円商品

2章 自分の店がイベント舞台―バル 綾野昌幸

1 バルとは?

・バルが広まった背景
・なぜバルをやるのか
・バル成功のコツ

2 バルの絶大な効果

・新規顧客獲得の大チャンス
・まちのメリット
・お客さんのメリット

3 バルの始まりと広がり

・バルのパイオニア-函館西部地区バル街
・関西初開催!伊丹まちなかバル
・全国に広がるバル

コラム「まちコンの実際」 石上僚

3章 お店と街のファンづくり―まちゼミ 松井洋一郎

1 得するまちのゼミナール「まちゼミ」とは?

・まちゼミのしくみ
・まちゼミは「三方よし」の賑わい創出事業
・まちゼミのはじまり
・まちゼミ成功のポイント

2 全国に広がるまちゼミの輪

・岡崎市の事例
・下諏訪町の事例
・焼津市の事例

3 大切にしたいまちゼミの魂

4章 「三種の神器」すべてを導入して起きたこと

伊丹市の場合 綾野昌幸

守山市の場合 石上僚

田辺市の場合 尾崎弘和

終章 「三種の神器」とまちづくりのツボ 長坂泰之

・「三種の神器」の生みの親、育ての親
・「三種の神器」に共通する魅力とメリット
・人とネットワークと情報発信の重要性

おわりに 長坂泰之

長坂泰之

1963年生まれ。中小企業診断士。全国各地の中心市街地・商店街の再生支援に携わり、近畿中心市街地活性化ネットワーク研究会(英国ATCMの近畿版)の組成にも関わる。震災では、阪神淡路大震災及び東日本大震災の商業復興を支援。著書に『失敗に学ぶ中心市街地活性化』(共著)、『中心市街地活性化のツボ』(ともに学芸出版社)。2012年10月現在、独立行政法人中小企業基盤整備機構コンサルティング課長兼主任研究指導員兼参事(高度化診断、まちづくり、中心市街地活性化、震災復興)。

斎藤一成

1975年生まれ。100円商店街の産みの親。NPO法人AMP(アンプ)理事長。中小企業基盤整備機構の商業活性化アドバイザー。実は、山形県新庄市役所の職員という二足の草鞋をはく。2004年1月に新庄市で日本初となる100円商店街を考案、同年7月に開催。2004年に考案された方式を「04(ゼロヨン)式」、2010年にアップグレードした方式を「10(イチマル)式」として普及させ、さらに進化させるために研究を重ねている。

綾野昌幸

1961年生まれ。伊丹市都市活力部副参事兼伊丹市教育委員会副参事。他に2012年7月に開館した新図書館の活性化イベント事業、都市景観を担当。近畿中心市街地活性化ネットワーク研究会会長。近畿バルサミット主宰。「まちづくりは止まったら負け」をモットーに「伊丹市中心市街地活性化基本計画」を策定し、様々な活性化イベントを仕掛け、実施している。共著書に『都市商業とまちづくり』(税務経理協会)。

松井洋一郎

1968年生まれ。岡崎まちゼミの会代表、NPO岡崎都心再生協議会副理事長、㈱みどりや専務取締役、岡崎青年会議所OB。中小機構の中心市街地商業活性化アドバイザー(協議会・商店街)。専門学校卒業後、OA機器販売会社にて5年間勤務。その後、家業である化粧品店・㈱みどりやに入社。得する街のゼミナール「まちゼミ」を中心に様々なまちづくり施策に取り組む。また全国各地のまちづくりのアドバイザーとして講演活動や事業実践に関わっている。

石上 僚

1979年生まれ、京都市出身。民間会社での営業経験を経て2009年、滋賀県守山市の「㈱みらいもりやま21」へ公募で企画員として入社。2010年9月より同社マネージャー、2012年7月より中心市街地活性化の核としてオープンした守山市中心市街地活性化交流プラザ(あまが池プラザ)及び、あまが池親水緑地の施設長を兼任、現在に至る。まちづくりの知識・経験のなさを逆に活かし、他市の成功事例をアレンジして取り入れ、様々な事業に取り組んでいる。また、ブログ・マスコミなどを活用し、費用をかけない情報発信と広報活動を行っている。

