はじめに
第1章 高齢者や障がい者の住まい・暮らしを支える
1-1 地域共生社会と住まい
1) 地域共生社会とノーマライゼーション
2) 外出して人・地域・社会とつながる
1-2 高齢者のからだと住まい
1) 高齢期の心身機能の特徴と住まい
2) 高齢期の住まい手の変化に応じた住まい・住まい方の選択肢
3) 毎日の生活で用いる移動方法と住まい
1-3 障がい者のからだと住まい
1) 障がいによる心身機能の特徴と住まい
2) 地域で暮らす障がい者・障がい児の住まい
1-4 地域で暮らす高齢者・障がい者を支える仕組み
1) 地域で暮らすとは
2) 在宅生活を支える福祉サービス
3) 地域で交流やつながりをつくる
4) 外出を支える移動環境
第2章 事例から読み解く高齢者の住まい
2-1 高齢者の住まい
2-2 アクティブな生活から介護予防まで
1)生涯夫婦で自立して本音の暮らしができる家
―バリアフリーで将来の変化を受容し地域の人を招ける新築住宅
2)住宅を改修して高齢期に備える
3)高齢期の移住とライフステージによる変化
4)サービス付き高齢者向け住宅
5)住まい方を工夫しながら住み続ける集合住宅
2-3 介護が必要になったら
1)片麻痺で車いすを利用する高齢者向け新築住宅
2)車いすで暮らせるように1階店舗を住宅改修
3)認知症に求められる住環境と自宅での環境整備
4)天井設置型の見守りセンサの活用事例
―見守りセンサにより介護職員と利用者の距離感を適切に保つ
5)可搬設置型の見守りセンサの活用事例
―見守りセンサにより介護職員・利用者の負担を軽減する
6)介護施設の新しい姿を示す木造・分棟型の計画
―ケアタウン小牧 特別養護老人ホーム幸の郷
7)物理的環境が認知症を支えることを実証
―認知症高齢者グループホーム こもれびの家
コラム 災害後の高齢者の仮住まい
第3章 事例から読み解く障がい者の住まい
3-1 障がい者の住まい
3-2 肢体不自由者の住まい
1)バリアフリーはストレスフリー―車いすユーザーが住むマンションのリノベーション
2)子どもの成長で変化する住要求に対応した住宅改修
3)障がいのある子どもの成長を促す住環境整備―家族にも配慮した段階的な改修
4)身体障がいのある人々が集まって住む―重度身体障がい者グループホーム
5)既存公営住宅改修による車いす使用者用住戸の整備
3-3 視覚障がい者の就労施設
1)視覚障がい者の就労施設における環境の工夫―五感活用で過ごしやすい自立の場
3-4 精神障がい者・知的障がい者の住まい
1)精神障がいのある人々が集まって住むグループホーム
2)強度行動障がいのある人々のためのグループホーム
3-5 発達障がい者の住まい
1)発達障がい児(者)の住まいの工夫
第4章 人と人のつながりを生む地域の実践
4-1地域でつくるつながり
4-2 地域の支え合い
1)自助・互助による住民が主役のまちづくり―神奈川県・横浜若葉台団地
2)地域交流のまちづくり―横浜市寿地区
4-3 通いの場づくり
1)小学校区ごとの小規模多機能型居宅介護施設の整備―大牟田市
2)学生が運営に参画するコミュニティ拠点
4-4 多世代交流
1)共用空間を活用し多世代で支えあって暮らす―千葉県・シティア
2)大学生が支え、支えられる団地の暮らし―兵庫県明舞団地
3)協働する住まい―コレクティブハウスかんかん森
4)“ごちゃまぜ”で暮らす―Share金沢
4-5 住民参加
1)住民主体のサービスづくり―沖縄県・波照間島
4-6 多様な活動とサービス
1)地域居住を多様な世代・サービスで支える―神奈川県・認定NPO法人ぐるーぷ藤
2)多様な制度外サービスを提供―もちもちの木
3)団地再生事業における居住者の交流の場づくり―柏市・豊四季台団地
コラム 制度外ケア付き福祉仮設住宅「あがらいん」
第5章 高齢者や障がい者の住まいの制度と相談窓口
5-1 介護保険制度における住宅改修費給付制度
5-2 障がい者向けの住宅改修支援制度
5-3 高齢者や障がい者の住まいの相談窓口
