建築思想図鑑

建築思想図鑑 
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内容紹介

難しい概念も読み解けるイラスト63項目

建築思想を理解すれば、つくる建築、語る言葉の説得力が増す。いま知っておくべき建築思想63項目の基本を、本質を押さえたイラストと、気鋭の執筆陣による解説で理解できる入門書。難しそうな言葉でも、まずはイラストを眺めて一歩を踏み出し、建築の奥深さに触れてみよう!時代の流れや項目同士の結びつきも見えてくる。


松田達、横手義洋、林要次、川勝真一 編著/寺田晶子 イラスト
著者紹介

体裁A5判・256頁

定価本体2500円+税

発行日2023-09-25

装丁寺田晶子

ISBN9784761528713

GCODE2321

目次著者紹介はじめにレクチャー動画関連イベント関連ニュース

はじめに(松田達)
建築思想マップ(林要次)
建築思想関連年表(松田達)

第1章 近代以前(~1851)

01 調和比例論(横手義洋)
02 建築のオーダー(横手義洋)
03 ルネサンスの理想都市(松田達)
04 匠明(小岩正樹)
05 バロック都市計画(横手義洋)
06 ピクチャレスク(横手義洋)
07 原始の小屋(横手義洋)
08 類型論(戸田穣)
09 建築様式(横手義洋)
10 空想的社会主義(林要次)
11 ラスキンの建築保存論(頴原澄子)
[コラム]旅に出よう① イタリア:ローマにて建築2000年の伝統を味わう(横手義洋)

第2章 近代1(1851~1914)

12 折衷主義(横手義洋)
13 構造合理主義(林要次)
14 美術建築(林要次)
15 アーツ・アンド・クラフツ運動(林要次)
16 市区改正(松田達)
17 形態は機能に従う(林要次)
18 建築進化論(倉方俊輔)
19 装飾と犯罪(本橋仁)
20 我国将来の建築様式を如何にすべきや(林要次)
21 田園都市(松田達)
22 未来派(横手義洋)
23 法隆寺再建非再建論争(野村俊一)
[コラム]旅に出よう② ヨーロッパ:ビルディングタイプを辿る旅 ─劇場を例に(林要次)

第3章 近代2(1914~1945)

24 建築非芸術論(林要次)
25 ロシア・アヴァンギャルド(本田晃子)
26 分離派建築会(天内大樹)
27 ノイエ・ザッハリヒカイト(川勝真一)
28 イタリア合理主義(鹿野正樹)
29 考現学(川勝真一)
30 近代建築の5原則(林要次)
31 有機的建築(松田達)
32 アテネ憲章(川勝真一)
33 ほんもの/いかもの(種田元晴)
34 インターナショナル・スタイル(岩元真明)
35 複製技術時代の芸術作品(砂山太一)
36 レス・イズ・モア(松田達)
[コラム]旅に出よう③ アメリカ:シカゴの近代建築食い倒れ旅(川勝真一)

第4章 現代1(1945~1970)

37 モデュロール(林要次)
38 縄文と弥生(豊川斎赫)
39 実の透明性/虚の透明性(服部真吏)
40 シチュアシオニスト・インターナショナル(南後由和)
41 メタボリズム(豊川斎赫)
42 都市のイメージ(吉村有司)
43 プラグイン・シティ(木内俊彦)
44 住宅は芸術である(セン・クアン)
45 見えない都市(松田達)
46 群造形(豊川斎赫)
47 すべては建築である(川勝真一)
48 か・かた・かたち(浜田晶則)
49 類推的都市(片桐悠自)
50 ラーニング・フロム・ラスヴェガス(高砂充希子)
[コラム]旅に出よう④ フランス:ル・コルビュジエの世界を旅しよう(松田達)

第5章 現代2(1970~)

51 アドホック(川勝真一)
52 神殿か獄舎か(豊川斎赫)
53 ポスト・モダニズム(松田達)
54 脱構築主義の建築(入江徹)
55 様相論(松田達)
56 消費の海に浸らずして新しい建築はない(山本至)
57 ビッグネス(稲垣拓)
58 テクトニック(高橋堅)
59 メイド・イン・トーキョー(吉村英孝)
60 動線体/決定ルール、あるいはそのオーバードライブ(西澤徹夫)
61 負ける建築(中村航)
62 アルゴリズム(松田達)
63 デジタルファブリケーション(クマタイチ)
[コラム]旅に出よう⑤ 日本:建築旅行オススメ都道府県私的ベスト10(松田達)

建築書の影響力(横手義洋)
建築思想を拓いた世界の建築家32(川勝真一)
建築思想を拓いた日本の建築家32(川勝真一)

参考文献
索引

【編著者】

松田 達(まつだ・たつ)

1975年石川県生まれ。建築家、静岡文化芸術大学デザイン学部准教授。専門:建築学、都市学。1999年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修了。隈研吾建築都市設計事務所を経て、パリ第12大学パリ都市計画研究所にてDEA課程修了。東京大学先端科学技術研究センター助教等を経て、現職。著書に『記号の海に浮かぶ〈しま〉(磯崎新建築論集 第2巻)』(岩波書店、2013年)、『ようこそ建築学科へ! 建築的・学生生活のススメ』(学芸出版社、2014年)(いずれも共著)ほか。作品に《JAISTギャラリー》ほか。

横手 義洋(よこて・よしひろ)

1970年鹿児島県生まれ。建築史家、東京電機大学未来科学部建築学科教授。専門:西洋建築史、近代建築史。2001年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。東京大学助教、イェール大学研究員を経て現職。著書に『イタリア建築の中世主義』(単著、中央公論美術出版、建築史学会賞受賞)、『近代建築史』(共著、市ヶ谷出版)、『日本建築思想史』(共著、太田出版)など。

