金箱 温春 著

内容紹介

多数の写真・詳細図・スケッチで知る41作品

住宅から公共建築まで、多くの著名建築家と協働する構造家の設計手法に初めて迫る。代表作41作品を建築的課題とそれに応える計画プロセスに沿い、多数の写真・詳細図・スケッチで詳解。必ずしも特殊な架構技術に頼らず、一般的な技術でバランス良く解かれた接合部のデザインが構造計画全体、ひいては建築の質をも決めている

体 裁 B5変・240頁・定価 本体3800円+税
ISBN 978-4-7615-3272-7
発行日 2021-04-15
装 丁 美馬智


紙面見本目次著者紹介まえがきあとがき

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1 鉄骨造とそのディテール

[形状の異なる部材の組合せ]
1_1  浮遊する大屋根がつくる工場建築の風景 ── リーテム東京工場
[小さな部材の使用]
1_2  週末住宅の非日常的な空間と造形 ── 桜山の住宅
1_3  周囲の景勝に溶け込む美術館の回廊 ── 福田美術館
[軽量形鋼を使った屋根]
1_4  板状の梁が空間を緩やかに仕切る ── 伊那東小学校
1_5  機能と一体化した駅前キャノピー ── 敦賀駅駅前広場キャノピー
[柱、梁の複雑な組合せ]
1_6  入母屋の内部空間を最大限に確保する ── 明治神宮ミュージアム
1_7  多面体の屋根に覆われた木立の中のような閲覧室 ── 那須塩原市図書館 みるる
[大空間の屋根]
1_8  明るく軽快な台形台の体育館 ── 高知県立須崎総合高等学校体育館
1_9  流動感のある屋根架構 ── キラメッセぬまづ
[不定形なトラス屋根]
1_10  ランドスケープとしての屋根 ── 国営昭和記念公園花みどり文化センター
[複雑な空間の組合せ]
1_11 掘り込まれたトレンチと上に被さる構築物の隙間に生まれる展示空間 ── 青森県立美術館
1_12 多様な活動を内包する湾曲したガラス張り壁面の空間 ── 釧路市こども遊学館
1_13 箱状の自動車展示空間を浮かせる ── ISUZU PLAZA

2 RC造とそのディテール

[壁でつくる構造]
2_1  大きな吹抜とスキップフロアを有するRC造の住宅 ── 内の家
2_2  狭小地に建つRC造住宅の免震構造 ── LAPIS
[フレーム構造]
2_3  水害対策としてのピロティを持つ多目的ホール ── 三次市民ホール きりり
[プレストレス]
2_4  自立壁と大庇でつくる打ち放しのファサード ── 東京大学情報学環・福武ホール
2_5  L字形平面を組み合わせた講義室群 ── 工学院大学125周年記念八王子総合教育棟
2_6  バーデゾーン(温浴空間)を宿泊室で覆う保養所 ── 熱海リフレッシュセンター
[曲面屋根]
2_7  芝生で覆われた丘、緑に埋もれた博物館 ── 若狭三方縄文博物館
2_8  ヴォールト屋根のずれがつくり出す良質な環境 ── 宇土市立網津小学校
2_9  4つのウェーブでつくるランドスケープと建築 ── サイエンスヒルズこまつ

3 木造とそのディテール

[小部材を使った在来木造]
3_1  和小屋の雰囲気を持つ集会施設 ── 藪原宿にぎわい広場 笑ん館
3_2  閉ざされた礼拝空間に光を呼び込む ── 駿府教会
[集成材を使った建築]
3_3  地域の中核施設としての複合施設を木造でシンプルにつくる── 塩尻市北部交流センター えんてらす
3_4  象徴的な円形ホールのある地域交流センター ──上士幌生涯学習センター わっか
[複合梁]
3_5  内外の空間をひと繋がりとする屋根架構 ── 八代の保育園
[トラス]
3_6  豪雪地域の木造大屋根 ── モヤヒルズ
[フィーレンディール]
3_7  複合施設の体育室を木造屋根で覆う ── 鴻巣市かわさと館
[張弦梁]
3_8  木造の被膜をイメージした体育館 ── 新潟市立葛塚中学校体育館

