耐震シミュレーションwallstatガイド
内容紹介
累計4万ダウンロード、NHK・日本経済新聞などメディア紹介多数の、大注目ソフト「wallstat」。
本書では、wallstatの「なぜ?」「どうやって?」がとことんわかる!
地震による住宅倒壊のリスクを可視化できる、耐震シミュレーションソフトwallstat。解析結果が動画で示され、他のCADソフトと連携できる等、取り組みやすい上に、解析自体は高度な技術に裏付けされており、工務店や設計者などの実務者に広く活用されている。本書は、wallstatの基本操作から応用まで全て解説した初の公式ガイド。
体 裁 B5変・204頁・オールカラー・定価 本体3500円+税
ISBN 978-4-7615-3257-4
発行日 2020/04/30
装 丁 フルハウス
本書特典データ付き!
書籍の各章の内容を著者が紹介しています
はじめに
序文
1章 wallstatをどう使うか
○1節 wallstatの活用方法
1 wallstatとは? 2 wallstatでできること 3 wallstatではできないこと 4 wallstatのユーザーと活用の仕方 5 wallstatの解析例
○2節 解析のための構造基礎
1 木造住宅の耐震基準 2 木造住宅の耐震性 3 wallstatによる構造計画
○3節 wallstatのナゾ
2章 基本編 モデル作成・解析の基礎手順
○1節 準備
1 入力準備 2 studio画面の名称と機能 3 ファイル操作 4 バックアップとUndo 5 パラメータ設定 6 物件設定 7 表示設定
○2節 入力
1 配置・削除・変更[柱] 2 配置・削除・変更[土台][横架材] 3 配置・削除・変更[筋かい] 4 配置・削除・変更[壁][壁2][壁3] 5 配置・削除・変更[床][床2] 6 配置・削除・変更[制振壁] 7 マウスの便利な使い方 8 寸法線・基準線 9 スナップ 10 立面での表示と部材配置 11 解析モデルの移動
○3節 計算
1 階重量設定 2 壁量計算 3 モデル確認 4 解析モデルの計算 5 結果表示 6 [Movie View]画面の機能
3章 実践編 実際の住宅プランに基づいたモデル作成
○1節 準備
1 入力準備 2 練習用図面 3 建物情報の設定
○2節 入力
1 1Fに部材配置 2 2Fに部材配置 3 RFに部材配置 4 筋かい・壁の配置 5 立面で部材配置
○3節 計算
1 階重量設定 2 地震動で計算
○4節 プレゼン
1 プレゼン環境 2 動画編集 3 参考事例
○5節 エラーと対処方法
4章 応用編 より実務的な機能の活用
○1節 ポリゴンによる屋根作成
1 基本の考え方 2 roofファイルの作成(屋根データ) 3 切妻屋根の作成 4 寄棟屋根の作成
○2節 CEDXMファイルの活用
1 CEDXMファイルとは 2 インポートの手順 3 インポート後の修正 4 エクスポートの手順 5 wallstat認定CADから作成
○3節 任意の地震動の設定
1 設定の手順 2 地震波関係ファイルの構成 3 地震動関係ファイルの作成 4 加速度地震動データファイルでの計算
○4節 その他の設定
1 複合壁の設定 2 重量・壁倍率・基準耐力・許容耐力の設定 3 計算条件の設定 4詳細設定
○5節 動画・静止画の設定
1 guiを使った動画作成 2 動画の高画質化 3 静止画の高画質化
5章 補足編 より活用したい方向けの高度な機能
○1節 studio→originの変換
1 originの解析モデルと計算 2 要素ファイルの作成 3 origin解析モデルへの変換・確認 4 origin解析モデルの計算
○2節 origin計算設定と分析
1 パラメータについて 2 パラメータの追加と設定 3 パラメータの作成 4 その他のorigin計算用設定ファイル 5 計算データの分析 6 解析モデルの修正 7 解析モデルの作成
○3節 プッシュオーバー解析
1 プッシュオーバー解析とは 2 originのプッシュオーバー解析 3 studioのプッシュオーバー解析 4 プッシュオーバー解析結果の検証
○4節 その他機能
1 コマンドラインからのオプション実行 2 モーメントのモニタリング 3 柱脚条件の変更 4 クラウド版wallstat解析システム
○本書特典データのダウンロード
本書は、時刻歴応答解析ソフトwallstatを使って、耐震性の高い住宅を計画する手法を解説したガイドブックです。
筆者( ㈱ 益田建設イデアホーム 技術部門責任者)は、 ㈱ 益田建設で約500棟の木造住宅をwallstatで解析し、木造住宅の設計・耐震評価にwallstatを取り入れることで、消費者にも設計者にも耐震住宅がわかりやすく計画できるように研究・検討をしてきました。wallstatの開発者である中川貴文氏(京都大学生存圏研究所 准教授)とともに進めてきたこの実践は、耐震性能の「見える化」を目指すものです。
また、一般社団法人工務店フォーラムや一般社団法人耐震性能見える化協会の公認講師として、wallstatの使い方を多くの設計者や住宅関係の事業者に指導してきました。本書は、それらの経験に基づき、なぜwallstatを推奨しているのか、また独学では間違いやすい点・気が付きにくい機能・エラーになりにくい入力方法・知っておいたら便利なことなどを解説しています。
フリーソフトということもあり、wallstatに取り組まれる方は、最近急激に増えています。その中では、わかりやすい動画表現が注目されていますが、wallstat自体は、「時刻歴応答解析」という超高層ビルで行われている構造計算の手法を木造住宅に取り入れている、きわめて先進的な構造計算ソフトです。つまり、木造住宅の設計に超高層ビルの手法と使うという、今までの住宅構造とは次元の違う解析を行っています。そのため本書では、wallstatを使うにあたっての、基本的な構造の知識もわかりやすく解説しています。また、それほどまでの解析を必要とする理由については、1章で解説しています。
