地方都市の再生戦略

川上光彦 編著

内容紹介

いかにすれば活力を維持しながら、持続的な安定を保ちつつ、次世代に豊かな地方都市を引き継ぐことができるのか。都市計画などの制度、中心市街地と郊外市街地の再生、都市交通戦略、住宅政策、景観・歴史保全、市民参加、まちづくりなど多様な課題を、気鋭の専門家が、福祉・環境・産業の視点も加えて横断的に説く。

体 裁 A5・320頁・定価 本体3500円+税
ISBN 978-4-7615-3203-1
発行日 2013/03/31
装 丁 上野 かおる


目次著者紹介はじめにおわりに著者の声イベント
はじめに

序章 地方都市再生の現状と課題/川上光彦

0-1 地方都市における問題と課題
0-2 地方都市に関連する都市づくり施策
0-3 地方都市再生のための課題と本書の内容
0-4 地方都市再生への鍵

第Ⅰ部 人口減少・低成長下の土地利用計画

第1章 人口減少下の都市計画マスタープランの条件/高木一典

1-1 都市計画におけるマスタープラン制度
1-2 都市計画マスタープランの実効性
1-3 都市計画マスタープランの評価と見直し
1-4 人口減少下の都市計画マスタープランの展望

第2章 コンパクトな都市づくりのための郊外市街地の再生・再編戦略/片岸将広

2-1 地方都市の郊外市街地は、どのような問題を抱えているのか?
2-2 新たに整備されてきた郊外市街地が、なぜ問題を抱えているのか?
2-3 コンパクトな都市づくりに向けた郊外市街地問題への対応は?

第3章 市街地周辺地域における土地利用のコントロール/眞島俊光

3-1 市街地周辺地域の現状と主な土地利用コントロール手法
3-2 開発許可条例による市街地周辺地域の土地利用コントロール
3-3 まちづくり条例による市街地周辺地域の土地利用コントロール
3-4 市街地周辺地域の再生に向けた土地利用コントロールの展望

第4章 数値目標を脱した公園・緑地のまちづくり戦略/本光章一

4-1 公園・緑地の整備・保全の歴史
4-2 緑の数値目標の限界
4-3 地域に根ざした緑
4-4 都市経営戦略と緑
4-5 緑を支えるつながり(関係性)
4-6 柔軟な発想によるエリアマネジメント

第5章 既成市街地における土地区画整理事業の可能性/埒正浩

5-1 区画整理の仕組みと実績
5-2 多様で柔軟な区画整理手法について
5-3 既成市街地における柔らかい区画整理の活用事例
5-4 既成市街地における土地区画整理事業の可能性

第Ⅱ部 自動車と賢くつきあう都市交通計画

第6章 人と公共交通を中心とした新たな交通戦略/髙山純一

6-1 新たな交通戦略の必要性
6-2 人と公共交通を中心とした「交通まちづくり」の基本的な考え方
6-3 交通まちづくりに及ぼす規制緩和と市町村合併の影響
6-4 交通まちづくりの実践都市 ―地方中核都市の事例
6-5 交通まちづくりの実践都市 ―地方小都市の事例
6-6 交通まちづくりを進めるための課題と展望

第7章 駐車場を通して見た中心市街地再生の課題と戦略/木谷弘司

7-1 中心市街地における駐車場化の進行 ―金沢市を事例に
7-2 近年の中心市街地における駐車場の特性
7-3 現行の駐車場に関する法制度の概要
7-4 駐車場の質的整備に向けた全国の主な取り組み事例
7-5 中心商業地を例にした駐車場配置検討の手順
7-6 駐車場を通した中心市街地活性化の取り組み

第8章 交通情報システムによる都市交通戦略/永田恭裕

8-1 交通情報システムの意義
8-2 交通情報システムの現況
8-3 現況の交通情報システムの課題
8-4 交通情報システムの今後のあり方

第9章 都市計画道路の見直しと交通計画の再編/倉根明徳

9-1 都市計画道路の見直しの必要性
9-2 都市計画道路の見直しの実態
9-3 都市計画道路の見直しにおける先進事例
9-4 今後の交通計画再編に関する課題と提言

