図説 わかる土質力学
内容紹介
豊富なイラストとポイント解説で苦手克服!
初学者が躓きやすい土質力学を、豊富なイラスト図解や写真と細やかなポイント解説で、親しみやすくまとめた入門書。土の性質から透水、圧密、せん断、さらには土圧理論や支持力理論、斜面安定までを網羅。「なぜそうなるのか」、一つずつ順を追って土の力や動きの正体を紐解くことで丁寧かつ体系的に学びきることができる。
体 裁 B5変・208頁・定価 本体3000円+税
ISBN 978-4-7615-3221-5
発行日 2015-12-01
装 丁 KOTO DESIGN Inc. 山本剛史
はじめに
第1講 イントロダクション:土とは
1・1 土とは何か
1・2 土はどのように生まれるのか
1・3 土は何でできているのか:粒子を形づくる物質
1・4 土の知識と土質力学、そして地盤工学
第2講 土の基本的性質と状態
2・1 粒径とその分布を知る:粒度
2・2 土の構成を表わす諸指標
2・3 密度と単位体積重量
2・4 相対的な密度を表わす指標
第3講 土の工学的分類
3・1 土の流動性を表わすコンシステンシー限界(アッターベルグ限界)
3・2 コンシステンシー限界の求め方
3・3 コンシステンシー限界・塑性指数の工学的意義と利用
3・4 地盤工学会による土の工学的分類
第4講 土が地盤になるには:締固めと圧密
4・1 締固めと圧密
4・2 粒からマス(塊)へ:土質力学での「地盤」の見方
4・3 土の締固め特性
4・4 締固められた土の力学的特徴
4・5 締固め度と実務における締固め
第5講 土の中の水環境
5・1 土の中を流れる水の圧力:間隙水圧
5・2 力のつり合いを満たす全応力、飽和土を変形させる有効応力
5・3 水と空気が混在する土:不飽和土
5・4 水柱の高さに置き換えた水のエネルギー:水頭
第6講 浸透現象とダルシーの法則
6・1 全水頭が低いほうへと流れる「ダルシーの法則」
6・2 成層地盤中の浸透と透水係数
6・3 試験室での透水係数の測り方
6・4 現地での透水係数の測り方
第7講 多次元の浸透現象と浸透破壊
7・1 二次元・三次元の浸透現象の考え方
7・2 互いに直交する流線と等ポテンシャル線
7・3 飽和土の浸透現象を支配する連続式
7・4 流線網(フローネット)による解析
7・5 上向きの浸透流による砂質地盤の破壊
第8講 土の圧密と体積変化
8・1 圧密現象とその原理
8・2 一次元(K0)圧密の考え方
8・3 土の圧縮曲線の特徴:正規圧密と過圧密
8・4 土の圧縮しやすさの表わし方:圧縮性
8・5 土の圧縮曲線の特徴
第9講 圧密排水過程:圧密方程式とその利用
9・1 圧密はどのように進むのか
9・2 圧密過程を式で表わす:圧密方程式の導出
9・3 圧密方程式の解
9・4 地盤全体としての圧密の進行
第10講 地盤沈下とその予測
10・1 地盤沈下の原因とメカニズム
10・2 最終地盤沈下量の計算
10・3 地盤沈下量の時間変化の計算
10・4 圧密係数の性質について:定数? それとも変数?
10・5 圧密促進による地盤沈下対策:バーチカルドレーンと事前載荷
10・6 地盤の長期沈下:二次圧密
第11講 土のせん断と破壊
11・1 せん断と破壊
11・2 物体の摩擦とすべり
11・3 土の摩擦現象
第12講 多次元の応力とひずみ、土の破壊規準
12・1 地盤内の多次元の応力の表わし方
12・2 多次元の応力の性質
12・3 モール・クーロンの破壊規準
12・4 せん断における間隙水のはたらき:間隙水圧と有効応力
第13講 土のせん断試験
13・1 土の変形と剛性
13・2 土のさまざまなせん断試験
13・3 三軸圧縮試験の概要
第14講 排水条件とせん断強さ
14・1 長期・短期安定問題と排水条件
14・2 圧密排水(CD)三軸圧縮試験
14・3 非圧密非排水(UU)三軸圧縮試験と一軸圧縮試験
14・4 圧密非排水(CU、C-U)三軸圧縮試験とせん断強さ
第15講 地盤の中の応力:地中応力
15・1 静止状態(K0条件)での地中応力
15・2 載荷による地盤内の付加応力
15・3 付加応力の代表的な弾性解:ブーシネスクの解
第16講 土からかかる力(1):ランキンの土圧理論
16・1 主働状態と受働状態
16・2 ランキンの主働土圧係数と受働土圧係数
16・3 ランキンの土圧理論の適用:砂地盤の場合
16・4 ランキンの土圧理論の適用:飽和粘土地盤の場合
第17講 土からかかる力(2):クーロンの土圧理論
17・1 クーロンの主働土圧係数
17・2 クーロンの受働土圧係数
17・3 地震時土圧を求める:物部・岡部の土圧式
第18講 土を支える構造物:抗土圧構造物
18・1 いろいろな擁壁
18・2 重力式擁壁の安定性
18・3 土留め壁の安定性
第19講 土に力を伝える構造物:基礎
19・1 浅い基礎と深い基礎
19・2 浅い基礎に対する地盤のせん断破壊
19・3 浅い基礎の即時沈下
第20講 浅い基礎を土が支える力:支持力理論
20・1 浅い基礎に対する地盤の支持機構
