図解 雨仕舞の名デザイン
内容紹介
国内外の事例でわかる雨仕舞デザインの工夫
谷口吉生/内藤廣/ピーター・ズントーなど、国内外全39の優れた雨仕舞のデザイン。機能と見せ方がうまく両立された先行事例を、断面詳細図・屋根伏図などの豊富なスケッチと、「きる」「みたてる」など7つのデザイン手法で解き明かす。設計時に後回しにされがちな雨仕舞を、デザインに活かすヒントが満載の図集。
堀 啓二 著
著者紹介
体裁 | B5判・140頁(2色刷) |
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定価 | 本体2800円+税 |
発行日 | 2020-09-20 |
装丁 | 美馬智 |
ISBN | 9784761527518 |
GCODE | 4552 |
販売状況 | 在庫◎ |
ジャンル | 設計手法・建築計画・住居学 |
はじめに
1部 基本編
1章 雨仕舞の役割
雨は建物外部で処理する
ファサードを決定し景観をつくる雨仕舞
先人がつくった楽しい雨仕舞の世界
2章 雨仕舞のデザイン手法
7つのデザイン手法:うける/きる/みたてる/そわす/おどる/かくす/つなぐ
2部 事例編
3章 文化施設
1 八代市立博物館 未来の森ミュージアム(伊東豊雄)
─アーチ屋根の谷樋を活かした、ロート状の受け桝
2 牧野富太郎記念館(内藤廣)
─大屋根を軽やかに見せる竪樋
3 下館市立図書館(三上清一+益子一彦/三上建築事務所)
─軽やかな列柱のような竪樋
4 葛西臨海水族園(谷口吉生)
─ガラススクリーンの一部として建物に溶け込む雨樋
5 群馬音楽センター(アントニン・レーモンド)
─折板構造を活かした開放樋
6 市村記念体育館(坂倉準三)
─バットレスのダイナミックな樋
7 森の学校 キョロロ(手塚貴晴+手塚由比)
─時とともに変化するファサードをつくる雨筋
8 国立博物館 東洋館(谷口吉郎)
─内勾配の屋根により柱にかくされた樋
9 海の博物館(内藤廣)
─切妻屋根のシャープさを阻害しない呼び樋と竪樋
10 鈴木大拙館(谷口吉生)
─宝形屋根から滴る雨を視覚化する鎖樋・開放樋
4章 教育施設
1 愛知県立藝術大学講義棟(吉村順三)
─跳ね出した建物に走る曲がりのない竪樋
2 金沢工業大学(大谷幸夫)
─シークエンスのアクセントになる切られた竪樋
3 ふじようちえん(手塚貴晴+手塚由比)
─大雨でも適切に流す、空間をつなげるガーゴイル
4 栄光学園創立70周年事業新校舎(日本設計・大成建設一級建築士事務所 設計共同体)
─丁寧に接続された内樋・桝・呼び樋・竪樋
5 千葉大学ゐのはな記念講堂(槇文彦)
─建物の荘厳さを強調するV型桝
6 東京工業大学70周年記念講堂(谷口吉郎)
─コンクリートの薄い水平ラインを活かす竪樋
コラム 上野寛永寺 大屋根を美しく見せる象の鼻
5章 オフィス・公共施設
1 AKIHABARA KADAN(atelierA5)
─熱負荷を低減する立木の鎖樋
コラム 大鳥居神社 鳥居をモチーフにした?2本の独立樋
2 パレスサイドビル(日建設計 林昌二)
─分節によりメンテナンスが容易になったロート状竪樋
3 安曇野市役所(内藤廣)
─かきこんだスラブに配される角錐台の竪樋頂部
コラム 待庵 宙を走る竹樋
4 コープ共済プラザ(日建設計)
─緑のカーテンをつくる鎖樋
5 YKK80ビル(日建設計)
─雨を導くY型アルミ押し出し型材
6 フォーラムビルディング(谷口吉生)
─アウトフレームによる驚異的な寸法の雨の処理
7 長沢浄水場(山田守)
─RCの柱に打ち込まれた鋼管の竪樋
8 ジョンソン・ワックス社本社(フランク・ロイド・ライト)
─構造と一体化した樋
9 瞑想の森 市営斎場(伊東豊雄)
─屋根の凹凸による内部空間の豊かさをひき立てる雨の処理
コラム 桂離宮・月波楼 竹樋と木製角錐台の接合ディテール
10 TRIAD(槇文彦)
─樋をつくらないシンプルな雨の流し方
6章 住宅
1 マグニー邸(グレン・マーカット)
─効率よく雨を集める2枚の大屋根と谷樋
2 フレッチャー=ペイジ邸(グレン・マーカット)
─雨の重要さを体現した貯水タンク
3 ルイ・カレ邸(アルヴァ・アアルト)
─軒先をすっきり見せる開放樋とガーゴイル
4 サラバイ邸(ル・コルビュジエ)
─雨を視覚化し、ファサードを動的にするガーゴイル
5 グガルン・ハウス(ピーター・ズントー)
─軒のシャープさを際立たせる開放樋
6 リヴァ・サンヴィターレの住宅(マリオ・ボッタ)
─手摺スリット壁に突き出るクチバシのようなガーゴイル
7 コスモ・ザ・パークス調布多摩川(山本堀アーキテクツ・三輪設計)
─フレームを構成し、建築に溶け込む化粧雨樋
コラム 金沢足軽資料館 竹の竪樋と木製呼び樋のディテール
8 シュレーダー邸(ヘリット・トーマス・リートフェルト)
─近づかないと分からない巧妙にかくされた樋
9 サザンハイランドの住宅(グレン・マーカット)
─ 1枚の大屋根で効率よく雨を集める
10 house A(青木淳)
─ハゼでつないだフラットな屋根と壁面に雨を流す
11 小出邸(堀口捨巳)
─工芸品のような緩いカーブの樋支持材
