基礎から学ぶ 建築生産

大久保孝昭 編著
鬼塚雅嗣・閑田徹志・眞方山美穂 著

内容紹介

建築の生産システムについて、基本的な事項が理解できる入門教科書。建築生産に関わる主体とその役割、全体の流れなどについて、時代のニーズにあった事例・手法を紹介するとともに、建物がどのようにつくられているのかといった建設施工技術の基礎を理解する。さらに現代では欠かせない維持管理、補修、解体についても学ぶ。

体 裁 B5変・144頁・定価 本体2400円+税
ISBN 978-4-7615-2544-6
発行日 2013/01/15
装 丁 KOTO DESIGN Inc.

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目次著者紹介まえがき採用特典教材

第1部 生産マネジメント

1章 建築生産の仕組みと流れ

1・1 建築生産の概要
1・2 建築設計図書
1・3 工事監理と施工管理
1・4 建築生産に関わる社会規範
1・4・1 法律(1 建築基準法/2 建築確認申請/3 労働安全衛生法)
1・4・2 規準/仕様書/指針
1・4・3 契約
1・4・4 資格
1・4・5 保証と保険
1・4・6 性能規定/仕様規定

2章 建築生産プロジェクト

2・1 我が国の建築市場の動向
2・2 建築生産の潮流
2・2・1 建築生産の新しい潮流と建築技術者の責務
2・2・2 ストック&リノベーション
2・2・3 環境配慮
2・2・4 消費者保護
2・2・5 品質重視
2・3 建築プロジェクトの分類
2・3・1 建築プロジェクトと他の製造業との違い
2・3・2 建築プロジェクトの発注形態
2・3・3 建築プロジェクトの実施方式(設計施工分離発注方式/設計施工一括発注方式/CM方式/PM方式/ターンキー方式)
2・4 発注・契約方式
2・4・1 発注の方法
2・4・2 請負業者の選定
2・4・3 請負契約の締結
2・5 生産情報の伝達と蓄積
2・5・1 「設計説明書」と「設計品質伝達表」
2・5・2 統合情報システム/CALS EC
2・5・3 BIM
2・5・4 トレーサビリティ

第2部 施工・維持管理

3章 施工準備および施工計画

3・1 施工準備の概要
3・2 QCDSE
3・2・1 Q:品質管理
3・2・2 C:コスト管理(経済性)
1 工事費の構成
2 工事価格の算定 ―積算
3・2・3 D:工程管理(工期)
3・2・4 S:安全衛生管理
3・2・5 E:環境管理
3・3 届出,近隣調整
3・3・1 届出書類の種類と届出先
1 建築基準法関連
2 道路・掘削関連
3 公害防止関連
4 労働安全衛生法関連
5 その他官公庁関連
3・3・2 近隣対応
3・4 作業所運営計画
3・4・1 作業所組織
3・4・2 作業所開設準備
3・4・3 連絡体制

4章 施工技術

4・1 仮設工事
4・1・1 仮設工事とは
4・1・2 共通仮設工事
4・1・3 事前調査および高低・位置の基準
4・1・4 足場
4・1・5 比較的大型の仮設物
4・1・6 揚重運搬機械
4・2 土工事
4・2・1 土工事・地業基礎工事の重要性と地盤調査
4・2・2 地盤調査
4・2・3 土工事の施工方法
4・2・4 地業基礎工事の施工概要
4・2・5 地盤改良
4・2・6 杭施工
1 杭の分類
2 既成杭の施工
3 場所打ち杭の施工
4・3 鉄筋コンクリート工事
4・3・1 工事全体のフロー
4・3・2 鉄筋工事
1 鉄筋工事の施工管理に関する基本事項
2 代表的な建築部材の配筋工事と品質管理
4・3・3 型枠工事
1 型枠の役割
2 型枠工法の種類
3 在来型枠工法による型枠工事
4・3・4 コンクリート工事
1 コンクリート工事のフロー
2 コンクリート仕様の決定
3 工場の選定と発注
4 受入れおよび受入れ検査
5 コンクリートの打込み
6 コンクリートの養生
4・3・5 代表的なRC床スラブ構法
4・3・6 代表的なRC壁構法
4・3・7 仕上工事
1 外装仕上げ工事(外壁における外気側)
2 内装仕上げ工事(外壁における室内側および内壁)
4・4 鉄骨造建築物の施工管理
4・4・1 工事の全体フロー
4・4・2 躯体工事
1 鉄骨製作工場における部材の製作
2 工事現場での鉄骨の組立て
4・4・3 代表的な鉄骨造の床構法
4・4・4 代表的な鉄骨造の壁構法

5章 維持管理,補修,解体

5・1 維持管理・維持保全
5・1・1 維持管理の重要性
5・1・2 建築物の維持管理のレベル
5・1・3 維持保全計画
5・1・4 維持保全に必要な住宅・建築物の履歴情報
5・2 鉄筋コンクリート部材の補修
5・2・1 劣化・調査・診断の例
1 劣化・調査・診断の定義
2 代表的な劣化現象
3 劣化の調査
4 劣化の診断
5・2・2 補修材料および補修工法の例
1 ひび割れの補修
2 欠損部の補修
3 浮きの補修・剥落防止
5・3 解体工事
5・3・1 解体工事の計画
1 事前調査と許可申請・届出
2 解体工法の選定
3 解体工事の安全確保
4 解体工事の環境保全
5 建設副産物の処理
5・3・2 解体工事概要
1 地上解体工事
2 地下解体工事
3 杭の解体工事

編著者

大久保孝昭(おおくぼ・たかあき)

広島大学大学院工学研究院(工学研究科建築学専攻)教授。1981年九州大学工学部建築学科卒業,同大学院修士課程および博士後期課程修了.九州大学助手・助教授,国土交通省建築研究所(後に独立行政法人建築研究所)建築生産研究室長・上席研究員などを経て現職.工学博士.共著に『型枠工事』『鉄筋工事』(東洋出版)など.
執筆者

鬼塚雅嗣(きづか・まさつぐ)

鉄建建設株式会社建築本部建築部建築技術部長。1981年九州大学工学部建築学科卒業,同大学院修士課程修了.技術士(建設部門),一級建築士.