4 ハイブリッド構造とそのディテール

[S+RC]
4_1  室内プールの大空間を浮遊して横切る通路 ── 遊水館
[W+RC]
4_2  緩やかに湾曲する屋根を持つ、開放的な研修施設 ── 南飛騨健康増進センター
4_3  地場産材で覆われた開放的なコミュニティ施設 ── 豊富定住支援センター ふらっときた
[PCa+S]
4_4  多様な形態を有するスタジアムを短工期で実現 ── 広島市民球場
[SRC+S]
4_5  ピロティを有する不整形な形態の建築 ── みなと交流センター はーばりー
[W+S]
4_6  和をイメージした屋根架構の武道館 ── 長野県立武道館
[W+S+RC]
4_7  木造の切妻屋根をRC壁で非対称に支える ── 福井県年縞博物館

5 耐震補強とそのディテール

[変える改修]
5_1  現代建築を新たなランドマークに蘇らせる ── 浜松サーラ
[減築]
5_2  環境改善と耐震補強を一体で行う ── 黒松内中学校
[内外ともイメージ維持]
5_3  大きな内部空間と開口部を持つ歴史的木造建築 ── 自由学園女子部講堂
[外部を保存]
5_4  帝冠様式の庁舎を外観を保存して図書館に ── 北九州市立戸畑図書館

金箱 温春

金箱構造設計事務所代表取締役。東京工業大学特定教授。1953年長野県生まれ、1977年東京工業大学大学院総合理工学研究科修士課程修了、1977-1992年横山建築構造設計事務所勤務を経て、1992年金箱構造設計事務所設立。2008年博士(工学)取得。
2011-2015年(一社)日本建築構造技術者協会会長。多くの大学の非常勤講師を歴任。
受賞に1998年JSCA賞、2005年松井源吾賞、2011年日本建築家協会賞、2016年日本建築学会賞(業績)、2020年土木学会田中賞他。
著書に『図解 よく分かる建築・土木──仕組みと基礎理論』(共著、1997、西東社)、『Space Structure木村俊彦の設計理念』
(共著、2000、鹿島出版会)、『建築家の講義 サンチャゴ・カラトラバ』(翻訳、2008、丸善)、『構造計画の原理と実践』(単著、2010、建築技術)、『力学・素材・構造デザイン』(共著、2012、建築技術)、『建築を創る 今、つたえておきたいこと』(共著、2013、井上書院)『構造設計を仕事にする』(共著、2019、学芸出版社)他。
幅広い世代の多くの建築家と、住宅から公共建築まで新築に限らず改修プロジェクトも含めて協働している。

本書は筆者の40年以上に及ぶ構造設計活動の一端を紹介している。構造設計では、建築デザインと構造デザインの関わりを探ることから始まり、イメージを具現化し力学的な整合性を整えて架構や部材やディテールを決めていく。本書ではディテールに着目し、それぞれのプロジェクトにおいて架構とディテールをどのように考えたかを紹介し、構造ディテールのあり方を俯瞰して普遍的な原理を示すことを試みた。同時に構造デザインの魅力を伝えようという想いも込めた。

構造デザインは建築デザインを意識しつつ、“架構”と“部材”を考えることで成り立っている。“架構”を考えることは力の流れを考慮して部材の配置や支持方法を決めることであるが、同時に部材形状やディテールも考える必要がある。架構を構成する部材は線材や面材であり、組み方、支持方法と部材の断面情報が決まれば、モデル化を行って構造計算をすることができる。この際には接合部は部材が集合した点や線としてモデル化され、そこでやり取りされる力が求められる。
しかし実際の接合部にはボリュームがあり、部材の力を相互に伝える現象は複雑である。接合部の形状あるいは製作の制約によっては伝えられる力に限界が生じることもあり、逆に部材形状によって接合部で伝えやすい力というものがある。
つまり部材形状は接合部での力のやり取りを意識して決めることも必要であるし、架構の構成にも接合部の影響は及ぶといっても過言ではない。
接合部の設計は架構や部材が決まってから詳細設計の段階で行うように思われているかもしれないが、優れた設計者は架構、部材、ディテールが構造デザインのアイデアの段階から大まかなイメージとして同時に意識している。

接合部の設計は材料の特性を理解することから始まり、材料によって守らなければいけないディテールの原理原則がある。よく使われている接合部は原理を守って標準化されているのでこれを用いることは問題が少ない。しかし、構造デザインの幅を広げるには、ディテールを工夫することにより特徴のある架構をつくることが必要となる。その場合には、鋳物、ケーブル、プレキャストコンクリートといった特殊な技術を使うこともできるが、必ずしも特殊な技術を使わずとも個性的なデザインは可能である。原理を理解した上で一般的、普遍的な技術を応用することで架構やディテールの工夫はできる。

