省エネ住宅・断熱等級6の目指し方

省エネ住宅・断熱等級6の目指し方 今すぐ使える80の基本知識と推奨仕様
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内容紹介

これからの標準となる省エネ住宅の推奨仕様

2025年建築基準法改正により、すべての新築住宅に「省エネ基準」への適合が義務付けられることとなった。これからは適切な省エネ住宅をつくるための基本的な理解が必要である。温暖地(5~7地域)の方へ、義務化された「断熱等級4」から、これからの標準となる「断熱等級6」まで、断熱・気密・設備・一次エネについての基本的な内容、おすすめの仕様などを、コンパクトにまとめた。


熊澤悟史 著/カサハラシオリ イラスト
著者紹介

地球温暖化による、このくそ暑い日本では、一昔前の断熱基準はすでに時代遅れになっています。ZEH基準では物足りないのです。心地よく住む家づくりのために、断熱等級6を目指すくらいがちょうどいいのだと思います。
編集担当C
編集担当C
体裁A5判・172頁(2色刷)
定価本体2300円+税
発行日2024-09-20
装丁KOTO DESIGN Inc. 山本剛史
ISBN9784761529147
GCODE2354
販売状況 在庫◎
ジャンル 建築設備・環境
目次著者紹介はじめにあとがきレクチャー動画関連イベント関連ニュース

はじめに

00 断熱性能を上げる基本的な考え方

1 2025年法改正関係

01 守るべき基準は「外皮性能」と「一次エネルギー消費性能」
02 4号特例が見直され、構造と省エネ性能の書類が必要に
03 断熱工事で重量が増え、壁量等も見直しに

2 省エネ性能の概略/基礎知識

04 気候条件によって、8つの地域区分に分ける
05 断熱性能に重要な数値である、UA値とηAC 値
06 一次エネルギー消費性能は、建物の設備が使うエネルギー量
07 建築基準法改正の5 年後、「2030年基準」が重要
08 省エネ基準達成の2 つの方法「仕様基準」と「性能基準」
09 省エネ基準にはどんなグレードがあるのか

3 気密性能

10 気密性能のC値は、建物個別に測定するしかない
11 気密性能を上げることで、すき間だらけの家にならない
12 C値の目標は、1.0が目安
13 C 値は施工手間・コストを見据え、数値を追いすぎない
14 これからの高気密・高断熱化のために、通気層と気流止めを知る
15 換気と漏気と通風の違いをどう説明しよう?

4 断熱性能

16 たくさんある断熱材、なにをどうやって選ぶ?
17 断熱材のおすすめの組み合わせとは
18 グラスウール コスパ最強の繊維系断熱材
19 ロックウール 耐火性・吸音性に優れた繊維系断熱材
20 セルロースファイバー 吸放湿性の機能をもつ自然素材系断熱材
21 羊毛と木質繊維 環境にやさしい、その他の自然素材系断熱材
22 ポリスチレンフォーム 劣化につよい発泡プラスチック系断熱材
23 硬質ウレタンフォーム 閉じ込めたガスが効く発泡プラスチック系断熱材
24 充填断熱 壁に断熱材を詰める
25 外張り断熱 建物を外側からすっぽりと覆う
26 付加断熱 充填断熱と外張り断熱の合わせ技
27 天井断熱の施工のディテール
28 屋根断熱の施工のディテール
29 床断熱の施工のディテール
30 基礎断熱と土間断熱の施工のディテール
31 「きれいな」施工が、断熱性能に影響を与える

5 サッシ/開口部

32 サッシは4種類 アルミ、樹脂、アルミ・樹脂複合、木製
33 ガラス性能の3つのポイント ペア、トリプル、Low-E
34 防犯ガラスと防火ガラス 金網やフィルムを挟み込む
35 玄関ドアと玄関引き戸 選択の目安は「D2・D4」「k2・k4」
36 熱貫流率は、製品の「自己適合宣言書」の数値を使うとお得
37 カーテンやブラインドにはどれくらいの日射遮蔽効果があるのか
38 日射遮蔽のさまざまなやりかた
39 たてすべり出し窓2 枚を使えば、換気量は20倍以上となる