第Ⅲ部 人口減少・高齢化・単身化に対応した住宅政策

第10章 住宅過剰の時代に住宅政策は必要か/三谷浩二郎

10-1 人口減少・高齢化・単身化社会における住宅問題
10-2 公営住宅は不要か
10-3 空き家が増えても問題ないか
10-4 地方公共団体の取り組み
10-5 人口減少・高齢化・単身化社会における住宅政策

第11章 高齢者の居住福祉施策/竹内正人

11-1 高齢化の現状と居住福祉施策における2つの課題
11-2 サービス付き高齢者向け住宅の供給
11-3 持家のバリアフリー化
11-4 居住福祉施策における今後の課題

第12章 高齢者の居住政策と都市再生/西野辰哉

12-1 高齢者世帯と居住に関わる制度の現状
12-2 高齢者の地域居住の観点から見た都市の課題
12-3 高齢者が自宅に住み続けられるための施策
12-4 日常生活圏域内での高齢者福祉施設の整備

第13章 人口減少下の災害復興のための住宅政策・まちづくり/小柳健

13-1 能登半島地震による住宅被害の状況
13-2 発災直後の応急時における取り組み
13-3 恒久住宅の自力再建時における行政による支援
13-4 災害公営住宅の供給時における取り組み

第Ⅳ部 都市魅力再生のための都市景観・歴史的資産活用政策

第14章 都市計画行政による新たな景観創造と保全/竹村裕樹

14-1 いしかわ景観総合条例の特徴と景観施策の展開
14-2 景観条例や景観計画などによる規制誘導手法の運用
14-3 都市計画行政における景観施策の進め方

第15章 歴史的資産を活かす行政の取り組み/中村和宏

15-1 景観まちづくりの萌芽と進展
15-2 歴史的資産を活かす歴史まちづくりの新たな展開
15-3 歴史的建造物の維持・継承
15-4 今後の展望

第16章 地域の歴史資産を活用する市民主体のアートプロジェクト/水野雅男

16-1 金沢大野くらくらアートプロジェクトの活動概要
16-2 出石をどねぇんかする会の活動概要
16-3 歴史資産活用型まちづくり活動に大切なこと

第17章 城下町金沢における歴史的建築・町並みの創造的再生/増田達男

17-1 歴史都市金沢の空間構造
17-2 城下町金沢の住宅建築
17-3 CGによる城下町金沢の復原
17-4 ニューアーバニズムとアーバンビレッジ
17-5 歴史性を活かした金沢の再生

第Ⅴ部 住民参加と市民主体のまちづくり

第18章 住民参加による地方都市の施策立案と推進/神谷浩夫

18-1 鯖江市における「市民主役条例」
18-2 羽咋市における第5次総合計画策定への住民参加
18-3 まちづくりへの市民参加を促進するための方策

第19章 情報システムを活用した住民参加支援システムの可能性/沈振江

19-1 住民参加の計画支援の手法
19-2 計画支援の事例
19-3 これからの計画支援

第20章 ソーシャルビジネスが店をつくり、街を変える/陣内雄次

20-1 カフェから始まった鹿沼市ネコヤド路地裏界隈の賑わいづくり
20-2 かつて賑わった真岡市門前地区の再興
20-3 「ソーシャル型小売業」は「街を変える」

第21章 アートや文化を活かした創造的まちづくり/坂本英之

21-1 アートを基調とした創造都市・農村の発想
21-2  金沢市における現代アートを活かした取り組み
21-3 篠山市における創造農村への取り組み
21-4 アートや文化を活かした創造的まちづくりの可能性

第22章 ツーリズムによる都市再生/安江雪菜

22-1 国内ツーリズムの政策と市場動向
22-2 着地型観光の事例と特徴
22-3 地域資源を活かした着地型観光のあり方

結章 地方都市の再生戦略/川上光彦・木谷弘司・埒正浩

23-1 都市再生のための基本的戦略
23-2 中心市街地の再生戦略
23-3 郊外市街地の再生戦略
23-4 コンパクトシティ形成のための交通施策
23-5 社会・経済の持続可能性の追究

用語説明
索引
おわりに

編著者

川上光彦(かわかみ みつひこ)……………序章、結章

金沢大学理工研究域環境デザイン学系教授。1947年金沢市生まれ。工学博士。1970年京都大学工学部建築学科卒業、1972年同大学院工学研究科修了。主な社会的活動として、石川県都市計画審議会会長、金沢市商業環境調整審議会会長、金沢市まちづくり専門員、富山県都市計画審議会委員、NPO法人金澤町家研究会理事長など。著書に『まちづくりの戦略―21世紀へのプロローグ 』(共編著、山海堂)、『人口減少時代の土地利用計画』(共編著、学芸出版社)、『都市計画(第2版)』(森北出版)など。