閑田徹志(かんだ・てつし)

鹿島建設技術研究所上席研究員。1986年九州大学工学部建築学科卒業,同大学院修士課程修了,1998年ミシガン大学建設環境工学科大学院博士課程修了.Ph.D,一級建築士.共著に「コンクリートのひび割れと破壊の力学」「コンクリートの初期ひび割れ対策」など.

眞方山美穂(まかたやま・みほ)

国土交通省国土技術政策総合研究所住宅研究部住宅ストック高度化研究室長。1989年九州大学工学部建築学科卒業,同大学院修士課程修了.博士(工学),一級建築士.

近年の電子情報技術の飛躍的な進歩は,我々の日常生活を一変させました.高速通信ネットワーク技術の進歩により,パソコンでの情報交換や商取引は日常茶飯事となり,携帯電話やスマートフォンがなくては日常生活も滞ってしまいます.テレビはどんどん薄くなり,音楽もCDからネット配信へと変化してきています.建築生産現場でも,インターネットは不可欠となり,電子情報ネットワーク技術はメールによる情報伝達や情報入手のツールとして頻繁に使われています.最近では3次元CADを駆使したBIMの普及,ウェブによる工事情報の共有化など,電子情報交換技術は建設生産現場に欠かせない技術となっています.これらは当該分野の工学技術者の努力の賜です.

筆者は,建築生産技術そのものは,電子情報技術のようにドラスティックかつ華やかな技術革新を達成することのできる分野ではないと思っています.言うまでもなく建築物は一品生産であり,技術者の組合せは生産する建築物ごとに変化します.したがって,様々な建築生産を行うためには,すべての技術者が理解できる共通のルールが必要です.建築生産において新しい技術を導入するということは,皆が理解していたこのルールを変えることでもあり,困難も伴います.明確に設定した個別の目標を一つずつクリアして,着実に一歩ずつ進歩するのが建築生産分野だと思います.

地道に一歩ずつ進歩する建築生産に対して,それを取り巻く社会情勢は急激に変化してきています.特に,経済の衰退,高齢社会の到来により,建築生産はスクラップ&ビルドからストック&リノベーションに大きく舵を切りました.これに伴い,大学の建築教育においても,新築の設計を重視した教育から,改修設計や補修・補強技術に関する教育を重視すべきと考えている教員がどんどん多くなっているように思います.

本書は大学における「建築生産」や「建築施工」という科目の講義用テキストとして執筆しました.これらの講義は,要素技術に細分化された「様々な建築教育教科」をつなぐための授業として位置づけられます.いかに優れた意匠設計が出来上がっても,構造安全性が確保できなければ,設計は完了しません.優れた設計が達成されたとしても,施工方法が存在しなければ,設計図は絵に描いた餅にとどまってしまいます.素晴らしい性能を有する建築材料が開発されても,その性能を引き出す設計がなくては意味がありません.これらの有機的な連携を達成するためには,建築生産全体を大きく捉える必要があります.

大学の「建築生産」のテキストは,建築計画分野の技術者が執筆する場合と建築材料・施工分野の技術者が執筆する場合に大別されます.本テキストは後者の技術者が中心となって執筆作業を行いました.したがいまして,本書は「建築施工」と題する講義にも対応できる内容となっています.一級建築士・二級建築士の国家試験における「建築施工」の科目で過去に出題された試験問題も意識して解説を加えました.また,鉄筋コンクリート造の建築物に的を絞っていますが,維持管理分野における診断・補修・補強,そして解体に至るまでの基本的な技術を示しています.

2011年3月の東日本大震災により,我が国を取り巻く状況は一変しました.建築技術者の心の中には,一人の人間としても,専門家としても,復興のために何かを行わなければならないという意志が満ち溢れています.合理的な復興を達成し,人にとって安全で長寿命の空間を確保するために,分野の垣根を越えて,積極的に他分野の技術者と連携を深め,新しい技術開発を強く推進するのは今しかありません.そしてそのリーダーとなるのが建築分野の技術者であり,将来の皆さんです.

建築生産は,しっかりとした知識と経験を基盤とし,設定した目的を達成するために創意工夫をすることによって技術が進歩する分野だと思います.漠然と従来の方法を踏襲するだけでは,技術の進歩はあり得ません.
社会に出る前にしっかりとした知識を吸収するための教材,あるいは初めて実務に携わる際の参考書として,本書が皆さんの役に立てれば幸いです.

2012年12月

著者を代表して 大久保孝昭

本書は、教科書としてご採用くださった方に、著作権者様のご了解のもと、以下のデータを特典としてご提供いたしております。

提供特典:オリジナル図版のデータ

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