木がわかる

佐道 健 著

内容紹介

本当に活かせてますか?素材の特色、木の力

住まいに自然素材を求める施主が増え、木材利用はますます盛んになってきた。しかし建築のプロでも、意外に木材の基礎知識を知らないのが現状だ。木材には相応の長所と短所があり、特徴がある。本書では、木のメカニズムを理解し、正しい木のものづくりができるように、とかく間違えやすい事柄を中心に50の疑問に答える。

体 裁 A5・224頁・定価 本体2200円+税
ISBN 978-4-7615-2257-5
発行日 2001/03/30
装 丁 尾崎 閑也


目次著者紹介まえがき書評

Ⅰ いろいろな木

01 竹は木? それとも草?
02 針葉樹材と広葉樹材の大きな違い
03 ベイマツやカラマツも松の一種?
04 国産材と外材 どちらが優れている?
05 年輪からなにがわかる?
06 心材は辺材よりも強い?
07 節のない木はそれほど価値があるのか?

Ⅱ 木材の材質と性能

08 木の材質の決め手はなにか?
09 軽い木と重い木 どこが違うか?
10 木材の強さと寿命
11 ヒノキとスギ どちらが強い?
12 E130などの表示はなにを表わすか?──基準強度と許容応力度
13 材質一覧表の見方
14 どのような性能に注目して木を選ぶ?
15 木材の成分 どんなものがある?

Ⅲ 木の家を検証する

16 そもそも木の家とは?
17 安全で住み易い木の家を造る基本
18 住まいの木材 どんな役割を果たしている?
19 軸組工法の弱点はどこ?──継手と仕口
20 適材適所で木を使う
21 建築用の国産材 どんなものがある?
22 建築に使われる輸入針葉樹材の種類は?
23 木造建築はどのように変わったか?

Ⅳ 住まいの温度・湿度と木材

24 グリーン材、KD材とは?
25 クレームが多い狂い どうして防ぐ?
26 乾いた木を使えば本当に狂わない?
27 乾いた木の入手方法
28 木材の調湿機能と結露について知りたい
29 木が腐りやすい場所

Ⅴ 木とアメニティ

30 木目模様はどのようにしてできる?
31 内装に木の美しさを生かすには
32 なぜ木は手で触れると温かく感じるのか?
33 床の快適さはなにで決まる?
34 フローリングの材質と塗装の選び方
35 部屋を静かにするにはどうすればよい?
36 住まいに木の香りを生かしたい

Ⅵ 無垢材信仰と木質材料

37 無垢材の長所と短所
38 集成材が無垢材より優れている点は?
39 合板は本当に悪者か?
40 木質ボードの選び方 その基準はなに?
41 エンジニアードウッドとは?
42 接着剤は安心して使えるか?──接着剤とホルムアルデヒド
43 木質素材の最新情報を知りたい

Ⅶ 森と木とエコロジー

44 森にはどのような働きがあるのか?
45 木はどんな森で作られている?
46 なぜ古代文明は砂漠に埋もれたか?
47 森や木はどれだけの二酸化炭素を酸素に変えるのか?
48 木質住宅がエコ商品というのはなぜ?
49 炭の使い道 燃料以外にどう使われている?
50 木材と無機材料 その違いは?

樹種名索引
索引

佐道 健

1932年 堺市生まれ
1953年 京都大学農学部卒業
専門は木材工学、木質環境学、とくに木材の物性。
京都大学名誉教授。農学博士。
現在、(財)日本木材総合情報センター「大阪木のなんでも相談室」室長。

主な著書:

『新編 木材工学』1985、共著、養賢堂
『木のメカニズム』1995、養賢堂
『建築に役立つ 木材・木質材料学』1997、共著、東洋書店
『雅びの木』1999、海青社

「木で作った道具を使いたい」とか「木の家に住みたい」という希望が多い。これらは人工的な材料に囲まれた生活環境のなかで、木材という天然素材が人びとの自然志向の傾向にマッチしているからであろう。というものの、その理由は「人に優しい」とか「自然な材料だから」といった、情緒的や主観的なものが多い。
古くから手近にあった木材は、ほとんど手を掛けることもなく、材料としての性能を発揮する。しかも多少間違った使い方をしても、普段は大きな不都合もなく使えるので、ほとんどの人にとって安心して使える材料である。しかし、使い方を誤ると、大きな、経済的、身体上の損害を引き起こし、また上手に使えば、もっと快適な生活が得られる材料であることは、あまり知られていない。

木材は手軽で、使いやすい素材である一方で、人びとが考えている以上に複雑な材料で、扱い方も単純ではない。近年、筆者は一般の消費者はじめ、木材業者、設計・施工を専門に扱う人びとと接し、木材についての相談や質問に対応している。この比較的短い間にも、世間一般の人びとは木材についてよく知っているつもりでいるが、実際には木材についての正しい知識が不足していることを感じている。

問題は、まだ多くの人びとに木材についての正しい知識が十分には行き渡っていないことにあるように思われる。人びとが考えている木材についての知識や常識には、間違った思い込みや、思い違いをしていることも多い。また昔は正しかった言い伝えなどでも、木材の供給や、これを受け入れる社会の事情が変わって、今では誤っている場合もある。さらに、人によって言葉についての解釈や理解の仕方の違いから、話がかみ合わないことさえある。

