一級建築士設計製図試験 ステップで攻略するエスキース

山口達也・製図試験.com 著

内容紹介

製図試験に合格するためには、短時間で正確な読解を行い、段階を追ったエスキースと作図が不可欠である。本書ではエスキースの手順を13ステップに分けて、公共施設をベースに、まるごと1冊で1課題を解説。時間配分にもこだわり6時間を切る解答をめざす。豊富な図解で、計画の要点、作図の極意も加えた新しい受験対策本。

体 裁 A4変・128頁・定価 本体3000円+税
ISBN 978-4-7615-3234-5
発行日 2017/07/01
装 丁 フジワキデザイン


目次著者紹介まえがきあとがき

ガイダンス ― 製図試験攻略のために

0-1 一級建築士設計製図試験とは
0-2 試験攻略のために

第1講:読解 ― 戦う前に勝つ

1-1 問題文を読解するということ
1-2 問題文の構成
1-3 エスキースステップ[ESTEP]について
ESTEP-00 本年度試験用ポイント押さえ
ESTEP-01 コンセプト読解
ESTEP-02 アウトプット確認
ESTEP-03 アプローチ(仮)+敷地方向読み
ESTEP-04 建築物ボリューム想定-積上図(1)
ESTEP-05 外構計画の面積想定
ESTEP-06 最大建築面積計算
ESTEP-07 動線・高さ・廊下含み部門面積確認
ESTEP-08 動線図・積上図(2)の作成
ESTEP-09 ポイントアップ+方針(読解まとめ)

第2講:エスキース ― 情報の統合

2-1 ゾーニングそしてプランニングへ
ESTEP-10 ゾーニング図の作成
ESTEP-11 コアゾーニング
ESTEP-12 コマプランニング
ESTEP-13 最終チェック
エスキース事例
図面解答例

第3講:エスキースワークショップ

3-1 建築計画の原則について
3-2 読解
3-3 プランニング
3-4 作図
3-5 構造・設備他

第4講:計画の要点 ― アカウンタビリティ

4-1 計画の要点とは
4-2 要点の表現
4-3 要点を習得する方法
4-4 建築計画
4-5 構造計画
4-6 設備計画
4-7 環境負荷低減
4-8 地震等の防災対策
オリジナル課題解答例

第5講:本試験対策

5-1 本試験対策としての日々の学習
5-2 合格を勝ち取るための学習方法
5-3 スタンダード課題を強固にする方法
5-4 ステップごとの目標と目標時間

山口達也(やまぐち たつや)

1962年生、神戸大学環境計画学専攻修士課程卒。その後、阪神電鉄、レンゾピアノビルディングワークショップジャパンを経て、有限会社I.L.D.を立ち上げ、製図試験.com代表を務める。NPO 理事、一般社団法人代表理事等をこなしつつ、セルフビルダーとして狭小店舗デザインでは定評あり。一級建築士、心理カウンセラー、大阪市空き家対策協議会委員。

市村 隆幸(いちむら たかゆき)

1975 年生、大阪大学工学部建築工学科卒。大手構造専業事務所を経て、2011 年より株式会社親交設計(http://shinko-design.co.jp)を設立。全国の超高層建築物、免震構造、制震構造の設計を手掛け、免震マイスターとして、免震構造の普及に尽力している。
構造設計一級建築士、JSCA 建築構造士、免震マイスター、一般社団法人東京構造設計事務所協会(ASDO) 理事。

製図試験.com

一級建築士設計製図試験サポートサイト。2000年にスタートした学科製図.comを組織改編。通信添削、講習会、模試、テキスト、DVD販売等を通じて、「建築する」ことを製図試験で体得するコンテンツを提供している。
URL:http://seizushiken.com

