建築行政
内容紹介
多数図版で建築基準法の法文内容を理解する
建築物を利用する主体〈人間〉を中心に据えて学ぶ、新しい建築学シリーズ。建築行政では、建築基準法の法文内容を理解することに重点をおき、条文の構成、法令独特の用語解説から、単体規定、集団規定、制度規定さらには関連法規を、図を多用し具体的に理解できるよう工夫した。初学者をはじめ、行政や実務家の研修や受験準備にも最適。
体 裁 A4・136頁・定価 本体3000円+税
ISBN 978-4-7615-3109-6
発行日 2003/03/20
装 丁 上野 かおる
はじめに
用語索引
第1章 建築行政と建築法規
1・1 法律に基づく規制と立法
1.建築の自由と規制
2.規制には法律の根拠が必要
3.法律と命令(政令・省令)及び地方条例
1・2 建築に関する近代法制度への歩み
1.明治初期に始まる首都の建築規制
2.首都東京の建築条例策定への動き
3.地方の府県条例による建築規制
1・3 建築・都市に関する法律の体系化
1.都市計画法の制定と建築行政
2.市街地建築物法(建築基準法の前身)の誕生
3.市街地建築物法の改正・整備とその後
1・4 建築基準法による新しい建築行政
1.建築基準法制定の背景
2.建築基準法の基本的な考え方
3.建築基準法の構成
1・5 大きな社会変化と建築基準法
1.都市の状況を反映した法・令の改正
2.技術の進歩と関係する法・令の改正
3.法・令の改正がもたらした問題点
1・6 建築・都市を取り巻く関係諸法令
1.建築基準法と関係のある他法令
2.関係法令の相次ぐ制定
3.近年の新しい関係法令と建築行政の変化
第2章 建築基準法の基本事項
2・1 条文の構成と法令用語
1.条文の構成
2.法令用語
2・2 建築物と敷地に関する用語
1.建築物と工作物
2.敷地と地盤面
3.居室と地階
2・3 防火に関する用語
1.防火を特に必要とする部分
2.耐火と防火の構造
3.防火材料
4.防火設備・特定防火設備
5.耐火建築物と準耐火建築物
2・4 建築手続きに関する用語
1.建築行為
2.行政行為
3.行政機関
2・5 面積と高さ・階数の算定方法
1.面積の算定
2.高さ・階数の算定
第3章 単体規定
3・1 一般構造
1.敷地の衛生と安全
2.居室の採光
3.居室などの換気
4.居室の天井高さと床高さ
5.地階における住宅などの居室
6.界壁の遮音構造
7.階段と傾斜路
3・2 建築設備
1.便所と屎尿浄化槽
2.給排水設備
3.冷却塔設備
4.昇降機設備
5.避雷設備
3・3 構造強度
1.構造耐力
2.許容応力度等計算
3.限界耐力計算
4.荷重と外力
5.許容応力度と材料強度
6.構造部材など
7.木造
8.組積造
9.補強コンクリートブロック造
10.鉄骨造
11.鉄筋コンクリート造
12.鉄骨鉄筋コンクリート造
3・4 防火関係の規定
1.大規模建築物の主要構造部
2.法22条指定区域内の建築制限
3.大規模木造建築物等の防火措置
4.防火壁
5.耐火建築物または準耐火建築物としなければならない特殊建築物
6.防火区画
7.防火上主要な間仕切壁などの構造
8.無窓の居室の主要構造部
9.内装制限
3・5 避難施設など
1.避難施設に関する適用範囲
2.避難経路など
3.避難階段
4.屋外への出口,屋上広場
5.避難と防災のための設備
6.敷地内の避難通路
7.避難上の安全の検証
第4章 集団規定
4・1 道 路
1.道路の定義
2.敷地と道路
3.道路内の建築制限
4.私道の変更等の制限
5.壁面線
4・2 地域地区と用途地域
1.区域区分
2.地域地区
3.用途地域
4.卸売市場等の位置
4・3 容積率と建ぺい率などの制限
1.容積率
2.建ぺい率
3.敷地面積の最低限度
4.外壁の後退距離
4・4 高さ制限
1.絶対高さ制限
2.道路斜線制限
3.隣地斜線制限
