まちのえき 歩いて行ける拠点づくり

まちのえき 歩いて行ける拠点づくり 
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内容紹介

歩いて行ける自治会館や公園をまちの拠点に

歩いて行ける自治会館や公園をまちの拠点にしよう!高齢化と免許返納の増加でバスなど「移動手段」への要望が高まるなか、発想を逆転させ、「移動の目的」を身近で果たせるようにした生駒市の実践。行政が応援し住民が育て、コロナ禍中でも着実に取組が広がった。厚労省は地域共生社会実現の鍵として全国に紹介している。


小紫 雅史 著   
著者紹介

後期高齢者まであと5年。そろそろ心配になってくる。そんなときにまちのえきに出会った。歩いて行けるところに、老人向けではなく、小さな図書室やデスクワークができるところ、ちょっとしたマルシェをやっている場所があれば、通って、人とも出会いたい。
編集担当M
編集担当M
体裁四六判・220頁
定価本体2200円+税
発行日2024-10-10
装丁金子英夫(テンテツキ)
ISBN9784761529055
GCODE5690
販売状況 在庫◎
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ジャンル 福祉
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はじめに ── 歩いて行ける自治会館や公園をまちの拠点にしよう!

序章 これが生駒市版「まちのえき」だ!

第1章 なぜ「まちのえき」が必要なのか

1-1 人生百年時代を喜べない一人暮らし世帯の急増
1-2 出生数半減の衝撃、核家族化で孤立する子育て
1-3 学びと活躍の場として存在感を増す地域・コミュニティ
1-4 コロナ後のビジネスモデルを模索する事業者たち
1-5 活用されていないまちの宝物、自治会館と公園

第2章 「まちのえき」でのさまざまな活動

2-1 まちのスポーツジム(運動する)
2-2 まちのショッピングセンター(買う)
2-3 まちの食堂・喫茶店(食べる・飲む)
2-4 まちの図書館(読む)
2-5 まちの学校(学ぶ・教える)
2-6 まちのアトリエ・スタジオ(奏でる・創る・観る)
2-7 まちの遊び場(遊ぶ)
2-8 まちの農場(栽培する)
2-9 まちのリサイクルステーション(循環する)
2-10 まちの保健室・診療所(診る、癒やす)
2-11 まちの保育園(育てる)
2-12 まちのオフィス(働く)
2-13 まちの避難所・交番(守る)
2-14 まちのマーケット・マルシェ(楽しむ)

第3章 「まちのえき」の現状と多様な効果

3-1 「まちのえき」の現状と効果
3-2 高齢者の移動支援は改善されたのか?
3-3 地域経済の活性化と多様な働き方の促進
3-4 脱炭素や循環型社会形成
3-5 「自治体3・0」のまちづくり
3-6 ワーク・ライフ・コミュニティをブレンドする
3-7 「地域共生社会」の理想形
3-8 「まちのえき」で見つけた素敵なエピソード

第4章 「まちのえき」の立ち上げ方

4-1 「まちのえき」への賛同・協力を集めよう!
4-2 「まちのえき」ワークショップの進め方
4-3 「まちのえき」の事業計画を創ろう
4-4 「まちのえき」事業、実施当日の流れ
4-5 「まちのえき」への行政による支援

第5章 成功のポイント

5-1 地域人材を発掘して、自治会長の負担を軽減しよう
5-2 地域に隠れている人材を発掘しよう
5-3 発信が一番のカギ
5-4 収益の確保、持続可能な運営

おわりに ── 「まちのえき」のこれから
参考文献

小紫雅史(こむらさき まさし)

1974年兵庫県生まれ。奈良県生駒市長。
1997年3月、一橋大学法学部卒業後、環境庁(現 環境省)入省。ハイブリッド自動車税制のグリーン化などに従事。2007年から在米日本国大使館に3年間勤務。
2011年に全国公募で生駒市副市長、2015年に生駒市長に就任し、現在3期目。市民と行政が共に汗をかく「自治体3.0」のまちづくりや先進的な人事政策などに取り組み、全国から注目を集める。2019年度マニフェスト大賞優秀賞受賞。シラキュース大学マックスウェル行政経営大学院修了(行政経営学)。
主な著書に、『10年で激変する!「公務員の未来」予想図』(学陽書房)、『地方公務員の新しいキャリアデザイン』(実務教育出版)など。

歩いて行ける自治会館や公園をまちの拠点にしよう!