5-4 居住継続支援における多職種連携
おわりに
「知っておきたい用語・解説」索引
【編著者】
西野亜希子(にしの あきこ)
[1-1-2、1-2-2、1-3-2、2-1、2-2-1、2-3-2、3-1、3-2-2、3-3-1、4-1、4-6-1、4-6-3]
専門:建築計画
経済学を学んだのち、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程修了、博士(工学)。東京大学高齢社会総合研究機構特任助教、同大学大学院工学系研究科建築学専攻特任助教などを経て、現在、コ・ラボ/Co_Lab. 代表。日本建築学会奨励賞受賞。著書(共著)『利用者本位の建築デザイン』彰国社、『福祉転用による建築・地域のリノベーション』学芸出版社ほか。
岡部真智子(おかべ まちこ)
[1-1-1、1-4-1、1-4-2、1-4-3、4-6-2、5-1]
専門:社会福祉学(居住支援)
日本福祉大学大学院福祉社会開発研究科社会福祉学専攻博士課程修了、博士(社会福祉学)。
住宅改修や福祉用具を扱う民間企業にて働いたのち、日本福祉大学福祉経営学部、静岡英和学院大学人間社会学部コミュニティ福祉学科を経て、現在、福山平成大学福祉健康学部福祉学科教授。社会福祉士、福祉住環境コーディネーター2級。著書(共著)『社会人のための社会福祉士』学文社。
阪東美智子(ばんどう みちこ)
[2-2-4、4-2-2]
専門:住宅問題・福祉住環境・公衆衛生(住居衛生)
神戸大学大学院修了、博士(工学)。国立保健医療科学院(旧国立公衆衛生院)生活環境研究部上席主任研究官。著書(共著)『HOUSERSハウザーズ―住宅問題と向き合う人々―』萌文社、『これからの住まいとまち―住む力をいかす地域生活空間の創造』朝倉書店ほか。
【著者】
石井 敏(いしい さとし)
[2-3-6、2-3-7]
専門:建築計画(福祉住環境デザイン)
東京大学大学院修了、博士(工学)。現在、東北工業大学建築学部教授。特に高齢者介護施設、認知症の人のための環境づくりや福祉住環境の計画と研究に取り組む。著書(共編著)『小規模多機能ホーム読本』ミネルヴァ書房、『建築計画:住まいから広がる〈生活〉の場』朝倉書店ほか。学術論文、調査研究報告書も多数あり。
稲垣具志(いながき ともゆき)
[1-4-4]
専門:都市交通計画、土木計画、人間工学
大阪府立大学工学部電子物理工学科卒業。大阪市立大学大学院工学研究科都市系専攻後期博士課程修了。博士(工学)。財団法人豊田都市交通研究所研究員、成蹊大学助教、日本大学助教、中央大学研究開発機構准教授を経て、現在、東京都市大学建築都市デザイン学部都市工学科准教授。著書(共著)『ユニバーサルデザインの基礎と実践』(鹿島出版会)、『日本インフラの「技」─原点と未来』(土木学会)、『平面交差の計画と設計 自転車通行を考慮した交差点設計の手引』(交通工学研究会)、『都市を学ぶ人のためのキーワード事典』(学芸出版社)ほか。
李 潤貞(い ゆんじょん)
[4-6-3]
専門:建築計画
東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程終了、博士(工学)。東京大学大学院工学系研究科特任研究員を経て、韓国の忠南研究院忠南まちづくり支援センター、むら研究所イルソゴンドにて働いたのち、現在、㈱未来環境政策研究院部署長。共訳書『「都市の定義」が地方を壊す』山下祐介著、『地方創生大全』木下斉著。
植田瑞昌(うえだ みずよ)
[3-2-3]
専門:建築学(建築計画・福祉住環境・福祉のまちづくり)
日本大学大学院理工学研究科建築学専攻博士後期課程修了、博士(工学)。横浜市総合リハビリテーションセンターにおいて住宅改修・福祉用具の専門相談員として働いたのち、一級建築士事務所、国立障害者リハビリテーションセンター研究所流動研究員を経て、現在、日本女子大学建築デザイン学部に勤務。一級建築士、福祉住環境コーディネーター1級。著書(共著)『住環境のバリアフリー・ユニバーサルデザイン』彰国社ほか。
