AutoCADで身につける建築2D・3D製図

佐藤健司 著

内容紹介

名作フィッシャー邸で学ぶ効率的な作図手順

AutoCADによる建築製図について、2次元図面の作図から3次元でのモデリング、レンダリング、プレゼンテーションボードの作成まで、コマンド入力も用いた効率良い作図手順を解説する初学者向けガイド。名作住宅フィッシャー邸を素材とし、実務レベルまで役に立つ作業のコツや知識も適宜紹介。GISとの連携など応用的な操作も紹介。

体 裁 B5・192頁・定価 本体3000円+税
ISBN 978-4-7615-3270-3
発行日 2021-04-10
装 丁 赤井佑輔・渡会芽生(paragram)

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紙面見本本書の使い方付録データ目次著者紹介はじめに

Chapter 2|平面図の作図

Chapter 4|断面図・立面図の作図

Chapter 7|フィッシャー邸 平面図の作図

Chapter 13|フィッシャー邸のレンダリング

Chapter 15|地形のモデリング

  1. AutoCAD学生版のインストールについて、https://www.autodesk.co.jp/education/ を参照してください。Appendix 1(p.10)に注意点をまとめてあります。
    AutoCAD製品版のインストールについては、アクティベーション・コードの取得などAutodesk社からの指示に従ってください。
  2. 本書で使用するテンプレート・ファイル(標準設定図面)、印刷設定ファイル、カスタム・コマンド集、作図事例、GISデータ・ファイルなどは、こちらからダウンロードしてください。
  3. 本書ではWindows上のAutoCAD2019をベースに、コマンドの動作の解説を行っています。2020以降の新しいバージョンでは、コマンドの動作に一部修正がなされている場合があります。新しいバージョンのAutoCADをインストールした場合は、ヘルプ画面を表示して変更点を確認してください。
  4. Macintosh上にAutoCAD for Macをインストールした場合、カスタム・コマンド集はそのままでは動きません。テキスト・エディタを使って、ディレクトリ・パスの区切り記号を修正するなどの措置が必要になります。
  5. 本書の図版の一部は白地に黒の線で印刷されていますが、AutoCADのデフォルト画面の背景色は濃いグレーです。モニター画面では黒に近いグレーを背景に、赤や緑、黄、白などの線を使って描画されます。解説は、このモニター画面での色使いを前提に記しています。

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    学芸出版社編集部(担当:松本)
    info★gakugei-pub.jp(★を@にして送信ください)
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    [Part Ⅰ 2次元の作図]

    Chapter 01 直線・円・円弧の描画
    Chapter 02 平面図の作図
    Chapter 03 文字と寸法の記入
    Chapter 04 断面図・立面図の作図
    Chapter 05 複合図形
    Chapter 06 コマンドのカスタマイズ
    Chapter 07 フィッシャー邸――平面図の作図
    Chapter 08 フィッシャー邸――断面図・配置図の作図

    [Part Ⅱ 3次元の作図]

    Chapter 09 モデリングの基礎
    Chapter 10 フィッシャー邸のモデリング
    Chapter 11 曲面の作図
    Chapter 12 フィッシャー邸――敷地のモデリング
    Chapter 13 フィッシャー邸のレンダリング

    [Part Ⅲ 応用編]

    Chapter 14 プレゼンテーションボードの作成
    Chapter 15 地形のモデリング
    Chapter 16 GISとの連携

    佐藤 健司

    静岡理工科大学理工学部建築学科教授。1958年、埼玉県大宮市生まれ。1981年、東京大学工学部建築学科卒業。1983年、東京大学大学院工学系研究科建築学専門課程修士課程修了、工学修士。1983-1984年、メルボルン大学大学院留学(ロータリー奨学生)。1985-2000年、株式会社磯崎新アトリエ勤務。2000-2017年、有限会社佐藤健司建築都市研究所代表取締役。2017年より現職。著書に『建築図法 立体・パース表現から設計製図へ』(学芸出版社)。

    本書のねらい

    本書は、大学あるいは専門学校の建築学科でAutoCADを初めて学ぶ学生に向けた教科書である。あわせて、設計事務所や工務店で設計の実務に携わる方々の参考書たり得ることをめざしている。

    AutoCADを使うには、線を引く、円を描く、オフセットする、コピーする、回転する、等々のコマンドを覚えなければならない。ウインドウ上部には多数のコマンド・アイコンが並んでいる。コマンド・レファレンスを参照すると、数えきれないほどのコマンドが実装されていることがわかる。しかし、それらをすべて覚えなければ製図ができないというわけではない。本書では、必要最小限のコマンドを覚えることで、複雑な建築の設計図を描くことができることを示したいと思う。足りない部分は、筆者が実際の設計プロジェクトに際して、その都度作成し使ってきたカスタム・コマンドを導入して補っている。それらはLisp言語を使ったカスタム・コマンドであり、本書とともに配布する。

