まちづくりゲームカタログ

まちづくりゲームカタログ 研修・ワークショップが進化するボードゲームガイド
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内容紹介

“楽しい”はもちろん“学び”がある活用

参加者が集まらない、自分ごと化しない。そんな課題を抱える研修やワークショップに、ゲームを取り入れてみては?コミュニケーションを見直し、他のひとの目線で地域を眺め、未来を想像する体験に最適な22作を厳選紹介。あそび方や活用ポイント、ゲームデザインのアドバイスまで、まちづくりに関わるなら必携のガイドブック


安藤哲也 著
著者紹介

深いゲーム愛と、まちづくりをとりまく“自分ごと”不足感に悩む著者による、意欲的な1冊。ただあそび方を説明書のように記載しても面白くない、でもあそび方のイメージが伝わらないと魅力がわからない……という難しさがありましたが、架空のキャラクターによるプレイイメージで、勘所を伝えられるように工夫しました。
編集担当M
編集担当M
体裁四六判・224頁(カラー192頁)
定価本体2400円+税
発行日2024-12-26
装丁テンテツキ 金子英夫
ISBN9784761529178
GCODE5703
販売状況 在庫◎
ジャンル コミュニティ・ソーシャル
目次著者紹介はじめにおわりにレクチャー動画関連イベント関連ニュース

はじめに

  • まちづくりの現場で20年間抱えてきた悩み
  • まちの未来に関心がないの?
  • ワークショップの新たな手ごたえ
  • 楽しいことはいけないこと?
  • 「楽しさ」こそが物事をブレイクスルーする!
  • 本書の目的と構成

Chapter 1|まずはこれから取り入れよう!コミュニケーション能力を高めるおすすめゲーム

  • ボードゲームを活用したコミュニケーション研修
  • 相手の内面を想像するゲーム「ディクシット」
  • 相手と私の「ちょっと」が違うことを理解する「ザ・ゲーム」
  • 数字を言葉で例える協力型ゲーム「itoレインボー」
  • 色のイメージを全員で統一する「ヒトトイロ」
  • あなたの見方を想像する「私の世界の見方」
  • 水平思考を学ぶ「ウミガメのスープ」
  • 感情を読む「はぁって言うゲーム」
  • 対象によって響く言葉が違うことを認識する「なんで?」
  • 出題者の気持ちを想像して感じ方の違いを楽しむ「ソノトキボクハ」

Chapter 2|まちづくりに活かそう! 現場につかえるゲームカタログ

まちをジオラマ的に体感してみる

カマクラコレクション

鎌倉をめぐり、満喫する

カワサキケイカンボードゲーム

自分のまちへの理解を深め、愛着を育む

ZOOM in KOBE

神戸のまちの魅力を体感する

まちの裏側にある見えないしくみに触れる

どうぶつの里

里山の生き物の食物連鎖を学ぶ

めぐるめぐみ

まちをとりまく水の循環を学ぶ

クマと僕らの物語

クマと人の見えない関わりを学ぶ

まちづくりの主人公になりきってみる

kenpogame~kenpoバリアで日本を守れ!

憲法のない世界を不幸から救う

公共施設の未来体験ゲーム カワタン

選択と集中でまちをマネジメントする

ゲーム限界都市 しあわせなまち

自治体経営を体験する

ありえるかもしれない未来を動かしてみる

コミュニティコーピング

超高齢化社会を体験する

THE パーフェクトワールド〜目指せ!みんなの環成経!

4つの社会の実現を目指す

ふくい温暖化クライシスボードゲーム

SDGsアクションで福井滅亡を回避する

いたばしさんぽ

身近なSDGsを探しながら、まちへの愛着が高まる

座談会:ボードゲームとまちづくりの関係

Chapter 3|実践から学ぶ!自治体研修に導入するための課題とポイント

  • 研修の課題はゲームで解決できるか?
  • インタビュー|自治体研修のプロフェッショナルに聞く
  • 研修現場でゲームを効果的に取り入れるには?
  • 研修の目的にぴったりなゲームはどれ?

