集合住宅の騒音防止設計入門

安藤 啓・中川 清・縄岡好人 他著

内容紹介

年間10万戸が新築されるマンションをはじめとする集合住宅は最も騒音トラブルが発生しやすい。本書は、ゼネコン出身の音響設計のプロが蓄積してきたトラブル事例やノウハウを結集し、交通・生活・設備から発生する各種騒音の原因から、騒音を防止する対策と効果までわかりやすく解説。設計・施工の実務に役立つ入門書。

体 裁 A5・160頁・定価 本体2400円+税
ISBN 978-4-7615-2654-2
発行日 2017/09/15
装 丁 森口耕次


目次著者紹介まえがき

Ⅰ部 音の基礎知識

1章 音の種類と特性

1.1 音の聞こえ方
1.2 音の表示方法
1.3 騒音の定義と種類
1.4 空気伝搬音と固体伝搬音
コラム① 騒音防止設計では防げない生活騒音
コラム② コンクリートは音も水も抜けていく

2章 材料の音響特性

2.1 遮音材料
2.2 吸音材料
2.3 防振材料
2.4 制振材料
コラム③ サッシや換気口の性能も大切だが、 室内の吸音も
コラム④ 二重壁には太鼓現象がつきもの

3章 遮音性能と評価

3.1 性能水準の考え方
3.2 室間遮音性能と評価方法
3.3 床衝撃音の遮断性能と評価方法
3.4 室内の静けさと評価方法
コラム⑤ 集合住宅での普通の生活とは
コラム⑥ 太陽は不思議な音を発生させる

Ⅱ部 騒音の発生メカニズムと防止設計

4章 屋外騒音の防止設計

4.1 道路交通騒音
4.2 鉄道騒音
4.3 地下鉄騒音
コラム⑦ 騒音源とは別のところから騒音が聞こえる?

5章 生活騒音の防止設計

5.1 界壁の遮音
5.2 話し声、テレビの音、ステレオの音
5.3 重量床衝撃音
5.4 軽量床衝撃音
5.5 浴室からの落下音
5.6 トイレからの放尿音
5.7 トイレなどの排水音
コラム⑧ お互い様では済まされない床衝撃音
コラム⑨ コンクリート壁に鉛シートを貼っても遮音は改善できない

6章 設備騒音の防止設計

6.1 給水設備の音
6.2 給湯設備の音
6.3 ディスポーザー、排水処理槽の音
6.4 送風機の音
6.5 t自動扉の音
6.6 空調室外機の音
6.7 受変電設備の音
6.8 エレベーターの音
6.9 駐輪設備の音
6.10 機械式駐車設備の音
6.11 電動シャッターの音
コラム⑩ 気になる純音成分の設備系騒音
コラム⑪ 暗騒音によって音の聞こえ方は変わる

編者

NPO法人建築音響共同研究機構

建築音響や騒音、振動の技術分野に関する情報の発信やネットワークの構築、さらにはノウハウの提供などの普及啓発を目的として2013年に設立され、現在25名の会員で構成されている。主な会員は大学名誉教授を含む教員とゼネコンの音響研究者であり、音響技術向上のための情報発信および講習会や見学会の開催による教育授業などを主体に活動を行っている。

著者

安藤啓(あんどう・けい)

Ⅱ部冒頭解説

株式会社安藤環境コンサルタント代表取締役。1970年鹿島建設株式会社入社、技術研究所勤務。2011年より現職。博士(工学)、環境計量士、日本騒音制御工学会認定技士、NPO法人建築音響共同研究機構理事長。

中川清(なかがわ・きよし)

3章 3.3、5章5.3、5.4、5.5、コラム1、2、5、8

音工学研究所代表。1974年清水建設株式会社入社、研究所勤務。2012年より現職。博士(工学)、一級建築士、日本騒音制御工学会認定技士、NPO法人建築音響共同研究機構理事。

縄岡好人(なわおか・よしひと)

1章、3章3.1
音工房SANGEN代表。1974年株式会社大林組入社、技術研究所勤務。2012年より現職。博士(芸術工学)、NPO法人建築音響共同研究機構理事。

平松友孝(ひらまつ・ともたか)

