京都林泉協会 編著

内容紹介

小宇宙を読み解く為のエンサイクロペディア

日本の美的要素のすべてがつまった庭という空間を、いかに愛で、理解するか。70年をかけて全国の庭園を賞翫してきた京都林泉協会による、鑑賞のための知識を網羅した愛蔵版。地割、石組、垣根、燈篭、石造品、古建築など、構成要素のすべてを解説する。全国1300件の庭園一覧、関係年表、文献目録等研究のための資料も充実。

体 裁 四六・264頁・定価 本体2400円+税
ISBN 978-4-7615-2291-9
発行日 2002/08/30
装 丁 上野 かおる


目次著者紹介読者レビュー書評

序 / 旧版序

第一章 庭園鑑賞の基礎知識

日本庭園史概略

庭園の源流
飛鳥時代の庭園
奈良時代の庭園
平安時代の庭園
鎌倉時代の庭園
室町時代の庭園
安土桃山時代の庭園
江戸時代の庭園
明治・大正の庭園
昭和の庭園

地割の変遷

池泉地割
枯山水

石 組

須弥山・鶴亀蓬莱石組
三尊石組
滝石組
橋石組

苑路と垣

飛石
敷石

石造美術品

石燈籠
石塔類
手水鉢
梵字

茶室と露地(茶庭)

古建築


神社本殿形式
屋根と平面
組物詳細
蟇股
古建築の要部
書院造詳細図

庭園関連用語抄

第二章 全国庭園ガイド

全国日本庭園一覧

庭園遺跡一覧

重森三玲 略歴および作庭年表

第三章 庭園関係資料集成

茶家系譜ならびに歿年
茶人系図
日本画流派一覧
日本画家系図
前栽秘抄伝承関係藤原氏略系図
筆道系図
佛師系図
私年号表
年号索引
林泉年表
庭園関係書目録

索引 / 跋

京都林泉協会

昭和7年(1932)6月に造園家・庭園史研究家の重森三玲氏らを中心として創立された歴史ある日本庭園の研究団体。毎月第一日曜日を例会日とし、創立70周年の平成14年(2002)6月例会で833回を数える。

例会では、京都を主とした関西圏の庭園を中心に、仏像・建築・石造品など、関連する文化財を講師の解説を受けながら見学。年に5、6回はバスを利用して遠方へも足を運ぶ。

毎月発行の機関誌「林泉」は、会員相互の研究発表・研鑚の場となっている。

故重森三玲氏の監修により、昭和三六年京都林泉協会創立三〇周年を記念して、庭園見学ノート『林泉備要』が頒布された。この『林泉備要』が庭園文化研究の入門参考書として世に高評された実績に鑑み、さらなる学問的充実を計ったのが、前著『全国庭園ガイドブック』である。

この『全国庭園ガイドブック』は、古代から現代にいたる日本庭園の所在地、時代別手法、附属施設、用語、年代別索引など、おおよそ日本庭園の研究、鑑賞はもとより、すべての入門書的内容を具備した参考書として、昭和四一年誠文堂新光社より刊行された。庭園のみならず、古建築や石造美術、茶の湯にいたるまで、日本文化全般にわたる参考書として広く江湖に賞揚され、版を重ねること七版に達する良書と自負していた。

しかし、近年にいたり出版社の事情などで惜しまれつつ絶版となり、書店から姿を消してしまったことは、当会はもとより、庭園研究や調査を志す人たちには申し訳なく残念なことであった。創刊に当たって関係された先学諸氏にも申し訳なく、いつの日にか再版を、と念じていたところ、この度学芸出版社のご尽力により全面改訂作業が具体化し、かつまた当会創立七〇周年記念とも重なったことは、重森先生始め先学諸先生方が我々に課せられた使命とも感じ、非力の才を結集してここに刊行を決意した次第である。

しかし、初版刊行より三十数余年、その間社会情勢の変貌は著しく、地上に描かれた永遠の作品と定義された日本庭園にも、所有者の変動や災害、都市開発や公害にかかわる影響が容赦なく襲いかかる。また、近年にいたり大型重機を用いた考古学的発掘調査の進展は、従来地上施設のみでしか知り得なかった古代庭園の姿を、発掘作業で現代によみがえらせて研究資料を提供するなど、古代庭園研究の空白部分を再検討する機会を与えた。今回の改訂はそれらの事項を重点に、現時点で可能な限りの手段を尽くして、増補改訂に努力して利用者の利便を計り、他の追随を許さぬ良書と自負できるものである。

なお、本書は日本庭園に附属する細部手法や構築物、資材はもとより、関連する文化全般につき紙幅の許す限り収録している。本書一冊で庭園のみならず古建築、石造美術、文化、芸術分野の諸事項の検索ができ、研究者や専門家をはじめ庭園愛好者や観光旅行、さらに造園学科の副読本としても大いに利用できる携帯に便利な本で、多くの読者に広くお薦めしたい。

