ネイバーフッド・マネジメント
まちを元気にする仕掛け人に学ぶ実践のヒント
多くの住宅地で高齢化や空き家の増加が進み、再生の必要性が高まっている。本書では、郊外住宅地における団地やマンション、そして近隣のマネジメントについて9つの事例を取り上げ、担い手・場・仕組みづくりという観点で新たな手法の確立を目指す。自分たちのまちを持続可能で豊かにするために、できることから始めよう。
住総研「郊外住宅地のネイバーフッドマネジメント」研究委員会 編 /齊藤広子・佐藤 元・柴田 建・長谷川 洋・藤井さやか・矢吹剣一 編著
| 体裁 | A5判・192頁(カラー32頁) |
|---|---|
| 定価 | 本体2400円+税 |
| 発行日 | 2026-02-15 |
| 装丁 | 北田雄一郎 |
| ISBN | 9784761529628 |
| GCODE | 5726 |
| 販売状況 | 予約受付中 (店頭発売:2026年2月11日頃) |
| 関連コンテンツ | 試し読みあり |
| ジャンル |
「住むだけのまち」から関わり続けるまちへ。
住宅地の問題は、設計や計画の不足ではなく、関わり続ける仕組みが欠けていたことにある。
本書は、法制度・空間・担い手を横断しながら、ネイバーフッド・マネジメントという実践知を丁寧に編み上げている。
行政でも市場でもない領域で、どのように公共性を立ち上げ、運用していくのか。
その具体像が、抽象論に陥ることなく示されている点に共感する。
藤村龍至
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序章 ネイバーフッド・マネジメントとは─求められる社会システムの転換
1 新たな発想が必要
2 ネイバーフッド・マネジメントとは?
3 必要な発想の転換は何か
第1部:ネイバーフッド・マネジメントの実践
1章 コミュニティの隙間をみつける
事例1 商店街の空き店舗をシェア商店に─富士見台トンネル
事例2 住宅地の空き家を地域のリビングに─こずみのANNEX
事例3 広場や空き店舗を住民の表現の場に─左近山団地
2章 マネジメントの仕組みをインストールする
事例4 地域に開く施設を加える─諏訪2丁目住宅
事例5 住民主体で関係性を育む─まちのね浜甲子園
事例6 公民連携で新たな地域価値を創造する─morinekiプロジェクト
3章 閉じたコミュニティから開かれたネイバーフッドへ
事例7 拠点づくりからコミュニティを開く─鳩山ニュータウン
事例8 資源を循環させて自走する─泉北ニュータウン
事例9 人と活動のつながりが加速する─日の里ニュータウン
第2部 ネイバーフッド・マネジメントの仕掛け方
1章 既存のコミュニティを乗り越える
1 ネイバーフッド・マネジメントの担い手のタイプ
2 担い手のタイプから見た取り組み事例
3 多様な活動のネットワーク化に向けて
2章 法律から見たコミュニティによるマネジメント
1 これまでのコミュニティによるマネジメントの主体
2 自治会の退会の自由
3 団体の権能の限界
4 管理組合と自治会の関係─自治会への強制加入・自治会費の強制徴収!?
5 管理組合とエリアマネジメント
6 既存の組織の限界
7 ネイバーフッド・マネジメントのための法律論
3章 仕掛ける人を育てる
1 ネイバーフッド・マネジメントの仕掛け人とは誰か
2 価値を生み出す「よそ者」がカギ
3 仕掛け人をどのように生み出すか
4 外部との接点がネイバーフッドを“解きほぐす”
4章 仕掛ける場所を創り出す
1 住宅地を住みたいまちに変えるための仕掛け
2 仕掛ける場所を見つけ出す
3 制度を見直して仕掛ける場所を生み出す
4 様々な事業スキームを組み合わせる
5 仕掛ける場所を創り出す
5章 共感のネットワークを広げる
1 ワクワクするネイバーフッドへの挑戦
2 人を誘い込み火を灯す地域拠点と仕掛け人
3 暮らしの新たな魅力を創発する開かれたネットワーク
4 共感で駆動するネイバーフッド・マネジメント
終章 ネイバーフッド・マネジメントの実現に向けて
1 事例からの学び
2 まちを元気にする仕掛け
3 必要な社会システムは何か?
序章 ネイバーフッド・マネジメントとは?