著者(50音順)

小柳健(おやなぎ たけし)……………第13章

株式会社ヒューマンネット主任研究員。博士(工学)。1980年新潟県生まれ。2004年新潟大学大学院博士前期課程修了、2012年金沢大学大学院博士後期課程修了。著書に『景観法と景観まちづくり』(共著、学芸出版社)など。

片岸将広(かたぎし まさひろ)……………第2章

株式会社日本海コンサルタント計画本部計画技術研究室リーダー。1977年大阪市生まれ。金沢大学工学部土木建設工学科卒業、同大学院博士後期課程修了。地方中心都市における郊外居住系市街地の研究で博士(工学)。技術士(建設部門/都市及び地方計画、道路)。

神谷浩夫(かみや ひろお)……………第18章

金沢大学人間科学系教授。博士(学術)。名古屋大学文学研究科修了。主な社会的活動として、農山漁村地域力発掘モデル事業委員など。著書に『現代韓国の地理学』(共編著、古今書院)、『地方行財政の地域的文脈』(共編著、古今書院)など。

木谷弘司(きだに ひろし)……………第7章、結章

金沢市都市政策局交通政策部交通政策課担当課長。博士(工学)。1959年生まれ。金沢大学工学部建設工学科卒業、同大学院博士後期課程修了。都市計画課・交通政策課等を経て現職、金沢大学非常勤講師。著書に『中心市街地再生と持続可能なまちづくり』(共著、学芸出版社)など。

倉根明徳(くらね あきのり)……………第9章

長野県建設部都市計画課主任。1978年長野県生まれ。金沢大学大学院博士課程修了。都市計画道路の計画及び見直しに関する研究で博士(工学)。2003年長野県入庁、建設部現地機関において、主に道路行政および都市計画行政を担当。2011年より現職。

坂本英之(さかもと ひでゆき)……………第21章

金沢美術工芸大学デザイン科教授。1986年独政府給費留学。シュタットバウ・アトリエ勤務。シュツットガルト大学大学院修了。工学博士(広場の造形理論)。著書に『都市の風景計画』(共著、学芸出版社)、『つなぐ 環境デザインがわかる』(共著、朝倉書店)など。

陣内雄次(じんのうち ゆうじ)……………第20章

宇都宮大学教育学部家政教育専攻(住居学)教授。博士(学術)。1998年金沢大学大学院修了。技術士。1956年佐賀県生まれ。主な社会的活動として、NPO法人宇都宮まちづくり市民工房理事長など。著書に『コミュニティ・カフェと市民育ち』(共著、萌文社)など。

高木一典(たかぎ かずのり)……………第1章

富山県道路課計画係。博士(工学)。1979年生まれ。2008年金沢大学大学院博士後期課程修了。2004年富山県入庁。富山県都市計画課計画係など

髙山純一(たかやま じゅんいち)……………第6章

金沢大学理工研究域環境デザイン学系教授。工学博士。1954年金沢市生まれ。1979年金沢大学大学院修了。主な活動として、石川県大規模小売店舗立地審議会委員、加賀市都市計画審議会会長、「K. CAT」代表など。著書に『交通工学』(共著、オーム社)など。

竹内正人(たけうち まさと)……………第11章

石川県土木部営繕課担当課長。技術士(建設部門/都市及び地方計画)、一級建築士。1958年金沢市生まれ。1981年神戸大学工学部環境計画学科卒業。同年石川県入庁。主に建築住宅課、都市計画課。社会的活動として、過去に石川県建築士会青年委員長など。

竹村裕樹(たけむら ひろき)……………第14章

石川県南加賀土木総合事務所長。1955年金沢市生まれ。東京大学工学部都市工学科卒業。1979年石川県入庁後、香林坊再開発、金沢副都心開発、都市交通計画など都市計画全般に携わる。1994年フランス留学。 景観形成推進室次長、都市計画課長を経て現職。技術士(総合技術監理部門、建設部門)。