庭園はその国、地域の文化を代表する芸術作品の一つであるとともに、その消長を通じ地域の興亡や信仰・習俗など各種の歴史や生活側面を現代に伝える生き証人である。今までも住民の生活に密着し愛護されてきたが、さらに精神的文化昂揚に少しでも寄与するため、正しい庭園の理解が本書を通じて広く進まんことを願う。

本書の刊行に当っては、その根幹を作っていただいた先学のご苦心に深謝するとともに、それぞれ専門分野について協力頂いた京都林泉協会会員各位、面倒な再刊を引き受けてくださった学芸出版社の京極迪宏氏および、広汎な項目取りまとめにご苦労を掛けた永井美保さんに深甚な謝意を表する次第であります。

平成十四年八月

京都林泉協会会長 佐藤嘉一郎

作曲家武満徹は、日本庭園にも強い関心があって、彼の音楽活動の発想や作曲に、庭園をモチーフにした曲が多いことはよく知られているところです。「ファンタズマ・カントス」という曲は、庭園を回遊しながらその眺めをテーマにして作曲したといわれています。「小径にそって、あちこちと立ち止まりながら瞑想していく情景や心情をテーマにした」といわれます。どこの庭園がテーマになっているのか興味のあるところです。南北朝時代の名僧で作庭にも関与したといわれる夢窓国師にも強い関心があったのか、「ドリーム・ウインドゥ」という曲は、“夢”“窓”で、夢窓国師をイメージに作曲したように思われます。

その武満徹は「日本庭園は“空間芸術”である」と語っていますが、空間芸術、屋外芸術、総合芸術というのが日本庭園といえるでしょう。

近年、飛鳥地方はじめ、奈良、京都、全国各地で、庭園の調査や発掘が活発になり、新発見史料もつぎつぎと出て目が離せない状況です。また、世界の文化遺産にも批准されたりして国際的にもなり、日本庭園のアイデンティティや、由緒ただしい知識が必要な時代になってきました。

この日本庭園を鑑賞する上で、ひととおりの基礎的な知識があることによって、真の庭の美しさというか、多方面からの理解もでき、鑑賞の範囲も奥行きも広がっていくものと思います。また調査や研究する上においても、欠かすことの出来ない一冊『日本庭園鑑賞便覧』の新版が、このたび版元も新たに出版されました。まさに待望の書と言えます。旧版は『全国庭園ガイドブック』(昭和41年刊)でしたが、すでに廃刊になって久しく、再版が待たれていました。庭園と係わって30年間余になる小生ですが、文字通り座右の書として、またいつも鞄に持ち歩き、3度買い換えをしました。

本書の柱で圧巻は何といっても、「全国日本庭園一覧」です。全国の庭園の所在地を網羅した随一、唯一といってもよく、これには、編著である、重森三玲の創設した京都林泉協会のメンバーが、師の意志を継いで、追加しまとめあげたものです。その他にも林泉(庭園)年表、庭園関連用語抄もあり、幅広い庭園文化は、建築、茶道、石造美術など、その周囲の芸術文化を鑑賞する上で必要な事項が、殆ど網羅されているといっていいでしょう。勿論これ一冊で十分というものではありませんが、写真や図版も適切で、庭園関係書目録等の欄もあり、文字通り、庭園鑑賞や研究のガイドブック、ハンドブックとなるもので、学生をはじめ日本庭園に関心を持つ人にまず進められる一冊です。

(兵庫大学美術デザイン学科非常勤講師/西 桂)


『全国庭園ガイドブック』の待望久しかった改訂新版が出版された。『日本庭園鑑賞便覧―全国庭園ガイドブック―』、四六判264ページ。旧版同様、小さな体裁であるが、中に詰まっている情報の量たるや驚くべきものがある。

「第1章:庭園鑑賞の基礎知識」では、日本庭園史の概略を記した上で、地割の変遷、石組、苑路と垣、石造美術品、茶室と露地、古建築について豊富な図版と写真を駆使して解説し、さらに庭園関連用語抄を付している。「第2章:全国庭園ガイド」は、北海道から沖縄まで全国に残る日本庭園1278庭を時代・様式・所在地付きで紹介した全国庭園一覧に加え、庭園遺跡一覧、重森三玲先生の略歴・作庭年表で構成される。「第3章:庭園関係資料集成」には、三千家をはじめとした茶家系譜、日本画流派一覧、前栽秘抄伝承に関連する藤原氏略系図、古代から現代に至る林泉年表などがおさめられ、さらに年号索引、庭園関係図書目録までついていてまことにありがたい。