20・2 極限支持力を求めるためのモデル化:支持力理論
20・3 極限支持力を計算するテルツァーギの支持力公式
20・4 さまざまな条件下での支持力公式の利用
第21講 深い基礎を土が支える力:杭基礎
21・1 杭基礎の施工方法と支持形式
21・2 単杭の極限鉛直支持力の算定方法
21・3 群杭効果とネガティブ・フリクション
21・4 杭の水平支持力:バネによるモデル化
第22講 斜面崩壊と無限斜面の安定解析
22・1 斜面崩壊の種類
22・2 斜面安定解析の概要
22・3 無限斜面の安定解析
第23講 有限斜面の安定解析と斜面防災
23・1 有限斜面の破壊形態
23・2 円弧滑りによる斜面安定解析
23・3 分割法による斜面安定解析
23・4 斜面災害の対策
第24講 地震と液状化
24・1 液状化のメカニズム
24・2 液状化の予測
24・3 液状化への備えと対策
出典 引用/参考図書
索引
土質力学は、土木工学の背骨を成す学問であり、他にも建築・資源工学・地学・農学・都市衛生工学など多くの分野で有用な知識を供するものです。また、コンクリート工学とならび、コンサルタントや総合請負業者(ゼネコン)など建設業界が「学生に高等教育において特によく学んできてほしい学問分野」と目するものでもあります。その一方で、水理学や流体力学のように理論で説明できる部分と、必ずしもそうでない経験的な部分が混在した特色ある学問であり、それが故に習得に苦労する学生が多いようです。本書は、大学教員としては比較的若年にあたり、普段から学生の率直な声に接する機会の多い著者らが、「こういった学生がここがわからないと言っていた」と経験を分かち合い、議論のもとに生まれたものです。執筆にあたっては、実際に語りかけるようなトーンとともに、現象のイメージをもったうえで理解して頂くために、写真や図解を可能な限り取り入れ、初学者の直感に訴える努力をしました。
土質力学とその応用である地盤工学がカバーする内容の習得には時間がかかります。大学や高専の教程においては、土質力学はその基本的な部分だけでも二つの学期に分けて土質力学I・IIなどとして講義が設けられることが多いようです。本書はこのような状況に鑑みて、15週×2学期の講義シリーズで用いられることを想定しています。このようなスケジュールでも余裕を持って学べるよう、全24講に分けて構成されており、1週(90分1コマや45分2コマ程度)で1講を習得できるよう、1講あたり8ページ前後におさえるように配慮されています。(著者ら自身がそうしなかったように)まじめに予習をして講義に臨む大学生は実際には多くはないでしょうが、本書のレベルで8ページ程度でしたら、ソファで寝そべって20分も読めば、細部はともかく話の流れは見えるはずです。そのような週課とともに習得を進めるのも効果的と思います。
その他の工夫として、文中・図中で物理量が現れる際には、数値のみならず記号に対しても、かなりの頻度で単位を併記しています。たとえば圧力pや応力には[kN/㎡]を併記しました。もちろん、[N/㎡]や[MN/㎡]、[kgf/㎡]といった単位を用いることもできるわけですが、SI単位系の中でも一般的によく用いられる形を選びました。扱っている物理量の意味を確認しやすくするほか、単位付記の重要性をよく認識してもらうのが目的であり、これらをよく理解している人にはややうるさいくらい(?)に書き込みました。エンジニアは、単位の間違いだけは決して犯してはなりません。細かいことと思わないでください。
土質力学や地盤工学という広がりをもった学問分野は、基本的な部分だけでも200ページ程度の本書で完全に網羅できるようなものではありません。特に、土質力学は理論と土質試験の習得が両輪となって初めて真の理解が進むものであり、後者の方法や図説については、本書には収まりきっていません。そこで、土質試験については公益社団法人地盤工学会の「土質試験 基本と手引き」等のハンドブックを参照する形をとっています。この本は多くの教育機関において採用されており、本書とぜひ同時に入手されることををおすすめします。
本書は奥の深い土質力学への入り口となるものです。本書を通して土や地盤への興味とともに、社会の中での地盤技術者や研究者の役割や責務を感じて頂ければ幸甚です。その戸を敲(たた)く読者諸兄へのエールを、著者らの自奮自励も込めて送りたいと思います。
なお、本書の準備にあたり、北海道大学の田中洋行教授・磯部公一博士、苫小牧高等工業専門学校の所哲也博士には非常に有益なご助言を賜りました。企画・編集作業に御尽力くださった学芸出版社の岩切江津子様と合わせて、刊行に御協力頂いた全ての方々に深甚なる謝意を表します。
2015年11月
著者一同
深くお詫び申し上げますとともに、ここに訂正させていただきます。
2021年12月(株)学芸出版社
本書において下記のとおり誤りがございました。
深くお詫び申し上げますとともに、ここに訂正させていただきます。
(株)学芸出版社
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