1 新たな発想が必要
住宅地、特に郊外の住宅地、築年数の経った団地、マンションなどでは大変なことになっている。空き地や空き家の増加、高齢者の孤独死、歩いていけるところに魅力的な店がないなど、まちがだんだん悪くなり、住んでいられなく、住んでいたくなくなっている。しかし、こうした状態に、既存の地域組織である町内会・自治会ではなかなか手が出せない。そもそも町内会・自治会の加入は任意であるし、財産権に関わることや、人の暮らしに関わることにどこまで関与してよいのかさえも明確でない。既存組織の法的なあやふやさもあるかもしれないが、基本的には運営のための人出不足でそこまで対応できないし、行政の手も届かない。住宅地・住宅を造り、分譲した開発事業者は「手離れよく」を合言葉にきれいに去っている。もちろん、何とかしようと戻ってきている事業者もいるが、ビジネスとしてなかなか成立していない。だからといって、これ以上、行政に頼ることは財政負担を大きくする。
補助金に依存した対応は持続可能ではない。そのため、新たな暮らしの豊かさを目指し、市場のメカニズムを使いながら、ビジネスやファンドなどと連携して、新たな仕組みで、まちを元気にする必要がある。いや、私たちが求めるのはまちを元気にするのではなく、第一には人が元気になることだ。そのためにもまちが元気であってほしい。
まちは今のままでいいんじゃないか。このまま静かに暮らしていたい。そんなに急がなくてもよいのではないかと言われるかもしれないが、今、行動をとらないと大変なことになる。老朽化ストックが増加し、人々が超高齢化し、まちから人が去ってしまうと、担い手がまったくいなくなり、どうしようもなくなってしまう。問題が深刻化する前に対処が必要である。
今こそ、発想を転換し、社会システムを転換すべきではないか?! そのカギが、ネイバーフッド・マネジメントである。
2 ネイバーフッド・マネジメントとは?
ネイバーフッド・マネジメントとは何か。本書での考え方を最初に述べておく。
ネイバーフッドとは?
ネイバーフッドとは、一般的に近隣のエリア、地域や地区を指す概念である。しかしここでは対象として空間(場)だけでなく、空間における人、人々、そこで営まれる暮らし、それを支える習慣、慣習、ルールや文化、制度や仕組み、これらの関係性も含むものである。
ネイバーフッドという言葉は、コミュニティという言葉との対比から使っている。一つには、コミュニティという言葉が自己完結的または内向的な単位、ゲーテッドコミュニティになっていることに対して、開いた空間であること。二つめには、都市が持つ多様性、移動性、利用の流動性を踏まえ、経済的にも社会的にも自己完結していないことにより、コミュニティとは異なる、多様性・開放性を含む概念として使っている。三つめには、1980年代からのコミュニティ論は、地域性(同じ空間にいる)+共同性(目的や利害の共有)で示され、一般の人にとって鬱陶しさや粘着性があるものとなりやすいため、フラットな関係としてネイバーフッドを用いている。
ネイバーフッド・マネジメントとは?
ネイバーフッドによる、豊かな暮らしを求めて、暮らしや働き方のチャレンジを応援する仕組みが連鎖し、面的な広がりを持ち、その結果まちが元気になる、人が元気になる、まちのマネジメントである。ネイバーフッド・マネジメントの担い手には地域をベースにした多様な主体、個人や組織が考えられる。その目的は、そのまちの魅力の維持向上、まちや住宅地の再生だけでなく、住む人の暮らしを豊かに、新たな暮らし方や働き方を生み出し、新たな価値を生み出すことである。自己完結的な計画的なコミュニティを超えた、多様な人々や活動を包み込み、それらが相乗的に関係することから生まれる、新たな価値の創出である。
エリアマネジメントなどとどう違うのか?
