まちづくりキーワード事典 第三版

三舩康道+まちづくりコラボレーション 著

内容紹介

まちづくりの勉強をしたいが基本となる図書がない。分野別の本はあっても総合的な図書がない。そんな不満に応えるため多分野の気鋭の研究者・実務家が連携し生まれた事典の第三版。12分野について理念や計画、手法的な面を中心に126のキーワードを選び、2頁見開きの明快な構成で具体的な事例、多数の図表も加えて解説した。

体 裁 B5変・288頁・定価 本体4200円+税
ISBN 978-4-7615-4087-6
発行日 2009/07/20
装 丁 前田 俊平


目次著者紹介はじめに

基本事項

1.非成長型社会とまちづくり
2.サスティナブルなまちづくり
3.コンパクトシティ
4.ユニバーサルデザイン
5.都市再生
6.都市計画制度
7.まちづくり条例
8.都市マスタープラン
9.地区計画
10.まちづくりのルール
11.環境アセスメント(環境影響評価)
12.大規模開発
13.コンバージョン
14.観光・文化のまちづくり
サブキーワード

住宅・住環境まちづくり

15.都心居住問題
16.密集市街地
17.ニュータウン
18.田園居住
19.住生活基本法とまちづくり
20.住宅マスタープランと公的住宅
21.マンション問題
22.既成市街地のまちづくり
23.住宅供給に係わる規制誘導手法
24.新たな住宅の供給手法
25.住宅の瑕疵担保
26.住環境整備手法1(事業編)
27.住環境整備手法2(建築的手法編)
サブキーワード

景観まちづくり

28.景観法
29.景観法の主な個別制度
30.景観計画
31.景観資源(図)
32.景観の構造
33.景観ガイドライン
34.景観形成モデル
35.公共施設の景観
36.都市景観の形成手法1(眺望(景観)保全)
37.都市景観の形成手法2(高架高速道路と屋外広告物)
38.都市景観の形成手法3(個性演出手法)
39.都市景観の形成手法4(形態規制、色彩規制)
サブキーワード

歴史を生かしたまちづくり

40.歴史的遺産
41.世界遺産
42.文化財登録制度
43.文化的景観
44.伝統的建造物群保存地区
45.町並み保存地区
46.修理・修景基準、修景モデル
47.歴史的市街地の防災計画
48.歴史を生かしたまちづくり手法1(デザイン規制)
49.歴史を生かしたまちづくり手法2(歴史的遺産の活用と再生)
50.歴史を生かしたまちづくり手法3(地域的展開)
サブキーワード

安心・安全まちづくり

51.大規模災害
52.大震災
53.風水害、雪害
54.地域防災計画
55.地震危険の評価
56.防災都市づくり計画
57.防災生活圏と防災福祉コミュニティ
58.防災街区と防災公園
59.ハザードマップと防災マップ
60.住宅復興プロセスと復興計画
61.事前復興まちづくり
62.地区の防災まちづくり手法
63.その他の防災まちづくり手法
64.防犯まちづくり
65.防犯まちづくり手法
サブキーワード

交通からみたまちづくり

66.交通行動のマネジメント
67.道路の段階構成
68.住区の道路交通マネジメント
69.駅前広場
70.駐車管理
71.歩行者交通網
72.都市の自転車
73.都市内バス
74.LRT
75.新交通システム
76.ITS
77.交通マネジメント手法
サブキーワード

福祉のまちづくり

78.福祉のまちづくり
79.バリアフリーのまちづくり
80.福祉のまちづくり整備手法
81.高齢者の居住の安定
82.高齢者の居住とまちづくり
83.高齢者の自立支援とまちづくり
84.介護保険制度とまちづくり
85.高齢者の介護とまちづくり
86.子育て支援とまちづくり
87.子育ち支援とまちづくり
サブキーワード

水と緑(オープンスペース)のまちづくり

88.緑の基本計画
89.公園の種類
90.都市公園の標準値
91.公園のマネジメント
92.水辺の役割と機能
93.総合治水
94.緑の整備手法
95.水辺の整備手法1(場の整備)
96.水辺の整備手法2(水源の整備)
サブキーワード

