滅びない商店街のつくりかた


梯 輝元 著

内容紹介

清水義次氏 嶋田洋平氏 木下斉氏 新雅史氏 松井洋一郎氏 推薦!

北九州・魚町商店街の大家が語る再生の本質

人口減少・郊外化・ネットショッピングの台頭…商店街受難の時代に独自の取組みで自立型再生を果たした北九州市・魚町商店街。「リノベーションまちづくりの聖地」と呼ばれ、エリアマネジメント・SDGsの取組みでも注目を集める商店街の「大家」が、お金や運営の苦労など生々しい話満載で語る、生き残れる商店街の本質とは?

体 裁 四六・208頁・定価 本体2200円+税
ISBN 978-4-7615-2819-5
発行日 2022-06-05
装 丁 中川未子(紙とえんぴつ舎)


目次著者紹介はじめに関連ニュース関連イベント

はじめに

第1章 リノベーションまちづくり、エリアマネジメント、SDGsが商店街を変える

1 衰退・空洞化していた魚町商店街

こぼれ話「商店主は過去の栄光・成功体験から抜け出せない」のか?

2 魚町商店街を変えた三つの手法

リノベーションまちづくり/エリアマネジメント/SDGs

3 商店街の再生は、その存在する都市の再生と共にある

こぼれ話商店街再生を阻む事業承継と不動産の共有
こぼれ話倒すべきゾンビについて

第2章 商店街がリノベーションまちづくりを成功させる方法

1 商店街の課題を都市経営視点で考える―小倉家守構想との出会い

2 パブリックマインドをもつ設計者と出会う―嶋田洋平氏のメルカート計画

3 テナント選定と管理の肝―先付け方式と「メル会」

4 コストを抑える複合施設運営―フォルム三番街

5 まずは「場」をあたためるイベントから―リノベーションスクールの開催

リノベーションスクール@北九州/不動産オーナーの口説き方/まちづくり会社のつくりかた

6 北九州方式のリノベーションまちづくり

7 空き家が出れば外部資本による開発が行われるステージへ

8 リノベーションスクールなしでもリノベーションまちづくりはできる

9 リノベーションまちづくりで再生された実案件

MIKAGE1881 空きビルフロアを「3分の1ルール」モデルでシェアオフィスに
三木屋カフェ 朽ちた古民家を「ワークショップ」の魔法でカフェに
ポポラート三番街 区画貸の出店契約でビルの空きフロアが手づくり作家の工房・店舗に
タンガテーブル 民都機構の出資も得て空きビルフロアがゲストハウスに
comichi香春口 管理者も入居して古い長屋を若い女性の集まるスポットに
第二喜久田マンション 住宅街のマンション4階を地域初のシェアハウスに
北九州まなびとESDステーション 元ゲームセンターのビル地下が教育の場に
ビッコロ三番街 空きビル1階がインキュベーション施設に
ビッコロテラス 空きビル1階がSDGs的な路面店の集まる「女子ビル」に
シェアカフェQuota 空きビルがDIYでカフェ起業者のためのインキュベーション施設に
こぼれ話メルカート三番街の火事と再生
こぼれ話特別用途地区における建築物の制限について

3章 商店街とまちづくり会社が担うエリアマネジメント

1 商店街という場を取り戻す

2 リノベーションと平行してアーケード問題に取り組む

3 ジョイントアーケード(エコルーフ)の建設

4 高松丸亀町商店街の「所有と経営の分離」に学ぶ

5 商店街をIT化する―北九州市ユビキタスモール構築モデル事業

6 補助金事業の困難さ

7 まちづくり会社の有用性

8 魚町サンロード商店街とカルチェラタン構想

アーケードの建設と撤去
まちづくり会社「株式会社鳥町ストリートアライアンス」の設立
空き地をコンテナカフェ「クッチーナ・ディ・トリヨン」に
アーケード撤去決議
歩いて楽しい公園のような通りを目指して
魚町サンロード商店街の電柱地中化について
「魚町サンロードカルチェラタン構想」を宣言
国家戦略特区エリアマネジメント事業「道路空間を活用したにぎわいづくり」

9 ホテル跡地を利用した広場を建設

こぼれ話魚町地区再開発事業について
こぼれ話商店街活性化条例について

4章 商店街に人を呼び戻すSDGs

1 商店街の新たなウリ「SDGs」とは?

