作業療法士が伝えたい ケガをしない家づくり
内容紹介
家のなかは事故が多いことを知っていますか
住宅内で「転倒・転落」してケガをするケースは非常に多く、あるデータによると、高齢者で転倒・転落にて救急搬送された人の約6割は住宅で発生している。段差のつまずき、階段や椅子からの転落など、重傷になるケースもある。どのような家ならケガをしにくいのか。作業療法士としてリハビリに携わった著者による50の提言。
満元 貴治 著
著者紹介
体裁 | 四六判・192頁 |
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定価 | 本体2200円+税 |
発行日 | 2023-09-15 |
装丁 | 金子英夫(テンテツキ) |
ISBN | 9784761528676 |
GCODE | 2341 |
販売状況 | 在庫◎ |
ジャンル | 住宅 |
Chapter 0
安全持続性能(R)を満たした住宅の実例
Chapter 1
ケガをする前に救いたい──私の活動経験から
1 医療従事者としての経験を生かして
2 作業療法士としての私の職務変遷
3 SNS で想いを発信
Chapter 2
帰りたくても、帰れない家
1 作業療法士という職業
2 入院期間の問題
3 帰れる家にするためには
4 家づくりは、人生100 年時代前提で
5 身体の変化
6 子どもや妊婦の特徴と事故の状況
Chapter 3
住宅内で転倒・転落が起きるところ
1 住宅内でのホームハザード
2 住宅内の転倒・転落
3 子どもの危険
4 見た目と安全性
Chapter 4
良質な家づくりに必要な「安全持続性能R」という基準
1 安全持続性能とは
2 安全持続性能を採用した住宅
3 医療系だからこそ伝えられること
Chapter 5
図解 安全持続性能:住宅内での事故を予防するために
玄関室内側
01 上がり框に手すり設置
02 手すりが設置できない場合(代用)
03 上がり框をなくす
04 上がり框をなくせない場合(寸法)
05 靴着脱のために座れる場所を
06 子どもが一人で外出できないようなカギに
階段(手すりなど)
07 階段に必ず手すりを
08 手すりの高さは「大腿骨大転子」を目安に
09 1 階の床から数段部分にも手すりを設置
10 暗がりに足元灯を
11 踏面に滑り止めを
12 未就学児には手すり子の間隔を狭く
13 スケルトン(オープン)階段には防護ネットを
14 ベビーゲートを設置できるように
階段の段差
15 階段の段差は安全な高さ、奥行に
16 まわり階段は踊り場付きに
スキップフロア
17 部屋に段差はつくらない
18 踊り場を活用する
19 小上がりの高さの目安は大腿骨外側上顆まで
換気システム・収納
20 換気システムはメンテナンスしやすい位置に
21 収納は手の届く高さまで
22 緊急防災用品は取り出しやすいところに
Chapter 6
図解 安全持続性能:身体・ライフスタイル・家族構成の変化に対応するために
土間収納
23 ベビーカーを収納できるスペースを
24 車いすを収納できるスペースを
25 玄関を散らかさない土間収納
廊下
26 一般的な廊下幅を
27 現在、車いす・移乗リフトが必要な場合
トイレ
28 入り口は引き戸に
29 引き戸が設置できない時の対処
30 便器は引き戸と並行に設置
31 手洗い器の設置
32 トイレは使いやすい広さに(介護、子育て世帯も)
ユーティリティルーム
33 自由度が高い部屋を
34 将来的に寝室に
室内干しスペース
35 メリットが多い室内干し
36 洗濯動線は1 階に集める
37 室内干しスペースが設けられない場合
洗面室
38 洗面室(脱衣室含む)は生活の質を左右する
39 洗面室を広くする
40 洗面室だけ広くできない場合
照明
41 人感センサー、光センサーを設置
42 リモコン操作できるものを
温度
43 温度計を置こう
44 温度の目安
45 温度差をなくそう
Chapter 7
図解 安全持続性能:浴室、ベランダなど万が一の危険防止のために
浴室
