大内 田鶴子・鯵坂 学・玉野 和志 編著/廣田 有里・齊藤 麻人・小内 純子・太田 尚孝・中田 晋自・荒木 千晴・細淵 倫子・陸 麗君・内田 和浩 著

内容紹介

町内会・自治会関係者、自治体担当者必読!

災害や高齢化等の地域課題に対応する主体として地域自治組織への期待が高まっている。家族・社会・経済状況の変化や移民の流入などによって多様化する地域をどう再編し、安定的・開放的な地域自治組織をどうつくるか。世界各国の事例から、日本における地域コミュニティづくりの可能性とヒントを探る。

体 裁 A5・256頁・定価 本体2500円+税
ISBN 978-4-7615-2784-6
発行日 2021-08-05
装 丁 中川未子(紙とえんぴつ舎)


紙面見本目次著者紹介まえがきあとがき

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はじめに(鯵坂学)

第1章 世界の地域自治から何を学ぶか(玉野和志)

・日本における地域自治の現状と課題
・欧米諸国と旧植民地諸国で高まってきた地域コミュニティへの関心
・行政と住民組織の連携を重視してきた東アジア
・世界の地域自治に見る共通の視点と枠組
・本書の構成

第Ⅰ部 欧米編 ~安全で包摂的な地域をどうつくるか~

第2章 アメリカ-1近隣組織の興隆と変容―トラブル・挫折を恐れない市民参加の技術(大内田鶴子)

・地方自治は強いコミュニティからはじまる
・シアトル市のネイバーフッド議会とディストリクト・カウンシル:自治と代表制を求めて
・シアトル市の行政監察レポートにおけるDC/CNC:近隣組織と中間組織、市役所との関係づくりの試行錯誤
・日本への示唆:ネイバーフッドによる行政参加が挫折した要因

第3章 アメリカ-2多様化する地域をいかに新しく組織するか―コミュニティのICT活用とその課題(廣田有里・大内田鶴子)

・シアトル市におけるコミュニティのIT化とデジタルデバイド
・巨大IT産業社会における生活者のコミュニティと政治活動者のコミュニティの分断

第4章 イギリス-1イングランドにおける近隣自治体 Parish Council / Local Council(鯵坂学・齊藤麻人)

・イングランドにおける地方自治とコミュニティ組織
・Parish Council / Local Council(近隣自治体)
・ローカリズムを支える全国組織NALC
・日本への示唆:近隣自治体という選択肢

第5章 イギリス-2近隣自治体の新設による地域コミュニティの再生―ロンドン・クイーンズパーク地区の事例から(齊藤麻人)

・住民投票で近隣自治体を設立したロンドン・クイーンズパーク地区
・クイーンズパーク地区の政治的・社会的背景:多様性と社会的排除
・クイーンズパーク・コミュニティ・カウンシル(QPCC)設立の経緯
・QPCCの活動
・日本への示唆:地域の機動的な結節点としての近隣自治体の可能性

第6章 スウェーデン“個”を基礎とするコミュニティ活動(小内純子)

・スウェーデンの地方政治とコミューン合併
・分権化の推進と地方自治の現状
・過疎化の進行と地域再生運動の展開
・集落自治会(ビアラーグ)の定義
・イェムトランド県の集落自治会の存在形態
・日本への示唆:個人を単位とする組織の柔軟性

第7章 ドイツ地域によって多様なコミュニティの制度化(太田尚孝)

・ドイツの自治体内分権の基本的特徴
・地方自治法に基づくエアフルト市の地区協議会(Ortsteilrat)
・ローカルルールに基づくニュルンベルク市の市民団体(Bürgerverein)
・日本への示唆:地域の実情に応じたオープンな制度をどうつくるか

第8章 フランス「近隣民主主義」の理念に基づく住区評議会(中田晋自)

・「近隣民主主義」:21世紀フランスの新しい政治理念
・フランスの地方自治制度
・「近隣民主主義」の理念と制度化
・住区評議会制の実践
・日本への示唆:人口2万人規模の住区における住民合議

第9章 オーストラリア防犯を起点とした地域住民組織と住民参加―Neighbourhood WatchとPrecinct System(鯵坂学)