奈良県生駒市は、住民・事業者・行政がともに汗をかきながら、歩いて行ける自治会館や公園に生駒市版「まちのえき」を100か所創ることを目標に取り組みを進めています(2024年6月現在12か所設置済み、3か所準備中)。
毎週1、2回ボランティアによって開催される健康体操教室にあわせて、スーパーの移動販売車を呼んで買い物したり、キッチンカーを呼んでランチをみんなで楽しんでいます。また、自宅で不要になった本や漫画を集めてまちかど図書館を創設、食器や雑貨を集めてリユース市を実施、食べきれない食品や農作物を集めて地域食堂・認知症カフェなどを開催しています。移動保健室、みんなのプール、夏休み宿題合宿、地域農園の開設など、地域独自の取り組みも生まれています。
「まちのえき」の整備を始めたきっかけは、ここ数年、高齢者を中心に、免許返納・移動手段の確保に対する不安が急速に広がったことでした。「暴走老人」に関するメディア報道と免許返納への社会的要請を受け、高齢者から免許返納の相談、それと同時に、民間交通や市バスの拡充を求める声が急速に高まりました。しかし、燃料費の高騰や運転手の雇用問題に悩む公共交通の事業者が現状以上にバス路線を拡充する可能性はゼロに等しく、維持してもらうだけでありがたいのが現状です。また、市が主導でバスを走らせても、カバーできない路線もありますし、実際の利用はまだ少ないので、それだけでは問題の解決には不十分と言わざるを得ません。
そこで、発想を逆転させ、公共交通を拡充するだけではなく、免許のない高齢者等でも「歩いて行ける」場所に地域拠点「まちのえき」を整備することが課題解決につながると考えたのです。
実際に始めてみると、コロナ禍の難しい時期にもかかわらず、多くの地域から関心が寄せられ、毎年4、5か所ずつ開設が進んでいます。ニーズは確実にあるのです。生駒市版「まちのえき」は、これからの少子高齢化、人口減少時代の我が国に不可欠な社会インフラであり、脱炭素や資源循環、地域共生社会、そして、移動販売や創業支援などの地域経済の活性化にも大きな一石を投じる取り組みでもあります。
本書では、この「まちのえき」の具体的な取り組みについて、具体的かつ丁寧に説明をし、皆様の地域でも「やれそうだ」「やってみよう」という動きにつながるように記述しています。また、取り組みを具体化するにあたっての課題や対応方法などにも触れ、「まちのえき」が広く全国に広がるよう、マニュアルとしても活用いただけます。
少子高齢化時代の地域課題を解決するためには、「誰一人取り残さない」だけでなく、「誰一人として単なる『お客様』にせず、何らかの役割を持って活動してもらう」ことが不可欠です。
「まちのえき」を拠点に、すべての人が役割を持ち、人に頼り、心地良い「ごちゃまぜ」の関係を築きながら、安心して楽しく豊かに暮らせる地域を全国に広げていこうではありませんか。