46 手すりの考え方
47 浴室に手すりを設置する場合
キッチン
48 ベビーゲートの設置を
窓・ベランダ
49 ベランダから転落防止のために
玄関ドア
50 玄関引き戸も選択肢に
おわりに
私たち作業療法士には当たり前の事実ですが、家づくりのプロである建築関係者は意外に知らない人が多いようです。
さらに、家づくりの一場面で、こんな言葉も聞こえてきます。
「後から考えたらいい」
これは、年齢を重ねて身体が変化した時、病気やケガした時にはじめて住まいを改修したらいいという意味です。家づくりという人生で最大のイベントで、将来を案じていろいろ考える住まい手もいるはずですが、その際に先のような言葉を言われ、そのまま受け取らざるを得なくなるのです。そして、「後」になった時には、「時すでに遅し」の場合がほとんどなのです。
例えば、歯医者を思い浮かべてください。定期的にクリーニングに行っている方は少ないと思われます。ほとんどの方の場合、「虫歯になった」「痛みがでた」時にはじめて、歯医者に行くはずです。人は何か問題が起こらないと行動しないということです。
そして、何か悪いことが起こった時、それにつれて人生も変わってしまうのです。そのように悪い状況に陥った状態では、冷静な判断もできなくなり、本人だけでなく家族の負担も大きくなっていきます。
これは高齢者だけの話ではなく、小さい子どもや現役世代にとっても重要なことです。
本書では、家の中での転倒・転落の話が多くでてきます。それを踏まえ、住宅内事故を防ぐためにどうすればよいのかを「50の方法」として提唱しています。
それは遠い未来の話? 自分には関係ない?
本書をお読みいただくことで、住宅内事故である、転倒・転落というのは、きわめて身近な問題であり、自分自身だけでなく、私たちの大切な人の身体にも影響を与えるものだと、ご理解いただけることと思います。
20年後、30年後、「この家で良かった」と思ってもらうためにはどうしたらいいのか?
それは、今を大切にすること。そして、今の幸せを継続させるために、将来のことを考え続けることです。ただ、将来を考える場合、見えない不安に襲われますよね。
ここで確実なことは、誰でも年齢を重ねていくという事実です。例外はありません。だからこそ、自分たちは年齢を重ねると「どう変化するのか」ということから目を逸らさないようにしてほしいのです。
年齢を重ねるだけでなく、子どもや妊婦では何が危険なのかなど、すでにわかっている事実をもとに家づくりを考えてもらいたいのです。それが、建築のプロが目指してほしい「ケガをしない家づくり」だと思うのです。
家づくりの段階で、一度立ち止まって考えてみる。「家族を守り、家族が安心して暮らせる家」が「あたりまえ」になる必要があります。私たちが「普通に帰りたい場所」を、「安心・安全にする」ということは、その人の人生を守り、そしてより良いものに変えるということと同じです。
本書は、そのような視点から、私が伝えたい想いをまとめたものです。
このぺージを読んでいるみなさんは、きっと「住宅の危険」「安心・安全な家づくり」について非常に意識が高まっている
ことでしょう。
一つでもあなたの心に残る言葉、場面があれば幸いです。
この本を書き上げることができたのも、出会った人たちのおかげだと思っています。
本の出版にあたり、担当していただきました学芸出版社の知念さんを始め、スタッフの皆さま、帯の言葉を書いていただいた構造塾・佐藤実さんにも感謝を申し上げます。
また、私の想いに共感して、一緒に家づくりをしてくれている「安全持続性能の会」に所属している住宅会社・工務店の皆さま、ありがとうございます。
そして、病院から独立する時に一番に背中を押してくれた妻、いつも私を元気にさせてくれる3人の子ども達に勇気づけられ、ここまで活動ができています。本当にありがとう。
この本を手に取り、読んでくださってありがとうございました。
「安心・安全な間取りでより良い住宅内環境を実現」、そしてそれが自分たちの「大切な人を守る」ために、この本が一助になれば幸いです。
2023年7月
満元貴治
開催が決まり次第、お知らせします。