Chapter 4|つくってみよう!あなたのまちに合ったオリジナルゲーム

  • ゲームづくりは目的?それとも手段?
  • ボードゲームデザインのプロセス
  • 参考事例の解剖
  • ゲームづくりの落とし穴

おわりに

  • 愛してやまないボードゲーム
  • ボードゲームはひとを幸せにできる?
  • 夢だった家族とのボードゲームで確認できたこと

安藤哲也(あんどう てつや)

1982年生まれ。明治大学大学院理工学研究科建築学専攻前期修了。ベンチャー不動産、都市計画コンサルタントを経て、コミュニティデザインラボmachi-kuを設立。2015年から柏アーバンデザインセンター(UDC2)にてディレクター、2017年から副センター長を務める。2015年にNPO団体わくラボを起ち上げ、川崎市内を中心にボードゲームの体験&講演会を開催している。同年からボードゲームカフェ武蔵新城も運営。
現場での実務をとおし、まちと人のインターフェースをデザインすることが重要だと考えるように。本業である「まちづくり」と、副業である「ボードゲーム」を融合させた「ソーシャルデザインゲーム」を開発し、あそびをとおして大切なテーマを知り・学び・考えさせることを目指している。
主な著書に『都市を学ぶ人のためのキーワード事典 これからを見通すテーマ24』『タクティカル・アーバニズム 小さなアクションから都市を大きく変える』(いずれも共著、学芸出版社)。ボードゲーム「kenpogame ~kenpoバリアで日本を守れ!」「カワサキケイカンボードゲーム」の作者。2児の父。

まちづくりの現場で20年間抱えてきた悩み

私は大学3年時にまちづくりのサークルをつくり、商店街支援を行い、大学・大学院の4年間で2つのまちで活動をしました。就職後、都市計画コンサルタントとして多くの自治体のまちづくりを支援し、2015年に独立後、現在は柏アーバンデザインセンター(UDC2)という場所でまちづくりに携わっています。
現場で20年間、「まちづくり」に向き合い続け、常々頭を悩ませてきた問題があります。それが、「ひとびとの、まちへの無関心」です。

まちの未来に関心がないの?

皆さんは、自分のまちの未来に関心はありますか?
「自分のまち」といっても、住んでいるまち、働いているまち、生まれ故郷のまち、色々とあるかもしれません。ひとは生きている以上、多くのまちと関わりを持って生きているはずです。
「自分のまちの未来に関心はあるか?」という問いに対して、おそらく多くのひとは「YES」と答えると思います。しかし、実際にまちづくりの現場に足を運んで、ワークショップ(WS)に参加したり、意見をいったりするひとは本当に稀です。某自治体で「都市計画マスタープラン」というまちの将来を描く業務に関わったとき、市内を巡り、何度も説明会を開催しましたが、参加者は毎回一桁。0人ということも何度もありました。こんな現場で皆さんのまちの将来が決まってしまうこともあるのです。恐ろしいと思いませんか?

ワークショップの新たな手ごたえ

独立後、民間企業からの依頼で面白そうなWSの相談を受けました。「『移住』をテーマにして、参加者が自分の人生について考えるWSをしたい。そんなボードゲーム(BG)をつくれないか?」というもの。なんてワクワクする仕事だろう、と思ったのを覚えています。そこから打合せを重ね、オリジナルゲームが完成しました。
実際に使用してみたところ、WSは大盛り上がり。盛り上がりすぎて時間をオーバーしましたが、それでもたくさんの意見をもらうことができました。

「空き地や空き屋をうまく活用しなければいかん。行政に頼らず、ご近所同士でできることからやろう」(60代男性)
「高齢者への対策も必要だけど、限られた財源の中で優先順位を決めないとね」(50代女性)
「昔より働き方がたくさんあるから、ライフスタイルも複雑だよね。自由度が増してるってことかな」(高校生女子)

本当に驚きました。①参加者が満員で、②皆さんが楽しそうにまちの未来について熱く語り合っていて、③ゲーム上の発言がもはやまちづくりの現場の意見そのものだ、と3度驚きました。今までのまちづくりの現場で参加者が来ないのも、WSが盛り上がらないのも、すべてこちらの企画が面白くなかったのだと痛感しました。
同時に、これはまちづくりの現場で「つかえる」と思いました。そこで、まちの未来や社会について楽しくあそび・学べるゲームをソーシャルデザインゲームと命名し複数の作品をつくり、多くのWSを行ってきました。どのWSも多くの参加者が集まり、ゲームをとおして盛り上がり、少なくとも一定の効果があったと思っています。
今回、縁あって本書を書く機会をいただき国内の事例を調査していくと、私と同じようなことを行っている方がたくさんいることがわかりました。そして自治体や民間企業、大学などと協働する事例も年々増えています。少しずつ、新たな動きが芽吹いているのです。

楽しいことはいけないこと?