5章5.6、5.7、6章、コラム10、11
株式会社音環境研究所代表取締役。1975年大成建設株式会社入社、技術研究所勤務。2008年より現職。博士(工学)、一級建築士、一級管工事施工管理技士、日本騒音制御工学会認定技士、NPO法人建築音響共同研究機構理事。

益田勲(ますだ・いさお)

イラスト、コラム6
日本交通技術株式会社顧問。1971年東急建設株式会社入社、技術研究所勤務。1999年より現職。博士(工学)、一級建築士、技術士(建設部門、応用理学部門)、NPO法人建築音響共同研究機構会員。

吉村純一(よしむら・じゅんいち)

2章、コラム3、4
一般財団法人小林理学研究所理事。1976年小林理学研究所入所。2010年より現職。博士(工学)、NPO法人建築音響共同研究機構副理事長。

渡邉秀夫(わたなべ・ひでお)

4章、コラム7
株式会社音環境研究所技術部長。1969年戸田建設株式会社入社、技術研究所勤務。2004年より現職。博士(工学)、一級建築士、技術士(建設部門)、NPO法人建築音響共同研究機構会員。

綿谷重規(わたや・しげのり)

3章3.2、3.4、5章5.1、5.2、コラム9
音響計画エンジニアリング代表。1974年株式会社フジタ入社、技術研究所勤務。2012年より現職。一級建築士、技術士(応用理学)、環境計量士(騒音・振動)、日本騒音制御工学会認定技士、NPO法人建築音響共同研究機構理事。

集合住宅では、壁や床などを介して隣人の住居と接して住んでいるので、特に生活騒音が聞こえやすい構造になっているのが実情です。また、集合住宅の壁や床は、事務所やホテルなどの建物と比較して遮音性能の良い構造を採用している場合が多いのですが、その使い方によっては騒音問題が発生する場合もあります。

集合住宅ではこのような建物内外で発生する騒音をできるだけ少なくするように遮音設計がなされていますが、その場合でも近隣からの騒音がまったく聞こえない状況を保証しているわけではありません。

さらに、問題となる騒音源としては、居室を取りまく上下左右の部屋からの生活騒音以外にも、共用設備などから生じる設備騒音、屋外の道路交通騒音や鉄道騒音など各種あります。そのような状況から、集合住宅では騒音のトラブルが多発しているのが現状です。

本書では、こうした騒音の問題に対して「トラブルをなくしたい」とか「簡単に解決したい」と考えている設計者や施工者に向けて、その対応策をできるだけやさしく示し、かつまた気をつけなければいけない事項を重点的に防止設計方法としてまとめています。

騒音防止設計の基本となる目標値の設定は、2016年に日本建築学会から発行された『集合住宅の遮音性能・遮音設計の考え方』(以降、本書では日本建築学会の「考え方」と記す)に基づいています。騒音の問題はこの目標値を満足していれば十分かというと、そうでもない側面も持ち合わせていて、居住者の住まい方や生活習慣の違いによって発生する場合もあるため、それらの注意点についてもできるだけ丁寧に紹介しています。

NPO法人建築音響共同研究機構では、集合住宅の騒音に関する多くのトラブル事例やノウハウを蓄積しています。そこでそれらを結集して、音の基礎知識から、目標値の考え方、集合住宅で発生しやすい騒音の問題と防止設計法をできるだけ平易に記述しました。

本書は、Ⅰ部の「音の基礎知識」とⅡ部の「騒音の発生メカニズムと防止設計」で構成されています。Ⅰ部では、1章「音の種類と特性」、2章「材料の音響特性」、3章「遮音性能と評価」について解説しています。特に3章では先に述べた日本建築学会の「考え方」に基づく新しい評価法を紹介しており、今後の指標となるような考え方を示しています。

Ⅱ部では、4章「屋外騒音の防止設計」、5章「生活騒音の防止設計」、6章「設備騒音の防止設計」について解説しています。各章では、騒音の種類に応じた防止設計法を、多くの実務経験から得たノウハウをもとに紹介しています。

本書が、これから集合住宅を設計しようとしている技術者にはもちろん、現に騒音のトラブルを抱えている方にも活用していただけることを期待しています。

2017年8月

NPO法人建築音響共同研究機構出版部会

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