ワークブック 環境行動学入門

ワークブック 環境行動学入門 建築・都市の見方が変わる51の方法
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内容紹介

なぜその場所に座りたくなるのか?を探る。

思わず腰を下ろしたくなる場所、ショートカットしたくなる小道など、利用者のふるまいに影響を与える興味深い空間がある。このような場所とアクティビティを観察することで、設計者は「ほどよい空間」をつくることができる。都市に暮らす人びとの生態をつぶさに観察する環境行動学の調査手法を、ワークブックの形式で学ぶ。


山田あすか・小林健治・村川真紀 編著
著者紹介

体裁B5変判・192頁(カラー32頁)
定価本体3000円+税
発行日2024-03-20
装丁KOTO DESIGN Inc. 山本剛史
ISBN9784761532994
GCODE2348
販売状況 在庫◎
ジャンル 設計手法・建築計画・住居学
教科書分野 建築計画・設計
目次著者紹介はじめにレクチャー動画関連イベント関連ニュース

目次

はじめに
この本を授業・ワークショップでご利用になられる方へ
受講者・参加者の方へ(演習シートへの写真添付について)

第1部 演習編 ワークブック

演習01 ここ・そこ・あそこ
演習02 あなたとの距離
演習03 電車に乗って
演習04 今日の授業はどこに座る?
演習05 身体感覚1:教室の広さと高さ
演習06 身体感覚2:大空間の広さと高さ
演習07 いろいろな「いす」
演習08 たかがトイレ、されどトイレ
演習09 私の部屋、私の居場所
演習10 「家族」する空間
演習11 状況を整えるという行動のステップ
演習12 空想 |妄想!秘密基地
演習13 「私」をつくる場所を探して
演習14 居心地の良い場所の収集・考察
演習15 使いこなしの工夫
演習16 身近な生活環境における「場所」を記述し、言語化する
演習17 それ、家でやろう?
演習18 ○○しやすさの生態学
演習19 あるある !? ついついこんなこと
演習20 スケッチマップ(自宅~駅)
演習21 スケッチマップ(大学)
演習22 私は私の道をゆく
演習23 時空間の値段
演習24 まちのなかにあって嫌なもの・気になるもの
演習25 なんでそんなに嫌なのか
演習26 荒れる場所の法則
演習27 「生活感」を感じる場所
演習28 獣道を探せ!
演習29 人の行為の痕跡探し
演習30 待つ・座る… 滞在と滞留の場面を探す
演習31 近くて遠い・遠くて近い  40
演習32 その時、何が起こるかをイメージする
演習33 社会を生きる悲劇とジレンマ
演習34 これってバリア?
演習35 記憶の小学校
演習36 記憶と想起の中学校
演習37 人生に必要なことは、すべて幼稚園の砂場で学んだ
演習38 記憶のまち、記憶の風景
演習39 「映える」空間/思い出に残る空間
演習40 まちが聴こえる
演習41 まちの中の色
演習42 好きな色の組み合わせ・嫌いな色の組み合わせ
演習43 色のイメージを言語化する
演習44 持ち物の色
演習45 カメレオン発見。
演習46 どんなひとのおうち?
演習47 美容院・居酒屋、どこに入る?
演習48 ホントにフォント?
演習49 雑誌のレイアウト
演習50 都市を認知するエレメント
演習51 分解・理解・再構築(SD法の体験)

第2部 解説編 建築・都市の現象や生態を読み解く

第1章 まちの面白さを知る、環境行動の視点で。

[1] 環境行動研究とは
[2] 人間と環境の関係の原点:パーソナル・スペース
[3] 都市空間での人びとの滞在という振る舞い
[4] 人間の行動ともののかたち
[5] 滞在をコントロールするしつらえ
[6] 環境と人間の関係を理論から見る
[7] 建築計画/実践への展開

第2章 環境の中の「私」

2-1  領域の認知と他者との感覚の共有
[1] これ・それ・あれの領域
[2] 立体の空間認識
[3] 領域の認知を変化させる要素

2-2  対人距離と個人の関係
[1] 人間のまわりにある空間
[2] パーソナル・スペースの可視化
[3] 伸び縮みするパーソナル・スペース
[4] 演習結果の分析・考察の例