尾崎弘和

1967年生まれ。田辺商工会議所中小企業相談室室長。経営指導員。2008年4月より中心市街地活性化事業の主担当となる。2009年4月それまで田辺商工会議所内に置いていたまちづくり会社(当時「株式会社まちづくり田辺」)が独立した事務所を持つと同時に、2年間、ほぼ専従体制でまちづくり会社において各種事業に携わる。2011年4月より田辺商工会議所に戻り、経営相談などの商工会議所業務のほか、中心市街地活性化協議会事務局を務める。

皆さんは、「100円商店街」「バル」「まちゼミ」という、商店街や中心市街地に立地する店の活性化の取り組みをご存じだろうか。たった100円で想像をはるかに超える集客力で賑わいを作る「100円商店街」、まちの複数の飲食店を巡り来街者とまちと店をつなげる「バル」、そして、ゼミナール方式で店のファンづくりをする「まちゼミ」。「100円商店街」は全国100ヶ所近い自治体で開催され、その圧倒的な集客力は右に出るものがいない。「バル」はまちなかの飲食店が面的に参加することにより回遊性の向上に大いに貢献している。「まちゼミ」は郊外の大型店のパート店員では持ち得ない商品知識と技術力で郊外との差別化を実現している。この三つの取り組みは、今や「商店街活性化の三種の神器」とも呼ばれる取り組みだが、すでに日本全国各地に伝播し、その勢いはいまだに止まらない。

商店街や中心市街地の衰退が叫ばれて久しい。そこに店を構える店主からこんな声が聞こえてくる。「イベントにどれだけカネを注ぎ込んでも、自分たちの商店街には全く客が戻らない」「郊外の商業施設にはとても太刀打ちができない。万策が尽きてしまった」と。しかしよく見れば、イベントは商店街を取り巻く環境が激変しても相変わらず従来の延長線上のものが多かったし、郊外の商業施設と徹底的に差別化を図るようなチャレンジをしたかというと、そこまでの経営努力をした店は少なかったように思う。本当に万策は尽きたのか。私たちはやるべきことはすべてやり尽くしたのか。そんな状況の中で満を持して登場したのがこれら「三種の神器」だ。「三種の神器」は、いずれも商店街やそこにある店が直接来店者の増加を狙うもので、自らの生き残りの意欲を問う取り組みである。

本書では「三種の神器」を創設あるいは普及した本人自身が、その想いから真髄までを赤裸々に語り、加えて「三種の神器」すべてを導入した二つの地域のキーマンが「三種の神器」に対する想いを語ることを通じて、これからの商店街や中心市街地、そこに立地する店の活性化について皆さんとともに学びたいと思う。我々まちづくりの6人の仲間が「三種の神器」に対する想いのすべてを書いたのが本書である。まちづくりに興味のある市民、学生、そしてまちなかの小売店や飲食店、そして商店街や中心市街地の活性化に携わる、できるだけ多くの皆さんにぜひとも読んでほしいと願っている。

「三種の神器」は万能とは言わないが、現時点で商店街や中心市街地、そこに立地する店の生き残りにとって極めて有効な取り組みであると断言できる。「三種の神器」を実践することを通じて皆さんの地域が活性化し、更には「三種の神器」を超える新薬が生まれたならば、筆者一同これ以上の喜びはない。

2012年 秋 著者を代表して

長坂泰之

流通科学大学商学部特別教授・石原武政先生

商店街に風が吹いている。時代後れの代名詞のように言われ、「もう滅びる寸前」とまで言われる商店街に、暖かい風が吹いている。ハード整備をしても、色々なソフト事業に取り組んでも、イベントをしてみても、なかなか好転することはなかった商店街に、動きが出てきた。

商店街に、なぜ最近になって風が吹き始めたのか。今までとはまったく発想の違う取り組みが現れたのだ。全員でやろうという考えは捨てる。熱く燃える人たちだけで取り組む。商店街という組織にはこだわらない。燃える人は、消費者・市民も一緒に参加する。まちに人を呼ぶことが目的ではない。店に入ってもらって、店を知ってもらい、店のファンになってもらう。客が喜び、店が喜び、まちが喜ぶ。まさに「三方よし」なのだ。それでいて、予算はそれほどかからない。行政の補助金などを当てにすることなく、自分たちの企画で継続してやっていける。そして何より、参加者たちがその取り組みを楽しむことができる。そんなことを目指した新しい取り組みが次々と考え出されてきた。