「まちのえき」のこれから

住宅都市にとって厳しい時代になっています。
高度経済成長時代に転入した働き盛り世代が退職して高齢者となり、また、住宅価値が逓減していくので固定資産税も住民税も減少していきます。全国的な人口減少により、より便利な生活を求める人は都心を目指し、より自然な生活を求める人はテレワークで働きながら山間部へと向かいます。「都心から近くて自然も豊か」が売りだった住宅都市の魅力に陰りが見えているとも言えます。
また、大都市には大きな企業や大学などが多く社会的な基盤が豊かに整備されています。過疎地域には森林・海洋資源などの自然環境が豊かに存在します。郊外の住宅都市の最大の宝物は「ひと」ですが、「ひと」を活かし、ともに進めるまちづくりは、市民一人一人の想いも個性も多様であり、一筋縄ではいきません。特に住宅都市の市民は大都市部に通勤し、普段は地元で過ごす時間が短く、転入世帯も多いことから、地元への愛着が比較的希薄な人も多く、市民との協働・協創によるまちづくりも口で言うほど簡単なことではないからです。大都市部や過疎地域に比べて、郊外の住宅都市の地方創生の事例が目立たない理由もそこにあるのではないでしょうか。
一方で、見方を変えれば、このような住宅都市のピンチは、「ひと」を中心に据えたコミュニティづくり、少子高齢化時代に必要な社会的インフラを整備する絶好のチャンスでもあります。コロナ禍でコミュニティが大きな打撃を受けたことが、かえって市民の皆様にコミュニティの大切さを再認識してもらう結果となった今こそ変革の時。病院や学校、バスなど公的なサービスが当たり前ではなくなってきた少子高齢・人口減少時代だからこそ、新しい挑戦が必要です。
「ひと」を活かしたまちづくりは大変ですが、それでも「ひと」と丁寧に向き合いまちづくりを進めるしかないという覚悟を決めて進みましょう。郊外の住宅都市は、一人一人の顔が見える、住民との絶妙な距離感が、大都市にはない強みです。「ひと」を活かし、市民・事業者・行政がともに汗をかいて進めるまちづくりは手間も時間もかかりますが、信頼関係を紡いで一度立ち上げれば長く将来に役立つ大切な宝物になります。「ひと」の力が一番強いのです。
生駒市版「まちのえき」は現場発の取り組みであると同時に、これからの日本社会のあり方に大きな一石を投じる挑戦です。全国の皆様にも賛同いただき、連携し、丁寧に「ヒト」と「ヒト」との関係を紡ぎながら「まちのえき」のようなコミュニティを築き、未来に残せる最先端で温かさのある社会的インフラを我が国に創っていきましょう。
本書の執筆に当たり、株式会社学芸出版社の前田様には、構成、文章表現、レイアウトなどさまざまな角度からのご指導を賜り、全面的にお世話になりました。「建築・まちづくり・コミュニティ・デザイン」の専門書・実務書を出版しておられる学芸出版社の書籍は、私も多く手にし、熟読し、まちづくりに活かしてきました。そんな出版社から自身の著作を出版できることはこの上なく光栄なことです。本当にありがとうございました。
また、私が本書で書いていることは、現在の生駒市役所の業務を始め、これまでの職務経験はもちろん、市民の皆様や全国の仲間たちとのコミュニケーションから学んだことが多数盛り込まれています。それらの土台や経験があるからこそ、本書で述べているさまざまな言葉に説得力が生まれ、私も自信を持って筆を進めることが可能となりました。これまでお世話になったすべての方々に、この場を借りて感謝を申し上げます。
特に、生駒市版「まちのえき」を立ち上げてくださっている地域の皆様、応援してくださる事業者・関係者、本事業を担当している本市の地域コミュニティ推進課のメンバーは、日頃からそれぞれの現場で「まちのえき」の活動に汗をかき、多くの住民が楽しく集まり、安心して毎日を過ごせる場・機会を創ってくださっています。中でも、前・地域コミュニティ推進課長の梅谷信行氏には、「まちのえき」の立ち上げから軌道に乗せるまで、多大なるご尽力を賜りました。本当にありがとうございます。
最後に。市長もまた一人の市民であり、地域の住民です。
一市民としての私を受け入れてくれる地域の皆様や友人各位、そして何よりも、毎日忙しくも幸せな時間をともに過ごしてくれる妻と4人の子どもたちに心からの感謝を述べて、筆を置きます。

2024年8月吉日  奈良県生駒市長 小紫 雅史

開催が決まり次第、お知らせします。

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