窓がわかる本

中山繁信・長沖 充・杉本龍彦・片岡菜苗子 著

内容紹介

苦手とする設計者が多い開口部のデザイン。様々な条件を満たしつつデザイン性と機能性を両立させることは難しい。本書は、その手ごわい窓の役割を見直し、空間を豊かにするための工夫をイラストで図解。ハイサイドライトやトップライト、半屋外空間、間仕切りの活用、景色の取り込み方など、設計に活かせるアイデアが満載。

体 裁 A5・160頁・定価 本体2200円+税
ISBN 978-4-7615-2624-5
発行日 2016/07/05
装 丁 フジワキデザイン


目次著者紹介はじめにおわりに紙面見本
はじめに

1章 窓の世界誌

01 世界の窓をめぐる
02 日本の窓をめぐる
03 窓のあゆみ―西洋・日本

コラム 縦長の窓から横長の窓へ──窓の概念を変えた巨匠のデザイン

2章 窓を活かすアイデアとデザイン

1 窓辺を楽しむ

01 ファサードを彩るおしゃれな棚窓
02 窓辺につくる小さな畑
03 男の憧れ、ミニ書斎
04 出窓を活かした主婦コーナー
05 眺望抜群のボックスシート

2 景色を取り込む

06 風景が絵画になる小窓
07 外部とのつながりが生む開放感
08 連続性を引き出す窓の配置

3 心地よい光を導く

09 ハイサイドライトは優等生
10 トップライトが変える空間
11 光を落とし込む吹抜け
12 住宅密集地で活きるトップライト
13 隣家の上から採光する
14 空間を演出するトップライトボックス

4 外部との接点を工夫する

15 サンルームで快適な半屋外空間
16 適度な囲まれ感のある外部空間
17 外と内の境界をゆるやかにする
18 光と風と視線を制御する78
19 人の気配が行き来するスクリーンフェンス
20 自然環境を活かすパッシブデザイン

5 開口とプランニングの妙技

21 開口部と空間イメージ
22 プライバシーを守るコートハウス
23 構造体を活かしたカーテンウォール
24 眺望を犠牲にしないプランニング
25 遠景や自然を引き込む配置
26 窓の役目をリ・デザイン

6 建具と間仕切りを使いこなす

27 フレキシブルに開け閉めする
28 建具枠をなくして窓を消す
29 壁を楽しく変える
30 開閉できる格子状の間仕切り壁
31 動かす、仕舞う、間仕切り収納
32 アルミサッシの再活用

コラム 内側へ開くドブロブニク・ウィンドウ

3章 開口部の形式と窓のしくみ

窓は家と街の表情をつくる

1 窓の開閉方式と特徴

01 引き違い窓
02 両開き窓
03 片開き窓
04 外倒し窓
05 内倒し窓
06 上げ下げ窓
07 はめ殺し窓
08 すべり出し窓
09 縦すべり出し窓
10 引き込み窓
11 ルーバー窓
12 突出し窓

2 扉の開閉方式と特徴

01 外開き
02 内開き
03 ガラリ戸(鎧戸)
04 大戸
05 スイングドア
06 回転ドア
07 半自動ドア
08 動物用ドア
09 猫間障子・雪見障子
断面から見た開口部の名称と形式

3 戸の基本的な構造

01 框戸
02 フラッシュ戸
03 障子
04 襖
05 建築構造別アルミサッシの納まり

4 ガラスについて

01 単板ガラス
02 複層ガラス

5 障子戸の様々な意匠

おわりに

中山繁信(なかやま しげのぶ)

法政大学大学院工学研究科建設工学修士課程修了。
宮脇檀建築研究室、工学院大学伊藤ていじ研究室を経て、工学院大学建築学科教授(2000~2010)。現在、(有)TESS計画研究所主宰。
主な著書『住まいの礼節』『イタリアを描く』『美しい風景の中の住まい学』『世界で一番美しい住宅デザインの教科書』『世界のスローハウス探検隊』『手で練る建築デザイン』『現代に生きる境内空間の再発見』ほか多数。

