構造計算書で学ぶ木構造
内容紹介
簡単な実例で木造の基礎から実務までを学ぶ
木造の継手・仕口は建築士が金物を設計しなければならなくなった。構造計算を省き告示による方法もあるが金物が多大となりがちである。そこで金物を経済設計するために構造計算を簡単に行なう方法を人気抜群の「実務からシリーズ」の著者が分かりやすく解説する。2階建の構造計算書を作成しながら理解する構造計算の入門書。
体 裁 B5変・176頁・定価 本体3200円+税
ISBN 978-4-7615-3144-7
発行日 2006-10-15
装 丁 倉本 修
第1部 木構造の基礎知識
1・1 概説
1・2 木材
1・3 金物
1・4 平12建告1460による金物設計
1・5 N値計算による金物設計
1・6 構造計算による金物設計(参考図)
第2部 構造計算書に沿って学ぶ木構造
●課題
000 表紙
100 一般事項
110 建築物の概要
120 設計方針
121 準拠法令・規準等
122 電算機・プログラム
123 応力解析
130 使用材料と許容応力度
131 木材・集成材の種類と許容応力度
132 鉄筋の許容応力度
133 コンクリートの許容応力度
134 地盤の種類と許容地耐力、杭の許容支持力
200 構造計画・設計ルート
210 構造計画
211 架構形式
212 剛床仮定
220 設計ルート
230 その他特記事項
300 荷重・外力
310 固定荷重
320 積載荷重と床荷重一覧表
330 特殊荷重
340 積雪荷重
350 地震力
351 地震力のための建物重量算定
352 地震層せん断力係数Ciの算定
360 風圧力
361 速度圧の算定
362 風力係数の算定
363 見付面積の算定
370 その他・土圧・水圧
400 柱軸方向力
410 柱梁伏図の作成
420 柱軸方向力の算定
500 部材の設計
510 柱の設計
520 梁の設計
530 小屋組の設計
531 垂木の設計
532 母屋の設計
600 令46条の壁量計算
610 必要壁量の算定
611 地震力に対する必要壁量
612 風圧力に対する必要壁量
620 設計壁量の算定
630 地震力・風圧力に対する確認
640 耐力壁配置の検討
700 柱頭・柱脚の仕口金物設計
710 構造計算による壁量の確認
720 引抜力算定と金物設計
721 地震力による柱頭・柱脚の引抜力算定
722 風圧力による柱頭・柱脚の引抜力算定
723 金物設計のポイント
800 基礎の設計
810 べた基礎の設計
820 配筋詳細図
付 録 付1~付7
構造計算書(白紙シート)
日本の住宅は木造2階建が主流である。
伝統的な構法である木造軸組構法は柱・梁・筋かい等で構成されており、地震や台風による外力は筋かいが負担する。したがって、接合部である仕口・継手の取り扱いが重要となるが、その仕口・継手には高度な技術を必要としたため、かつては大工・棟梁が設計することが多かった。
平成7年の兵庫県南部地震での被害実態を鑑み、平成12年には建設省告示1460号[木造の継手及び仕口の構造方法を定める件]が制定され、建築士による仕口金物設計が義務づけられた。しかしながら、告示に示された方法では仕口の金物が過大となるのが実状である。他方、同告示のただし書きにおいて「構造計算」で安全を確認すれば他の方法によってもよいと規定されている。
本書では「告示による金物設計」「N値計算法による金物設計」「構造計算による金物設計」の3つの設計方法を示しているが、より後者の方が適切な金物が選択でき、経済的でもあるといえる。法令上、木造2階建について構造計算は不要であるが、通常は金物を合理的に設計するために構造計算を行っている。
その金物設計を中心として、木造設計における一通りの構造計算の方法を入門書的にまとめたものが本書である。
本書の特徴は以下の5点である。
1.課題を解き、構造計算書にまとめ上げながら木造設計法を学ぶ。
2.「構造計算書シート」による実践的構造設計なので実務にすぐ活かせる。
3.関係する法令・告示、日本建築学会および日本住宅・木材技術センターの設計規準の要旨を掲載。
4.「構造力学」「建築構法」「法規」等の関連を知り、総括的に学べる充実した解説。
5.大学、専門学校などのテキストとして、また、すでに基本を学習した初心者のための研修、自習のテキストに最適。
構造計算はコンピュータの操作技術を覚えれば答えが出る時代となった。しかし、計算が面倒だからといって最初からコンピュータに頼ってはいけない。それでは、コンピュータが出してくる答えのチェック、設計変更のチェックもままならない。そのようなレベルで設計していては、不注意で安全性を大きく損なった建物をつくりかねないのである。
コンピュータは計算はできるが、構造設計はできない。構造設計は実践との応答にて会得できるものであり、まずは手計算で基礎知識を会得し、構造設計のセンスを身につけてから、コンピュータを使うのが構造設計者への王道である。
本書で示した構造設計術は、(財)住宅保証機構での住宅性能保証制度検査員としての検査実務に基づいたものであり、資料を提供くださった方々にお礼申し上げます。また、労多き実務書の編集・校正は、森國洋行氏、村角洋一氏が担当くださいました。ありがとうございました。
一人でも多くの方にお役に立つことを願います。
平成18年8月13日
上野嘉久