2 「SDGs商店街宣言」の大きな効果

3 価格競争を避け、良質な顧客層の満足度を上げる各商店の取り組み

規格外野菜の販売でフードロスを削減
フェアトレードや賞味期限間近の食品を箱買い・小分け販売に取り組む
マクロビ・ビーガンの食品を販売
プラスチックストローから紙ストローやガラスストローに
出がらしのお茶専用のポン酢「お茶ぽん」を開発
どんぐりを現金と同じように使える雑貨店
エコバックの代わりに着物をリユースした風呂敷を勧める呉服屋

4 SDGsの取組みで若い客層が増加

こぼれ話後継者について

第5章 商店街が生き残るために

1 商店街の存在意義を見つめ直す

2 イオンにない新しい価値を提供する

おわりに

梯 輝元(かけはし てるもと)

中屋興産株式会社代表取締役/魚町商店街振興組合理事長/魚町サンロード商店街協同組合理事長/魚町一丁目商店街振興組合副理事長/福岡県商店街振興組合連合会理事長/北九州リノベーションまちづくり推進協議会会長/株式会社タウンマネジメント魚町取締役/司法書士、行政書士、宅地建物取引士。
1959年北九州市小倉北区生まれ。1982年3月熊本大学法文学部卒業、同年4月中屋興産株式会社入社、1994年8月中屋興産株式会社代表取締役就任。2000年5月司法書士・行政書士登録。2001年10月魚町サンロード商店街協同組合理事長就任。2010年4月株式会社タウンマネジメント魚町代表取締役就任。2010年11月~2012年11月魚町一丁目商店街振興組合理事長。2012年11月魚町商店街振興組合理事長就任。2019年6月福岡県商店街振興組合連合会理事長就任。

商店街の衰退が叫ばれて久しい。郊外型スーパーとの競争による売上減少、空き店舗の増加による商店街のシャッター通り化、商店街組合に所属しないフリーライダーの増加など、課題は山積している。
北九州市出身の新進気鋭の社会学者、新雅史氏が著書『商店街はなぜ滅びるのか』で看破したように、(組織としての)商店街は伝統的存在ではなく、第1次世界大戦後の世界同時不況下における、地方離農者の都市への流入と、何ら技能を持たず小資本でも始められる小売業者の増加、それらによる都市部の不安定化を防止するために、日本近代化の産物として人工的に発明されたものだった。同氏が述べるように、昭和40年代を中心とする高度成長時代の総中流社会は、サラリーマンの「雇用の安定」と都市部の「自営業者の安定」による「両翼の安定」によりもたらされたものだった。
しかし、それまで競合する存在のなかった商店街は、広大な駐車場を持つチェーンストアという、そもそも商店街には存在しない近代的な理論で武装された郊外型スーパーの進出、電気店・家具店などのカテゴリーキラーの量販店の出現によって駆逐されていく。同じ品物を同じ問屋から仕入れても、スケールメリットで仕入れ価格に差がある上に、メーカーは量販店向けの品番を作っていて、それは商店街の店の仕入れ価格よりも売価が安いのだ。私の父も品番のある商品を売っていても商店街では商売にならないとよく言っていた。
同氏が言うようにコンビニという業態の発明によって商店街が衰退したのではない。さらに近年のネット販売の増加は、人通りのある所に店舗を構え、問屋から仕入れた商品を店頭に並べて、接客して販売するという商店街のビジネスモデルを根底から覆した。それまで商店の有していたマーチャンダイジング、専門性、品ぞろえ、商品知識、接客のどれをとってもネット販売に勝るものはない。それ故、商店街の有していた小売商業の集合体としての機能は、まったく時代遅れのものとなり、その意義を喪失し、商店街を文字通りシャッター通り化させていった。そして、商店街の社会的機能を地域コミュニティの担い手としてだけにおしとどめることになった。商店街が有するその商店街特有の社会的機能とは何かを常に考えていかなくては、商店街の再生はあり得ない。
そのようななか、魚町商店街は、日本初の「リノベーションまちづくり」、「エリアマネマネジメント事業」、「SDGs商店街宣言」などで、社会的課題を解決しつつ、商店街のにぎわいづくり・活性化、地域コミュニティの再生を図ってきた。魚町商店街が行ってきた持続可能なまちづくり、滅びない商店街のつくりかたを本書であきらかにしていきたいと思う。