12 ヌーヴェル赤羽台6・7号棟(山本堀アーキテクツ・みのべ建築設計事務所)
─既製品を活用した軽やかな雨仕舞
13 ヌーヴェル赤羽台11号棟(遠藤剛生)
─樋を納めるGRCマリオンと樋をすっきり見せる中継ドレイン
おわりに
─楽しい雨仕舞の世界
雨を導くデザインは、楽しい世界です。
「本当ですか?」と疑問に思う方もいるかもしれませんが、筆者が30年間建築の設計をしてきてたどり着いた感覚です。
そうは言っても振り返ってみると、雨の処理のデザインは後回しになっていたと感じます。反省しきりです。平面・断面・立面・構造・設備の計画を並行してスタディを進め全体像を詰めて行く中で、雨の処理やそのデザインはどこか頭の隅に追いやられていたように思うからです。図面や模型やスケッチで空間のあらゆる箇所を十分検討しますが、その際、樋まではなかなか表現しません。ファサードを決定する上で意匠的にとても重要な要素でありながら、雨仕舞のデザインは設計者の意識の外におかれてしまいがちなのではないでしょうか。
このように、雨の処理は設計者・施工者にとっていつも悩ましい問題です。一方で、日本の自然環境に対応した深い庇や水平の庇は、気持ちよいスケール感と陰影のあるファサードをつくります。そこに雨仕舞のデザインが効く、と捉えることもできるわけです。
本書は、設計者・施工者が悩む雨の処理方法をファサードデザインの一つとしてポジティブに捉え扱うために、すぐれた事例から雨の導き方、納め方を学ぶ一冊です。紹介する事例からは、現代にも十分に活用できる古びない雨仕舞のアイデアを学ぶことができると思っています。
なお、本書はタニタハウジングウェアのウェブサイトでの連載「雨のみちデザイン」がもとになっています。本書と合わせて、ぜひそちらもお楽しみください。
2020年9月 堀啓二
さっき届いた良書。雨仕舞が明快に図解されて直感的に理解できる。この雨仕舞の7つの手法は、雨が多い日本の気候ならでは可能な、嫌な雨処理をむしろ逆手に取る建築デザインの贅沢な演出なのだろう。五月雨や時雨など雨の日本語の名称が豊富にあるように、良い雨仕舞は建築の豊かさにつながると思う。 https://t.co/RO2QcBIdmR pic.twitter.com/ThJsCixIFS
— Kohyoh Yang (@00ur0b0r0s) October 30, 2020
【図解 雨仕舞の名デザイン/堀 啓二】美しい本です。
まず、青い表紙に、「雨仕舞の名デザイン」というタイトルで惹かれる。日本、世界の建築の、雨の仕舞い方が、これまた美しい絵で解説されている。本の… → https://t.co/AjAeP3zMlK #bookmeter— シモフリタナバタウオ (@bluesiser) November 2, 2020
図書館で借りてきた『図解 雨仕舞の名デザイン』
これ、いいじゃないですか!
ライト「ジョンソンワックス」、山田守「長沢浄水場」や日建設計「コープ共済プラザ」など国や時代を超えた事例チョイス
水の流れだけが色(青)で描かれてるのがわかりやすくてイイ
手描きフェチの私、買おうかな。。。 pic.twitter.com/zrrcbbJ3CC— 建築専門の古本屋|古書山翡翠 (@kosho_yamasemi) October 29, 2020
『図解 雨仕舞の名デザイン』(学芸出版社)
設計者向けでありながら妙に題名が響く格好いい雨仕舞デザイン集。表紙右下見えます?牧野富太郎記念館展示館の樋。実際に見に行って雨に逢い、雨水は樋を辿って小さな池と植物を潤し、雨の”みち”も建築ではデザインすることを知りました。 pic.twitter.com/EEPN7lnfdn— MARUZEN&ジュンク堂書店 梅田店 (@mjumeda) October 8, 2020
今月発刊された『図解 雨仕舞の名デザイン』(堀啓二 著)に、設計担当した栄光学園が掲載されました。パレスサイドビルや牧野富太郎記念館、フォーラムビルディングなど雨仕舞の名作たちが手法別に紹介されていて、デザインの契機としての雨仕舞を学べる一冊。手に取る機会あればぜひご覧ください。 pic.twitter.com/X4pH1Gbs1Y
— YOSHIOKA Kosuke 吉岡紘介 (@yk716) September 19, 2020
「図解 雨仕舞の名デザイン」に前職の担当プロジェクトが掲載されているとの事で購読。設計時にも読んでいたweb連載「雨のみちデザイン」をもとに多くの事例が追加された内容。デザイン手法の7分類(うける/きる/みたてる/そわす/おどる/かくす/つなぐ)は次なる応用の良いヒントになりますね。 pic.twitter.com/Ga23bN4Fct
— 村井 一 (@MURAIII) September 18, 2020
これは「世の中には本当にたくさんの視点があるな…」という話なんですが、”雨をうまく処理する建築デザイン”に特化した『図解 雨仕舞の名デザイン』という本があるのすごくないですか。どんな本でも作れる…
https://t.co/arjCyVxVEj pic.twitter.com/0RrWfUOzMj— いぬいはやと (@inuiiii_) September 1, 2020