本書では、その中から、「100円商店街」「バル」「まちゼミ」を取り上げて、全国でもトップレベルの実績を上げているキーマンが、その意気込みと秘訣を思う存分に語っている。これらの取り組みはすでにメディアで取り上げられることも多く、ほとんどの方が知っているはずだ。しかし、いざ、実際にやろうとすると、なかなかうまく事は運ばない。一見するところ簡単には見えるけれども、実は、この種の取り組みの奥はものすごく深い。大きな考え方や理念はもちろん大事である。しかし、真理は細部に宿る。細部の細かな工夫と目配り、その積み重ねがこれらの取り組みを成功に導く。本書の執筆者は惜しげもなく、実に丁寧にその細部の工夫を語っている。

はじめからあまり細かなことを意識していると何もできない。大きな方向だけ理解すれば、とにかく一歩踏み出すことだ、というのも真理である。しかし、そうしてとんでもないしっぺ返しにあってしまうことは少なくない。現場で考え、工夫しながら動かすとは言うのはその通りなのだが、先人の工夫に学びながら、取り組みの「ツボ」を理解することができれば、その方がはるかに素晴らしい。

本書を読めば、やりようによってはまだいろんなことができるし、それが効果を発揮すると実感してもらえるのではないか。そうすれば、これまで何をすればいいのか分からずに立ち止まっていた人たちにも、きっと新しい一歩を踏み出してもらえるはずだ。悩み多き商店街の人びとにぜひ一読をお薦めしたいが、商店街を見守っているまちの人びと、商店街に寄り添いたいと思っているコンサルタントや研究者、学生の皆さんにも、きっと新たな視点を手に入れてもらえるはずである。

私は、商店街での店主と客が交わす言葉や、夕方の少しあわただしい雰囲気が好きである。思えば、商店街は日本の固有の文化として発展し、日本人にセンチメンタル価値(愛着の価値)を宿している。

また、商店街は地域をずっと見てきた生き証人のような存在でもある。商店主もその地域で生まれ育ち、つまり、その町の運命共同体でもある。だから、地域再生の核となる人材も商店街出身者に多い。

しかし、そんな商店街が全国的に苦境に立たされている。買い物をする以上に様々な機能を有している商店街が崩壊すれば、その地域のアイデンティティにも影響を及ぼすであろう。

何かできる範囲で最良の処方箋はないものか。そんな地域の声に明るい光を提示してくれるのが、本書である。

本書は最近商店街の活性化の切り札として注目を集めている「三種の神器」といわれる「100円商店街」「バル」「まちゼミ」について詳細な解説がなされている。この新手法を懇切丁寧に紹介し、実行に移す段階での注意事項まで教えてくれる。メンバー全員がまちづくりの現場に携わっているからどの言葉にも説得力がある。

商店街の問題の本質はいくつかあるが、問題点がわかってもそれをどのように解決できるのかを示す書は少ない。例えば、商店街の人々の頑張りが足りないという人がいる。しかし、どのように頑張ればよいのか。気合だけでは、サービスの質などの面で郊外の量販店やおしゃれな物販ビルに勝てるわけがない。

また、「主催メンバー自らが楽しめる」手法でないとどの事業も長続きしないが、「三種の神器」はこうした商店街の現場の葛藤にも光を当ててくれている。
具体的、かつ即効性のあるものとして本書は商店街再生の処方箋を提示してくれた。各地でプラスの経済効果も発生している。

どんな状況でも上記三種の神器を駆使すれば、自ずと再生への糸口がつかめるであろう。

是非とも商店街再生の現場で孤軍奮闘している皆さんはもちろん、まちづくりに関わるすべての人々に手に取っていただきたい一冊である。

(和歌山大学経済学部教授・副学部長/足立基浩)

担当編集者より

近年正に「燎原の火」のごとき広がりを見せている100円商店街・バル・まちゼミ(+街コン)。それぞれの第一人者がそのノウハウと真髄を惜しげもなく公開する非常に贅沢な本ができました。従来の単発イベントで来街者を増やすことと、個店に用事のある来店者を増やすことはどう違うのか? マジメな「まちづくり」本でありながら爆笑必至の「事例と解説」てんこ盛りの本書で、「商店街活性化」の新次元をご確認ください。

(岩崎)

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