長沖 充(ながおき みつる)

東京芸術大学大学院美術研究科建築専攻修士課程修了。
小川建築工房、(有)TESS計画研究所を経て、現在、長沖充建築設計室主宰、都立品川職業訓練校非常勤講師、会津大学短期大学部非常勤講師。
著書『見てすぐつくれる建築模型の本』、共著書『階段がわかる本』『やさしく学ぶ建築製図』『矩計図で徹底的に学ぶ住宅設計』『矩計図で徹底的に学ぶ住宅設計(RC編)』他。

杉本龍彦(すぎもと たつひこ)

工学院大学大学院修士課程修了。杉本龍彦建築設計事務所主宰。
共著書『矩計図で徹底的に学ぶ住宅設計』『矩計図で徹底的に学ぶ住宅設計(RC編)』。

片岡菜苗子(かたおか ななこ)

日本大学大学院生産工学研究科建築工学専攻修了。現在、篠崎健一アトリエ勤務。

窓は住宅を含むすべての建築において、その建築の外観を決定づける要素の一つである。そればかりでなく、室内環境をコントロールする重要な装置でもある。そうしたデザイン性と機能性などを両立させることは、専門家といえども、技術的に、やさしいことではない。それが建築のデザインにおいて最も難しいのが「窓のデザイン」であるといわれる所以である。

窓、出入り口などの開口部は、採光、通風、景観などのために有効に機能しなければならない。光や心地よい風が入ってくるのは歓迎だが、悪い空気は排出しなければならない。美しい景色を眺めたいが、逆に外から覗かれる心配もある。また、大きな開口は心地よい陽光を室内に導いてくれるが、反面、暖冷房の負荷となる面もある。このように、開口部はある一つの状況を満たせばよいものでなく、相反する条件を満たさねばならない。

視野を広げてみると、国家や民族間の争いが多い時代や地域では、窓は防備性が優先されてきたし、害獣の侵入にも対処しなければならなかったろう。決してデザイン性や快適性だけで形づくられてきたのではない。
この本は、窓や出入り口などの開口に焦点を当てて、その役割を再度見つめ直すことによって、居住空間がより快適になり、さらに自然と一体化した住環境のために窓の役割が大切であることを記したものである。アイデアの中には構造、法律などの制約によって実現できない場合もあると思うが、読者諸氏の生活を豊かにするヒントになれば幸いである。

中山繁信

本書を書き終えて、あらためて窓というものが私たちの暮らしの中で、いかに大切なものであるかを再認識させられた次第である。

最初に申し上げたとおり、建築において、窓や扉などの開口部は、一つの用途を満たすだけでは不十分で、相反する諸条件を一つの形態と単純な仕組みで対応しなければならない。さらに、建物の外観、内観を決定づける大きなデザインエレメントでもある。巨匠たちでさえ、窓のデザインは難しいのだから、私たちはなおさらである。

ただ、「窓は建築の眼(まなこ)」というように、風や光を通すためだけでなく、近隣や街など社会との関わりを持つための大切なエレメントである。日本を訪れた外国の人々が、シャッターの付いた窓を見て「せっかく窓があるのに、閉めておいてはもったいない」「倉庫が並んでいるようで街並みが美しくない」という意見に、私たちは真摯に耳を傾けることも忘れてはならない。

窓を通して各家の生活の気配が街にこぼれることによって、安心して歩ける街並みになる。セキュリティ、プライバシーを心配するあまり、シャッターや雨戸で「眼」を閉じてしまっては大切なものを見失うことになってしまいかねない。

重ねて申し上げるが、本書の中のアイデアについても、様々な条件にすべて適応できるわけではないことは言うまでもない。一つのヒントと考えていただきたい。そして、読者の方々が、この著書を読んで、少しでも広い視点で「窓」の重要性を知ってもらうことができれば幸いである。

中山繁信


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