直感で理解する!構造設計の基本

山浦晋弘 著/日本建築協会 企画

内容紹介

著者の実務家・教員としての豊富な経験をもとに、設計者としての心得から構造計画、設計、施工に至るまで、実務で押さえておくべき項目や設計上の盲点(落とし穴)を、難しい数式を用いず、手描きのイラストや写真、図表と平易な文章で直感的に理解できるよう解説。構造設計の基本的な考え方と設計のセンスが身につく一冊。

体 裁 A5・216頁・定価 本体2400円+税
ISBN 978-4-7615-2619-1
発行日 2016/04/01
装 丁 森口 耕次


目次著者紹介まえがき正誤情報
まえがき

第1章 構造設計を始める前に

第1節 構造設計を始める前に

1 構造設計はあみだくじ?
2 耐震安全性って何?
3 暗記することをあきらめる
4 直感を大事に
5 ブレーンを持とう
6 手計算のすすめ
7 勝敗のつかない取り組み

第2節 構造設計者としての心得

1 国語力を身につける
2 力の流れを読む習慣
3 マクロな視点、ミクロな視点
4 モノは大きさをもっている
5 迷ったときは上下ではさむ
6 バランス感覚
コラム ふつうの構造

第2章 構造計画編

第1節 耐震グレードを設定する

1 インフォームド・コンセント
2 どうやって建物を壊すか
3 ボディビルダーか、レイバック・イナバウアーか
4 どこでフェイルセーフを確保するか

第2節 竣工後のことを考える

1 用途・レイアウト変更で困らないために
2 増築はつきもの
3 更新のたびに増える設備荷重
4 ソーラーパネルは載せられない?

第3節 事前調査を行う

1 現地に行ってわかること
2 地盤を知る
3 鉄骨や杭はすぐに手に入らない

第4節 構造計画を立てる

1 建物用途とモジュール
2 どこに柱をおとすか
3 部材を細くするには
4 どういう構造形式にするか
5 どの構造種別にするか
6 どの基礎形式にするか
7 どの杭工法にするか

第5節 構造計画の実践

1 天井裏の攻防
2 意匠設計者と調整すべきこと
3 設備設計者と調整すべきこと
4 RC造の床組はこれで決まる
5 S造の床組はこれで決まる
6 やってはいけない耐力壁の配置
7 SRC造で最初に決めるべきこと
8 敷地条件で制約される構工法
コラム ハイヒールのはなし

第3章 構造計算編

第1節 感覚で理解する構造力学

1 力のつりあい
2 モーメント
3 曲げモーメント
4 せん断力
5 軸方向力
6 CM0Q0
7 境界条件を想像する
8 応力をどこまでも追いかける

第2節 手計算でRC造を理解する

1 そもそもRC造って?
2 つりあい鉄筋比のもつ意味
3 ひび割れを読む
4 概略断面を手計算で求めよう(1) 地震力
5 概略断面を手計算で求めよう(2) はり
6 概略断面を手計算で求めよう(3) 柱
7 概略断面を手計算で求めよう(4) 床スラブ

第3節 荷重・外力

1 風のはなし(1) 風荷重が建物高さだけで求められた?
2 風のはなし(2) 使える旧風荷重算定式
3 亀の甲って何だ?
4 雪のはなし
5 津波のはなし

第4節 構造計算あれこれ

1 一貫構造計算プログラムのはなし
2 スラストのはなし
3 べた基礎のはなし
4 耐震診断の基本的な考え方
コラム 今考えるとよくできているn倍法

第4章 構造設計編

第1節 意外なもので決まる納まり

1 運搬で決まるはり継手長さ
2 工具で決まるSRC造柱の鉄骨形状
3 仕口の溶接で決まる鉄骨ばりのレベル差
4 最初から決まっている胴縁、母屋ピッチ

第2節 想像力で理解しておく納まり

1 どう施工するかを頭の中でイメージする
2 鉄筋は上から下から左右から
3 邪魔な基礎フーチング
4 RC小ばりの2段配筋を避ける理由
5 RC造スラブ配筋で配慮したいこと
6 揃えたいべた基礎の底版厚さ
7 構造スリット位置はよく考えて

