第三版 構造計算書で学ぶ鉄骨構造


上野嘉久 著

内容紹介

簡単な実例で鉄骨の基礎から実務までを学ぶ

鉄骨造平屋、2階建の課題を解き、構造計算書にまとめあげながら、鉄骨造を学ぶ実践的なテキストの改訂版。構造力学、構法、法規、設計等を総括的に学びながら課題を解き、実務にすぐ活かせる力を身につける。すべての記述をSI単位で統一し、2007年改正の建築基準法をはじめ現行の建築法規・建築学会規準にも対応させている。

体 裁 B5変・240頁・定価 本体3800円+税
ISBN 978-4-7615-3178-2
発行日 2009-07-30
装 丁 社内


目次著者紹介まえがき

第1部 鉄骨造の基礎知識

1・1 概 説
1・2 歴 史
1・3 鋼材・部材・骨組
1・4 構造設計について
1・5 構造計算について
1・6 耐震設計の基本理念

第2部 構造計算書に沿って鉄骨造を学ぶ

●課題Ⅰ、Ⅱの特徴と選択方法
課題Ⅰ
課題Ⅱ

000 表紙

100 一般事項

110 建築物の概要
120 設計方針
121 準拠法令・規準等
122 電算機・プログラム
123 応力解析
130 使用材料と許容応力度・材料強度
131 鉄筋の種類と許容応力度・材料強度
132 コンクリートの種別と許容応力度・材料強度
133 許容地耐力・杭の許容支持力
134 鋼材の種類と許容応力度・材料強度
135 溶接の許容応力度・材料強度
136 高力ボルトの許容耐力・材料耐力・破断耐力
137 ボルトの許容応力度・材料強度・破断耐力

200 構造計画、設計ルート等

210 構造計画
211 架構形式
212 柱脚形式
213 基礎梁
220 設計ルート
230 耐震基準
231 ブレース応力の割増し
232 保有耐力接合
233 横補剛
234 幅厚比
235 塔状比
236 冷間成形角形鋼管柱
240 層間変形角の緩和
250 保有水平耐力の解析
260 その他特記事項
270 柱・梁伏図、軸組図

300 荷重・外力

310 固定荷重
320 積載荷重と床荷重一覧表
330 特殊荷重
340 積雪荷重
350 地震力
360 風圧力
370 その他・土圧・水圧

400 準備計算

410 柱軸方向力
420 地震力算定
421 建物重量の算定方法
422 地震力
430 風圧力算定
440 C、M0、Qの算定
450 断面仮定および剛比

500 応力算定

510 鉛直荷重時応力算定
520 水平荷重時応力算定
530 応力一覧
531 鉛直荷重時応力図
532 水平荷重時応力図

600 ブレース設計

610 ブレース応力算定
620 ブレース断面設計
621 許容応力度法によるブレース設計(1次設計)
622 ブレースの保有耐力接合(2次設計)
630 ブレース架構の剛性(D値)算定
640 ブレース算定例

700 2次設計

710 層間変形角rの検討法
720 剛性率Rsの検討法
730 偏心率Reの検討法

800 断面算定、接合部設計

801 接合方法の原則
802 ファスナー接合
803 溶接接合
804 仕口、継手の設計
805 パネルゾーンのせん断補強
806 断面算定応力について
810 梁の断面算定
811 梁断面算定式
812 許容曲げ応力度fb
813 横座屈の長さlb
814 大梁の横補剛の検討(2次設計)
815 均等間隔に横補剛を設ける方法
816 たわみ
817 梁断面算定の順序とポイント
820 柱の断面算定
821 柱断面算定式
822 許容圧縮応力度fc
823 座屈について
824 座屈長さlk
825 柱断面算定の順序とポイント
830 柱脚設計
831 根巻き付露出形柱脚固定工法
832 露出形柱脚工法
833 露出形柱脚の設計

900 雑設計

910 スラブ設計
911 床構造の種類と設計ポイント
912 合成スラブ
920 鉄骨階段の設計
930 ALC

1000 基礎設計

1010 直接独立基礎の設計
1020 RC基礎梁設計

1100 保有水平耐力

1110 保有水平耐力の検討法
1120 ラーメン架構の計算方法
1121 終局モーメントの算定式
1130 保有水平耐力の検討
1131 梁・柱の全塑性モーメント等
1132 メカニズム柱軸力算定NM
1133 終局モーメント算定
1134 修正メカニズム応力算定・保有水平耐力Qi
1135 必要保有水平耐力Qun
1136 判定
1140 用語解説

1200 構造図の書き方

1201 基本事項の確認
1202 構造図の解説
付録 付表1~8
構造計算書(白紙シート)
課題Ⅱ演習例
コラム ブレース構造とラーメン構造
SI単位と工学単位
剛性と強度
D値と層間変位δ
エッフェル塔と東京タワー

