空き家の手帖

六原まちづくり委員会・ぽむ企画 著

内容紹介

「あなたの家、空き家にしていませんか?」。地元の空き家に悩んだ住民自らが、実体験をもとにイラストと会話形式でまとめた空き家対策。空き家とは何か?に始まり、片付けの心得、活用のノウハウ、相続や耐震改修への素朴な疑問、お金の心配にも答える。持ち主、近隣住民、自治体関係者空き家に悩むすべての人へ贈る一冊。

体 裁 A5・92頁・定価 本体1000円+税
ISBN 978-4-7615-1365-8
発行日 2016/10/01
装 丁 仲村健太郎・たかぎみ江


目次著者紹介はじめにおわりに

1章 あなたの家、空き家にしていませんか?

うちの家は「空き家」にはしていませんけど……?
空き家にしておいても、誰も困らないでしょう?
人が住むから、家が傷むんですよね?
空き家の管理に、手間や時間をかけられません。
空き家を放置しておくと、どうなってしまうのでしょう……?
コラム「空き家が地域に及ぼす影響」

2章 空き家を活用しましょう

こんなボロい家、誰も借りてくれないでしょう?
借り手にどんな使い方をされるのか不安です。
大家さんになるのって、大変そう。
家は一度貸したら、返って来ないと聞きますが。
いっそ更地にしたら、いいのでは?
コラム「賃貸借契約の期間を定められる定期借家契約」

3章 活用のノウハウ

道路に面していないので、建て替えられません。
建物を改修するのにローンを借りられますか?
耐震改修って必要なの?
耐震改修、何をすればいい?
空き家を活用するには、お金がかかるんでしょう?
・空き家活用の実例1「傷んだ空き家を、借り手主導で改修。」
・空き家活用の実例2「祖父から継いだ空き家を、住人自ら工事。」
・空き家活用の実例3「最小限の準備で、空き家を居住用の賃貸物件に。」
・空き家活用の実例4「購入した空き家を大工棟梁に頼んで本格改修。」
・空き家活用の実例5「空き家歴15年。実働3時間の片付けで活用へ。」
・空き家活用の実例6「路地奥の空き家を、店舗兼住宅として再生。」
コラム「空き家対策特別措置法の制定について」

4章 今日から始める空き家相続

空き家と相続ってどう関係があるの?
うちには財産なんて、ありません。
不動産を相続しました。
相続の準備、何をしたらいいですか?
相続のこと、誰に相談すればいいのでしょうか。
コラム「不動産登記名義の放置がもたらす悪循環と対策」

5章 片付けが、空き家防止の第一歩

将来、空き家を相続するかと思うと憂鬱です。
片付けといっても、どこから手をつけていいかわかりません。
物を大量に処分したい時、どうするべき?
仏壇があるので、家を貸したり売ったりできません。
コラム「空き家予防に役立つ片付けの心得」
六原まちづくり委員会 空き家に関する活動記録

六原まちづくり委員会

京都市東山区の六原学区(人口約3,300人)の自治組織「六原自治連合会」の下部組織として2011年に発足した地域自走型まちづくり組織。
空き家対策と防災まちづくりを軸にまちの課題解決に取り組む。
http://rokuhara.org

ぽむ企画

平塚 桂、たかぎみ江による編集プロダクション。京都と鎌倉を拠点とする。
建築・不動産・まちづくりといった分野を中心に、編集、 出版、イベント企画、執筆、イラスト等を手がける。
http://pomu.tv

『空き家の手帖』は全国の空き家の所有者や、空き家でお困りの地域の皆様に向けて、空き家解消・予防のための考え方や使い方をわかりやすく、読みやすくお伝えする書籍です。この本は、元はといえば、京都のまちづくり組織「六原まちづくり委員会」が地域の方に配布するために自主制作した、小さな冊子でした。

六原まちづくり委員会は京都市東山区にある六原学区の自治連合会の下部組織で、2011年に設立されました。前身は10、11年度の「京都市地域連携型空き家流通促進事業」として京都市の支援を受け、学識経験者や専門家とが連携しながら空き家流通に向けての調査・提案などを行った六原学区の住民によるグループです。12年度からは地域自立・自走型のまちづくりを開始し、地域住民に加え、行政や、不動産や建築、まちづくりの専門家など、多彩な人材と協力しながら進めています。

なぜ六原学区が空き家問題に取り組み、『空き家の手帖』を制作することになったのでしょうか。背景には、空き家を要因とする地域の課題と、空き家調査からの発見がありました。六原学区は、京都市東山区、清水寺と鴨川の間、五条通北に位置します。学区内は観光地に囲まれた市街地で、古い町家も数多く残っています。歴史性と利便性を兼ね備えた恵まれた環境にありながら、一部の建物が空き家として放置され、地域の防災や治安に悪影響を及ぼしつつありました。一方で2011年、学区内に小中一貫校ができたことを背景に若い世帯の転入希望者が増え、住宅需要はあるものの供給が追いつかない状況でした。六原まちづくり委員会が空き家流通を促進すべく、空き家の所有者に事情をヒアリングしたところ、所有権や相続の問題がこじれている、片付けをする時間がない、知らない人に家を貸すのが不安といった、流通する以前の問題を抱えていることがわかってきました。そこで六原まちづくり委員会は14年3月、空き家の所有者に向け、空き家との付き合い方の基本を伝える冊子『空き家の手帖』を制作したのです。発行した3500部のうち1800部は空き家の問題点と流通の大切さを地域の住民にお知らせするため、六原学区全世帯に配布しました。

2014年の私家版刊行後、地域住民のみならず、全国のまちづくりに関わる専門家などから大きな反響があり、このたび学芸出版社から刊行されるはこびとなりました。それにあたり、空き家発生の大きな要因にも関わらず紹介できていなかった第5章「片付けが、空き家防止の第一歩」と、空き家の活用事例の追加、およびコラムの刷新をしております。本書が空き家解消への取り組みの手助けとなり、将来の空き家を生まないためにどうすべきかを考える、きっかけとなれば幸いです。

2016年9月   六原まちづくり委員会 委員長 菅谷幸弘

2014年3月に発行した私家版『空き家の手帖』は全国的に空き家についての取り組みがクローズアップされた時期とも重なり、各方面から大きな反響をいただきました。刊行をきっかけに、六原での空き家活用とまちづくりにも注目をいただき、各種メディアでの紹介や、全国への出張講演依頼、全国からの視察対応依頼を受けることも増えました。京都の一地域での取り組みや、そこから生まれた冊子の内容が、全国の空き家対策の参考になるという、大きな手応えを得ることができました。そして2年半の間にいただいたさまざまな反響が、このたびの学芸出版社からの刊行へと結びつきました。

刊行までには、たくさんの方々のご協力をいただきました。私家版『空き家の手帖』は東山区まちづくり支援事業の助成と、東山 アーティスツ・プレイスメント・サービス(HAPS)および京都市景観・まちづくりセンターの協力を受けて刊行されました。この場を借りて改めて御礼申し上げます。そして本書刊行の機会と的確なご助言をくださった学芸出版社の井口夏実さん、日頃から六原まちづくり委員会の活動を支えてくれている六原自治連合会の皆様に、心より感謝申し上げます。

2016年9月   六原まちづくり委員会 委員長 菅谷幸弘