・防犯を起点としたNeighbourhood Watchと住民参加を目指すPrecinct System
・オーストラリアの地方自治制度
・メルボルンにおける地域住民組織
・メルボルン都市圏におけるNeighbourhood Watch
・ニューサウスウェールズ州におけるPrecinct System
・日本への示唆:自立した個人をネットワークする恒常的なしくみづくり

第Ⅱ部 ラテンアメリカ、南・東南アジア~住民参加のしくみをどうデザインするか~

第10章 ブラジル自治体の予算編成への住民参加の試み(玉野和志)

・ポルト・アレグレの市民参加型予算
・市民参加型予算誕生の前史
・市民参加型予算編成のしくみ
・市民参加型予算の成果
・日本への示唆:単なる合意調達ではない開かれた行政参加

第11章 インド地域を知り,地域を計画するための学習活動(玉野和志)

・ケララ州の民衆運動:People’s Campaign
・民衆運動の実際
・民衆運動の成果
・日本への示唆:科学的な地域課題の学習と開かれた参加の過程

第12章 フィリピン地域課題に協働で取り組むバランガイ(荒木千晴)

・フィリピンの地方政府法におけるバランガイ
・バランガイ・マンギンの事例:災害調整委員会(BDRRMC)の活動
・日本への示唆:協働の母体組織をつくり住民の力量を高めるしくみ

第13章 インドネシア当事者の活動を評価し政府が支えるしくみづくり(細淵倫子)

・インドネシアにおけるコミュニティ活動
・都市の変化:援助と開発の経験―ジャカルタのコミュニティ活動の歴史
・「負の経験:洪水」がもたらした住民のコミュニティ活動が昇華されるしくみ:南ジャカルタ、カンプン・ジャワの事例
・日本への示唆:地域の「担い手」を活用するしくみ

第Ⅲ部 東アジア編 ~急速な工業化・経済成長後の地域をどうつくるか~

第14章 中国管理か自治か―居民委員会の「治理」モデル(陸麗君)

・中国の居民委員会について
・中国の地方行政制度と都市社会の管理体制
・居民委員会の現状と新たな展開:上海の事例を中心に
・日本への示唆:担い手が育つ制度づくり

第15章 韓国行政と住民の協働によるマウル共同体づくり(内田和浩)

・市民運動と行政による支援と協働
・韓国の地方自治制度と住民組織
・近年のマウルづくり政策の特徴と中間支援組織(マウルづくり支援センター)
・ソウル特別市による住民自治会設置へ向けた取り組み
・日本への示唆:中間支援組織による教育プログラム

おわりに(大内田鶴子)

編著者

大内 田鶴子(おおうち たづこ)
江戸川大学名誉教授・博士(社会学)。2000年から2019年まで江戸川大学に勤務。総務省消防庁消防大学校消防研究センター研究評価委員、千代田区コミュニティ活性化検討委員会座長などを務める。著書に『コミュニティ・ガバナンス』(2006年、ぎょうせい)など。

鯵坂学(あじさか まなぶ)
同志社大学社会学部名誉教授。大阪市立大学大学院博士課程退学、博士(文学)。専門は都市社会学・地域社会学。著書に『都市移住者の社会学的研究』(2009年、法律文化社)、『さまよえる大都市:大阪』(共編著、2019年、東信堂)など。

玉野和志(たまの かずし)
東京都立大学人文科学研究科教授。東京都立大学人文学部卒業、東京大学大学院社会学研究科博士課程中退、博士(社会学)。著書ならびに編著として『東京のローカル・コミュニティ』(2005年、東京大学出版会)、『都市社会学を学ぶ人のために』(2020年、世界思想社)など。

著者

廣田有里(ひろた ゆり)
江戸川大学教授。早稲田大学人間科学研究科卒業。IT企業でシステム構築を行った後、江戸川大学にて業務知識を生かした実践的なシステム構築やプログラミングの教育を行っている。近年は、地域コミュニティの活動に関わり、地域でのITの利活用を検討している。

齊藤麻人(さいとう あさと)
横浜国立大学都市イノベーション研究院教授。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)地理環境学大学院修了(PhD)。専門は都市社会学、都市政策学。シンガポール国立大学を経て、2013年より現職。著書に『Locating Neoliberalism in East Asia』 (共編著、2011年、Blackwell)など。