また、wallstatでは一般的に、簡易に入力できるインターフェースの「studio」を使って解析モデルが作成されますが、wallstat本来の機能である「origin」を使うと一般的な住宅以外のより多様な木造建築を解析できます。そのため本書では、先進的な木質構造を研究・実践されている方向けに、より自由度のある高度な解析をするためのヒントになるような解析方法についても説明しています。
なお現在、一般社団法人工務店フォーラムでは、wallstatによる住宅の高耐震化の取り組みとして、wallstatの使い方のスクーリングや、国土交通省の補助事業でクラウド版wallstat自動解析システムの構築、wallstatを活用したより耐震性の高い構造躯体の提供などを進めています。本書とあわせて、一般社団法人工務店フォーラムの工務店フォーラムNETによるweb動画の講座も参考にされると、より理解が深まると思います。
最後に、本書を読まれたすべての方が、wallstatを有効に活用され、地震に強い家づくりができることを願ってやみません。
2020年4月
一般社団法人工務店フォーラム 鈴木強
wallstatは私が大学4年生の時に作成した数値解析プログラムが元になっています。建物が倒壊するまでを計算できるのがこのプログラムのオリジナリティですが、基本理論のアイデアは大学でご指導いただいた太田正光先生(東京大学名誉教授)からいただいたものです。その後、国土技術政策総合研究所や建築研究所で私が勤務する中で振動台実験との比較検証を行って実用性を高め、2010年12月にインターネットで無償公開をはじめました。当初は解析モデルの作成の際に、全部材の端部座標を手入力する必要があり、ユーザーの負担になっていました。しかし2015年にGUIインターフェース(wallstat studio)が完成し、住宅のモデル化が容易になり、住宅会社や設計事務所等の実務設計のユーザーが増えはじめ、現在は4万件を超えるダウンロード数を記録しています。プログラムのコーディングは私一人が日曜大工的に行っていることもあり、商用のCADに比べると開発速度は遅く、使い勝手もお世辞にも良いとは言えないですが、慣れたユーザーであれば住宅1棟を1時間程度でモデリングできるくらいにはなったと思います。
本書はwallstatのヘビーユーザーである鈴木強氏が、この使いにくい(笑)wallstatを使いこなすためのご経験を元に執筆された実務者目線の非常にわかりやすいマニュアルです。建築の心得が少しでもあれば誰でも使い方をマスターできる内容になっていると思います。ぜひ本書を手に実務にwallstatを取り入れてみてください。そして高度な設計法とされている時刻歴応答解析を身近に感じてください。住宅を建てる前に揺らしてみる・壊してみることがあたり前になると、新しい世界が広がると思います。
木造住宅の設計に携わる方々の中で耐震性能に対する興味が高まり、安全・安心な木造住宅が増えることを祈っています。
2020年4月
wallstat開発者/京都大学生存圏研究所 中川貴文
wallstatの紹介記事をまとめています。
木造住宅倒壊解析ソフト「wallstat」で、耐震等級の効果や制震性能を“見える化”
wallstat開発者の中川貴文氏(京都大学)による講演「耐震性能は“差別化”となるのか? 耐震基準+アルファの見える化」(2019.09)が、レポートされています。
wallstatでは、耐震補強をした場合、制振装置(ダンパー)の数・種類を変えた場合、検証する耐震基準を変えた場合など、条件をさまざま調整しながら設計モデルを検証できます。大規模な施設で実大振動実験をしなければ住宅本来の耐震性がはっきりとわからなかったこれまでとは変わり、wallstatを活用すればいつでも手元で耐震性をチェックでき、施主に対しても、それぞれの設計パターンの差異をわかりやすく伝えられます。
☛記事はこちら(BUILT、2019.10.08)
耐震シュミレーションソフト『ウォールスタット』活用術 制震装置のより効果的な活用を
wallstat開発者の中川氏が、wallstatの開発目的、シミュレーションの難易度、についてなどのインタビューに答えています。
耐震性能見える化協会を中心としたwallstatのサポート体制は、このインタビュー当時よりも日々整えられており、ますますユーザーフレンドリーなソフトとしてご活用いただけそうです。
☛記事はこちら(ハウジングトリビューンオンライン、2019.8.8)
▽その他
「制振壁が構造躯体を守る」効果を建て主に伝えよう(日経クロステック、2016.10.25)
京大、極大地震を想定した木造住宅の耐震シミュレーションソフト最新版を公開(日本経済新聞、2018.7.11)
京大、木造住宅の耐震シミュレーションソフト「wallstat」最新版を無償公開(マイナビニュース、2018.07.17)
関連リンク
木造住宅倒壊解析ソフトウェアwallstat – 京都大学生存圏研究所
一般社団法人耐震性能見える化協会
一般社団法人工務店フォーラム
こちらをご確認ください。(2020年10月12日更新)
特典データのダウンロード方法については、本書p.203をご確認ください。
▽特典データ内容
- 地震動ファイル
JMA川口
熊本益城 - 限界耐力計算シート
2階建て限界耐力計算160909
3階建て限界耐力計算170414
平屋限界耐力計算171214 - アプリケーションほか
integral.xlsm
詳細重量計算表
波形変換.exe - 解析モデル作成の解説動画(2,3章について)