スポーツツーリズム・ハンドブック

日本スポーツツーリズム推進機構 編/高橋義雄・原田宗彦 他著

内容紹介

誘致・主催に携わる地元の方、ツアーを造成する旅行業の方のための入門書。スポーツツーリズムとは何か、どんな人が関わっているのか、どんなお客さまか、イベント誘致・主催のために必要なこと、イベントやツアーのマーケティングやマネジメント、地域振興のためのポイントについて、事例も加えて易しく具体的に解説する。

体 裁 B5・136頁・定価 本体2000円+税
ISBN 978-4-7615-2602-3
発行日 2015/08/10
装 丁 KOTO DESIGN Inc. 山本剛史


目次著者紹介はじめにおわりにイベント正誤情報

はじめに

第1章 スポーツツーリズムとは何か

1 スポーツツーリズムの今

1. スポーツツーリズムの広がり
2. スポーツツーリズムができること
3. するスポーツツーリズムの現状
4. 観るスポーツツーリズムの現状

2 スポーツツーリズムのこれから

1. スポーツイベントの発達とツーリズム
(1)スポーツイベントの類型化
(2)スポーツイベントを誘致する組織
(3)観光地をマネジメントする組織:DMO
2. 国際化するスポーツツーリズム
(1)オリンピックとスポーツツーリズム
(2)ラグビーワールドカップとスポーツツーリズム
(3)英国プレミアリーグとツーリズム
(4)大リーグキャンプとツーリズム

第2章 スポーツツーリズムには誰が関係しているのか

1 スポーツイベントとツーリズムの基本構造

1. スポーツツーリズムの基本的機能
2. 旅行目的としてのスポーツアトラクション
(1)地域資源を活用したスポーツイベント
(2)アウトドアスポーツの可能性
3. するスポーツにツーリストが求める経験
(1)スポーツツーリストの顧客経験価値
(2)トライアスロン参加者の参加動機
(3)その他のエンデュアランス(持久性)スポーツ
4. 観るスポーツイベントに参加するスポーツツーリスト
(1)Jリーグのアウェイサポーター
(2)アウェイサポーターの実態
(3)大規模スポーツイベントの観戦者

2 必要なのはマーケティングの発想

1. なぜマーケティングが必要なのか
2. マーケティングという考え方
3. ターゲットを明確にする
(1)スポーツツーリズム市場の調査と分析
(2)ターゲットの設定
4. マーケティング・ミックスの四つのP
5. マーケティングの発想を取り入れた事例
(1)ターゲットに合わせた情報提供
(2)ターゲットに合わせたサービス提供のタイミング
(3)無形のプロダクトのコンテンツを伝える工夫

第3章 スポーツツーリストはどのように行き先を決めているか

1 スポーツツーリストの意思決定メカニズム

1. スポーツツーリストの意思決定
2. スポーツツーリストの意思決定モデル
3. スポーツツーリスト行動モデルの進展
(1)スポーツツーリスト行動のAIDMAモデル
(2)スポーツツーリスト行動のAISASモデル
(3)スポーツツーリスト行動のAIDEESモデル
4. 経験経済と経験価値マーケティング

2 スポーツデスティネーション

1. スポーツデスティネーションと地域への愛着
(1)スポーツデスティネーションとは何か
(2)スポーツツーリストのデスティネーション・イメージ
(3)デスティネーション・イメージと地域愛着
2. スポーツデスティネーションの現状
(1)アトラクション
(2)リゾート
(3)ツアー
(4)イベント

3 インバウンド旅行者

1. 訪日外国人旅行者の動向
2. スキーリゾートにおける外国人スポーツツーリストの行動

第4章 スポーツイベントのマネジメント

1 スポーツイベント業

1. イベント産業とは
2. イベントの波及効果
3. スポーツ産業界とイベント

2 スポーツイベントの構造

1. スポーツイベントの種類
2. スポーツイベントの分類
3. スポーツイベントの構成要素

3 スポーツイベントのコンテンツ制作

1. スポーツイベントのアイデア発想
2. スポーツイベント企画の作成法
(1)スポーツ化
(2)フィールド化
(3)モダン化
3. スポーツイベントの企画書作成

4 スポーツイベントのプロデュース

1. スポーツイベント制作の組織
2. スポーツイベントのプロデュース
3. スポーツイベントとプロジェクトマネジメント
(1)立ち上げプロセス(企画段階:企画開発、組織結成など)
(2)計画プロセス(計画段階:基本計画、制作準備など)
(3)実行プロセス(制作・実施段階:本番の実施と運営など)
(4)監視コントロールプロセス(制作・実施段階:推進チェックと改善など)
(5)終結プロセス(収束段階:報告、組織解散など)