「ボードゲームは、言葉を学べる。数字も学べる。他のひととのコミュニケーションも学べるし、何より楽しい。こんなに素晴らしいアイテムを教育に活かさない理由がないでしょう? 日本の子どもたちはどんな勉強方法をしているの?」
2016年に世界最大のボードゲームの祭典「エッセンシュピール」を訪れたとき、ドイツのとある幼稚園を有志で視察しました。この言葉は、そこで園長先生から投げかけられたものです。このとき、私を含む日本人の視察団は何も答えることができませんでした。
私はこの園長先生の言葉を受けて、「日本でボードゲームを教育に活かすとしたらどうなるか?」をずっと考えていました。「知育」「ゲーミフィケーション」「エデュテインメント」―。ゲームのポテンシャルを拡げようとする言葉や取り組みが多くなされながらも、未だに「学びは学び、あそびはあそび」と切り分けるのが日本人。その勤勉さは世界でも有名ですが、同時に“呪い”でもあると感じています。
子どもたちは、乳幼児の間は「たくさんあそびなさい」といわれ続けます。ところが小学校に入学したとたん、親と教師から「あそんでばかりいないで勉強しなさい」と言われるようになります。このギャップにどれだけの子どもが驚くか、想像に難くありません。
そもそも、あそびと学びは対立構造なのでしょうか。「よくあそび、よく学べ」という言葉もあるように、あそびの重要性は誰もが知っているはずです。幼少期にあそびの中から多くのことを学んできたはずなのに、あそぶことに対して罪悪感を抱く理由はどこにあるのでしょう。

「楽しさ」こそが物事をブレイクスルーする!

私の専門領域は「まちづくり」です。まちづくりの現場において、市民共創のプロジェクトを設計・実行する際に、重要になるポイントは「やりがい」「主体性」「採算性」など複数あります。
ただ、私はそれらのなかで最も重要なポイントは「楽しさ」だと考えています。どんなに大変なプロジェクトでも「楽しい」という感情が存在していれば、必ず続いていきます。人間は「楽しい」ことが大好きです。「楽しさ」こそが、物事をブレイクスルーする最も重要な感情だと信じています。
研修には学びが必要です。そして、同じ学びを得られる研修なら、楽しい研修のほうがいいに決まっています。本書では、楽しみながら学びを得られる多くのゲームを紹介しています。本書がきっかけで多くの研修現場でゲームが活用され、学びと楽しさがあふれるいい研修が増えていくことを祈ります。

本書の目的と構成

本書の目的と構成について紹介します。
本書では、ボードゲームやカードゲームという形式を問わず、社会課題をテーマとしているゲームを「まちづくりゲーム」と呼んでいます。本書はそんなまちづくりゲームや一般向けに販売されているゲームを紹介し、自治体研修などの現場で活かしてもらうことを目的とします。これまでの私の経験から自治体研修が基になっていますが、自治体・民間企業を問わず、活用いただける内容です。
CHAPTER 1では、私が実施しているコミュニケーション研修を例に挙げつつ、一般向けに販売されているゲームの中から、研修現場で活用しやすいゲームを9作品、紹介しています。それぞれのゲームを研修でつかう際のポイントや、コミュニケーション能力のどの部分を育むのかなどを書いています。
CHAPTER 2では、まちづくりゲームの事例を13作品、紹介しています。対象のゲームがつくられた背景、ゲームのあそび方、ゲームのプレイイメージ、研修に使用する際のポイント、実際の利用者の声などを紹介しています。対象のゲームが伝えたいテーマをどのような解決手法をとってゲーム化しているのか。体験後プレイヤーにどのような行動変容をもたらすのか、私なりの解釈も加えました。
なお、CHAPTER 1、2ともに、自治体職員研修を自治体職員が自分達で実施できるよう、ゲームを利用する際のポイントを紹介することにより、手引きとして活用できるようにしています。
CHAPTER 3では、自治体の研修現場について、自治体職員や自治体に研修を実施しているコンサルタントへのヒアリングを踏まえて実情を整理し、研修の現場でゲームに求められるものを示しています。
CHAPTER 4では、まちづくりゲームを自分でつくりたくなった際の制作の手順や配慮すべきポイントなど、ゲームのつくり方を紹介しています。様々なオリジナルゲームが増えることを期待しています。

2024年冬
安藤哲也

愛してやまないボードゲーム

「ボードゲーム(BG)のどこがそんなに好きなんですか?」と聞かれることがあります。大きく2つあります。1つは、コンポーネント(コマやタイル、ゲームボードなどの構成要素)の美しさです。木製の愛らしいコマや、美しいグラフィックやワクワクする世界観のゲームボード。テーブルいっぱいにボードやコマを広げたときのワクワク感は、どれだけゲームをやっても尽きることがありません。

そしてもう1つは、ほかのひとと共有する時間です。パーティーゲームで楽しく笑いあう時間、戦略系ゲームをじっくり考え互いの思惑がぶつかり合う時間。負けても楽しい。勝ったときはさらに楽しい。プレイ中も、プレイ後も、会話が尽きることはありません。そんな時間がとても貴重で大切に思えるのです。

BGは人を幸せにできる?

