西国巡礼スケッチのコツ
内容紹介
必要なのはセンスや才能ではなくコツだった
心を落ち着かせ、人生を見つめなおす、巡礼の旅。その旅をより思い出深いものにするため、スケッチに挑戦!描き方の基本、道具の特性、構図の取り方、ワンポイントレッスン等、デザイナー歴30数年の著者が披露するコツを写真とスケッチの対比で学びながら、33ヵ所に番外の3寺を加えた全36寺をめぐる。所在地情報・御詠歌付。
体 裁 A5・144頁・定価 本体2200円+税
ISBN 978-4-7615-2374-9
発行日 2005-10-15
装 丁 古都デザイン
はじめに
西国33ヵ所札所地図
旅に出ませんか?
旅に出るときに持っていくもの
構図を楽しむ
寺院の部位の描き方
スケッチを楽しむ
●実力をつける!POINT LESSON
第1番 青岸渡寺
第2番 金剛宝寺(紀三井寺)
第3番 粉河寺
第4番 施福寺(槇尾寺)
第5番 葛井寺
第6番 南法華寺(壷阪寺)
第7番 岡寺(龍蓋寺)
第8番 長谷寺
第9番 南円堂
第10番 三室戸寺
第11番 上醍醐寺
第12番 正法寺(岩間寺)
第13番 石山寺
第14番 園城寺(三井寺)
第15番 観音寺(今熊野観音寺)
第16番 清水寺
第17番 六波羅蜜寺
第18番 頂法寺(六角堂) 第19番 行願寺(革堂)
第20番 善峯寺
第21番 穴太寺
第22番 総持寺
第23番 勝尾寺
第24番 中山寺
第25番 清水寺
第26番 一乗寺
第27番 圓教寺
第28番 成相寺
第29番 松尾寺
第30番 宝厳寺
第31番 長命寺
第32番 観音正寺
第33番 華厳寺
番外A 法起院
番外B 元慶寺
番外C 花山院
線画はここに気をつけて
彩色はここに気をつけて
スケッチをもっと楽しみたいあなたへ
おわりに
時間ができたから久しぶりにお寺でもまわってみようかなと思っている方は,結構おられるかと思います.行った記念に写真でも,と考えるのは当然です.
写真もいいのですが,自分の目で見て感じた風景をスケッチで残すことができれば,もっと想い出も深まることでしょう.
でも,絵は苦手,絵心もないし…….そう考えている方,今この本を手にとったあなたも,実はそう思っていませんでしたか?
スケッチは,ほんの基本的な,それも15分間くらいで理解できる基礎さえおさえれば,本当に楽しく描けるものなのです.先の著書『景観スケッチのコツ』(2002年刊)でたいへん好評を得た,絵を描くポイントを西国33ヵ所にあわせて今回も記載しています.一度この本を持って,33ヵ所めぐりの旅に出てみましょう.きっと,もっといろいろなところに行ってみたくなると思います.
2005年10月
宮後 浩
スケッチブックをバッグに入れて、旅でふと出会った風景を、さらりと描く。
それができたら、どんなに素敵だろう。
この本は、そうした漂泊のスケッチ願望に答えるばかりか、ページをめくるたびにお札所参りもできて、さらに描画テクニックも惜しげなく図解されるという、まさに一粒で二度も三度も美味しい内容になっている。
著者の宮後浩先生は、お遍路姿に身をやつしつつ、次から次へとめくるめく西国33ヶ所のお寺を、素晴らしい水彩スケッチで案内してくれる。私達が乗り込む列車の窓に映るのは、最初は白い紙にモノクロームの水平線、それから輪郭が現われ、次第にフォルムが、色彩が目に飛び込んで、しまいには光と影の鮮やかな世界の広がりにいつのまにか立っている。
実は、このスケッチ巡礼は、先生と一緒だと特急でラクラク♪なのだが、じゃあ一人で行ってみよう、となると途端に足取りが重くなる。そりゃ、そうだ。だって先生のように迷いのない水平線を一本引くのにも、戸外で踏ん張りながらスケッチして足の筋肉が鍛えられるのと同じくらいの修練があるはずなのだ。いや、もしかすると先生には無かった苦労かもしれないが、ともかく足元おぼつかないへなちょこビギナーを励まし、なんとかスケッチの楽しさを味わってもらいたいと、先生は本の中でさまざまな工夫を凝らしている。それが、構図、パース、建築の構造、物体の捉え方、影の表現、などの知識とテクニックの説明である。その内容密度の濃さたるや、本来なら1冊にとても収まるものではない。余りに濃すぎて、へなちょこビギナー(つまり私)としては、さらにへこたれそうになるのだが、水彩の広がる世界に憧れを持つ人には持っていて損の無い本だ。損の無いどころか、先々を明るく照らす常夜灯になること間違いない。
スケッチを描いてみて、その出来上がりにどこか不満を感じるなら、この本をどのページでもいいから開いてみると良い。優しく力のある線と、調和のある色彩のうちに、探している答えが必ず見つかるはずだ。
↓スケッチを描いてみました。
宮後式スケッチ気付いた点
- 1.本を読んだ直後は、HLを引く重要性がもう一つわからなかったけども、実際やってみると、
- 構図バランスを考えながらHLを引くことで、垂直方向のプロポーションは取りやすくなり、画面に収まりやすい。
- どの線が上がってどの線が下がって、というようなパース的な表現方法が明確になる。
- 2.HLラインは、お堂の階段のラインなどに吸収できる。
- 3.水平方向のプロポーションのずれが課題。
筆者は画面真ん中に補助軸を引いてみたりした。 - 4.決めた構図から大まかな形をとって大胆に線を引くのは初心者には(できれば消しゴムを多く使いたくないという気持ちから)勇気がいる。枚数を重ねて度胸をつけるしかないかな?