生態環境のまちづくり

97.生態環境の基盤
98.ビオトープ
99.湿性緑地の再生
100.生態環境のミティゲーション
101.多自然川づくり
102.生態環境づくり手法
サブキーワード

物質・エネルギー循環とまちづくり

103.地域の環境マネジメント
104.省エネとCO2発生抑制(都市レベル)
105.省エネとCO2発生抑制(建築レベル)
106.循環型社会
107.ヒートアイランド
108.ライフサイクルアセスメント
109.土壌汚染問題
サブキーワード

まちづくりと経済

110.中心市街地活性化
111.PFIとPPP
112.不動産の証券化とREIT
113.コミュニティ・ビジネスと地域通貨
114.TMOとBID
115.コミュニティ開発とコミュニティ・ファイナンス
116.地方都市における不動産証券化
サブキーワード

市民まちづくり

117.パートナーシップ
118.地縁型コミュニティとテーマ型コミュニティ
119.都市計画への市民参加、都市計画提案
120.市民まちづくりの財源
121.NPO
122.まちづくり協議会
123.ワークショップ
124.市民調査
125.まちづくりセンター
126.市民まちづくり手法
サブキーワード

長田光世(おさだ・みつよ)

1961年愛知県で生まれる。千葉大学自然科学研究科環境科学専攻博士課程修了・博士(学術)。現在、宇都宮大学農学部農業環境工学科講師。著書等:『現代生態学とその周辺』(共著、東海大学出版会)『景相生態学入門』(共著、朝倉書店)『造園の事典』(共著、朝倉書店)
担当:97~102

加藤孝明(かとう・たかあき)

1967年愛知県で生まれる。東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻博士課程中退・博士(工学)。現在、同大学院助教。日本建築学会奨励賞(2001年)、地域安全学会論文賞(2007年)、日本都市計画家協会楠本洋二賞優秀賞(2009年)。著書等:『まちづくりの近未来』(共著、学芸出版社)他。
担当:52、54~56、60

佐谷和江(さたに・かずえ)

1961年山口県で生まれる。千葉大学大学院博士後期課程修了。現在、(株)計画技術研究所代表取締役。著書等:『NPOとまちづくり』(共著、風土社)『市民のためのまちづくりガイド』『まちづくりの近未来』(いずれも共著、学芸出版社)
担当:117~121、123、124

須永和久(すなが・かずひさ)

1960年千葉県で生まれる。東京大学理学部地学科及び工学部都市工学科卒業。現在、(株)計画技術研究所代表取締役。東京大学まちづくり大学院非常勤講師。著書等:『市民のためのまちづくりガイド』『まちづくりの近未来』(いずれも共著、学芸出版社)、『地域を元気にするコミュニティ・ビジネス』(共著、ぎょうせい)、『まちづくりとコミュニティワーク』(共著、解放出版社)
担当:1、3、5、6、8~10、12、13、15、17、18、20~23、26、27、110

園田眞理子(そのだ・まりこ)

1957年石川県で生まれる。千葉大学大学院自然科学研究科環境科学専攻博士課程修了・博士(工学)。現在、明治大学理工学部建築学科准教授。著書等:『世界の高齢者住宅』(日本建築センター)『高齢者とまちづくり』(共編著、風土社)
担当:79、81~83、85

中村文彦(なかむら・ふみひこ)

1962年新潟県で生まれる。東京大学大学院工学系研究科都市工学博士課程中退・工学博士。東京大学工学部助手、アジア工科大学院助教授を経て、現在、横浜国立大学大学院工学研究院教授。著書等:『バスでまちづくり』(学芸出版社)『都市交通計画』(共著、技報堂出版)『成功するパークアンドライド、失敗するパークアンドライド』(共著、丸善)『まちづくりの近未来』(共著、学芸出版社)
担当:4、66~77

中村昌広(なかむら・まさひろ)

1962年福岡県で生まれる。東京大学大学院都市工学専攻博士課程退学。横浜国立大学助手、(株)オストランド等を経て、(社)国際環境研究協会を2008年に退職。著書等:『まちづくりの近未来』(共著、学芸出版社)
担当:2、11、103~109

