ミライ・ハビタット 2050年の生活圏を構想する

ミライ・ハビタット 2050年の生活圏を構想する
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ありたいくらしを実現する方策を提言する

どんなにバーチャルが進んでも、人間はリアルな生息圏(ハビタット)に生きている。本書は国土づくりや都市・まちづくり、自然環境との関わり、安全、文化や制度・技術など、空間に足場をおきつつ、市民の意識の変化・合意形成、それに基づく社会制度の変革をも視野にいれて、ありたいくらしを実現するための方策を提言する

浅見 泰司 編著 小泉 秀樹 編著 東 和司 他編著

体裁 A5判・224頁(カラー96頁)
定価 本体2400円+税
発行日 2026-01-15
装丁 美馬智
ISBN 9784761529567
GCODE 5723
販売状況 予約受付中 (店頭発売:2026年1月10日頃)
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はじめに 東 和司

序章 変動に適応する生活圏、ミライ・ハビタット……東 和司

1 世界の潮流と課題

1 現在の世界の見取り図
2 日本の課題
3 ありたい未来を実現する思考方法

2 ありたいくらしのシーンを描く

3 ありたいくらしを実現するミライ・ハビタットを構想する

1 ミライ・ハビタットを8つの切り口で考える
2 各章のテーマ

第1章[まち] シン近隣が2050年のライフスタイルを創り出す……小泉 秀樹

――Ⅹ-minute Cityを超えて

1 100年に一度の大転換の時代 ―2050年のライフスタイルを検討する際に考慮すべき前提

1 情報技術の発展
2 グローバル化・全球化する経済活動
3 気候変動や生物多様性
4 少子化・高齢化・孤化
5 「モノ」のもつ影響の増大
6 相互連関的な転換の様相

2 X-minute City/Neighborhood/Communityとは

1 ルーツとしての近隣住区論そして田園都市論
2 既成市街地への適用としての日本の「まちづくり」―コミュニティ政策の歴史
3 新たな近隣像としてのX-minute neighborhoodの提案と普及
4 モレノの15-minute Cityの提案
4 X-minute City(Neighborhood)の特徴とは?

3 X-minute Cityを発想の起点にした2050年シン近隣像

1 2050年のシン近隣像
2 シン近隣が成立するために何が必要か?

第2章 [都市圏] 循環共生型の都市構造をつくる……村山 顕人

1 「都市」の定義と空間スケール

2 気候変動研究で用いられる社会経済シナリオ

1 世界の社会経済シナリオ
2 日本の社会経済シナリオ

3 「地域循環共生圏」と「コンパクト・プラス・ネットワーク」

1 日本政府が提示する2 つの将来像
2 世界的な議論
3 2つの将来像の発展的統合

4 サポート・インフィル型都市とその前提

1 「サポート」と「インフィル」
2 仮想都市圏の設定

5 サポート(都市基盤・都市施設)

1 大きなシステムと小さなシステム
2 道路、グリーン、その他のインフラ

6 インフィル(土地利用・建物・外構・公共空間)

1 都市圏全体
2 都心・インナーシティ・郊外・農山漁村
3 技術導入と住み替え

7 理想的な「都市」を実現するための方法と技術

1 将来像を丁寧に描く体制とプロセス
2 技術の開発とデザインの実践
3 仕組みの再整備

第3章 [国土] 重層的に連携する多様な都市・地域をつくる……瀬田 史彦

1 人口減少による都市・地域の問題

1 人口増加を前提としてきた国土計画と都市政策
2 人口が半分になる日本
3 出生率の改善による人口減少の緩和

2 国土にとっての人口減少

1 過疎地の優位性
2 人口規模に比例する高度なサービス
3 新技術の可能性と課題
4 都市サービスにおけるリアル・フィジカルの重要性

3 人口減少に対応する地域の解決策

1 小さなスケールを活かす地域づくり
2 都市サービスを網羅する地方中核都市の形成
3 国土のパラダイムを変える象徴的プロジェクト
4 人類の進歩と調和した日本の国土のありたい姿

第4章 [自然再興] 生態系にインクルーシブな人間生活圏をつくる……小林 光

1 ありたい未来のネイチャー・ポジティブなくらしとは

1 人間界と自然界とのつながり方
2 人間と自然との間の関係のありたい姿を求める人類の歩み―ネイチャー・ポジティブへ至る道のり
3 人間の生活圏域のあってほしい姿
4 生態系にインクルーシブなくらし