- 5.今までの自分のスケッチは、宮後先生のスケッチ工程の4分の3のところで終っていたと気付いた。褐色をベースにしながら濃く影をつけると、意外になじんで奥行きが出て良い感じ。
- 6.今までクロッキー帖に描いていたので、色づけ程度にしか絵の具を使ったことが無かった。ベーストーンを何度も重ねて陰影を出すには、ある程度厚みのある画用紙やワトソンやコットマンがオススメ。
- 7.携帯用の椅子を持ってれば便利。構図決めも躊躇せず、安定した良い線が引ける。
今回は京都の岡崎神社をスケッチしてみました。
サイズはほぼA4で、下書きに1時間半。途中寒くなっておなかも空いたので取り止めて、色づけは帰ってから3時間くらい。
普段はもっと適当に描いてしまうのですが、今回はディテールも頑張りました。
階段が少々間延びした構図になってしまい、建物脇のプロポーションも変。
燈籠の位置も、あれなんで!?
でもスケッチすることで、屋根の曲線の巧さや、木彫りの造作の美しさなど改めて認識できました。陰影をつける楽しさも初めて味わうことができました。宮後先生伝授のコツを意識しながら回数を重ねればきっともっと楽しく描けるようになると思います。
(京都造形大ランドスケープデザイン学生/藤津紫)
スケッチをしたいという方は多い。続けて絵心がないから無理だと言う。私はそんなことはないと思うのだが、どうすればよいのか分からない。著者はスケッチのコツは簡単なことばかりだと紹介してくれる。そこで実際にこの本にある通りにやってみた。第15番札所観音寺である。
彩色する前の段階は3つある。まず自分がなにを描きたいのかをはっきりさせる。そしてその印象を活かした構図を考えるとある。このことがもっとも大事なことだという。自分との対話が旅を深めると著者は考えているようだ。この本は旅の本でもあるのだ。観音寺の本堂は小さいながらも背の高い美しい姿をしている。その印象を描いてみよう。
次の下書き段階では、立体を描くためのコツを教えてくれる。透視図法で言うところのホリゾンタルライン(目の高さの水平線)とヴァニシングポイント(消失点)の設定だ。平易な解説で分かりやすい。そして設定に従っておおまかな形を下書きする。実は私はスケッチを我流で学んだので、これまで下書きというものをしたことがない。したがって描いているうちに画面に収まらなくなることも多い。このように下書き段階で十分吟味しておけばよいわけだ。
最後に下書きを消しながら清書をする。ここで私のスケッチブックのほうが小さいらしいことに気づいた。本のように細かいところが描けない。しかたがないので下書きを大きめに変更しながら清書を進める。そのうちに間違いに気づいた。下書きを変更した時点でホリゾンタルラインも下げるべきだったのだ。しかたがないので、これも修正しながら進める。
清書終了まで30分。しかし、どうにも寸詰まりなお堂になってしまった。自分が描きたい印象を甚だしく裏切っている。くやしいのでもう1枚、今度は我流で描いておいた。こうやって描いてみると自分のクセがよく分かっておもしろい。
著者は1946年大阪生まれ、多摩美卒業後1972年デザイン事務所を開設。続けて1973年に建築パースの教室を始めた。30年間の実践的な教育の経験がこの本の分かりやすさの源だろう。スケッチはコツを押さえれば面白いように描けるものだと私も思う。そしてこの本のとおりに進めれば、初心者であってもスケッチを完成させることができると思う。たとえ時間がかかったとしても完成した作品は何ものにも代え難いだろう。この本は初心者にもそして我流者にもおすすめの1冊である。
↓スケッチを描いてみました。
15番札所。垂直線が描けないのが私のくせ。どうしても自分のほうへ寄ってきてしまう。ということで、いつもははがきサイズで描いている。今回は本にあったように緑色の乾かないうちに茶色を落としてみた。いい感じ。
(西日本建築探偵団/円満字洋介)
担当編集者より
本書は、好評いただいた『景観スケッチのコツ』の第二弾として生まれました。
まったくのスケッチ初心者の方に読んでいただきたいのはもちろんですが、スケッチを趣味にされている方、描きなれている方にも、新たな発見をもたらす本であることと思います。
(G)