建築ドリル

「建築ドリル」編集委員会 編

内容紹介

線の引き方に始まり、平面、立体表現など建築製図の基礎を、初学者が手を動かしながら学ぶ入門トレーニング。シンプルで具体的な課題、独学や自宅学習にも使いやすいレイアウトで、教師・学生ともが親しめる構成を工夫した。図面表現や図面読解の基礎から、名建築を例に構造別の特徴を読み取る応用編まで、丁寧に導いている。

体 裁 A4変・96頁・定価 本体1800円+税
ISBN 978-4-7615-1301-6
発行日 2012/03/15
装 丁 小川 明郎

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目次著者紹介まえがきあとがき

第1章 基礎編:図面表現の基礎

01身体寸法
02線の練習
03平面図1
04平面図2
05断面図
06立面図
07縮尺
08配置図
09周辺断面図
10らせん階段
11傾斜した壁
解説 その1図面の種類
解説 その2特殊な場合の切断面の位置
解説 その3縮尺と図面表記の変化

第2章 基礎編:立体表現の基礎

12アクソメとアイソメ
13アクソメ・内部空間
14パースの基礎
15一点透視図法
16二点透視図法
解説 その4投影法について
解説 その5平面斜投影法(アクソメトリック図)について
解説 その6パースラインについて

第3章 基礎編:図面読解の基礎

17ヴォイドとマッス
18内部と外部
19内部空間の光と陰影
解説 その7図面読解とドローイング

第4章 応用編:名建築に学ぶ

20木造建築に学ぶ1(前川國男自邸):なぞる1
21木造建築に学ぶ2(前川國男自邸):なぞる2
22S造建築に学ぶ1(ファンズワース邸):なぞる
23S造建築に学ぶ2(ファンズワース邸):ヴォイドとマッス
24S造建築に学ぶ3(ファンズワース邸):内部と外部
25S造建築に学ぶ4(ファンズワース邸):光と陰影
26RC造建築に学ぶ1(住吉の長屋):なぞる1
27RC造建築に学ぶ2(住吉の長屋):なぞる2
28RC造建築に学ぶ3(住吉の長屋):ヴォイドとマッス1
29RC造建築に学ぶ4(住吉の長屋):ヴォイドとマッス2
30RC造建築に学ぶ5(住吉の長屋):内部と外部1
31RC造建築に学ぶ6(住吉の長屋):内部と外部2
32RC造建築に学ぶ7(住吉の長屋):光と陰影1
33RC造建築に学ぶ8(住吉の長屋):光と陰影2
解説 その8前川國男自邸について
解説 その9ファンズワース邸について
解説 その10住吉の長屋について

植南草一郎

1966年生まれ。建築家、京都造形芸術大学環境デザイン学科教授。京都大学大学院博士課程在学中の1994年、河井敏明・中村潔・馬場徹らと共に一級建築士事務所「建築少年」設立。2000年、田岡佳江子と共に「ケンチクイロハ」設立、現在に至る。

この本は建築設計教育の基礎学習のための教材です。

建築設計教育はどこの学校でも通常、名作建築の図面トレースからはじまることでしょう。しかしよく考え直してみると、この図面トレース課題は非常に多岐にわたる内容を包括したものになっていて、全くの初学者である皆さんたちにとっては、予備知識なしには上手く受け止めることができなくても当然なのかもしれません。

そこでこの教材では、まずは図面の基礎に触れることと、図面を通した空間読解に関する感覚を養うことに主眼を置いて、他の要素を可能なかぎり省略して構成しています。そして、道具の用意や理解、線に対する正確な理解とその実践を飛び越えて、学習の全体像を大まかに理解するために「なぞる」という手法を採用してあります。ちょうど小学生の漢字ドリルのようにグレーで印刷されたお手本をなぞることからはじめる、ともかく手を動かしながら図面表現や空間表現の基礎、図面読解の基礎などの理解を進めようと意図された教材です。大学での授業に臨む前段階の演習教材として、あるいは自宅学習向け教材として活用されることを期待しています。

本書の前半では図面表現、立体表現の基礎をそれぞれ学びます。正しい製図法を学ぶためには、このドリルだけでは不十分ですが、建築空間の表現手法の概要を掴むためには大いに役立つことでしょう。

後半の第3 章では、建築空間の様子を図面から読み取るための基礎的手法として3 つの手法を取り上げます。製図法を理解することも重要ですが、図面に込められた意味を読み解くことは更に重要です。そのための基礎をここで学びます。そして第4 章では、実際の建築作品を題材に空間読解の実践を行います。ここでは木造、S 造、RC 造からそれぞれ前川國男自邸、ファンズワース邸、住吉の長屋の3 作品を選んであります。それぞれ特徴的な空間を持つ3 つの名作住宅の図面を、手を動かしながら読み込むことで何が見えてくるか。じっくりと取り組んで欲しいと思います。同様の学習はこの教材を離れても可能でしょう。ここでの学びを契機として、より多くの事例を学んでいって欲しいと思っています。
なお、この本には『図形ドリル』という名前の妹がいます。こちらは、本書を手に取る前に学んで欲しい、平面・立体表現など造形の基礎を学ぶ教材です。ご一読ください

この教材は2008年度以来、京都造形芸術大学通信教育部の建築デザインコースと空間演出デザインコースで使用されている自宅学習向け教材を再編集したものです。この大学の通信教育部には、20代後半から40代を中心に働きながら学ぶ学生たちが集まります。彼らの中には建築デザインや空間デザインはもちろんのこと、デザイン全般に関しても全く初学者である方が大勢います。そんな彼らにデザインを教える際に苦労することは、やはり図面というものをどの様に受け止めるかにあります。
「そんなに図面に慣れないのであれば、いっそのこと漢字ドリルみたいになぞってはどうか」、そんな突拍子もないことを言い出したのは、講師もお願いしている建築家の佐々木龍郎さんでした。

「図面」と聞くと肩に力が入ってしまう学生諸君たちに対して、手軽に取り組みながらも決して表層的な事柄のみに留まらず、より幅広い学びの入口になり得るような教材。なぞって学ぶドリル教材をその様に位置づけ、試行錯誤を重ねて本書はできあがりました。建築デザインや空間デザインを学び始める人たちも、これから目指そうとする人たちも、まず最初に気軽に手に取って欲しいと思っています。

最後に、学芸出版社の井口夏実さんをはじめ、本書ができるまでにご尽力頂いたみなさんに感謝します。どうもありがとうございました。

2012年1月 植南草一郎・上田篤