6 一次エネルギー消費性能

40 自分でつくろう申請書類 一次エネルギー消費性能の計算 ①
41 空調、換気、照明、給湯の入力 一次エネルギー消費性能の計算 ②
42 家電や調理機器は入力不要 一次エネルギー消費性能の計算 ③
43 おすすめの選択項目 一次エネルギー消費性能の計算 ④
44 二世帯住宅計画には注意が必要 標準計算のウェブ入力のポイント ①
45 主たる居室、その他居室、非居室 標準計算のウェブ入力のポイント ②
46 吹抜けがある場合は仮想床を設定 標準計算のウェブ入力のポイント ③
47 外皮性能の評価方法を決める 標準計算のウェブ入力のポイント ④
48 誤解が多い蓄熱と床下の通風 標準計算のウェブ入力のポイント ⑤

7 空調設備

49 家庭全体のエネルギー使用量の約3割である冷暖房にこだわる
50 エアコンの注目ポイントは、定格冷房エネルギー消費効率(COP)
51 エアコンは、夏用と冬用で分けて考える
52 すっきりした室内となる床下エアコンは、暖房で利用する
53 輻射熱でじんわり暖かい床暖房は、電気式と温水式がある
54 FF ストーブならば、室内空気と外気は混じらない

8 給湯設備

55 エネルギーコスト上昇の今、高効率な給湯設備・エコキュートが最適
56 排気を再利用するエコジョーズとエコフィール
57 給湯器選定のために知っておきたい熱効率の値
58 給湯器のサイズは家族人数が目安となる
59 水栓と浴槽でお湯を節約する

9 換気設備

60 排気口のみを機械換気とする、第3種換気が基本
61 エネルギーロスの少ない、熱交換システムとは

10 照明設備

62 照明設備は、LED以外に選択肢はない
63 温白色、昼光色など、電球の色味を選ぶポイント
64 サーカディアンリズムを考慮した照明計画とは
65 部屋を効果的に明るくするには、壁を照らすことが有効
66 LED照明は、簡単に交換可能なものにすること
67 必要なところだけを照らす、タスク・アンビエント照明
68 生活に便利で消し忘れも防ぐ、人感センサー

11 自然エネルギー/発電/その他

69 省エネ住宅のシンボリックな外観、太陽光発電とは
70 エネファームとエコウィルのしくみ
71 バランスよりも「一点突破」な考え方をお薦めする理由

12 断熱設計

72 2025年改正基準の省エネ仕様は、従来の断熱等級4相当
73 2030年改正予定の基準は、従来のZEHレベル相当
74 自分なりの基準となる仕様をどう考えるか
75 トリプルガラスで、コスパ良く、断熱等級6を実現 おすすめの仕様 ①
76 ペアガラスでも、厚めの断熱材で断熱等級6に おすすめの仕様 ②
77 トリプルガラス+厚めの断熱材でUA値0.4を達成 おすすめの仕様 ③
78 外壁に付加断熱45㎜で性能アップを狙う おすすめの仕様 ④
79 外壁に付加断熱90㎜でUA値0.3を達成 おすすめの仕様 ⑤
80 屋根と外壁に付加断熱100㎜でUA値0.25! おすすめの仕様 ⑥

あとがき
索引

熊澤悟史(くまざわ・さとし)

熊澤悟史建築設計事務所主宰。1975年神奈川県平塚市生まれ。文系人間であったが、2009年に実家を飯塚豊氏(i+i設計事務所)に建ててもらった縁から一念発起して建築の道へ。早稲田大学芸術学校を経て、i+i設計事務所にアルバイト時代を含め約10年にわたって務め、最後は右腕として活躍。2019年独立。資格取得多数(11件)。

イラスト・カサハラシオリ

フリーランスデザイナー。京都工芸繊維大学卒。2024年4月より大阪電気通信大学発ベンチャーの一級建築士事務所CreateForSmile合同会社の設立に尽力。パートナーシップを組み協働プロジェクトなども実施している。

2025年4月の改正省エネ法で、新築住宅は一定の断熱性能をクリアすることが義務化されます。その断熱性能は「等級4」と呼ばれるもので、一昔前までは一般的に高気密・高断熱住宅の象徴と呼べるものでした。これまでこの等級4とすることで「わが社の住宅の断熱性能は最高等級です」という宣伝文句で売っている工務店もたくさんありました。そのレベルが義務化されることになるのです。