5 スポーツイベントの評価

1. スポーツイベントの定義
2. スポーツイベント制作の目的
3. スポーツイベントにおける成功とは

第5章 スポーツイベントツアーのマネジメント

1 スポーツイベントツアーの形態

(1)「する」スポーツイベントツアー
(2)「観る」スポーツイベントツアー
(3)支える(育てる)スポーツイベントツアー

2 スポーツイベントツアー商品造成の計画立案

1. 旅行業務
2. スポーツイベントツアー商品造成に必要な要素
3. スポーツイベントツアー形態別の必須要素と留意点
(1)「する」スポーツイベントツアー:事例)マラソン大会参加ツアー
(2)「観る」スポーツイベントツアー:事例)オリンピック競技大会観戦ツアー
(3)「支える(育てる)」スポーツイベントツアー:事例)スポーツボランティア募集
4. スポーツイベントツアー商品造成と販売の留意点
(1)「する」スポーツイベントツアー商品
(2)「観る」スポーツイベントツアー商品
(3)「支える(育てる)」スポーツイベントツアー商品

3 スポーツイベントツアーのリスクマネジメント

1. スポーツイベントツアー形態別リスク要因
(1)「する」スポーツイベントツアーの主なリスク
(2)「観る」スポーツイベントツアーの主なリスク
(3)「支える(育てる)」スポーツイベントツアーの主なリスク
(4)権利関係のリスク
2. リスクの軽減

4 旅行・観光業の役割、課題

第6章 地域活性化とスポーツツーリズム

1. 受け入れ自治体からみたスポーツツーリズム
2. 活性化の核となるスポーツコミッションの役割
3. スポーツツーリズムによる地域のブランディング

用語集

参考文献

索引

おわりに

著者

一般社団法人日本スポーツツーリズム推進機構

執筆代表

高橋義雄/筑波大学体育系准教授

執筆者

青木淑浩/近畿日本ツーリスト株式会社地域誘客事業部長・スポーツ事業部部長
岡星竜美/東京富士大学経営学部イベントプロデュース学科教授、一般社団法人日本イベント産業振興協会(JACE)認定研究員。
工藤康宏/順天堂大学スポーツ健康科学部先任准教授。
二宮浩彰/同志社大学スポーツ健康科学部教授。
原田宗彦/早稲田大学スポーツ科学学術院教授。
松岡宏高/早稲田大学スポーツ科学学術院教授。
山下 玲/早稲田大学大学院スポーツ科学研究科。

「スポーツツーリズム」は、スポーツで人を動かす仕組みづくりのことですが、わが国において、この言葉に対する認知度はきわめて低い状況でした。筆者が2005年12月16日にグーグル検索を試みたところ、英語の“tourism”のヒット数は1億4200万件あり、“sport tourism”のヒット数は、約1割の1450万件でした。それに対し、日本語の「スポーツツーリズム」のヒット数はわずか211件とほとんどなきに等しい数字でしたが、2015年1月28日現在では、「スポーツ観光」が329万件、「スポーツツーリズム」が128万件のヒット数になるなど、過去10年間で、スポーツツーリズムに対する認知度は大きく高まりました。
その一方、長期休暇が制度化され、旅行者の多くがスポーツを楽しんできた欧米では、スポーツツーリズムに対し、早くから注目が集まっていました。1980年代には、スポーツツーリズムに関する研究が徐々に活発化し、1993年には、スポーツツーリズムの研究誌である“Journal of Sport & Tourism”が創刊され、90年代後半には、研究によって蓄積されたナレッジ(知識)を体系化した教科書が発行されるようになりました。これによって、高等教育におけるカリキュラム化が進み、スポーツツーリズム分野の人材養成が始まりました。

日本においてスポーツツーリズムに関する取り組みが本格化するのは、2005年に社団法人日本ツーリズム産業団体連合会(TIJ) が開催した「ツーリズムサミット2005」で、「スポーツとツーリズム」がテーマとして設定されたころからです。本サミットでは、旅行業界とスポーツ業界の連携のなかで、スポーツ体験型イベント、スポーツ観戦、国際大会の誘致などを進める狙いがありましたが、講師の一人として参加した筆者も、500名という参加者の多さと会場の熱気から、スポーツツーリズムの将来的な発展を予感しました。

その後日本では、2007年に観光立国推進基本法 が制定され、翌年の2008年には観光庁が創設されました。これを機に、観光産業の育成をオールジャパンで推進する体制が整い、その後のスポーツツーリズムを推進する基盤が築かれました。2010年には観光庁でスポーツツーリズムが提唱され、2011年のスポーツツーリズム推進連絡会議 の設置と2012年のスポーツツーリズム推進基本方針 の策定、そして(一社)日本スポーツツーリズム推進機構(JSTA)の設立と、一連の流れのなかで認知度が高まっていきました。さらに観光立国推進基本計画 (2012年)とスポーツ基本計画 (2012年)のなかにスポーツツーリズムの文言が使用されたこともそれ以後の動きを加速化させる要因となりました。