笈田幹弘(おいだ みきひろ)
[4-6-3]
専門:都市工学(まちづくり)、物質工学
北海道大学大学院工学系研究科物質工学専攻修了。株式会社INAX(現LIXIL)に入社し、ユニバーサルデザイン等の研究開発に従事。本活動は、東京大学高齢社会総合研究機構への出向在籍時に実施したもの。高齢社会のまちづくりの実践・研究活動を基に、東京大学大学院工学系研究科都市持続再生学コース(まちづくり大学院)を修了。現在は株式会社LIXILに復帰。
大島千帆(おおしま ちほ)
[2-3-3、3-4-1]
専門:社会福祉学
日本社会事業大学大学院修了、博士(社会福祉学)。日本社会事業大学社会事業研究所、埼玉県立大学保健医療福祉学部等を経て、現在、早稲田大学人間科学学術院准教授。特別養護老人ホームの施設環境づくり、在宅認知症高齢者の居住環境に関する研究・実践に携わる。社会福祉士、精神保健福祉士。著書『認知症ケア やさしい住まい・暮らしの工夫』家の光協会ほか。
大橋寿美子(おおはし すみこ)
[4-4-3]
専門:建築計画、住居学
日本女子大学大学院人間生活学研究科生活環境学専攻博士課程修了、博士(学術)。 住宅メーカー勤務等を経て、現在、大妻女子大学社会情報学部社会情報学科環境情報学専攻教授。著書(共著)『変わる家族と変わる住まい』彰国社、『第3の住まい コレクティブハウジングのすすめ』エクスナレッジ、『住みつなぎのススメ─高齢社会ともに住む・地域に住む』萌文社ほか。
糟谷佐紀(かすや さき)
[4-4-2]
専門:福祉住環境、障害者のための住宅政策
神戸大学大学院人間発達環境学研究科博士後期課程修了、博士(学術)。博士(工学)、一級建築士、福祉住環境コーディネーター2級。建築設計事務所、兵庫県立福祉のまちづくり研究所を経て、現在、神戸学院大学社会リハビリテーション学科教授。著書(共著)『移動と歩行』医学書院ほか。
神吉優美(かんき ゆみ)
[4-4-4、4-5-1]
専門:福祉住環境計画・まちづくり
京都大学大学院工学研究科博士後期課程修了。博士(工学)。一級建築士。神吉不動産株式会社代表取締役。大阪公立大学大学院客員教授。「宿題ひろば 学びの船」主催。東洋大学および奈良県立大学にて教鞭をとる。2023年度末に大学を辞職して大家業に専念したのを機に、小中学生を対象とした夕食付きの学習の場「宿題ひろば 学びの船」をスタートさせた。
金 炅敏(きむ ぎょんみん)
[4-3-1]
専門:建築計画学
東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士後期課程修了、博士(工学)。活力ある超高齢社会を共創するグローバルリーダー養成プログラム(GLAFS)修了(東京大学)。国立研究開発法人国立環境研究所社会システム領域地域計画研究室で研究員を経て、現在、大成建設株式会社技術センターイノベーション戦略部技術開発戦略室。2022年日本都市計画学会年間優秀論文賞受賞。
児玉善郎(こだま よしろう)
[4章コラム]
専門:居住福祉
神戸大学大学院工学研究科環境計画学専攻修了、博士(工学)、技術士(建設部門・都市および地方計画)。㈱計画技術研究所研究員、神戸大学工学部技官等を経て、日本福祉大学に赴任。大学院社会福祉学研究科長、社会福祉学部長、第8代学長を歴任。現在は、学事顧問・社会福祉学部教授。著書(共著)『居住福祉学』有斐閣、『災害福祉論』学文社ほか。
雜賀 香(さいが かおり)
[2-2-2]
専門:住宅のリフォーム工事
女子美術短期大学造形科卒業。設計事務所、建設会社を経て住宅のリフォームを生業とする。2012年に雜香オリジナルワーク株式会社を設立。リフォーム業歴30年。二級建築士、二級施工管理技士、マンションリフォームマネージャー、インテリアコーディネーター、キッチンスペシャリスト。
佐藤由美(さとう ゆみ)
[4-2-1、5-3]
専門:住宅・都市計画、居住政策