2-3  着座位置選択に見る社会のなかでの距離と接近
[1] 着座位置選択に見るパーソナル・スペース
[2] プロクセミックス
[3] 演習結果の分析・考察の例

2-4  座る席の選択と距離
[1] 状況に応じた着座位置選択に見るコミュニケーションの取り方
[2] 演習結果の分析・考察の例

2-5  環境の中の「私」── 最も身近な身体感覚から環境との関係を知る
[1] 小・中学生の身体と空間の寸法
[2] 長さと高さの感覚

2-6  大空間での空間認知の「歪み」
[1] D/H(囲まれ感)と開口部による抜け感
[2] 見上げと見下ろしによる距離感

2-7  座りやすい椅子に見る身体感覚
[1] 座りやすい椅子の分布(座面・奥行き)
[2] 姿勢と人間の行動
[3] 想定する滞在で選ばれる椅子
[4] 演習課題の回答例
[5] 演習結果の分析・考察の例

2-8  ”身近な個人スペース”としてのトイレ
[1] 文化と文明、そしてトイレ
[2] 待ち行列と使用率
[3] トイレに見る公共性と多様性、多文化理解

第3章 「私」がつくる、まちのイメージ

3-1  個人の拠点としての領域形成
[1] ものに投影されるテリトリー意識
[2] 生活環境のパーソナライゼーション
[3] 環境に映し出された行動特性
[4] 演習結果の分析・考察の例
[5] 住まいのしつらえと住まう人の関係、あるいはその喪失

3-2  身近な他者との距離としつらえ
[1] 団らんの距離と家具の配置
[2] 間取りと家族との関係
[3] 演習結果の分析・考察の例

3-3  状況を整えるという行動のステップ
[1] 行動セッティング
[2] トランザクショナリズム
[3] 設計するのは空間か?行動か?

3-4  身体と空間
[1] 秘密基地の楽しさ
[2] 人間の本能が望む場所
[3] 人間のニッチとしての秘密基地

3-5  場所がつくる私、私が見出す場所
[1] サードプレイス
[2] 「自分の世界」と「別の世界」の接点
[3] 愛着、その場所が好きということ
[4] 演習結果の分析・考察の例

3-6  居心地の良い場所を認識し、記述し、つくり出す
[1] 人びとがつくり出す居心地の良い場所
[2] 居心地の良い場所における他者
[3] 居心地の良い場所におけるしつらえ

3-7  まちを私的に使いこなす
[1] 「利用者」という言葉で捉えにくいこと
[2] ものを持ち込み、環境を使いこなす
[3] 演習結果の分析・考察の例
[4] 私的な使いこなしがまちに与える影響

第4章 まちに暮らす人の行動観察

4-1  人びとがつくる「場所」を言語化し、認識を深める
[1] 人びとの行為と心理を捉える
[2] 人びとの行為・心理と公・共・私
[3] 人びとの行為のための「場所」
[4] 無為の居心地の良さ

4-2  時代によるマナーの変化や社会によるその差異
[1] 「?できる」と思わせる要素
[2] マナーやルールの変化と多様性
[3] 演習結果の分析・考察の例

4-3  ○○しやすさ:行為を促す場所の質
[1] 環境のアフォーダンス
[2] 眺望?隠れ家理論
[3] 他者の存在
[4] 許容性のある環境

4-4  行為を誘うしつらえ
[1] アフォーダンス
[2] 遊び心を誘う空間
[3] 「ついつい」が誘う危険から人を守るデザイン
[4] 演習結果の分析・考察の例

4-5  スケッチマップ
[1] 頭の中にある地図のようなもの
[2] 認知地図の特性
[3] 演習結果の分析・考察の例
[4] 認知地図の発達と個人差
[5] 演習結果の分析・考察の例

4-6  まちと道、わかりやすさと迷いやすさ
[1] 経路探索と環境行動研究
[2] 探索行動・わかりやすさと迷い
[3] ウェイファインディングデザイン
[4] 演習結果の分析・考察の例

