図説 鉄筋コンクリート構造
内容紹介
基本知識を多数の図で理解できる入門教科書
鉄筋コンクリート構造の基本的な内容について、約200点の図表でまとめた入門教科書。鉄筋コンクリート造が成り立つわけ、鉄筋コンクリート部材の構造性能、断面算定の基本について理解することを目標に、「なぜそうなるのか」「どのようにして算定するのか」を解説する。建築を目指す学生にとって必要な基本的知識を網羅。
体 裁 B5変・168頁・定価 本体2800円+税
ISBN 978-4-7615-2775-4
発行日 2021-05-25
装 丁 KOTO DESIGN Inc. 山本剛史
1章 鉄筋コンクリート構造とは
1・1 鉄筋コンクリート構造の概要
1・2 鉄筋コンクリート構造の特性
1・3 鉄筋コンクリート構造の構工法
1・4 鉄筋コンクリート構造の要求性能と構造設計
2章 コンクリートと鉄筋の性質
2・1 コンクリート
2・2 鉄筋
2・3 鉄筋とコンクリートの付着
2・4 許容応力度
2・5 ヤング係数比
3章 曲げを受ける部材
3・1 曲げを受ける部材の断面の性質
3・2 単筋梁
3・3 複筋梁
3・4 梁の変形
3・5 梁の曲げに対する断面算定と構造規定
4章 軸力と曲げを受ける部材
4・1 中心圧縮を受ける部材
4・2 軸力と曲げを受ける無筋コンクリート部材
4・3 軸力と曲げを受ける柱
4・4 柱の変形
4・5 柱の断面算定と構造規定
5章 せん断を受ける部材
5・1 せん断を受ける部材
5・2 せん断耐力
5・3 せん断に対する設計と構造規定
6章 柱梁接合部
6・1 柱梁接合部について
6・2 柱梁接合部の設計せん断力
6・3 柱梁接合部の許容せん断力と構造規定
6・4 柱梁接合部破壊に対する新しい考え方
7章 付着・定着
7・1 付着と定着
7・2 付着と定着の算定と構造規定
8章 耐震壁
8・1 耐震壁
8・2 剛性評価
8・3 耐震壁の断面算定と構造規定
9章 スラブ・基礎
9・1 スラブ
9・2 基礎
10章 鉄筋コンクリート構造の要求性能と設計手順
10・1 鉄筋コンクリート構造の構造設計
10・2 建物の耐震設計法の分類
10・3 建物に作用する荷重・外力
10・4 地震時の耐震安全性の検討
10・5 地震に対する要求性能と構造設計方法
11章 鉄筋コンクリート構造の施工管理
11・1 鉄筋コンクリート工事の概要
11・2 施工管理の概要
11・3 建築現場における品質管理
11・4 原価管理と工程管理
11・5 安全管理と環境管理
問題解答
索引
鉄筋コンクリート構造をはじめ「構造設計」を扱う教科書では、どうしてそうなるかよりも、どのように算定するかに重きを置くものが多く見受けられる。しかし、教える側の立場に立つと、どのように算定するかを教えるためには、どうしてそうなるかを知る必要がある。自分で、鉄筋コンクリート構造を学習しようとすると、その両者が必要であり、さらに、どのように作り、どのように品質を担保するかの知識が必要になる。本書は、1冊でそれらの基本的なことを網羅する教科書になるように、まとめたものである。
構造設計は、構造計画と構造計算からなる。この中で、構造計画は合理的な構造形式の選定を含めて構造物の安全上最も重要なところである。実際の設計では、構造計画は大雑把な構造計算や過去の経験、類似の設計結果、構造力学や材料力学の諸知識を総合して行うことになる。そのため、構造計画には構造物における力の流れや、構造部材の弾性時だけでなく塑性変形までを考慮した挙動特性についての十分な知識が必要になる。
現行の設計法では安全性と使用性の確保は、構造計算と建築基準法施行令に示された安全性と使用性(耐久性を含む)に関する仕様基準を満足させることにより行うことになっている。現在では、一貫設計プログラムの進歩によりこうした知識なしでも安全性の検討が(表面上)できるようになり、ノウハウよりも、プログラムで計算された値が正しいかどうかを概算して検算するための基本的な知識が必要になる。こうしたことを踏まえて、本書では、鉄筋コンクリート部材の弾塑性挙動についての理解を助けるための基本的なことが示されている。
内容としては、
・鉄筋コンクリート部材を構成する材料の力学的特性
・複合部材としての構成材料の力の分担
・曲げに対する耐荷機構と、クラック、鉄筋の降伏などに起因する弾塑性挙動
・せん断に対する耐荷機構
・軸力に対する靭性確保
・複合材料として成り立つための鉄筋とコンクリートの付着・定着
・耐震壁の役割
・スラブや基礎などの構造
・設計から施工まで
などが記されており、鉄筋コンクリート造の成り立つわけ、鉄筋コンクリート部材の挙動(構造性能)、断面算定の基本についての3つを理解することを目標としている。本書を読んで、「あれ? 何で?」というように疑問を持ち、自ら、建築学会の規準書などを参考として調べるような進め方をすると効果的と思われる。
2021年5月 著者