場のデザインを仕事にする
内容紹介
建築的思考とビジネス的思考、テクノロジー的思考を掛けあわせ、コワーキングスペース、パーティクリエイション、リノベーション住宅のオンラインマーケット等の事業を展開するツクルバ。6年前に2人で起業、建築、不動産、IT、デザイン等多様なメンバーが集い「場の発明」を仕事にしてきた、スピード感溢れるドキュメント。
体 裁 四六・208頁・定価 本体1800円+税
ISBN 978-4-7615-1366-5
発行日 2017/07/05
装 丁 柴田 慧
1章 建築設計から枠組みのデザインへ ──起業までのプロセス(中村編)
建築家への憧れ
枠組みのデザインへの興味
働き方を学んだデベロッパー時代
建築ストックという社会的課題を解決する
プロデュースという仕事に出会う
2章 プレイヤーからオーガナイザーへ ──起業までのプロセス(村上編)
新しいものを生みだす人になりたい
事業の原体験
企業の本業を通じた社会貢献
一人で仕切る限界、挫折
一度就職してみる
リストラと転職
インターネット事業のダイナミクス
3章 「場をつくる」会社をつくる ──なぜ起業したのか
きっかけは小さなカフェから
三倍速で生きる
本気のチームを組む
ツクルバというネーミング
時代が変わるタイミングに起業する
4章 小さなストーリーと大きなストーリーをつないでいく ──事業のつくり方
co-ba ──新しいチャレンジが生まれるワーキングコミュニティ
クリエイターのレーベルをつくりたい
サンフランシスコ視察へ
コワーキングスペースの事業モデル
お金をかけずにムーブメントを起こす
ビルオーナーを説得する
場づくりのプロセスを外に開く
コミュニティとの向きあい方
増床して新しいチャレンジ
再びクラウドファンディング
進化するゲリラ戦
ライブラリーというコミュニケーションツール
振る舞いのロールモデルを自ら示す
co-baネットワークは全国へ
各地の文脈に合わせたローカライズ
ネットワークで共有する価値観
進化する第三世代のco-ba
旅するように働き、新しい産業をつくる
hacocoro ──心ふるえる体験をプロデュース
仲間と始めた実験から
全体を束ねるブランドが必要だ
マイナスをプラスに変える、人が人を呼ぶ枠組み
多くの若いキャストとつくる
池袋から全国へ
心ふるえる体験をスタンダードに
tsukuruba design ──企画・設計・運営に軸を通す
空間デザイン・プロデュース会社からの脱皮
それぞれの「良い」が重なるところをつくる
企画~設計~運営に軸を通すためのパノラマな視点
組織のあり方とオフィスのデザイン
組織におけるデザインチームのあり方を実験する
cowcamo ──日本の住まいにオルタナティブをつくる
自分たちの強みを再編集し、社会課題に向きあう
プロトタイプから改善を繰り返す
売り手を買い手が交差する「市」をつくる
中古リノベーションマンションのメリット
日本の住まいにオルタナティブをつくる
5章 場の発明を通じて欲しい未来をつくる ──発明し続ける組織を目指して
同じゴールを違う視点から見る
事業計画は走りながら考える
初速が大事
第二創業期へ
組織のタテの力とヨコの力を組みあわせる
多言語型コミュニティとしての会社
共創できる組織のつくり方
場の発明のフレームワーク
現代のデザインを統括する場づくり
場の発明を通じて欲しい未来をつくる
はじめまして。
この本は「場」をキーワードに事業をつくっている
ツクルバという会社の創業者二人で書いた本です。
個人の想いから事業のタネが生まれ、
それを育てながら、チームが会社という組織になっていく。
その過程で考えたことを時間軸に沿って本にしました。
この本を手に取ってくれているあなたはどんな方だろう。
「場のデザイン」という言葉が気になるという方でしょうか?
もしくは、今の仕事に向きあうことに少し悩んでいる方? 少しでもあなたの「?」とつながる話ができれば
こんなに嬉しいことはありません。
あなたがつくりたい「場」はどんな場ですか?
そして、どんな「仕事」をつくってそれを実現していきますか?