小内純子(おない じゅんこ)
札幌学院大学法学部教授。専門分野は地域社会学、地域メディア論。著書に『スウェーデン北部の住民組織と地域再生』(共編、2012年、東信堂)、『協働型集落活動の現状と展望 年報 村落社会研究第53集』(編、2017年、農山漁村文化協会)、『北海道農村社会のゆくえ』(共編、2019年、農林統計協会)。

太田尚孝(おおた なおたか)
兵庫県立大学環境人間学部准教授。筑波大学大学院システム情報工学研究科博士後期課程修了、博士(工学)。専門は、日独の都市計画・まちづくり。福山市立大学都市経営学部准教授を経て、2017年より現職。著書に『ドイツの空き家問題と都市・住宅政策』(共著、2018年、日本都市センター)など。

中田晋自(なかた しんじ)
愛知県立大学外国語学部教授(政治学)。立命館大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得満期退学。博士(法学)。著書に『フランス地域民主主義の政治論』(2005年、御茶の水書房)、『市民社会を鍛える政治の模索』(2015年、御茶の水書房)など。

荒木千晴(あらき ちはる)
公益社団法人日本社会福祉士会企画グループ課長。法政大学大学院政治学研究科博士後期課程修了、社会福祉士、博士(政治学)。著書に『コミュニティの自治 自治体内分権と協働の国際比較』(共著、2009年、日本評論社)など。

細淵倫子(ほそぶち みちこ)
立教大学グローバル都市研究所 研究員、京都大学東南アジア地域研究研究所 連携研究員、総合地球環境学研究所 共同研究員。著書に『Land Tenure on Peatland: A Source of Insecurity and Degradation in Riau』(共著、2021年、Springer Singapore)など。

陸麗君(りく れいくん LU LIJUN)
福岡県立大学人間社会学部准教授。一橋大学大学
院社会学研究科博士後期課程修了、博士(社会学)。
専門は都市社会学、移民研究。著書に『さまよえる大都市・大阪―「都心回帰」とコミュニティー』(共著、2019年、東信堂)など。

内田和浩(うちだ かずひろ)
北海学園大学教授。中央大学文学部(社会学専攻)卒。相模原市教育委員会社会教育主事を経て、北海道大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学、博士(教育学)。北星学園女子短期大学助教授、北海道教育大学教授を経て、2008年より現職。

世界的なコロナ禍の中で地域コミュニティや家族・親族、友人、同僚などの親密な関係が大きな危機に見舞われています。近隣のお付き合いも、「ふれあい広場」などの地域活動も難しい。友人や恋人、孫にも会えず、それどころか親密な人とのお別れにも立ち会えなくなっています。緊急事態宣言によりストレスの解消や職場コミュニティの形成に一役買っていた飲ミニケーションも難しくなっています。都道府県や市町村といった公的な自治体によるコロナ対策も今一つ有効性が見えません。
もしコロナにかかってしまったら、コロナの影響で会社やお店を解雇されたら、誰に頼ればよいのでしょう。そこで頼らざるを得ないのは、様々な人間関係の束である家族・親族や友人との親密な関係であり、コミュニティです。そして、その中に泡立っているさまざまなネットワーク(「社会関係資本」ともいわれてもいます)です。ただ、日本ではこのコミュニティやネットワークは、特に1980年代以降ずいぶん希薄になり、あるいは人によりその濃淡に差が生じています。アメリカなどでも同様の傾向が表れているようです(R.パットナム『孤独なボウリング』)。
親密な関係でいうと、結婚し家族形成をする人は、今や若者の3分の2程度であり、長寿社会化と相まって「おひとり様」や単身世帯が、多くなってきています。これらにより、地域コミュニティの核であった町内会・自治会に加入する世帯も大都市を中心に半数を割って来ているのが現況です。どうすれば、活発なコミュニティをよみがえらせることができるのでしょうか。また、コミュニティの活動が行政・自治体などの改革につながるのでしょうか。
世界に目を向けると、20世紀後半になって、様々な地域住民組織・集団の再生や活性化の試みが見られます。本書は世界の12か国の地域自治活動を紹介することにより、日本の地域自治・コミュニティ活動の活性化の参考になることを企図し編まれました。本書を読んでいただいた皆様方からの忌憚のないご意見をいただければ、幸甚に存じます。

2021年5月
鯵坂学

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公開され次第、お伝えします。