4-7  時空間の値段
[1] 切り売りされる時空間
[2] 手持ち資金と体験可能領域

第5章 歩いて探そう! まちの小さな違和感

5-1  違和感というアンカーを探す
[1] キャプション評価法
[2] 経路歩行実験

5-2  評価の構造を可視化する
[1] 構造化と調査
[2] 評価グリッド法とラダーリング・インタビュー

5-3  不法無法を誘う環境
[1] 犯罪の起こりやすさと環境要因
[2] 体感治安
[3] 割れ窓理論
[4] ゴミのポイ捨てに影響する環境要因
[5] 演習結果の分析・考察の例

5-4  生活感を感じる場所
[1] プライベートの滲み出し
[2] 「表出」と「あふれ出し」
[3] 領域性と段階的な空間構成
[4] 出会い/媒介としての「生活感」

5-5  動線の違和感、そして勝手に最適化現象
[1] 獣道行動(Desired path)
[2] 群集行動
[3] 隅切り
[4] 演習結果の分析・考察の例

5-6  人の行為がつくり出す環境
[1] 「居ない」けど「居る」
[2] 痕跡を認識する要因
[3] 痕跡から得るもの
[4] 演習結果の分析・考察の例
[5] 痕跡のデザイン

5-7  滞留をゆるし、滞在を誘う仕掛け
[1] 滞留・滞在しやすい場所
[2] オープンエンドなデザイン
[3] 演習結果の分析・考察の例
[4] 待つ場面のデザイン

5-8  留まる人の距離と関係
[1] 居合わせる・思い思い
[2] パーソナル・スペースの集まりとソシオペタル/ソシオフーガル
[3] 関係を生み出す「小さな存在」
[4] 演習結果の分析・考察の例

5-9  「その時、何が起こるか」をイメージする──災害リスクの把握とイマジネーション
[1] 身近な災害リスクを知るための地図
[2] ハザードマップの内容を正しく理解するために
[3] 災害イマジネーション
[4] 演習結果の分析・考察の例
[5] お互いに共有して、イメージを深めることの重要性

5-10  まちづくりにおける心理的ジレンマ
[1] まちづくりにおける選択肢のトレードオフ
[2] 社会的ジレンマとまちづくりの合意形成
[3] NIMBY問題

5-11  多様な人びとを包み込む環境
[1] 環境における3つの次元
[2] 「しやすさ」と「しにくさ」
[3] 多様な人びとを包み込む環境を目指して

第6章 空間は記憶によって評価されている

6-1  記憶に残る小学校の風景から、愛着形成の要素を探る
[1] 学校空間のポテンシャルと写真投影法
[2] 愛着形成と人格形成
[3] 記憶に残る要素
[4] 演習結果の分析・考察の例

6-2  疾風怒濤期の学校空間
[1] 居たい場所、居られる場所
[2] ”距離感を選べる” 環境づくり
[3] 時間立体で計画する

6-3  懐かしいおもちゃ、場所、先生、友達
[1] 遊びやすさや関わりやすさを助けていた環境要素
[2] 記憶に残る活動場面の特徴
[3] 遊びの6つの「原風景」
[4] 演習結果の分析・考察の例

6-4  子供の視点でのまちの評価と世界の見え方
[1] 大人と子供による環境の捉え方の違い
[2] 遊び空間のネットワークとしてのまち
[3] 遊びの原風景とまちの魅力

6-5  記録したい、記憶したい、共有したい風景
[1] 視点場
[2] SNS映えを意識した写真撮影
[3] 背景になる風景・建物・もの
[4] 演習結果の分析・考察の例

第7章 まちの音とまちに散らばる色の効果

7-1  「音」を通してまちを知る
[1] サウンドスケープの原点
[2] まちの音の認識と取り組み
[3] 視覚障害者の認識とバリアフリー

7-2  色の意味、文化圏や時代による違いを知る
[1] 色名の表し方
[2] 色が持つ意味
[3] 色から見る景観と町の印象──弁柄色の町、岡山県高梁市成羽町吹屋地区
[4] 気候風土と結びついた色土
[5] 演習結果の分析・考察の例

7-3  色の組み合わせによる印象と意味
[1] カラーユニバーサルデザイン(CUD)
[2] 色の組み合わせと風土・文化
[3] 空間の配色
[4] 演習結果の分析・考察の例