    本書では、AutoCADを起動して直線や円を描くことから出発する。そして、平面図・断面図などの2次元の作図を学び、さらに直方体や球などの立体を扱う。立体を3次元の空間内に配置することをモデリングという。単純な立体だけでなく、複雑な曲面のモデリングも扱う。建築は常に3次元の立体として構想しなければならないと言ったのは建築家のアドルフ・ロースである。3次元モデリングという行為は建築の設計そのものである。

    本書の構成

    AutoCADは、従来の製図板と三角定規、コンパスを使った製図をコンピュータで置き換えることを意図して作られた。だから、そこでの製図は基本的に製図板の上で行う製図の延長線上にある。製図板の上で図面を描くとき、初めに薄い補助線を描いておき、断面線などの強調すべき線は、それらの補助線を強くなぞることで描かれる。補助線は捨て線とも呼ばれ、不要になれば消しゴムで消去される。

    AutoCADを使って平面図や断面図を描くプロセスは、基本的には同じである。初めに補助線を描いて、補助線をなぞることで断面線を描いてゆく。本書の第1章から第8章までは、このような2次元の作図に焦点があてられる。

    しかし、従来の設計プロセスがコンピュータ上の製図で置き換えられるのは、ここまでである。コンピュータを使った製図は建築の設計プロセスに大きな変革をもたらした。建築の設計は「線を引く設計」から「立体を配置する設計」へと進化した。AutoCADでは1990年代後半にソリッド・モデルが導入された。

    それまでのAutoCADは直線や円、円弧、ポリライン(折れ線)などのデータを編集するためのソフトウェアであるに過ぎなかった。そこに立方体や球などの立体を扱うためのデータ形式が付加された。現在のAutoCADでは自由曲面も手軽に扱うことができる。

    設計道具の進化が設計プロセスの変革をもたらし、そのことが建築デザインの進化を誘発した。あるいは逆に、新しいデザインへの希求が道具の進化を促したとも言える。本書の第9章から第12章では、このような3次元のモデリングを解説する。そして第13章では、完成したモデルをレンダリングする。レンダリングとは3次元モデルから透視図を作成する作業である。モデリングが完了すれば、そのモデルをレンダリングしてビジュアライズすることは、さほど難しい手順ではない。

    第14章以降は応用編である。AutoCADを使ってプレゼンテーション・ボードを作成する方法を解説する。様々な縮尺の図面が、画像や文章とともに1枚のボード上にレイアウトされる。

    第15章では自然の地形を扱う。Webを通してダウンロードすることができる等高線のデータをAutoCAD上で再現する。そこでは経度・緯度であらわされる座標系を直交座標系に変換するアルゴリズムがキーとなる。

    第16章では国土地理院が公開している「基盤地図情報」をAutoCADで扱う方法を試みる。「基盤地図情報」には国内のあらゆる場所の等高線や河川、水路、鉄道、道路、建築物などの数値データが含まれ、建築設計での利用価値が高い。フリーのGIS(Geographic Information System)であるQGISを導入して、それらの基盤情報にアクセスするとともに、AutoCADとの連携を試みる。現状ではAutoCADとGISとの間でのデータ交換は簡単ではない。そこで、Python言語を使って、「基盤地図情報」のデータを直接解析し、AutoCADで読み込める形に変換する方法を紹介する。将来的には設計の道具としてのCADはデータ・サイエンスを取り込む方向で進化を遂げるだろう。世界は「データ」が価値を生む時代への過渡期にあるのだから。

    本書を使ってAutoCAD を学ぶとき、LispやPythonなどのコンピュータ言語の知識は必須ではない。配布されるカスタム・コマンド群は基本的には製図作業の効率化をめざして作成したものだ。面倒な仕事は、なるべくコンピュータにやらせなければならない。そして、コンピュータ言語に習熟すれば、設計の道具を自由にカスタマイズできるようになる。AutoCADはそれが可能なように作られている。建築のデザインが道具に縛られていてはいけない。新しいデザインを生み出すためには、設計の道具を作り替えなければならない。AutoCADを学ぶことを通じて、人と機械とのコミュニケーションを体験し、コンピュータそのものの理解を深めてもらえれば幸いである。

    佐藤健司