「あそびのサンマ」という言葉があります。子どものあそびに必要な3つの要素である「空間」「仲間」「時間」のことです。「3つ」の「間」をとって「サンマ」といいます。
公園では禁止事項を掲げた看板が立ち並び、ボールを蹴ることも花を摘むことも禁止。近隣トラブルを避けようと、「大声はダメ!」と子どもを注意する親も少なくありません。犯罪への不安から見通しをよくするために植栽は伐採され、常に大人の監視の目があります。公園はさながら監獄のようです。ドラえもんに出てくるような、子どもたちがいつも自由にあそべる空き地なんてどこに存在するのでしょう。

少子高齢化が進み、一緒にあそぶ友達の数が減っています。異なる年齢の子ども同士の交流は、子どもにとって多くの学びが得られるはずの重要な機会なのですが、空き地で様々な年齢の子どもが入り混じって一緒にあそぶ、なんていう風景は、アニメの中だけの話になってしまったのでしょうか。

「学歴だけが価値じゃない」という動きは確かに高まっているように感じますが、一方で「学歴は少しでも高いほうがいい」と思う親心も痛いほど理解できます。しかしそのために、子ども時代の貴重なあそび時間を大きく奪ってしまうことには疑問を感じます。私が関わった子どもの中で、小学校5年生で週8つの習い事をしている子どもがいました。今、あの子は元気でいるだろうか?とたまに思い出します。

子どもたちはあそべる「空間」がなく、あそぶ「仲間」がいません。スマホゲーム・ネットゲームにのめり込む理由はそこにあると考えています。「空間」は不要で、「仲間」はネット上にいる。あとは「時間」さえあれば永遠にあそべますから。この状況で誰が子どもたちを責められるのでしょう。

こうしたことを学ぶにつれ、漠然とした危機感が募っていきました。そんなときにふと思ったのです。「BGって、場所とメンバーが必要で、ほかのひととあそぶ時間を共有できる。あそびのサンマが全部入ってるのでは?」

その気づきからすぐ、様々な実践を始めました。「おもちゃコンサルタント」の資格を取り、2015年にNPO団体「わくラボ」を立ち上げました。川崎市内の小学校などで親子向けにこうしたメッセージを伝える講演&体験会を実施しつつ、「子どもの環境を変えるためにはまず大人から!」と、武蔵新城というまちでBGカフェをはじめました。お一人様が安心して楽しめるサードプレイスを目指しています。

夢だった家族とのボードゲームで確認できたこと

子どもができたら家族でBGをするのが夢でした。2018年に娘が生まれ、1歳の誕生祝いとして、故郷の木更津市にあるおもちゃ屋「ゆかいなさかな」でマイファーストゲームとして名高い「果樹園ゲーム」を買いました。その後、娘がBGをあそべるようになるまで約1年半待ち、ようやくプレイ。初めて娘と一緒にあそんだ日のことを今でも覚えています。妻に「パパ泣いてるよ」と笑われました。

2020年には息子が生まれ、2歳前半からBGに参戦。ルールを守らないとパパにしっかり叱られることを繰り返し、2歳後半になる頃には落ち着いてルールを守ってあそべるようになりました。ルールを守れる子どもが、あそびの中でもルールを守れるのではありません。子どもは、あそびの中でルールを守ることを学ぶのだと私は思っています。

スマホやTVゲームも1つのコミュニケーションです。間違いなく楽しいものだと思います。ただ、私自身は、このゆったりとして、不便な、アナログが持つ空気感が大好きなのです。互いに同じものを見るのがスマホやTVゲームであるならば、BGはお互いの顔を見るものです。互いの表情を見ることの大切さを、BGはいつでも思い出させてくれます。
最後に。多くの方々のお力添えをいただき、この本を書き終えることができました。

掲載しているゲームの関係者の方々には取材や原稿のチェックなどでご協力いただきました。感謝申し上げます。

饗庭伸さんには、まちづくり×BGという考え方が鳴かず飛ばずで、このまま芽が出ないのだろうかと落ち込んでいるとき、「これからこれから!」と笑って励ましていただきました。
このような貴重な機会をいただいた学芸出版社の松本優真さん。〆切を大幅に(年単位で!)過ぎているのに、私が仕事と育児で大変な状況であることに配慮していただき、急かすことなく見守っていただいたことには感謝の言葉もありません。

一緒に寝たいだろうに、毎晩のように「パパがんばって!」とカフェに送り出してくれた子どもたちと、学生時代から常に一番近くで応援してくれた妻にも、心からのありがとうを伝えたいと思います。

なによりも、人生の貴重な時間をつかってこの本を読んでくださった読者の皆さんにも心から御礼を申し上げます。皆さんの人生に、何か1つでもお役に立つことができれば、そんなに幸せなことはありません。

2024年冬
安藤哲也

メディア掲載情報

公開され次第、お伝えします。