本書の目的は、新しい概念であるスポーツツーリズムの、日本における知識体系の教科書化にあります。前述したように、スポーツツーリズム推進基本方針に沿ってJSTAが設立されたが、人材養成は、スポーツコミッションの設立支援とともにJSTAの中核事業の一つになっています。今後スポーツツーリズムがさらなる発展を遂げるには、その業界を熟知した人材の養成が必要です。前述の「スポーツ基本計画」においても、「3. 住民が主体的に参画する地域のスポーツ環境の整備」のなかの(2)地域のスポーツ指導者等の充実において、「国及び地方公共団体は、大学、スポーツ団体及び企業等と連携して、スポーツツーリズムや観光によるまちづくりに関する専門的知識を有する人材の育成」を行うことを促進するとともに、(4)地域スポーツと企業・大学等との連携において、「国及び地方公共団体は、例えばスポーツツーリズムによる地域の活性化を目的とする連携組織(いわゆる『地域スポーツコミッション』)等の設立を推進するなど、スポーツを地域の観光資源とした特色ある地域づくりを進めるため、行政と企業、スポーツ団体等との連携・協働を推進する」といった具体的施策が述べられています。よって、国の指針としての人材養成と、スポーツツーリズムを熟知した人材が働く場所としてのスポーツコミッション的な組織の設立は急務です。

本書は、これからスポーツツーリズムを学ぶ、学生や社会人の入門書として刊行されるもので、専門学校や大学、そして誘致や主催に関わる地元の方々、ツアーの造成に関わる旅行社の方々が最初に学ばれる本としての活用が期待されます。スポーツツーリズムには、スポーツを「観る」「する」ための旅行やスポーツを「支える」人々との交流、スポーツが楽しめる隠れた地域資源の発掘と魅力化、そしてスポーツイベントの誘致やインバウンド観光の促進など、多様な視点を盛り込んだ「スポーツによって人が動く仕組みづくり」の構築が必要となります。今後本書が、スポーツツーリズムを支える人材養成と、全国的なスポーツと観光の振興に貢献できれば、それは筆者らの望外の喜びです。

2015年6月30日
早稲田大学/一般社団法人日本スポーツツーリズム推進機構代表理事 原田宗彦

本書は、日本スポーツツーリズム推進機構が初めて出版する、スポーツツーリズム実践者のための入門書です。第1章では、スポーツツーリズムの全体像を把握し、さらに実践的な知識を得るためにスポーツツーリズムとは何かについて紹介しました。我が国では、これまでもスポーツを「する」ため、「観る」ために多くの人々が、夏には海水浴、山登り、冬にはスキーに、そして母校の応援に甲子園に出かけていました。また学校では林間学校、臨海学校、スキー教室で旅行し、また運動部は合宿のために避暑地や暖地に移動していました。しかし近年では、より多くの人々がスポーツを「する」・「観る」ために移動することが日常化するようになりました。そうした社会的な変化を感じ、スポーツツーリズムを推進する仕組についても取り上げています。

第2章では、スポーツツーリズムを成立させている基本構造を紹介しています。スポーツツーリスト側の参加動機など研究も進んできました。またマーケティングの発想が非常に重要になっていることは他の産業分野と同様です。

第3章では、スポーツツーリストをより具体的に分析しています。スポーツツーリストが旅に出ようと意思決定する仕組みをすることで、より多くのスポーツツーリストを受け入れることができるのではないでしょうか。また今日では海外からのインバウンド旅行者の増加策が求められます。スポーツツーリズムもインバウンド旅行者の増加に大いに貢献できると思います。

第4章では、スポーツツーリズムを創出するために必要なスポーツイベントをつくりあげるための知識を得ることを目的として執筆されています。これからはスポーツイベントのアイデアを企画に落とし込み、実現するためのプロデュース方法を学ぶことがスポーツツーリズムの関係者として大事になります。またスポーツイベントもやりっぱなしではいけません。スポーツイベント自体を評価し、PDCAサイクルを回してよりよいスポーツイベントとすることがスポーツツーリズムの振興にもつながるでしょう。

第5章では、スポーツ愛好者のツアーを造成するためのツアー企画の視点から書かれています。スポーツイベントのツアーは旅行業務でもあり、スポーツツーリズムには交通機関、ホテル、旅行代理店などが欠かせません。スポーツイベントをツアーの対象とすることのリスクについて紹介されていますので、これからツアーを企画・造成しようとする方には参考になると思います。

第6章では、スポーツツーリズムが地域活性化に好影響を与えるための方策について地方自治体の視点、さらには現場となるスポーツコミッションについて紹介しています。

スポーツツーリズムはアイデアと実行力次第で地域に大きなインパクトを与えます。地域活性化のために本書が役立つことを願ってやみません。最後になりますが、執筆者を代表して本書の刊行にあたってご尽力を賜った学芸出版の前田裕資様に心からお礼を申し上げます。

2015年6月30日
筑波大学/一般社団法人日本スポーツツーリズム推進機構常任理事 高橋義雄

※終了しました

スポーツツーリズムの「現在」と「これから」

本書出版記念イベント@京都を15年11月6日を開催しました。講師は原田宗彦、二宮浩彰、松永敬子先生

JSTAセミナー in SPORTEC 2015

7月29日(水)に「スポーツツーリズム・ハンドブック出版記念セミナー」が開催されました

本書に誤りがございました。正誤表をご覧ください。

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