従来から存在する概念とネイバーフッド・マネジメントとはどう違うのか。エリアマネジメント、コミュニティ・マネジメント、コミュニティ・ディベロップメント、タウンマネジメントなどと言われる取り組みがあるが、これらと何がどう違うのであろうか(図1、表1)。
ネイバーフッド・マネジメントとは、既存の概念である、エリアマネジメントなどと似た側面を持つが、異なる側面もある。エリアマネジメントとは、「地域における良好な環境や地域の価値を維持・向上させるための、住民・事業主・地権者などによる主体的な取り組みであり、原則、エリアの中だけに限定したクローズドな取り組みとなる。しかし、エリアを限定せず、核を創り、その核からまわりへと広がり、周辺にも影響を与えていく動きが必要ではないかと考え、ここではエリアマネジメントという考え方とは異なる。
また、エリアマネジメントは業務地区を対象とすることが多く、かつ構成員や主体は不動産所有者が主となる。ネイバーフッド・マネジメントはネイバーフッドに関わるあらゆるものが構成員で主体となる可能性がある。住み手が主体であり、マネジメントを仕掛ける人は多様な人材がいる。目的は暮らしの価値の向上であり、小さな点からスタートできる。
コミュニティ・マネジメントでは、基本的にコミュニティが主体となるため、マネジメントの主体が限定的になってしまう。私たちは、コミュニティに依存し、期待しすぎたために、なんともいかない老いた街である現在の状態を創り出したのだとしたら、コミュニティ以外の主体に期待したい。そこで、主体の多様性や連携がこれからのまちの元気に必要ではないかと考え、コミュニティ・マネジメントという考え方とは異なる。
コミュニティ・ディベロップメントでは、ディベロップメントという言葉から開発がイメージされ、管理や再生が含まれないのではないかと危惧される。そもそも、再生が必要になったのは、日常的な管理が適正に行われていなかった、あるいは、開発時から管理時の将来のことを考えた空間の作り方や、マネジメント体制が設定されていなかった可能性がある。開発から管理・経営をマネジメントとして捉えることが必要ではないかと考え、コミュニティ・ディベロップメントという考え方とは異なる。
ネイバーフッド・マネジメントは、上記の他にタウンマネジメント、ネイバーフッドデザインなどと言われる取り組みとも似ている。こうした概念と共通する活動はあるが、根本的な違いは、関係者自身が楽しみ、価値創出主体となっていること、空き地や空き家などのまちや地域の資産がコモンズ化していることである。新たな暮らし方、働き方、人々の生きがいなど、暮らしを豊かにすることが主な目的であり、新しい価値づくりへの挑戦である。よって、本書で取り上げる事例は、厳格にはネイバーフッド・マネジメントとはまだ言えない取り組みもあるが、その芽の可能性も含めて考えていこう。
実践には段階がある。まちで最初の一人(プレーヤー)が思い立ち、活動をはじめ、それが広がっていく。次のプレーヤーを育て、拠点を運営する(仕掛け人がコーディネーターになる)。これとは別にこうした事業を仕掛けていく場合がある。再開発やマンション建替えでは仕掛け人が業として送り込まれて、事業を進め、官と民、業と業をコーディネートし、地域とのバランスをとり、コーディネーターになり、まちのマネジメントを実施する。
3 必要な発想の転換は何か
ネイバーフッド・マネジメントの実践に必要なことは何か。
発想を転換することである。そのためにネイバーフッド・マネジメントのチャレンジャーから学ぶことにする。「従来とは違うな。成果が上がっているぞ」「何か面白い取り組みだ」という、まちを元気にするチャレンジャーに注目する。
ネイバーフッドとしてどんな主体か? 誰がマネジメントをする担い手になるのか? そのために誰が費用を負担するのか? エリアをどう設定するのか? いやいや、エリアの設定なんて必要がないのか?
あるいは、郊外住宅地はベッドタウンとして住むだけでよいのか? 再生の実現には住むだけでなく、機能を変えなくてよいのか? 行政は何をすればよいのか?
このチャレンジャー、チャレンジの方法は問題ないのか。法的に問題ないのか。問題があれば、どんな方向で法律を変える必要があるのか。法律も含めて、社会システムがどう変わる必要があるのか。
具体的には、郊外の戸建住宅地の再生、団地やマンションのマネジメント、両者を含んだまちのマネジメントなど、担い手・場・仕組みの多様な事例を通して、新たな手法の確立と、法制度、政策、人材育成なども含めた社会システムのあり方を考えていきたい。
住総研で4年にわたる「郊外住宅地のネイバーフッドマネジメント」研究委員会を実施し、27回・13箇所の見学会、そして、3回の公開シンポジウムを経て私たちは本書を執筆した。当初、ネイバーフッド・マネジメントとは形なきものであった。みんなの心の中にぼんやりとしてあった「このままではいけない、なんとか新しい手法を」という思いから、新たな動きを捉え、見学し、議論し、科学することに挑戦した。かなりの時間を費やしてメンバーは議論してきた。その結果が本書である。
このような素晴らしい機会を作っていただいた住総研の皆様には心より感謝申し上げたい。そして、本書の出版を引き受けていただき、シンポジウムから伴走いただいた、学芸出版社、担当者の中木様にも感謝申し上げたい。そして何よりも、本書でご紹介いただいた、ネイバーフッド・マネジメントのチャレンジャーの皆様には心より敬意を表し、その実践をどんどん広げていきたいと心から願っている。
では、私たちもレッツトライ!
齊藤 広子
公開され次第、掲載します。
開催が決まり次第、お知らせします。
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