はじめにーなぜエスキースをステップ化するのか

製図試験の難しさとは

一級建築士設計製図試験は合格率が約4 割、5 人に2 人以上が合格する試験であり、数ある国家試験の中で難関と言われるほどのものではありません。しかし、あなたを含む多くの受験生が、「製図試験だけは独学では不可能」「学科と製図は別物」と感じているのも事実です。
合格率だけではわからない製図試験の難しさとは一体何なのでしょうか。
毎年課題は7 月末に発表され、10 月初旬に試験が行われます。その課題となる建築物を6時間半で設計します。他の試験では、多くの設問数があり、1 問くらいミスしてもなんとかなるのですが、こと製図試験では1 問しか出題されません。この1 問に多種多様な条件が盛り込まれており、エスキースを含む意匠設計に関して自信がない、または経験のない受験生にとっては、エスキースする足がかりすら見えない試験なのではないかと思われます。

ひとつひとつの情報を明確に読み解くことがスタート

2000 年以来、製図試験.com(前身は学科製図.com)では、製図試験で設計する作業としてのエスキースをステップ化して解説してきました。A3 判の問題用紙に書き込まれている多種多様な情報は、ひとつひとつをていねいに読み込んでいくと、それぞれ非常にシンプルな答えを持っています。
まず、この情報を丹念に集めること、読み解くことが重要なのですが、受験生の多くはこの読解ができていません。それは意匠設計、特にエスキースとは全ての情報を統合的にまとめる作業であり、ステップ化できるものではないという思い込みがあるためだと思われます。
結局、30 課題以上を解いていたとしても、実は基礎練習もせずに、単に条件を全部読んだ上で要求室を並べているだけのプランを、ひたすらループしながら必死にやっているだけの受験生があまりにも多いのです。

あなた自身の解法を積み上げていきましょう。

本書で解説している全てのステップに不要なものはありません。毎回、同じステップで解くことであなたの基本が固まっていきます。確実にエスキースへの理解を深めつつ、あなた自身の解法を構築していくことができます。
そして本書をベースにして、様々な課題に挑戦してください。問題が解けない場合のほとんどは、ステップを飛ばしたり、確認事項を怠ったりしていることに起因します。迷った際には基本に戻ること。合格するためのその基本は、本書に準備しています。
本書を手にした瞬間から、既に合格への扉は開かれているのです。

製図試験.com 代表 山口 達也

終わりに代えて

約4 割が合格する製図試験

一級建築士は、業界では最高位の資格であると共に、住宅以上の建築物を設計していく上では最低限必要な資格です。建築設計業務に携わっていれば、あとは少し製図試験用の考え方を理解すれば、約4 割の方々が合格するという、そう難しくはない試験です。
そして本書を手に取られた方の大半が、製図試験よりはずっと合格率の低い学科試験を突破されてきた方、もしくはその予定の方でしょう。

あなた自身のエスキース手法を!

しかし多くの方が「製図試験だけは学科試験のようにはいかない」と、友人や先輩から聞かされてきていると思います。本書で全編にわたって解説してきたように、未だこの製図試験への学習研鑽方法が完成されていないことに大きな問題があると考えています。特に基礎もできていないのに、問題ばかりを解いて一式図を仕上げるようなやり方は、解けないトラウマを植え付けること、やる気を削ぐことを助長しています。是非あなたは本書を片手に、あなた自身のエスキース手法を完成させてください。

終わりのない探求の旅へ

製図試験.com では、「建築する」という言葉を「情報を集めて、カテゴリに分類して、使える形に作り込むこと」と定義しています。何も建物を作るだけが建築することではなく、もっと広義の可能性を信じてそのように定義しています。そして、そのスタートラインが本書であり、そして製図試験だと位置づけています。製図試験で建築の学習研鑽が終わるのではなく、いよいよ建築する切符を手に入れ、終わりのない探求の旅へと向かっていくことになります。
そのスタートラインとなる本書ですが、学芸出版社の担当である中木さんの辛抱強い協力なくしては、この世に出ることはなかったと思います。このテキストの企画を持ち込んでから3年越しであり、このレベルではダメです、この内容では出せません、と紆余曲折をくり返す中、ようやく出版までこぎつけることができました。
最後になりましたが、様々なレベルで気づきを与えてくれた製図試験.com 受講生の皆さん、そして献身的な家族の協力に心から感謝いたします。
この一冊があなたの合格への扉となることを祈りつつ。

平成29 年6 月吉日

製図試験.com 代表 山口 達也