このような背景のもとで、本書は木材についての正しい知識を多くの人びとに知ってもらい、ものを作る素材として有効に使っていただきたいと願って、木を取り扱う場合に、いろいろな角度からみた50の話を、Q&Aの形で進めながら書いたものである。したがって、木のもの作り、とくに建築設計・施工をしている方々や、住宅の新築や改築をはじめ、身のまわりに木がある生活に関心を持っている一般消費者の方々にぜひ読んでいただきたい。

その内容は、木材について最低限は知っていて欲しい基本的な事柄に加えて、相談者から質問・相談の際に持ち出された事項、とくに間違いやすい事柄はなるべく多く取り上げた。木材について多少知っている人ならば、常識と思われていることでも、実はあまり知られていない事項は、くどいようでもできるだけ取り上げるようにした。また、木材の選択にあたって「性能」で選ぶ方がよいのか、「好み」で選んでも差し支えないのかが、わかるように心がけたつもりである。ただQ&Aの形をとっているため、記述に連続性の欠けるところがあり、同じようなことを違う箇所で重複していることもあるとは思う。

また、木材に関しては、個々の木の種類特有の問題と、木材全体に共通している特徴とを分けて考える必要がある。そこで、木材についての基本的な知識だけではなく、そのもとになるメカニズムについて知っている方が、個別の問題だけでなく、木材全体についての応用が可能であると考えた。このため、わかりやすいように書くことに務めた。正確に表現するため、多少くどくどとした書き方になった箇所があると思うが、著者の考えがどこにあるかを考えて理解して欲しい。

なお、本書で使っている木材の強度、ヤング率の単位は、日本工業規格(JIS)や建築関連の法規にしたがって、N/m㎡を使っているが、日本農林規格(JAS)では現在もkgf/c㎡で記載した部分もあるので、煩雑にならない程度で二つの単位を併記した。

本書を上梓するにあたっては、編集を担当していただいた学芸出版社の村田譲氏、中木保代氏に厚く御礼申し上げます。また、執筆にあたり、木造建築の実際に関して多くの助言を頂いた竹山建築設計事務所の竹山通明氏、ならびに写真や資料の提供を頂いた方々に深く感謝の意を表わします。

著 者

『建設通信新聞』(日刊建設通信新聞社発行)

2001.7.11

自然志向の高まりを受けて、住まいに木材を使おうとする施主が増えてきた。しかしその一方で、木材の基礎知識に乏しい人がプロのなかにも相当数いる。本書は、長所と短所をわきまえた木材の使用法を、50の問いに答える形で読者に説いている。

第Ⅵ章「無垢材信仰と木質材料」では、接着剤が放つホルムアルデヒド(ホルマリン臭)などへの不安から、複合木質材料が施主に避けられる傾向にあることに疑問を呈している。

「有害な物質を排除するのは当然」としつつも、気密性の高さを至上命題にして換気への配慮を欠く住宅構造などにも目を向けることを指摘する。
短所にだけ目を奪われるのではなく、複合木質材料のもつ狂いのなさといった長所に目をとめる必要性を考えさせる。偏ったものの見方を戒める貴重な一冊だ。

『新建築住宅特集』((株)新建築社発行)

2001.7

住宅をはじめとして、建築に自然素材を積極的に使用する傾向が高まる一方で、実は木材についての基礎知識はあまり知られていないのではないだろうか。事実、本書を手にすれば、木材に関してこれまで知らなかった多くの事柄があることに驚くかもしれない。木は手軽で使いやすい素材であると思われるが、実は考えられている以上に複雑な材料で扱い方も単純ではないことが、木のメカニズムを知ることによってわかるだろう。木の種類、調温湿などの性能、エコロジー問題、建材としての長所と短所などなど、木を取り扱う場合にいろいろな角度からみた50の話が、Q&A形式で書かれている。巻末には樹種名索引がついている

『新建築』((株)新建築社発行)

2001.6

無機的な工業製品ではなく、人に優しく自然な材料である木の利用は多くなっていく傾向にある。しかし、種類の多さや知識の不足などで、使い方のバラエティに乏しいのが現状であろう。

本書では、木の種類や性能だけでなく、環境面や木質材料まで、木にまつわる事柄50項目をQ&Aのかたちで掲載している。学術書と違い、間違いやすい事柄に絞っていて、図や写真を入れて、わかりやすく丁寧に解説している。

(Y)

『建築士事務所』((社)日本建築士事務所協会連合会発行)

2001.6

知っているようで意外と知らない木材の知識。自然ブーム、健康ブームで住まいに自然素材を求める施主が増えて、さまざまな疑問をぶつけてくるが、100%正しく答えることができるだろうか。木材工学、木質環境学、とくに木材の物性を専門とする京都大学名誉教授で、(財)日本木材総合情報センター「大阪木のなんでも相談室」室長の著者が50の質問に明快に答えるのが本書。全体を7章にわけ、たとえば、〈Ⅰいろいろな木〉では「国産材と外材 どちらが優れている?」、〈Ⅱ木材の材質と性能〉では「木材の成分 どんなものがある?」、〈Ⅲ木の家を検証する〉〈Ⅳ住まいの温度・湿度と木材〉〈Ⅴ木とアメニティ〉〈Ⅵ無垢材信仰と木質材料〉〈Ⅶ森と木とエコロジー〉では「乾いた木の入手法」「部屋を静かにするにはどうすればよい?」などが登場する。

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