2 立ちはだかる課題

1 技術的な障壁
2 経済的、社会・制度的な障壁
3 文化的な障壁

3 ネイチャー・ポジティブなくらしの実現構想を考える

1 文化面の取り組み
2 経済面、社会制度面の取り組み
3 科学技術面の取り組み

事例1 サーキュラー・エコノミーに向けた民間の取り組み
事例2 ネイチャー・ポジティブに向けた民間の取り組み

第5章 [安全] 高度な対応力と転換力を兼ね備えたまち……廣井 悠

1 社会変化・災害リスクの変容による被害の甚大化

1 低成長と市街地更新力の低下、そして少子化・高齢化
2 災害リスクの変容と価値観の多様化

2 将来の安全・安心に向けた4つの新しい方向性

1 防災計画から災害制御へ
2 転換力という新たなインデックス
3 災害対応のソーシャル・ジャスティス
4 防災からまちづくり

第6章 [文化] 創造的で健康的なくらしの場をつくる……中島 直人

――文化・芸術、スポーツを身近に

1 文化芸術立国、スポーツ立国から未来のくらしへ

1 文化芸術立国
2 スポーツ立国
3 文化や芸術、スポーツが生活の基層として定着するハビタット

2 文化・芸術が身近にあるハビタット

1 文化・芸術の価値とくらしの未来
1 文化祭でも特別教室でもない、エコシステム×公共空間へ
3 芸術作品ではない、アートアーバニズムへ

3 スポーツが身近にあるハビタット

1 スポーツの価値とくらしの未来
2 学校スポーツだけでない、学校の地域スポーツ拠点化
3 スポーツ施設だけではない、スポーツアーバニズムの展開

4 文化・芸術、スポーツが身近にある未来のハビタットの実現に向けて

第7章 [制度] 自律共創の仕組みをつくる……浅見 泰司

――褒めることで動機づける制度

1 社会制度の課題

2 社会制度の基本原則

1 権利保障
2 公正性
3 明瞭性と社会合致性

3 社会変化と社会制度

4 今後のまちを支える社会制度のあり方

第8章 [科学技術] ミライ・ハビタットへの社会実装……生田目 修志

1 科学技術と「ハビタット」

1 過去から現在、科学技術は未来の形を変えてきた
2 科学技術の選択が未来を変える
3 ありたいくらしの実現に向けバックキャストで科学技術を選択する

2 ミライ・ハビタットに実装していくべき最先端科学技術

1 ミライ・ハビタットのくらしとシニア交通
2 ミライ・ハビタットの食糧自給
3 ミライ・ハビタットに拡がるメタバース
4 20世紀の大規模社会インフラをミライ・ハビタットで再構築する
5 ミライ・ハビタットにおけるエネルギーインフラのあり姿の例

3 ミライ・ハビタットは科学技術で社会を変える器である

終章 ミライ・ハビタット実現へのステップ……東 和司

1 ミライ・ハビタット実現に向けた取り組み

2 解決しなければならない課題

3 ありたいくらしが実現された社会のシーン

4 人々の心のよりどころとなるミライ・ハビタット

あとがき 瀬川 浩司
謝辞 東京大学サステイナブル未来社会創造プラットフォーム研究会

【編著者】

浅見 泰司(あさみ やすし)

東京大学執行役・副学長、名誉教授、大学総合教育センター長、空間情報科学研究センター特任教授。Ph.D.。

小泉 秀樹(こいずみ ひでき)

東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻教授、東大まちづくり大学院コース長。

東 和司(ひがし かずし)

パナソニックホールディングス(株)、サステイナブル未来社会創造プロットフォーム運営委員。

東京大学サステイナブル未来社会創造プラットフォーム研究会

東京大学先端科学技術研究センター内に設置された産官学連携コンソーシアム「東京大学サステイナブル未来社会創造プラットフォーム」の有志によるミライ・ハビタットの研究・提言のための研究会。

【著者】

瀬川 浩司(せがわ ひろし)

東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻教授、東京大学先端科学技術研究センター教授。工学博士。

村山 顕人(むらやま あきと)

東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻教授。博士(工学)。

瀬田 史彦(せた ふみひこ)

東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻准教授。博士(工学)。

小林 光(こばやし ひかる)

東京大学先端科学技術研究センター研究顧問。博士(工学)。

廣井 悠(ひろい ゆう)

東京大学先端科学技術研究センター教授。博士(工学)、専門社会調査士。

中島 直人(なかじま なおと)

東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻教授。博士(工学)。

生田目 修志(なまため しゅうじ)

東京大学教育学部附属教養教育高度化機構特任研究員。修士(工学)。

「ミライ・ハビタット」とは、「ありたいくらし」を近未来に実現するための生活圏の構想である。本書では人々の生活や手が届く空間全体、農地、林地、沿岸などを含む人々や生物の生息圏を生活圏(ハビタット)としている。私たちの生活圏は、身近なところから日本全体まで、地域的な階層を形成しつつ多様に広がり、自然と人が相互に影響しながら作られている。人間の文化、制度、技術が大きな影響力を持っている一方で、自然には自然の作用がある。近年、気候変動や生物多様性の危機など、この点を思い知らされる状況が続いている。