沈振江(ちん しんこう)……………第19章

金沢大学理工研究域環境デザイン学系教授。博士(工学)。1965年生まれ。GIS上級技術者。1997年広島大学工学研究科博士課程単位修了退学。2008年金経昌中国都市計画優秀論文賞受賞。著書に『Spatial Planning and Sustainable Development』(共編著、Springer)など。

永田恭裕(ながた やすひろ)……………第8章

株式会社長大西日本スマートコミュニティ事業部受注・品質管理推進室室長。1955年姫路市生まれ。金沢大学工学部建設工学科卒業、同大学院博士課程修了。高速道路における道 路交通情報の提供に関する研究で博士(工学)。技術士(総合技術監理部門、建設部門)。

中村和宏(なかむら かずひろ)……………第15章

金沢市歴史建造物整備課町家保全活用室長。1958年金沢市生まれ。福井大学工学部建設工学科卒業。一級建築士。1983年金沢市入庁、景観対策課、21世紀美術館建設事務局、文化財保護課。著書に『まちづくりの戦略―21世紀へのプロローグ』(共著、山海堂)。

西野辰哉(にしの たつや)……………第12章

金沢大学理工研究域環境デザイン学系助教。博士(工学)。1972年生まれ。東京大学工学部建築学科卒業、同大学院工学系研究科博士課程修了。広島大学助手、同助教を経て現職。著書に『住みつなぎのススメ』(共著、萌文社)、『生活視点の高齢者施設 ①理念編』(共著、中央法規出版)など。

眞島俊光(ましま としみつ)……………第3章

株式会社日本海コンサルタント計画本部計画技術研究室リーダー。博士(工学)。技術士。1981年長野県飯田市生まれ。金沢大学工学部土木建設工学科卒業、同大学院博士後期課程修了。

増田達男(ますた たつお)……………第17章

金沢工業大学建築系教授。工学博士。1978年福井大学大学院修了。1950年生まれ。主な社会的活動として、金沢城調査研究専門委員会委員、金沢市伝統的建造物群保存地区審議委員会委員など。著書に『武士住宅』(共著、金沢市史資料編17 建築・建設)、『金沢まちなみそぞろ歩き―城下町風情を訪ねて』(金沢市観光協会)など。

水野雅男(みずの まさお)……………第16章

法政大学現代福祉学部教授。1959年白山市生まれ。東京工業大学大学院社会工学専攻修了(工学修士)。技術士。地域づくり総務大臣表彰(金沢大野くらくらアート)、石川県デザイン賞(2007年度)、ティファニー財団伝統文化振興賞(輪島土蔵文化研究会、2012年)受賞。

三谷浩二郎(みたに こうじろう)……………第10章

石川県健康福祉部県立中央病院建設推進室課長補佐。金沢大学非常勤講師。一級建築士。技術士(建設部門)。1965年生まれ。金沢大学工学部建設工学科卒業、同大学院修士課程修了。1990年石川県入庁、建築住宅課、都市計画課、輪島市都市整備課ほか。

本光章一(もとみつ しょういち)……………第4章

金沢市都市整備局緑と花の課緑化推進グループ長。1967年金沢市生まれ。1993年千葉大学大学院園芸学研究科修士課程修了。1993年財団法人日本システム開発研究所入所、1998年退所。1998年金沢市入庁、緑と花の課、まちなみ対策課、景観政策課。

安江雪菜(やすえ ゆきな)……………第22章

株式会社計画情報研究所専務取締役。能登スタイルプロデューサー。技術士。金沢大学非常勤講師。金沢市生まれ。金沢大学工学部建設工学科卒業。1989年株式会社計画情報研究所入社。著書に『まちづくりの戦略―21世紀へのプロローグ』(共著、山海堂)。

埒正浩(らち まさひろ)……………第5章、結章

株式会社日本海コンサルタント専務取締役。博士(工学)。技術士。1960年石川県生まれ。金沢大学大学院博士後期課程終了。金沢大学非常勤講師、金沢工業大学非常勤講師。著書に『証言・町並み保存』『証言・まちづくり』(共編著、学芸出版社)など。