野口秀行(のぐち・ひでゆき)

1950年熊本県で生まれる。九州大学経済学部卒業。日本開発銀行(現日本政策投資銀行)を経て、現在、ノースアジア大学経済学部教授。東京工業大学、東京大学各非常勤講師。著書等:『まちづくりの近未来』(共著、学芸出版社)
担当:111~116

原田茂樹(はらだ・しげき)

1963年広島県で生まれる。東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻博士課程修了・工学博士。現在、宮城大学食産業学部環境システム学科講師。著書等:「雨水浸透基盤内の浸透機構の考察とその流出抑制効果に関する研究」『衛生工学論文集・第27巻・1991』(共著)
担当:92、93、95、96

松本暢子(まつもと・のぶこ)

1956年東京都で生まれる。東京都立大学大学院工学研究科博士課程修了・工学博士。現在、大妻女子大学社会情報学部教授。著書等:『まちづくりの科学』『都市の戸建住宅に住まう』(共著、日本統計協会)『まちづくりの近未来』(共著、学芸出版社)
担当:16、78、80、84、86、87

松本眞理(まつもと・まり)

千葉大学工学部建築学科卒業。現在、住宅金融支援機構まちづくり推進部賃貸営業推進グループ長。著書等:『建築計画チェックリスト 集合住宅』(共著、彰国社)『まちづくりの近未来』(共著、学芸出版社)
担当:19、24、25

蓑田ひろ子(みのだ・ひろこ)

1963年熊本県で生まれる。熊本県立多良木高等学校卒業。93~94年東京大学先端科学技術研究センター研究員、現在、ジェネスプランニング(株)。著書等:『歴史ある建物の活かし方』『まちづくりの近未来』『歴史的遺産の保存・活用とまちづくり〈改訂版〉』(いずれも共著、学芸出版社)
担当:40~50、122、125、126

三舩康道(みふね・やすみち)

1949年岩手県で生まれる。東京大学大学院工学系研究科都市工学博士課程修了・工学博士。95~96年新潟工科大学教授、現在、ジェネスプランニング(株)代表取締役。著書等:『地域・地区防災まちづくり』(オーム社)『防災と市民ネットワーク』『まちづくりの近未来』(学芸出版社)『歴史的遺産の保存・活用とまちづくり〈改訂版〉』(編著、学芸出版社)『出会いたい東京の名建築』(新人物往来社)
担当:全体監修及び7、14、28~39、51、53、57~59、61~65、88~91、94

昭和60年代以後、全国の市町村で「まちづくり」が行われるようになった。そして、それから20年を経た平成21年の現在、まさに今は「まちづくりの時代」である。

しかし、まちづくりとはどういうことかと説明を求められても、なかなかうまい説明が見いだせない。ましてやここで定義することは難しい。それは、まちづくりの概念が、変化、多様化してきたことによる。当初は都市計画やそれに関連する事業がまちづくりと言われた。次に、まちおこしやイベント、そして仕掛けづくりなどの地域の活性化につながることもまちづくりと呼ばれるようになった。そして現在は仕組みづくりや人づくりもまちづくりと呼ばれるようになり、ハードな面からソフトな面の意味まで含むようになった。また、まちづくりは、地域や地区レベルでの意味から国土計画のような広域的な意味を含めて使われることもある。

用語の使い方をみると「街づくり」「町づくり」「まちづくり」がある。一般的に、「街づくり」は市街地などのように町会を超えた地区や地域を対象にする場合に用いられ、「町づくり」は自治会を単位として扱う場合に用いられ、「まちづくり」はソフトな意味を含めて幅広い意味で使う場合に多く用いられている。
「まちづくり」は、明確な定義がないだけ、様々な要素や側面を含めた意味で使うことができ、使う側からすれば使いやすい言葉である。これがよく使われている一つの要因であろう。

また、住民にとっては、上位計画的に決められた「計画」という表現よりは、合意形成しながら、自らが関与し、共に知恵を出しあうというような意味が込められた言葉である。そのため、民主的で現代的であり、「○○計画」と言うより「まちづくり」と言うほうが住民にも響く。そして、わかりやすく、自らの夢や希望の実現に期待を抱かせられる言葉である。このようなところが多用化される所以であろうか。