林 要次(はやし・ようじ)

1975年神奈川県生まれ。建築家・建築学者、芝浦工業大学特任研究員、センブンノイチ株式会社共同代表。専門:設計意匠、建築理論、建築教育。芝浦工業大学卒業。横浜国立大学大学院修了。パリ第8大学D.E.A.(建築・都市設計)課程修了後、日仏で建築・都市設計修行。近代日本のフランス建築理論と教育手法の受容の研究で博士(工学)取得。訳書にル・コルビュジエ著『パリの運命』(彰国社、共訳者:松本晴子)。

川勝 真一(かわかつ・しんいち)

1983年兵庫県生まれ。建築リサーチャー、キュレーター。2008年京都工芸繊維大学大学院建築設計学専攻修了。2008年に建築的領域の可能性をリサーチするプロジェクトRADを設立。以後、建築展覧会キュレーション、市民参加型ワークショップの企画・運営、都市やまちづくりのためのリサーチなどの実践を通じ、建築と社会の関わり方を探っている。

【イラスト】

寺田 晶子(てらた・しょうこ)

早稲田大学大学院理工学研究科建築学専攻修了。広告、書籍、雑誌、壁画制作、企業・店舗のVIなど、イラスト、デザインを手がける。過去に、東急ハンズ(現ハンズ)、UR都市機構、鹿島建設、JR東日本、京都水族館の広告など。

思えば8年前──『ようこそ建築学科へ!』という本をつくり終えてしばらく経ったころ、お世話になった編集者から1通のメールがあった。
若い編集者が『建築思想図鑑』という本の構想を考えていて、相談できないかという。「建築思想」を分かりやすいテキストとイラストで説明する本だという。すごく面白そうだけど、同時にものすごく難しいと感じた。建築思想を簡潔に説明することも難しいけれども、イラストで説明することはもっと難しい。分かりやすくはないものを単純化すれば、間違って捉えられてしまうリスクもつねに負う。そもそも誰がどうイラストを描くのか?建築思想をイラスト化するなんて離れ業を行ってくれるイラストレーターが本当にいるのか?最初はそんな疑問が尽きなかった。
けれどもこの本はつくりたいと思った。いや、つくられるべきだと思った。難しいものを簡単に説明するという、実はもっとも難しいであろう試みが、魅力的に感じたためでもある。そしてこういう分かりやすさに挑戦した建築の本は、いままでないと思ったからである。もちろん、分かりやすい説明のためには、多くのものを削ぎ落とす必要がある。それは容易ではない。けれども、こうした難しさを押してでも、本書を実現させたいという想いが増した。ただ、案の定──それから8年の歳月が経ったのである。

本書は「建築思想」を構成する様々な概念やキーワードを、簡潔なテキストと親しみあるイラストで説明した本である。63の各項目は3~4ページで構成される。それぞれ1000字前後の「本文」、100字程度の「リード文」、20~30字程度の「キャッチコピー」、全体を代表する「タイトル」からなり、「イラスト」で全体が噛み砕かれ、「関連作品」で次なる理解を深めるという仕組みである。本文も対象の概念を短く要約しているが、さらに数段階の要約を経て、ひとつの「建築思想」を説明するというわけである。この要約に次ぐ要約により、最短距離で建築思想を理解しようというのが本書である。
全体は5章からなり、時代順に並ぶ。1章が「近代以前」、2章(1851~1914)と3章(1914~1945)が「近代」、4章(1945~1970)と5章(1970~)が「現代」という構成だ。冒頭の「建築思想マップ」と「建築思想関連年表」は、建築思想の空間的・時間的関連を理解する手がかりになるだろう。各章の合間には、建築旅行をテーマにしたコラムが差し挟まれる。巻末の付録「建築書の影響力」と「建築思想を拓いた建築家(世界と日本)」では、それぞれ影響力の強い建築書と建築家が紹介され、本書の立体的な理解を助ける。
本書は、まず初学者向けの本である。建築について、しかもその内なる思想について、できる限り分かりやすい解説が目指された。だから建築を学ぶ大学生だけでなく、高校生が読んでも決して難しくはないはずだ。しかし同時に、歴戦の専門家、実務家たちが読んでも楽しい本となっているだろう。なぜなら過去に難しい本を読んで、ようやく理解したような、あるいは「理解していなかったかもしれない」概念を、本書ではイラストを頼りに、新たな視点で復習できるからである。

イラストレーターは『ようこそ建築学科へ!』でもお世話になった寺田晶子さんが引き受けてくれた。かなり無理なお願いだったと思うが、結局すべてのイラストを1人で描いてくれた。驚くのは、おそらく著者以上に各項目の内容を、原典をたどって理解され、著者のスケッチやメモを、すべてご自身で再構成して絵を描かれたことである。寺田さんにしかできない離れ業を、8年かけて実現されたのだ。
編者とその担当は、横手義洋さん(1章)、林要次さん(2章)、川勝真一さん(3章)と私(4章、5章)の4人である。担当の章にこだわらず、全体が横断的に編纂されている。この長い試みに付き合っていただいた各氏には、御礼の言葉しかない。
それぞれ第一線で活躍されている、各項目の執筆者の方々には、深い感謝とともに、深く頭を下げたい。読む側の分かりやすさと引き換えに、書く側にここまで難しかった依頼は他になかったであろうためである。
このお話を最初に構想した若い編集者とは、神谷彬大さんのことである。企画から実現まで想像を超える難しさがあったが、長い道のりを粘り強くまとめられた。感服するとともに、この機会を頂いたことに心からの御礼を申し上げたい。ありがとうございました。
本書がこれから建築を学ぼうとする、あるいは再び建築を学び直そうとする様々な読者にとって、よい学びのきっかけになれば幸いである。

2023年8月 松田達

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