また、設備の省エネルギー性能も評価されて一定のレベルをクリアすることが義務づけられます。消費するエネルギーを最小限におさえる工夫が求められます。

そして2030年までにはさらに一段階進み、今度は等級5相当(ZEH水準)が義務化される流れができています。住宅分野の性能強化の流れはここで一段落します。つまり、現在の一連の省エネ化の流れの中で本当に注目すべきなのは、2030年までに義務化される等級5相当(ZEH水準)の基準ということです。2025年の基準だけを追いかけていたら、わずか5年で時代遅れになるのです。

本書は、適切な省エネルギー住宅をつくるための基本を学ぶものです。断片的な知識はあるけれども、体系的にもう一度イチから理解したい方にお届けしたい内容となっています。法改正の概要、守るべき基準、断熱・気密とは何かという基本的な理解、設計のポイントとディテール、断熱材の種類と特徴、一次エネルギー消費量の計算方法、空調・給湯設備の種類とそのメカニズムなどを解説しています。また加えて、断熱等級ごとに標準の仕様を掲載し、それらを比べて見ることができるようにしています。

「こんなん、ワシらにもわかるんか」という方にこそお読みいただけるように、内容・表現を工夫いたしました。

さらに本書は、つくるべき省エネ住宅として「断熱等級6」が主流になると考えています。このレベルの住宅は、ZEH水準を上回るものになりますが、その快適性とコストパフォーマンスの観点から、今後のスタンダードとなるであろうと考えるからです。日本の住宅ストックにとってもよい方向に導くことになるでしょう。

なお、本書は基本的に地域区分5~7地域の木造住宅に絞って話を進めています。地域区分とは日本を8つの地域に分けたものです(詳細は04、p.15参照)。ほかの1~4地域は日本でも相当な寒冷地に当たり、今回の改正省エネ法を待つまでもなく断熱化は進んでいると考えるからです。

なので、そんな5~7地域の方にこれから始めるにしても無理のないレベルの断熱化と、省エネ化を意識した設備の選択のための知識を提供しています。

本書では、あえて公の情報を多く参照する形式にしています。それは高気密・高断熱化は特別なことではなく、既に方法論も確立され、安全性も信頼性も高いものなのだと知ってもらいたいと思ったからです。そのためこの本には、建築関係者からみてカッコイイと思えるようなディテールなども載っていません。今は2024年8月ですが、2030年までは、新築もリノベも継続的に色々な動きがあると思います。現時点で情報はFIXされているわけではなく、次々に更新されると思うので、最終的にどうなるのかを必ず確認してください。そこだけはご注意ください。

2009年に実家の建替えがあり、その後に建築の世界へ入りました。建替えの時にお願いした設計事務所のスタッフが文系人間だけど建築をやれていると知って心がざわつき、結局はその後を追うように早稲田の芸術学校へ行き、実家の建て替えをお願いした設計事務所にスタッフとしてお世話になり、沢山の仲間に支えられつつ今に至りました。お陰様で、まわりとは少し違う味わいを持った設計者に成長していたのだなと改めて感じています。こんな経歴なので、会った相手には一発で覚えてもらうことができ、大分得もしてきたと思います。というのは、今回の出版のお話を頂けたのも、なんか面白そうなやつがいるな、から始まったからです。

編集担当者の知念靖廣氏には声を掛けて頂いたこと、粘り強く且つ的確な助言や励ましを頂きましたことを感謝しています。イラストを担当して頂いたカサハラシオリ氏にも感謝しています。柔らかなタッチのイラストもこの本の1つの見所になりました。そしてi+i設計事務所の飯塚豊氏への感謝も忘れられません。実家の設計者でもあり、人生の道の半ばで進路変更を図った私をスタッフとして受け入れて頂いた上に、今なお仕事を通じて何度も助けて頂いています。そして、陰ながら見守り続けてくれている皆様、芸術学校の関係者から学生仲間、同僚、施工関係者、逐一情報をくれる営業担当者、仕事仲間、クライアントの方々まで、感謝を忘れることはありません。そして何より、こんな私に最大限振り回されたであろう両親と弟家族へは感謝してもしきれません。

この本を手に取った方に少しでもお役に立てたとしたら、何よりの喜びです。

2024年8月 熊澤 悟史

開催が決まり次第、お知らせします。

メディア掲載情報

公開され次第、お伝えします。