そんなことを頭の片隅に考えながら、この本を読んでみてください。
創業から六年目。これまでもこれからも、道無き道を行く挑戦の毎日です。
これまでになかった「場」をつくり、それを当たり前にしていきたい。
そして目指すのは、事業を通じて社会を進化させること。
この本にまとめた実践はまだまだ数少ないですが、
そのなかから場のデザインを仕事にするヒントを
見つけていただけたら幸いです。
ツクルバ 中村真広・村上浩輝
この本の構成について
1章と2章は、ツクルバという会社の創業者二人が起業するまでを、それぞれ自分語りで書きました。個人的な原体験を知っていただいたほうが、なぜツクルバという会社を立ち上げ、場をつくる事業をしているのか、をより理解していただけると思います。
3章は起業の頃の話。何がきっかけで人生が変わっていくのか、誰も予測なんてできません。一歩踏み出すことに悩んでいる方にこそ、読んでいただきたい章です。
そして4章は、社会に必要とされる「場」を想像しながら「仕事」をつくり、それを形にしていく実践を事業ごとにまとめました。場のデザインの実例集としてお読みください。
最後に5章。場を発明し続ける組織を目指す上で、どのようなことを大切にしているかを書いています。これからチームをつくって活動していこうとしている方にとって、参考になれば幸いです。
「場のデザインとはどんな仕事なのか?」
「場をつくる会社にしよう!」と「ツクルバ」という社名をつけたものの、まず僕ら自身が自問自答しながら、「場のデザイン」という仕事をつくってきました。「こんなものがあったらいいのに」と社内の雑談から始まるプロジェクトや、他の会社から依頼をいただいて始まるプロジェクトなど、さまざまな種を蒔きました。そのうちのいくつかは芽が出ましたが、ちゃんと育つのは片手で数えられるくらいでした。そのくらいの確率です。でも蒔いた種の数だけ、自分たちが考える理想の「場」に形を与えてきました。
仕事は誰かに与えられるものではなく、自分でつくるものだと思います。自分から仕掛けていく仕事はわかりやすいですね。誰にもお願いされないわけですから、自分が動くしかありません。一方で、任されるところから始まる仕事もある。最初の仕事は小さくても、主体的に取り組むことで仕事の成果が信頼につながり、より大きな仕事が舞い込みます。未来にどんな仕事が待っているかは、過去の仕事次第です。つまり、どんな始まり方をするにせよ、未来の仕事は自分でつくるものなのだと思います。
同じく、場も与えられるものではなく、自ら参加してつくるものだと思うのです。楽しそうにしている人の近くには、楽しい時間を過ごしたい人が集まってきます。本気で仕事に情熱を注いでいる人の近くには、想いを共にする人たちが集まります。でも、人々が集まるきっかけをつくった張本人だけでは場になりません。そこに集まった人々が主体的に参加していくことで、そこに場が生まれていくものです。
「場をデザインすること」と「仕事をつくっていくこと」。自分から主体的に関わっていく姿勢は、この二つに共通していることです。
この本の始まりで、
あなたがつくりたい「場」はどんな場ですか?
そして、どんな「仕事」をつくってそれを実現していきますか?
そんなことを頭の片隅に考えながら、この本を読んでみてください。
と書きました。
つくりたい「場」を想像しながら、「仕事」をつくり、それを形にしていく。この本で書きたかったのは、そのプロセスです。ツクルバという会社を事例に、そのプロセスでどんなことを考えてアクションをしてきたのかをまとめました。それを参考にして、あなたが何か自分なりの一歩を進めてくれたとしたら、こんなに嬉しいことはありません。
最後になりましたが、この本を書くきっかけをいただき、編集を担当して下さった学芸出版社の宮本裕美さん、co-ba花巻で出会い編集協力をしていただいた北山公路さん、エッジの効いたブックデザインを手がけてくれた柴田慧さん、そして社内で出版プロジェクトを担当してくれた柴田紘之、多久美聡、ありがとうございました。それぞれの協力がなければ、この本は生まれなかったと思います。
「場の発明を通じて欲しい未来をつくる」という旗を掲げた僕らの旅は、まだまだスタートしたばかり。この本で書いた内容を越えて、もっと先を目指します。あなたの旅と僕らの旅が交差するところで、またお会いしましょう!
2017年5月 ツクルバ 中村真広・村上浩輝