英語ではコミュニティプランニング(Community Planning)があるが、これも解釈しようによってはいくらでも広義に解釈できる言葉である。以上で述べてきたような言葉の使い方は決してその意味を逸脱したものではないだろうが、なかなか適当な訳語はない。

本来まちづくりは一つであるが、現実的には、景観、安心・安全、福祉、環境、そして市民まちづくりなどのように、様々な側面から展開されている。総合的なまちづくりの体系があってそれらの各分野が展開されているというよりは、それぞれの分野のまちづくりが新たに展開されているのが実態である。そのため、これからは総合的な観点から調整することが課題となってくる。
さて、まちづくりの勉強をしたいと思うが、まず勉強するための基本となる適当な図書がない。勉強するにもまず言葉の理解が必要だが、なかなかまちづくりに関する適当な辞書がない、また、分野別の図書はあっても各分野を一覧できるような総合的な図書がない。

本書はそのような現状を踏まえ、行政やコンサルタントの実務家やこれから学ぼうとする学生が、総合的にまちづくりを理解できるように、「基本事項」「住宅・住環境まちづくり」「景観まちづくり」「歴史を生かしたまちづくり」「安心・安全まちづくり」「交通からみたまちづくり」「福祉のまちづくり」「水と緑(オープンスペース)のまちづくり」「生態環境のまちづくり」「物質・エネルギー循環とまちづくり」「まちづくりと経済」「市民まちづくり」の各分野を取り上げ、分野ごとに理念や計画・手法的な面を中心にキーワードを選び、具体的な事例を加え解説している。

キーワードは、国土計画や都市全体的な広範囲のものよりは、地域や地区的なまちづくりに関連するものを中心に、今後のまちづくりの方向性を見据え最新の話題となっているものを選んでいる。そのため、新たにまちづくりに携わる人にとってはタイムリーで、また、これまで携わってきた人でも今までの知識を最新の情報で整理し、今後のまちづくりを展望するのに役に立つと考えている。
基本的に各分野は、解説とメインのキーワード及びサブキーワードで構成されている。解説では、一般的に使われている言葉も含めたキーワードの関連図も加え、各分野のまちづくりの概要が理解できるように意図している。メインのキーワードでは、具体例を挙げ、図、表、あるいは写真入りで、できるだけわかりやすく解説している。サブキーワードは、よく使われる言葉や文中に出てくる言葉の解説として補足的に取り上げている。

全体的に本書は、辞書としての言葉の理解から、各分野のまちづくりの概要、さらにはまちづくりの全体像を理解できるように計画し、よき手引き書となることを意図している。

以上のような意図で1997年に第1版を出版した。そして、5年後の2002年に第2版を出版し、この度、第3版を出版することができた。この間、新しい法律の制定などの動きがあり、そしてまちづくりという言葉の持つ意味の一層の多様化が進んだ。そのため、今回はこのような現状を踏まえ、全面的な見直しを行うことにした。時代の変化にあわせ、「防災」と「防犯」を「安心・安全」とまとめるなどの改編も行った。しかし、紙幅の関係でできなかったこともある。まだ万全とは言いがたいが、今後とも時代、社会の変化に対応し内容を見直していきたい。
執筆陣の名称はまちづくりコラボレーションである。コラボレーション(collaboration)には共同研究、共同作業、合作、協力などの意味がある。第1版の出版時にはまだ一般的な言葉ではなく、わかりにくいのではないかという意見もあった。しかし、今ではコラボレーションという言葉はよく使われる言葉として定着してきている。

数年前にこのグループで『まちづくりの近未来』を出版した。これからのまちづくりを考えるために参考になればと思っている。本書と併せて読んでいただければ幸いである。

本書の出版には、学芸出版社の前田裕資氏の力が大きい。そして、第2版では永井美保氏、また第3版では森國洋行氏に細やかなご指摘を多くいただいた。その結果できた本である。従って本書は、執筆陣とこれら学芸出版社編集陣とのコラボレーションの結果である。

2009年6月

まちづくりコラボレーション代表 三舩康道

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