7-4  色のイメージと色彩心理
[1] 言語化された色のイメージ
[2] 色の効果──大きい小さい重い軽い硬い柔らかいそして

7-5  拡張自己としての色、自己演出
[1] 色による自己や個性の演出
[2] 演習結果の分析・考察の例
[3] 色による共通認識の醸成やコミュニケーション

第8章 人がまちに埋め込む空間イメージ

8-1  景観になじむデザイン、景観になじませるフェイク
[1] 景観と色
[2] 色立体
[3] 景観と環境色彩計画

8-2  建物の外観によって想像されるメンタリティ
[1] 理想の家
[2] 建物を着る:表出される内面としての外観
[3] 演習結果の分析・考察の例

8-3  商業施設の外観から「It’s for me」を感じる
[1] 外観のイメージデザイン
[2] イメージをつくる要素
[3] イメージとそのギャップ
[4] 演習結果の分析・考察の例

8-4  「文字情報」のデザイン
[1] 文字のデザインによる視認性やブランディング
[2] グラフィック・フォントによるイメージデザイン
[3] 演習結果の分析・考察の例
[4] いろいろなフォント

8-5  世界を見せて、魅せられる
[1] ユーザビリティデザインと情報の視覚化
[2] レイアウトのパーツとして用いられる要素
[3] レイアウトと印象

8-6  5 つのエレメント──K・リンチの「都市のイメージ」理論と、現代都市の特徴
[1] 都市を構成する5つのエレメント
[2] 演習結果の分析・考察の例
[3] 5つのエレメントから見た現代都市の特徴

8-7  SD 法を用いた環境のイメージ評価
[1] 形容詞を用いて分解、言語化・数値化する
[2] 環境評価手法による建築空間/都市環境のイメージ評価
[3] 木質空間に見る素材と居心地の関係
[4] 演習結果の分析・考察の例

おわりに―「観る」ちからを計画・設計に活かす
[1] 「知る」こと
[2] ネットワークの舞台をコンダクトする
[3] 「観る」ちから

Column

1 空間≒ヴォイドは「見えない」、それは「知る」ことによって認知できるもの
2 ピクトグラムに見るジェンダー
3 ケアする者は、ケアされる。居場所をつくる行為は、それ自体が居場所である
4 Settings が関係をつくる
5 生き物はみな、同じ世界のなかで違う環境を生きている──心理的環境と環世界
6 環世界論、イリュージョン、物語── 私たちが「みて」いるもの
7 防犯環境設計とヒューマンエラー・マネジメント
8 トランザクショナリズムとSTS、ANT を「つなぐ」(1)
9 トランザクショナリズムとSTS、ANT を「つなぐ」(2)
10 私はどこから来たのか 私とは何者か 私はどこまでであるか(1)
11 私はどこから来たのか 私とは何者か 私はどこまでであるか(2)
12 私はどこから来たのか 私とは何者か 私はどこまでであるか(3)

著者略歴

編著者

山田あすか(やまだ・あすか)

東京電機大学未来科学部建築学科教授。博士(工学)、一級建築士。
東京都立大学大学院工学研究科建築学専攻博士課程修了。日本学術振興会特別研究員(DC1、PD)、立命館大学理工学部建築都市デザイン学科講師等を経て現職。主な著書に、『ケアする建築:「共在の場」の思想と実践』(鹿島出版会、2024)など。

小林健治(こばやし・けんじ)

摂南大学理工学部建築学科准教授。博士(工学)、一級建築士。
大阪大学大学院工学研究科建築工学専攻博士後期課程修了。遠藤剛生建築設計事務所、摂南大学理工学部建築学科講師を経て現職。主な著書に、『まちの居場所 ささえる/まもる/そだてる/つなぐ』(共著、鹿島出版会、2019)など。

村川真紀(むらかわ・まき)

東京電機大学未来科学部建築学科研究員。博士(工学)、一級建築士。
東京電機大学大学院先端科学技術研究科博士課程単位取得満期退学、後に学位取得。主な論文に『特徴的な平面を持つ急性期病院における看護負担感についての事例報告』(日本建築学会技術報告集、2021)など。

著者(五十音順)

諫川輝之(いさがわ・てるゆき)

東京都市大学都市生活学部都市生活学科准教授。博士(工学)。
東京工業大学大学院総合理工学研究科博士後期課程修了。東京工業大学大学院総合理工学研究科産学官連携研究員、東京大学・日本学術振興会特別研究員(PD)を経て現職。主な著書に、『都市・建築デザインのための人間環境学』(朝倉書店、2022)など。