大阪市立大学大学院生活科学研究科後期博士課程修了、博士(学術)。民間建設コンサルタント会社勤務、住宅・居住政策に関する調査研究・計画策定などを担当、2006年大阪市立大学都市研究プラザ特任講師を経て、2014年奈良県立大学地域創造学部准教授、2019年より同教授。技術士建設部門(都市及び地方計画)、一級建築士、著書(共著)『住宅と福祉の連携-居住政策の実現に向けた「協議会型アプローチ」』大阪公立大学共同出版会ほか。
鈴木 晃(すずき あきら)
[5-4]
専門:住居学・住生活学
横浜国立大学建築学科卒、神戸大学大学院修了、博士(学術)。東京都老人総合研究所、国立公衆衛生院(現 国立保健医療科学院)にて研究教育に従事。その後、日本大学工学部建築学科、福島大学人間発達文化学類(家庭科教員養成)に勤務。編著書『保健婦・訪問看護婦のための住宅改善支援の視点と技術』日本看護協会出版会、『高齢者が自立できる住まいづくり』彰国社ほか。
鈴木健太郎(すずき けんたろう)
[1-2-1、1-3-1]
専門:障害生活支援(生活環境支援・バリアフリー)
首都大学東京(現・東京都立大学)大学院人間健康科学研究科博士後期課程修了、博士(作業療法学)。発達期や高齢期の地域施設、自治体福祉センターでの補装具関連業務や生活相談などの、主に地域福祉領域での活動や専門学校教員を経て、杏林大学保健学部教員。作業療法士。
曽根里子(そね さとこ)
[4-4-1]
専門:住居計画・建築計画・コミュニティ形成
文化女子大学大学院(現:文化学園大学大学院)家政学研究科生活環境学専攻修士課程修了、修士(生活環境学)。文化女子大学(現:文化学園大学)助手・助教を経て、現在、文化学園大学造形学部准教授。
一級建築士。2003年(第14回)日本建築学会優秀修士論文賞。著書(共著)『現代集合住宅のリ・デザイン 事例で読む[ひと・時間・空間]の計画』彰国社。
田中紀之(たなか のりゆき)
[4-6-3]
専門:建築計画・住環境計画
京都大学大学院工学研究科 博士後期課程研究指導認定退学。コンサルタント会社勤務、大学院進学ののち、大和ハウス工業株式会社入社。東京大学高齢社会総合研究機構への出向を経て、現在、リブネスタウン事業推進部所属。一級建築士、福祉住環境コーディネーター1級。著書(共著)『地域包括ケアのまちづくり』東京大学出版会ほか。
冨安亮輔(とみやす りょうすけ)
[2章コラム]
専門:建築計画
東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修了。日本学術振興会特別研究員、東洋大学理工学部建築学科助教を経て、現在、福祉社会デザイン学部人間環境デザイン学科准教授。一級建築士、博士(工学)。主な受賞に日本建築学会奨励賞、東京大学総長大賞など。
西村 顕(にしむら あきら)
[3-5-1]
専門:建築計画
2003年より横浜市総合リハビリテーションセンターにて高齢者や障害児者の住宅改修相談に従事。2013年に横浜国立大学大学院にて博士号取得。現在、横浜市総合リハビリテーションセンター研究開発課担当課長。一級建築士、博士(工学)。著書(共著)『知的障害・発達障害のある子どもの住まいの工夫ガイドブック』中央法規。
橋本美芽(はしもと みめ)
[1-2-3]
専門:住環境整備学・リハビリテーション工学
日本大学大学院理工学研究科医療・福祉工学専攻博士後期課程修了、博士(工学)。公的機関において訪問による住宅改造・福祉用具の相談業務に従事。東京都立保健科学大学を経て、現在、東京都立大学大学院人間健康科学研究科准教授。一級建築士、福祉用具プランナー。著書(共著)『OT・PTのための住環境整備論』三輪書店ほか。
原 和男 (はら かずお)
[2-3-1]
専門:建築設計
東京理科大工学部建築学科卒業。松淵建築事務所、吉村順三設計事務所を経て、1999年、和 綜合設計室設立。一級建築士、専攻建築士、インテリアプランナー、応急危険度判定士、東京建築士会会員。