第3節 現場での不具合をなくすために

1 たわみを侮るなかれ
2 続・たわみを侮るなかれ
3 鉄骨造は出隅の納まりでチェック
4 ねじれる鉄骨
5 亜鉛めっきはここに注意
6 はりの変形にまつわるトラブル
7 引張ブレースで気をつけたいこと

第4節 さらに伝えたいこと

1 シンプル・イズ・ベスト
2 気くばり一つで躯体は美しくなる
3 待たない、待たせない
4 とにかくスケッチを
5 BIM活用について考える
6 防災、減災は総力戦
7 信頼される設計者に
コラム 単位系のはなし

付録 いざという時、役立つ構造設計チェックリスト
あとがき
参考文献

山浦晋弘(やまうら のぶひろ)

1958年大阪府に生まれる。1984年に大阪市立大学大学院工学研究科(建築学専攻)卒業後、株式会社安井建築設計事務所入社、現在に至る。構造部長。2010年より大阪市立大学非常勤講師。
一級建築士、構造設計一級建築士、JSCA建築構造士、APECエンジニア。

構造設計の入門書や解説書はたくさんありますが、構造力学や建築基準法で定められた計算方法の解説が多く、実際に造る建築物の視点から構造設計を解説した本がありません。

筆者は1984年より30年以上、組織設計事務所で構造設計に携わってきましたが、その傍らで大学の非常勤講師として「建築構造学」や「設計演習」の講義を行ってきました。その対象は必ずしも理系の学生だけではなく文系の学生も混じるため、できるだけ彼らの直感に訴えることを心がけてきました。

人間の直感というのは、長年の生活体験で無意識のうちに培われたものです。コンピュータがいくら進歩しているとはいえ、瞬時に判断する人間の直感力に勝るものはないと考えています。交差点を斜めに渡ろうとするのは、それが最短距離だと経験的に学習しているからです。二点間の最短距離は直線であるという幾何学の公理を学校で教わらなくても、みんなわかっていたはずです。

構造力学の世界においても、自分の直感が正しいということが多々あります。その直感は新たな経験によってさらに磨きがかかり、時には「危険なにおい」を教えてくれるのです。何か新しいことを始めるとき、いきなりディテールに目を向けるのではなく、まず感覚的にとらえることも大事ではないかと考えます。

一方、建築作品の品質は、プロジェクトメンバー間の信頼関係やコミュニケーションの良否によっても大きく左右されます。だからこそ、意匠設計者や設備設計者、そして施工者間で設計コンセプトを共有する必要があるのです。お互いの立場を理解、尊重しあうことはプロジェクトの円滑な進行には欠かせないものと言えるでしょう。また、建築物を造る中で、分業化が進むあまりお互いの領域に無関心でいては、すぐれた建築は生まれません。もてる知恵を出し合って、協働することによってはじめて良質な社会資産を残すことができると考えます。

本書は、構造設計者としての経験、新入社員の配属実習、大学の非常勤講師としての講義、設計演習などを通して解説した構造設計にまつわる話題をもとに、設計者としての心得から構造計画、設計、施工にいたるまで、実務でおさえておくべき項目や設計上の盲点(落とし穴)などを、イラストや写真、図表を用いながら平易な文章で解説しました。また、設計チェックリストとしても活用できるように配慮しました。とくに、これから建築構造を学ぼうとする学生や構造設計をやり始めたばかりの実務者を対象に、できるだけ直感に訴えるスタイルで執筆し、いつどこから読んでもらってもよいように構成しています。

この本を手にとって読んでくださった方が、構造設計っておもしろそうだ、やりがいがありそうだ、と感じてもらえたなら、これほどうれしいことはありません。

山浦晋弘

第1版第1刷の正誤情報

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