本書は構造に関心のある建築関係者、特に設計活動を始めた若い人たちを意識してまとめている。構造設計が解析・分析的な側面とデザイン的な側面から成り立っているとすると、前者は普遍的な手法があるので手引きとなる情報も多いが、後者は個別性によることが多いので普遍的な情報は少ない。しかしながら、構造デザインは個別的とはいえ普遍性を兼ね備えたものであるので、個々のプロジェクトでの工夫を俯瞰して見ると共通した原理が貫かれている。構造ディテールも同様である。個々のプロジェクトにおいて工夫されたディテールを俯瞰的に分析し普遍化して理解することにより、新たなプロジェクトにおいての個別性を引き出すことに役立つと考える。

本書では構造種別ごとに分類して事例を紹介しているが、それぞれの建築の特徴的な構造種別とディテールで分類したものであって、厳密な分類ではないことはご了承いただきたい。
各章の始めにそれぞれの構造種別の基本となる考え方を記載した。接合部の説明が中心となってはいるが、それぞれの建築の構造デザインの全体像が分かるように、また建築家とのやり取りが構造デザインの展開にどのように関連しているかも記述するように心がけた。建築設計や構造設計においてはデジタルツールの活用が盛んになっていくことと思われる。デジタルツールを利用した検討は有用ではあるがブラックボックス的な側面もある。そう考えると自らの頭と手を動かして考えることが重要であり、その想いも盛り込んだつもりなので感じ取ってもらえれば幸いである。

2021年2月
金箱温春

1年ほど前に、学芸出版社の井口夏実さんから提案があり構造設計を紹介する本をつくることになりました。設計事例の紹介を通じて構造デザインの普遍性を引き出すという趣旨で2010年に『構造計画の原理と実践』という本を発行しましたが、今回は同じような手法で構造ディテールに焦点をあててまとめることにしました。
取り上げる事例については大いに悩んだところです。今までに構造設計を担当して雑誌に掲載された作品は200近くになります。紹介したいプロジェクトはたくさんありましたが、選択にあたっては、小さな住宅から大きな規模の美術館・図書館・集会施設までを含むように、また同じ構造形式の重複は避けて様々な構造形式の建築が含まれるように、さらには多くの建築家とのプロジェクトが含まれることを配慮し、最終的に41のプロジェクトを選びました。

建築家とのやり取りから始まり、初期に考えたこと、途中で悩んだことをなるべく盛り込みました。建築家の想いについて述べていることは筆者が感じたことであり、建築家の本当の想いとは少々異なることがあるかもしれません。しかし、私自身がどのように感じてどのように活動したかを紹介することに意味があると考えました。理解不足や誤解があるかもしれませんがご容赦いただきたいと思います。スケッチや詳細図をなるべく掲載していますが、破棄してしまったスケッチも多くあり当時を思い出して作成したものもあります。

紹介したプロジェクトの構造設計を行うことになったのは、意匠設計事務所から依頼されてのことです。機会を与えていただいたことに感謝し、一緒に作品づくりができたことに改めて喜びを感じております。今回の本をまとめるにあたっても、写真や意匠図などの提供に絶大なご協力をいただきました。厚く御礼申し上げます。またプロジェクトの関連でお世話になった発注者、設計関係者、施工関係者の方々にも御礼申し上げます。

紹介した事例の構造設計は筆者1人の力ではなく、金箱構造設計事務所のスタッフの力の結集によるものです。スタッフとの議論によっても構造デザインが深められたこともあります。巻末の作品データリストにそれぞれのプロジェクトの担当者の氏名を記載しました。ありがとうございました。また、今回の本の編集にあたり、事務所スタッフの蔭山快君、稲永匠悟君、小島慎平君には過去の詳細図を再構成する作業をしてもらいました。感謝です。

編集担当の井口夏実さんにはとりわけお世話になりました。当初、いくつかの章の原稿をサンプルとして読んでいただいたところ内容は興味深いが文章が硬いとの指摘を受け、以後の原稿執筆に大いに参考となりました。何度にもわたり原稿や図版を読者目線でもチェックしていただき、そのことが本のでき栄えに反映されたと思います。

金箱温春

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