受賞歴:大宮市景観賞。住宅作品掲載:モダンリビング特別編集『建築家自邸50』「西寺尾の家」
番場美恵子(ばんば みえこ)
[2-2-3]
専門:建築計画(住生活学)
昭和女子大学生活機構研究科生活機構学専攻博士課程修了、博士(学術)。昭和女子大学生活科学部生活環境学科助手、同短期大学部文化創造学科専任講師を経て、現在、昭和女子大学環境デザイン学部環境デザイン学科准教授。一級建築士。著書(共著)『住まいの百科事典』丸善出版。
松田雄二(まつだ ゆうじ)
[3-2-4、3-4-2]
専門:建築計画学
東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程修了、博士(工学)。東京理科大学、お茶の水女子大学大学院を経て、現在、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻准教授。一級建築士。著書(共著)『福祉転用による建築・地域のリノベーション』学芸出版社ほか。
三浦貴大(みうら たかひろ)
[2-2-1、2-3-4、2-3-5、3-3-1]
専門:福祉工学、ヒューマンインタフェース
東京大学大学院情報理工学系研究科システム情報学専攻博士課程修了、博士(情報理工学)。同大学同研究科特任助教、同大学高齢社会総合研究機構特任助教を経て、現在、産業技術総合研究所人間拡張研究センターおよびデジタルアーキテクチャ研究センター主任研究員。主に、視覚障がい者、高齢者の支援システムや、彼らの支援者を交えた場の構築に関する研究に従事。
南 一誠(みなみ かずのぶ)
[2-2-5]
専門:建築計画、建築構法、建築設計
東京大学及びマサチューセッツ工科大学大学院修了、郵政省大臣官房建築部等の勤務を経て2005年から2022年まで芝浦工業大学建築学科教授。現在、同大学名誉教授。一級建築士、博士(工学)。著書『しなやかな建築』総合資格、『時とともに変化する建築』UNIBOOK、『改訂版 図説建築構法』学芸出版社ほか。2022年日本建築学会賞(論文)などを受賞。
蓑輪裕子(みのわ ゆうこ)
[5-2]
専門:建築計画、住居学
東京理科大学工学部建築学科卒業、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修士課程修了、博士(工学)。コンサルタント会社、東京都老人総合研究所を経て、現在、聖徳大学短期大学部総合文化学科教授。一級建築士。著書(共著)『住まいとインテリアデザイン』彰国社ほか。
室﨑千重(むろさき ちえ)
[3-2-5、4-3-2]
専門:福祉住環境学、住生活学
神戸大学大学院自然科学研究科地域空間創生科学専攻博士後期課程修了、博士(工学)。株式会社現代計画研究所、兵庫県立福祉のまちづくり研究所研究員を経て、現在、奈良女子大学研究院生活環境科学系准教授。一級建築士。著書(共著)『利用者本位の建築デザイン』彰国社、『空き家・空きビルの福祉転用』学芸出版社ほか。
吉田紗栄子(よしだ さえこ)
[3-2-1、3-3-1]
専門:バリアフリー建築設計
日本女子大家政学部住居学科卒業、日本大学理工学部博士課程前期修了。一級建築士事務所(有)アトリエユニ設立(ケアリングデザインアーキテクツに改称)。1964年の東京パラリンピックに日本赤十字語学奉仕団の一員として参加。以来、高齢者、障がい者の住宅、福祉施設などに特化した設計に従事。一級建築士。1998年「デイケアセンターひかりの丘」でJID賞インテリアスペース部門特別賞、2001年住宅リフォーム紛争処理センター第18回住まいのリフォームコンクール高齢者障害者部門優秀賞。著書(共著)『バリアフリー住まいをつくる物語』三輪書店、『50代リフォーム・素敵に自分流』経済調査会。
※[ ]は執筆担当箇所
本書について
本書は、高齢になっても障がいがあっても、誰もが自分らしい暮らしや住まいをより主体的に選択できるよう、生活の基盤となる住まいと住まいのある地域に焦点をあてている。実際の計画や設計に役立てるため、多くの人の関心に沿うよう幅広く網羅することで、個別性が高く多様な住まい手の状況に応じた選択肢を俯瞰できるようにすることを心がけた。