熊澤貴之(くまざわ・たかゆき)

茨城大学大学院理工学研究科教授、博士(工学)、一級建築士。東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程修了、岡山県立大学デザイン学部助手、講師、准教授を経て現職。主な論文に『ホールと図書館の複合施設における利用者の施設イメージが相互利用に与える影響』(日本建築学会計画系論文集、2023) など。

古賀政好(こが・まさよし)

竹中工務店医療福祉・教育本部専任課長/東京電機大学未来科 学部建築学科非常勤講師。博士(工学)、一級建築士。
東京電機大学大学院先端科学技術研究科博士課程修了、国立保健医療科学院客員研究員を経て現職。主な著書に、『こどもの環境づくり事典』(青弓社、2014)など。

小松尚(こまつ・ひさし)

名古屋大学大学院環境学研究科教授。博士(工学)、一級建築士。
名古屋大学大学院工学研究科博士課程前期課程修了。主な著書に、『「地区の家」と「屋根のある広場」』(鹿島出版会、2018)など。計画・運営指導に石榑小学校(いなべ市)、川崎小学校(亀山市)、鎌田中学校+第四公民館(松阪市)など。

酒谷粋将(さかたに・すいしょう)

関東学院大学建築・環境学部准教授。博士(工学)、一級建築士。
京都大学大学院工学研究科建築学専攻博士後期課程修了。日本学術振興会特別研究員PDを経て現職。主な論文に、『設計対象の多義性を構成する創造的対話のプロセス』(日本建築学会計画系論文集、2020)など。

橘弘志(たちばな・ひろし)

実践女子大学生活科学部生活環境学科教授。博士(工学)、一級建築士。
東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程中途退学。早稲田大学人間科学部助手、千葉大学工学部デザイン工学科助手を経て現職。主な著書に『まちの居場所 ささえる/まもる/そだてる/つなぐ』(鹿島出版会、2019)など。

戸田都生男(とだ・つきお)

ものつくり大学技能工芸学部建設学科教授。博士(学術)、一級建築士。
大阪芸術大学芸術学部建築学科卒業。京都府立大学大学院生命環境科学研究科環境科学専攻博士後期課程 単位取得退学。
Ms建築設計事務所、麻生建築&デザイン専門学校講師等を経て、現職。主な受賞に2019年日本建築学会教育賞(教育貢献)(川上村木匠塾として共同)など。

林田大作(はやしだ・だいさく)

畿央大学健康科学部人間環境デザイン学科教授。博士(工学)。
東北大学大学院博士前期課程修了、大阪大学大学院博士後期課程修了。大林組設計部、和歌山大学講師・准教授、大阪工業大学准教授を経て、現職。 主な著書に『名作住宅で学ぶ建築製図』(学芸出版社、2008)、『まちの居場所 ささえる/まもる/そだてる/つなぐ』(鹿島出版会、2019)など。

藤田大輔(ふじた・だいすけ)

福井工業大学環境学部デザイン学科教授。博士(工学)。
東海大学大学院工学研究科建築学専攻博士前期課程修了。岐阜工業高等専門学校准教授を経て現職。主な著書に『保育園・幼稚園・こども園の設計手法』(学芸出版社 2019)、『ケア空間の設計手法─地域にひらく子ども・高齢者・障がい者福祉施設─』(学芸出版社 2023)など。

前田薫子(まえだ・まさこ)

佐藤総合計画/東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻協力研究員。博士(工学)、一級建築士。
東京大学大学院工学系研究科建築学専攻博士課程修了。主な著書に『オーラルヒストリーで読む戦後学校建築』(学事出版、2017)、『大槌コミュニティ・プレイスにおけるコミュニティ再生に向けた取組み』(建築雑誌、2017)など。ほか歴史的建造物保存再生や学校建築などに携わる。

米ケ田里奈(めかた・りな)

東京電機大学先端科学技術研究科建築・建設環境工学専攻博士課程/東京電機大学総合研究所特任助手。修士(工学)。
主な発表に『居場所とその時間的変遷の全体像「セルフプレイスネットワーク」の概念構築─A地区の子育て支援を起点とした地域拠点の運営者を対象として』(日本建築学会大会(近畿)学術講演会、2023)など。