上野嘉久〔うえのよしひさ〕

1958年 大阪工業大学建築学科卒
株式会社吉村建築事務所、京都市住宅局建築課建築主事、
構造審査係長、営繕部等の主幹を経て
1989年 上野建築構造研究所設立、同所長
京都建築専門学校、兵庫科学技術専門学校講師
1990年 大阪工業大学講師
1992年 大阪工業大学短期大学講師
1996年 京都国際建築技術専門学校講師
一級建築士、建築主事
著 書 『行政からみた建築構造設計 PARTⅠ』
『行政からみた建築構造設計 PARTⅡ』
『行政からみた建築構造設計 PARTⅢ』
『行政からみた建築構造設計 PARTⅣ』
『行政からみた建築構造設計』別冊
『行政からみた建築構造設計 基本事項』(以上㈱建築知識刊)
『実務からみたコンクリートのポイント10・ノウハウ20』(㈱オーム社刊)
『改訂版 実務から見た基礎構造設計』(㈱学芸出版社刊)
『改訂版 実務から見たRC構造設計』(㈱学芸出版社刊)
『第三版 実務から見た鉄骨構造設計』(㈱学芸出版社刊)
『実務から見た木造構造設計』(㈱学芸出版社刊)
『改訂版 構造計算書で学ぶ鉄筋コンクリート構造』(㈱学芸出版社刊)
『構造計算書で学ぶ木構造―金物設計の手引き』(㈱学芸出版社刊)

近代建築の構造の主役は「鉄骨造」であり、実際に建築されているビルやマンションもその多くが鉄骨造である。

しかし95年1月17日に兵庫県南部を襲った阪神大震災では、この近代建築の粋を集めたはずの鉄骨造も多くの被害を出し、尊い命が奪われた。その原因の多くに、構造設計者をはじめ建築にかかわる技術者の勉強不足・努力不足があることは痛恨の限りである。

犠牲となった人々に報いるためには、二度とこのような設計・監理不良、工事不良による人災とならないように、構造設計技術を確立しなければならない。そのためには設計者、工事監理者そして施工者のレベルアップに役立つ実践的なテキストが必要なのではないか。

本書はそのような思いから、とおり一遍の知識としてではなく、実践を通して鉄骨構造設計の勘所を身につけられるテキストを目指したものである。

本書の特徴は下記のとおりである。

①課題を解き、構造計算書にまとめ上げながら鉄骨造を学ぶ。
②新耐震設計のルート別の最新工法による課題に沿って学ぶ。
③「構造計算書シート」「構造基準図」による実践的構造設計なので実務にすぐ活かせる。
④「構造力学」「建築構法」「法規」「設計製図」等の関連を知り総括的に学べる充実した解説。
⑤大学、専門学校などのテキストとして、また、すでに基本を学習した初心者のための研修、自習のテキストに最適。

このように本書では、講義だけでなく構造設計演習を行い、構造設計図書を完成させる目標を持って学習する。講義中は静粛にしなければならないが、演習時は学生同志で教えたり教えられたりしながら進めればよい。

構造計算というと高等数学や力学を駆使して行うという誤解がある。実際は、一般的な建物の場合、中学校で習う程度の数学で充分である。「習うよりは慣れろ」が鉄則である。

構造計算はコンピュータの操作技術を覚えれば答が出る時代となった。しかし計算が面倒だからといって最初からコンピュータに頼っていてはいけない。それではコンピュータが出してくる答のチェック、設計変更のチェックもままならない。そんなレベルで設計していては、不注意で安全性を大きく損なわれた建物をつくりかねないのである。

まずは、手計算にて基礎知識を会得し、構造設計のセンスを身につけてから、コンピュータを使いこなすのが王道である。

本書は月刊雑誌『建築知識』に連載した「実践からみた建築構造計算入門」をもとにして、筆者の大学での演習実績をふまえてテキストに発展させたものである。トレースは辰巳徹君が、編集の労は『実務から見た建築構造設計シリーズ』を担当してくださった前田裕資氏である。

みなさん、ありがとうございました。一人でも多くの方に役立つことを願います。

1995年6月25日

上野嘉久

改訂版にあたって

平成7年に誕生以来、多くの方々にご活用いただき、ありがとうございます。
平成12年に建築基準法・令・告示がSI単位に、荷重・外力の積雪荷重・風圧力および許容応力度等も改正、新たな告示も発せられ、平成14年「鋼構造設計規準」の改版を待って全面改訂いたしました。

改訂にあたり、保有水平耐力を新たに追加し、当書で、鉄骨構造に関する知識が得られるようにいたしました。

労多き、構造の実務書の編集は「。」と「、」から助言を賜った、知念靖広氏です。ありがとうございました。

前版と同じように、多くの方々にお役に立つことを念じます。

2002年6月25日

上野嘉久

第三版にあたって

平成17年に発覚した構造計算書偽装事件により、平成19年に構造計算関連法が改正、新たな告示も発せられ,本書も全面改訂しました。

改訂は、森國洋行氏が担当くださいました。ありがとうございました。

姉妹編の『第三版実務から見た鉄骨構造設計』とともに末永くお役に立つことを祈ります。

2009年6月

上野嘉久