鉄骨構造
内容紹介
数学・物理が苦手な初学者にもわかりやすい
建築物を利用する主体〈人間〉を中心に据えて学ぶ、新しい建築学シリーズ。鉄骨構造の構造特性について、前半では歴史から製作方法、設計方針を説明した。後半では、構造物の反力および部材内に生ずる力を扱い、実際の設計例に即して計算法を学ぶ。見開き対応で、数学・物理が苦手な初学者でも、取り組みやすい基本テキスト。
体 裁 A4・120頁・定価 本体3000円+税
ISBN 978-4-7615-3122-5
発行日 2004-07-30
装 丁 上野 かおる
まえがき
第1章 鉄骨構造の概要
1・1 鉄骨構造の発展
1・2 鉄骨構造の特徴
1・3 鉄骨構造の種類
1・4 地震と構造基準
第2章 鋼材と鉄骨製作
2・1 鋼材の製造法
2・2 鋼材の種類
2・3 建築構造用鋼材の形状と寸法
2・4 鋼材の性質
2・5 鉄骨の製作
第3章 鉄骨の構造設計
3・1 構造設計の基本
3・2 基準強度と許容応力度
3・3 構造設計法
第4章 荷重および外力
4・1 荷重および外力の種類
4・2 荷重の組合せ
4・3 設計荷重の計算
第5章 部材設計
5・1 部材設計の方針
5・2 座屈
5・3 引張材
5・4 圧縮材
5・5 梁
5・6 柱
第6章 接合部設計
6・1 概説
6・2 高力ボルト接合
6・3 ボルト接合
6・4 高力ボルトおよびボルトの設計留意点
6・5 溶接接合
6・6 継手
6・7 柱梁接合部
第7章 耐震安全性の確認
7・1 耐震設計ルート2
7・2 耐震設計ルート3
7・3 設計例題
第8章 設計例
付表
参考文献
明瞭な弾性域と塑性域の存在,高い靭性,均質等方性,など,鋼材は素材の力学的な性質から構造物全体の挙動を説明しやすいはっきりとした特性を持った材料である.また,木造建築と並び,鉄骨構造は日本国内で最も多く採用されている構造種別の一つである.そのため,鉄骨構造学は建築学の中の重要な学問分野として理論的あるいは実験的な方法に基づいてすでに体系化されており,それを学ぶための優れた教科書もたくさん存在している.
一方,大学をはじめとする専門教育がより一般化し,従来に比べると様々な経歴や知識を持った人があらたに鉄骨構造を学ぶ機会が急増している.こうした現状を考えると,鉄骨構造を習得する上で最低限必要な内容をまとめ,それと実設計との関わりをわかりやすく説明したテキストの存在が新しく求められているといえよう.
本テキストは,初めて鉄骨構造を学ぼうとする諸氏にとって,鉄骨構造の理解と実設計のために必要な最低限の内容をわかりやすくまとめたものである.鉄骨構造の設計の基本といえる(1)材料の明瞭な弾塑性挙動,(2)座屈,(3)接合部,この3点に焦点をしぼり,各種設計式や設計の考え方を力学の基礎理論を使って可能な限り体系的に説明することに心がけた.特に,座屈に関しては,鉄骨構造において顕著な現象であると同時に,座屈現象を理論的に理解し,座屈設計式の導かれた基礎的なプロセスを理解することは鉄骨構造を勉強する上での醍醐味の一つと考えている.この醍醐味が少しでも味わえてもらえれば幸いである.
なお,本書は鉄骨構造物の設計で最も基本的と言える内容を理論から設計例に渡って一通り解説しているが,構造設計全体が多岐に渡っている今日,本書に収められている内容以外にも設計上重要な事柄は少なくない.さらに詳細な鉄骨構造の勉強に進みたい読者は鉄骨の設計全般を網羅している体系的で優れた教科書を参考文献としていくつか紹介しているので,本書を早く卒業しぜひそれらの書に進まれることを期待している.
2004年5月 著者一同