豊富な内容を持つ本書の中でも、特筆すべきが第二章の中心をなす全国庭園一覧である。国の史跡名勝に指定されたり、観光ガイドブックにのるような有名な庭園はともかくとして、全国各地には一般には知られることの少ない庭も数多い。しかも、庭は建物と違い屋敷の外からでは存在がわかりにくい。そうしたなか、旧版を引き継ぎ全国の古庭園を網羅したこのリストのもつ意義ははかりしれない。そして、交通機関も未発達の時代に、全国津々浦々に庭園調査の足をのばされ、このリストの基盤を作られた重森先生の熱意とエネルギーには今さらながら頭が下がる思いである。

日本庭園史を研究する立場からあえて苦言を呈すれば、第1章のなかには解釈上いかがかと思われる部分が全くないわけではないし、第2章の庭園遺跡一覧に載せる物件に追加してほしかったものもある。しかし、そうしたことを差し引いたとしても、この本の持つ価値がその小さな体裁をはるかに越えるものであることは、言うまでもない。秋。この一冊をたずさえて、庭園めぐりに出かけてみませんか。

(独立行政法人文化財研究所奈良文化財研究所文化遺産研究部主任研究官/小野健吉)

担当編集者から

第一回執筆者会議に京都林泉協会の方々が持参されたのは、びっしりと書き込みがなされ、たくさん付箋のついた『増補改訂版 全国庭園ガイドブック』(昭和55年刊)でした。

毎月の編集会議では、日本庭園が持つ深遠な背景、多岐にわたる構成要素、新たな発見や旧来の見識について、どこまでを掲載すべきかが、何度も何度も話し合われました。

そして、1年以上の歳月を経て、ようやく完成したのが本書です。

日本庭園は、何故かくも美しく、心癒される不思議な空間なのでしょうか。
学芸出版社のあるここ京都の地には多くの名庭が存在し、日本人ばかりではなく、たくさんの外国人をも魅了してきました。わが国固有の風土が育んだ、美的要素の一形態が日本庭園である、ともいえます。

この美しい小宇宙を読み解くために必要な知識が、ぎゅっと詰まった一冊です。小脇に抱えて庭園をめぐり、行く先々で開いてみてください。

(G)

『建築士事務所』((社)日本建築士事務所協会連合会) 2002.11

70年をかけて全国の庭園を賞翫してきた京都林泉協会(昭和7年に創立された庭園研究団体)による、庭園鑑賞のための知識を網羅したエンサイクロペディア愛蔵版。歴史と思想、地割、石組、苑路、石造品、建造物等、庭園の構成要素をすべて解説し、さらに、全国1300件の名園と所在地を一覧、また関係年表、文献目録等、研究のための資料も充実した一書。

『建築とまちづくり』(新建築家技術者集団発行) 2002.10

建築設計をしていて、どこまで庭園のデザインに取り組むのか。それは人によって随分違っているものと思う。建築家一人の頭で考えるのか、それともいい造園設計家や造園師がいて、建築家が相談しながら庭園計画を進めていくのか。それも人によって異なっている。

このガイドブックのはじめには、「日本庭園史概略」が語られている。1時間ほどあれば十分に読める内容である。一応通読すると、これまでになんとなく見学してきた庭園を、あらためて見直したくなる。知ることの嬉しさと、知らないことのつまらなさを思い知らされているともいえる。私にとっては初めてのガイドブックであったが、ある出版社が扱っていた前身があり、その再版といえる本であることが前書きで理解できた。

「古代から現代にいたる日本庭園の所在地、時代別手法、附属施設、用語、年代別索引など、おおよそ日本庭園の研究、鑑賞はもとより、すべての入門書的内容を具備した参考書……庭園のみならず、古建築や石造美術、茶の湯にいたるまで、日本文化全般にわたる参考書」と前書きで解説されているとおりのガイドブックである。何より読者にとって嬉しいのはコンパクトであることである。まとめる人間にとっては一番大変な作業であったに違いない。

章立ては、第一章が庭園鑑賞の基礎知識、日本庭園史概略に始まり、地割の変遷、石組、苑路と垣、石造美術品、茶室と露地(茶庭)、古建築、庭園関連用語抄。第二章は全国庭園ガイド、全国庭園一覧、庭園遺跡一覧、重森三玲略歴および作庭年表。第三章は庭園関連資料集成として茶家系譜、茶人系図、日本画流派一覧、日本画家系図などなかなか珍しい資料が含まれている。茶人にも必要な知識がいっぱいであるといってもよい。

ガイドブックなのでこのような紹介となってしまったが、大切なのは利用する本人次第でどうにでも役立ち得る本であるということだろう。

(ま)

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