私たちは、2050 年を念頭においた近未来までにありたいくらしであるミライ・ハビタットをどのように実現していくかについて議論を重ねた。序章で紹介するように、現在の世界を見てみれば、そのあまりに早い変化、欲望の飽くなき追求、信じていた規範のゆらぎなど、不安や困難を感じることも多い。AI など技術革新への期待が強い一方でその負の側面への懸念も大きい。時には、前向きな気持ちを失ってしまうこともあるかもしれない。しかし成り行きに身を任せるのではなく、人々の生活や手が届く空間全体のあり方から、ありたい未来を描き、その実現のためのアプローチを考えることは、自らが目指す方向を見定めることで、前向きに生きる力になる。

本書は、日々、人々の活動の中心にある「くらし」の場となるハビタットの近未来のありたい姿を描き、実現するためのアプローチを提言する。それは空間に関する議論にとどまらず、市民の意識の変化と合意形成、それに基づく社会制度の変革にも関わる。本書で描いたミライ・ハビタットが読者の皆様のさらなる前向きな発想を促し、それを実現する行動のきっかけとなれば幸いである。

2025年9月30日 著者を代表して 東 和司

近代都市計画の祖とされるエベネザー・ハワード(英国)が「明日の田園都市」(Garden City of Tomorrow)を出版したのは1902年である。当時の英国は、産業革命によってロンドンなどの大都市に一極集中が進みさまざまな問題が顕在化しており、その解決に向けて大都市周辺部の衛星都市として田園都市が構想されたのである。このプランはすぐに実行に移され、実際にロンドン近郊にレッチワースやウェリンが建設されている。実に素早い政策実現である。

この著作は、5年後に日本でも邦訳『明日の田園都市』として出版され、当時の実業界にも大きく影響し、1920年代には大阪の千里山や東京の洗足や多摩川台に日本版田園都市が作られている。この日本版田園都市は欧米型とは少し異なり、主に大都市へ通勤する人々の高級住宅地として考えられていたようで、当時のパンフレットには「土地高燥にして大気清純なること、地質良好にして樹木多きこと、一時間以内に都会の中心地に到着し得べき交通機関を有すること、電信・電話・電灯・ガス・水道などの完整させること、病院・学校・倶楽部等の設備あること」などの宣伝文句が並んでいる。また、この田園都市に住宅建設する場合のルールとして「他の迷惑となる如き建物を建造せざること、障壁はこれを設くる場合にも瀟洒典雅のものたらしむること、建物は三階建て以下とすること、建物敷地は宅地の五割以下とすること(庭を広く)、建築線と道路との間隔は道路幅員の二分の一以上とすること(道路近くに建物を建てない)」などの他、建物の坪単価まで指定されている。とくに、パンフレットの表題に「理想的住宅案内」と太字で書かれているのが目を引く。具体的な項目をあげながら「住みやすさ」をミクロな視点からアピールしているのである。

この田園都市構想から50年ほど経た1972年、田中角栄氏によって「日本列島改造論」が自民党総裁選の政策綱領および著書として発表されている。この日本列島改造論では、大都市一極集中にともなう地方の過疎化が問題とされ、地方発展の方法論としてインフラ整備や行政改革とともに議論されている。この中に書かれている内容には、新幹線整備や本四連絡橋などすでに実現している部分や、中央リニア新幹線など進みつつある計画、違った形で実現した高度情報化社会などもあり、今読み返しても実に興味深い。一方、大都市近郊に人口を集中させる田園都市と、都市一極集中を避ける地方創生は矛盾する考え方でもある。日本列島改造論の主たる目的であった地方の過疎化は現在でも解決できておらず、むしろ大規模なインフラ整備によって中核都市を超えて大都市圏へ流入する人口を増やしてしまった側面もある。このようなマクロな視点からの政策だけでは、なかなか思い通りの都市や社会は形成されないことがわかる。

それから50年の時をへて誕生した石破茂首相は、日本列島改造論をなぞった「令和の日本列島改造」を政策目標に掲げ、①若者や女性にも選ばれる地方、②産官学の地方移転と創生、③地方イノベーション創生構想、④新時代のインフラ整備、⑤都道府県域を超えた広域連携の枠組みの推進の5項目を提示している。これらは、個別にみればとくに間違った政策ではないのだが、その実現には一体どれくらいの時間がかかるのか、また実現したとしても地方の過疎化の解消や、より住みやすい都市の実現につながるのであろうか。首相は交代することとなったが、今後の動向を注視したい。

本書『ミライ・ハビタット』は、東京大学の産学官連携コンソーシアムの1つである「サステイナブル未来社会創造プラットフォーム」に参画している研究者が、都市の課題に対してどのような未来が描けるのかを3年ほどかけて検討した内容をまとめたもので、前述の2つの方法論をつなぎあわせるものでもある。本書の内容に加えて、エネルギー問題や脱炭素社会への課題なども含めて、実際の社会構造の変革につなげるべく今後も議論を深めていきたい。

2025年10月30日

東京大学サステイナブル未来社会創造プラットフォーム代表 瀬川 浩司

開催が決まり次第、お知らせします。

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