わが国では、それぞれの地域が、気候風土や長い歴史に育まれながら、豊かで多彩なくらしや文化を持っている。地方都市はそうした地域の中で文化、行政、経済などの核として重要な役割を果している。今日においてもその役割は変わらないが、都市づくりやその運営において様々な問題を抱えるようになっている。1960年代より大都市への人口集中が進み、過密過疎問題が指摘され、その後も、マイカーの普及やそれに伴う市街地の郊外化などにより、中心市街地の空洞化や商業機能衰退が進行している。近年では、環境・エネルギー問題の深刻化や人口減少時代への変化から、集約型都市構造への転換や都市の持続可能性の追究が行われている。

大都市と異なり、地方都市の特徴は、他地域からの人口流入などが少なく、人口の増減やそれに伴う住宅や施設の立地変化は主として地域内で行われることである。その結果、市街地の郊外化や都市圏域の拡大などに伴う住宅や都市施設の立地変化は、もともと小規模で脆弱であった都市の構造や仕組みを変化させ、様々な問題を顕在化させている。一方、成長発展に対応するために整備されてきた都市づくりの仕組みは、そうした問題に対応できていない。都市計画分野においても、地方分権がかなりの程度まで進行しているが、まだ基本的枠組みや人々の意識は変化していない。今後は、地方都市など地域が主体となって、委譲されつつある各種の権限を駆使し、地域の資源や人材を活かしながら、主体的に創意工夫して都市づくりを行っていく必要がある。

本書は、地方都市をフィールドとし、都市づくりやその運営に奮闘する行政担当者、計画コンサルタント、大学研究者が、上記の問題意識を共有しつつ、地方都市の諸問題を克服するための戦略を提示しようとするものである。取り上げられているテーマは、計画制度、都市交通、住宅施策、歴史的資源や景観、コミュニティビジネス、市民参加など、多彩であるが、各著者がもっとも専門とするテーマを取り上げている。
編者は、これまで大学の都市計画研究室を長く主宰し、地方都市をフィールドとして調査研究を行っている。加えて、大学人プランナーとして、実際の計画策定、計画制度設計、都市デザイン、事業化やその評価、市民活動などに参画している。本書の著者たちは、そうした中でともに協働してきた方々でもある。

本書を、都市計画や都市交通に関わる行政関係者、コンサルタントなどの実務関係者、研究者、大学院生およびまちづくりに関心を持っている議員、企業人、NPO等のリーダーなどにもぜひ読んでいただき、情報の共有あるいは交換ができることを願っている。

2013年3月

白く輝く山並みを遠望する研究室において

川上光彦

筆者は、長く大学に在籍し、都市計画を専攻する中で、ささやかではあるが、地方都市を調査研究のフィールドとして研究活動を行ってきた。また、行政担当者や計画コンサルタントの方々と実践的な計画、デザインに取り組んできた。その中で、地方都市が豊かな文化や秩序を有していたこと、それらが急速に失われてきたことを実感し、そうした地方都市を再生させていくことが必要であるという思いを強くしてきた。すでに全国の各地においてそうした取り組みは始められつつあるが、今後も長く続いていくものであろう。

本書は、そうした取り組みを紹介し、今後の再生のための戦略を描こうとするものである。取り上げているテーマは必ずしもすべてを網羅しているわけではなく、参考として参照している事例も限定的ではあるが、わが国における地方都市の再生を考えるに際して必要かつ主要なテーマである。他の地方都市の再生のためのヒントや指針を提供しているものであると確信している。

本書の企画段階から、金沢市木谷弘司氏と㈱日本海コンサルタント埒正浩氏に相談に乗っていただいた。両氏は、行政担当者や計画コンサルタントとして、都市計画の実務に精通しており、大変的確な助言をいただいた。また、その他の大学研究者、行政担当者、計画コンサルタントの20名の著者には、編者からの企画の提案に賛同いただき、こころよく執筆を引き受けていただいた。その上、なにかと業務多忙な中、本書編集の検討のための論文骨子の提出や、編者からの些細な依頼まで丁寧に対応いただいた。

出版に際しては、編者の企画提案を学芸出版社に快く受け入れていただき、同社の前田裕資氏には、企画の内容や編集方針および原稿案について的確な示唆をいただいた。また、印刷用原稿の整理段階から、同社の森國洋行氏には丁寧に担当いただいき、貴重な助言をいただいた。

これらの方々の真摯なご協力と貢献により本書は実現することができた。こころから感謝したい。

2013年3月

川上光彦