本書の構成は次の通りである。まず、第1 章で「高齢者」「障がい者」の暮らしを支える概念や、からだの特徴・住環境について取り上げる。第2章の「高齢者の住まい」では、元気でアクティブな時期から、身体機能に変化が生じてからも住み続けるための自宅や、住み替え先となる住まいや施設の事例を紹介する。また第3章の「障がい者の住まい」では、肢体不自由や視覚障がい、精神障がい、知的障がい、発達障がいなど、障がいごとに工夫された事例を掲載する。第4章では、住民や行政、企業など様々な立場にある人が主体となり取り組んでいる地域・コミュニティづくりの事例を紹介する。第5章は、住まいに関するサービスや制度を紹介し、相談窓口となる場所を示した。また独自の取組みを行う自治体を取り上げ、全国一律ではない取組みがあることを紹介する。
本書の特徴
本書の主な特徴は、以下の1~3 である。
□特徴1:多様な「暮らし」を俯瞰し、一人ひとりに合った選択につなげる
ニーズが多様化する中、本人や家族には、一人ひとりに合った住まいや地域の環境を主体的に選択する機会が増えるだろう。そして、それらを支える設計者や関係する専門職には、住まい手の暮らしに寄り添った提案がより一層求められる。
本書が想定する読者は、高齢者や障がい者の住まいに関わる設計者はもちろん、福祉・医療関係者や建築関係者、まちづくりに携わる行政職など実務家である。さらには、こうした分野に関心を持つ研究者や初学者にとっても学びの教材にしていただきたいと考えた。
また、高齢者や障がい者、障がい児、そしてその家族にとって、暮らしでのわずかな頑張りすぎや我慢のしすぎを日常的に積み重ねることは、大きな負担になる。そのため、本人が持っている力を活かして「できること」を増やしたり、家族・支援者の生活にも配慮したうえで、その人らしい暮らしを実現するためのヒントとして、本書を活かしていただきたい。
□特徴2:事例を多用することで、その人にあった例を取り入れやすくする
新たな選択をする際に、候補となる住まいや地域の暮らしがイメージしやすいように、本書では多くの事例を用いている。各事例は共通項が見えるように、建物等の概要、計画・設計に至る経緯、課題を解決するための取組み、事例のポイント、知っておきたい用語・解説で構成している。第2章から第4章の冒頭では、その章の全体像がわかるよう表を設けるとともに、読者が関心を持ったどの事例からでも読んでいただけるよう工夫した。
本書で取り上げた事例は、執筆者の研究や実践の成果、くわえて日本建築学会高齢者・障がい者等居住小委員会の研究活動の成果を用いている。さらに、各事例には想定する読者をアイコンで示している(次頁参照)。
暮らしは住戸内で完結するものではない。そこで本書は、住まいだけでなく、暮らしを支える地域についても、先駆的な地域・コミュニティの取組みを紹介している。このように、生活の基盤となる住まいと、外出先であり、人とつながるきっかけとなる地域を取り上げることで、多様な選択肢が俯瞰でき、その人らしい暮らしの一助となる書籍づくりを試みた。
□特徴3:「用語・解説」で当事者の主体的参加や専門職間の連携に役立てる
暮らしにおける課題の解決策は一つとは限らない。暮らしの選択肢が増える中で、設計者は他の分野の専門職と連携し、建築以外の分野の専門職は建築に触れる機会が今後ますます増えることが見込まれる。そこで、それぞれの分野で重要とされ、多職種連携を円滑に進めるために互いが理解しておくことが望ましい用語を「知っておきたい用語・解説」として設けた。
一人ひとりが培ってきた暮らしの維持・継続につながる一冊として、多くの方に本書を手に取っていただきたい。暮らしにおいて自己決定が容易にでき、その人が持っている力を活かし、最期まで尊厳を持って、住み慣れた地域や自宅などでその人らしく安心して住み続けるために、本書が役立つことを願っている。
編著者 西野亜希子