我々は日々、建築や都市の空間を身近に体験している。我々はそれらの空間のなかにあって、自らの経験や知識、身体性に基づいてそこに「環境environ-ment」を見出している。同時に、我々自身も環境の一部であり、環境につくられながら環境をつくっている。環境と共に在ることはあたりまえすぎるがゆえに、それぞれの空間にどのような意味や誘導が埋め込まれて環境となっているか、また人びとが環境との間にどのような関係を構築しているかはしばしば意識にのぼることがない。

本書が扱う「環境行動」のトピックスは、必ずしも建築や都市の設計に直結するものではない。しかし、環境と人間の関係という基本的なことがらへの視点を持つことは、建築・都市・社会のデザインの本質的なアプローチである。現在の施設や制度は、永続的なものではなく、社会情勢に伴って変化していく。例えば「学校」をつくろうとなったとき、時代に合った豊かな空間を創造するためには、「制度としての学校施設」だけを念頭に置くのではなく、「そこが子供たちの成長発達や学びの場となるには」と考えるだろう。環境行動という学問分野は、制度としての施設や空間から一歩引いた視点を与える。

本書では、「環境と人間の関係」をテーマにした51の演習を提示し、その解説や関連するトピックスの整理を行う。これらの体験により、「都市・建築の環境が人や生活に与える影響」や「環境と人間との関係」を学ぶ。また、こうした知識や体験が実際にどのような建築や都市空間のデザインに活かされているか、今後のデザインに活かしうるかを考える。

本書は大きく分けて2部で構成され、第1部には各テーマに沿った51の演習が納められている。第2部では読み物としてトピックスを追いつつ、演習を行うのに適したタイミングで各演習が示されている。

第2部第1章では、序説として環境行動という学問分野の概要を示し、第2章以降で第1部の演習の解説を行っている。まず第2章で、環境のなかにある自分、環境と自分の関係を意識する経験を、第3章では環境に「私」がどのように投影され、また環境を「私」のなかにどう取り込んでいるかを体験する演習を行う。第4章では、人びとが経験や身体を通して環境を評価していることを改めて認識する。第5章では、まちあるきを想定し、まちのなかで環境と人間の関係を探す演習を設ける。第6章では、5章までの「現在」の経験や評価から少し離れ、「記憶」の中の環境を追体験する。それは、時間や「その後」の経験によって体験していた当時の環境への評価や意識がどのように変節していくかという、時間による環境の立体視の経験でもある。第7章では再び「現在」に戻り、人間の環境認知の多くを占める視覚情報、そのなかでもしばしば印象に対して支配的である「色」に注目する。第8章ではそれらを踏まえて、人間が環境を認知し意味づけていく行為であり意味づけられた環境である「イメージ」を意識する演習を行う。

本書の演習には、設計や計画プロジェクトの前段で、あるいはそれらの供用開始後に検証や効果測定として行われる都市や建築での使われ方実態調査や、環境評価に有効と考えられる各種の調査法の紹介や使用例を組み込んでいる。ヒューマンウォッチングやタウンウォッチングの技術と体験プログラムの提案として、設計等でのアイディアスケッチや発想、また市民参加ワークショップでのプログラム等にも役立てていただければ幸いである。

本書のコンセプトとしての特徴は「体験すること」を通じて「教えられるようになること」を重視したところにある。体験を楽しむ。知ること、知識という解像度が世界の見方を深く広くすることを楽しむ。つい、人に教えたくなる。体験や知識を共有したくなる。同じ世界を見られないことを知り、互いの視点での世界の見え方の違いに敬意を払い、さりとて同じ世界を見えるようになりたいものだと模索する。私はあなたを知りたい、あなたが見ている世界を知りたい、私が見ている世界を知って欲しい、と。そうした活用を通じて、環境行動という学問分野や視点の裾野が広がっていくことを、それによって環境と人間の双方向の関係構築による豊かな社会への寄与を著者一同、心から願っている。

山田あすか

開催が決まり次第、お知らせします。

メディア掲載情報

公開され次第、お伝えします。

その他、各所でご紹介いただいています

・京都府立大学附属図書館「新着図書News Letter」Vol.25(2024年6月)
ほか