4.北側斜線制限
5.日影規制
6.高度地区
4・5 防火地域制
1.防火地域制の目的
2.防火・準防火地域内の建築制限
3.防火・準防火地域内の共通規定
4・6 まちづくりのための各種誘導制度など
1.都市計画による制度
2.建築基準法による制度
第5章 制度規定
5・1 確認と許可等
1.確認制度
2.許可制度
3.認定制度
4.型式適合認定制度など
5.法の適用除外規定
6.各種届出など
5・2 検査と違反措置
1.検査
2.工事現場の危害防止
3.違反建築物に対する措置
第6章 関連法規
6・1 都市計画法
1.都市計画法の概要
2.都市計画の内容
3.都市計画の決定と変更
4.開発行為
6・2 まちづくりに関する法令
1.土地区画整理法
2.都市再開発法
3.密集市街地整備法
6・3 消防法
1.消防法の概要
2.防火対象物の定義と分類
3.消防用設備の設置
4.防炎防火対象物と防炎対象品
6・4 ハートビル法
1.ハートビル法の目的
2.特定建築物と特別特定建築物
3.基準適合義務
4.認定建築物
6・5 耐震改修促進法
1.耐震改修促進法の目的
2.特定建築物に係わる措置
3.耐震改修の計画の認定
6・6 品確法
1.品確法の目的
2.住宅の性能に関する表示基準と評価の制度
3.紛争の処理
4.新築住宅の瑕疵担保責任
6・7 宅地造成等規制法
1.宅地造成等規制法の目的
2.宅地造成工事規制区域
3.宅地造成工事の技術的基準
6・8 建築士法
1.建築士法の目的
2.建築士免許
3.建築士でなければできない設計と工事監理
4.建築士の業務
5.建築士事務所
6・9 建設業法
1.建設業法の目的
2.建設業の許可
3.施工技術の確保
わが国の近代法制としての都市計画法と市街地建築物法が公布されたのは大正8年(1919年)で,明治維新・東京遷都から50年の歳月が流れていた.その当時の主要な都市の骨格は,近世の城下町の姿を受け継いでいるとはいえ,この半世紀の間に形づくられたものが多い.したがって新たに法律を制定するにあたっては,その時点の実態を考慮に入れる必要があった.
また,第二次世界大戦で多くの都市が壊滅的なダメージを受けたが,その復興期に注がれたエネルギーは大きく,そこから生じた混乱は,再び現在の都市と建築に新たな課題を残した.さらに高度成長期を経たあと,私たちは環境問題や価値観の変化に直面している.
法律は,一度つくられるとその基本的な考え方をまったく変える場合でないと,廃止したり全面的に改めることは難しい.都市や建築に関する法律は,そのあり方やつくり方を定めるものであるから,一部分を改正する場合でも慎重にならざるを得ない.現在の都市計画法と建築基準法は,こうした背景のもとで80年以上の歴史を経てきた.
このテキストの中心になっている建築基準法は,その前法の,初期の古い規定を受け継ぎながら,各時代の新しい問題にも対応する改正が重ねられてきている.また,法文には私たちが日常使う言葉にはない厳密さと,法律としての専門用語が含まれていることにも注意しなければならない.本書はこのような点を念頭において読み進めていただきたい.また,本書は法文の内容を理解することに重点をおき,法文についてはその条項を示すにとどめているので,法文そのものがどのような文章表現および構成になっているかということと対応させることも,ぜひ試みてほしい.
本書は,大学などの講義のテキストとして利用されることを想定して編集したものであるが,行政や建築実務家の方々の初期の研修や建築士試験の受験準備のためにも,有効に活用していただけるものと考えている.
編集に着手してから限られた期間内で,法令の大きな改正を組み込みながら執筆を進めたが,学芸出版社の吉田編集長をはじめ編集部の各位のおかげでまとめることができた.適切な助言や協力に感謝を申し上げます.
2003年1月
執筆者一同