改訂版 名作住宅で学ぶ建築製図
内容紹介
篠原一男「白の家」で学ぶ教本の増補改訂版
篠原一男「白の家」を描き方のメインの題材とし、そのほかに吉阪隆正、広瀬鎌二、吉村順三、前川國男、などの近代名作住宅で学ぶ製図テキスト。多くの大学、専門学校で教科書として利用されてきた本書に、新たにRC造である名作・吉阪隆正「浦邸」を追加し、改訂版とした。作品の概観・室内写真なども掲載している。
体 裁 A4変・96頁・定価 本体2800円+税
ISBN 978-4-7615-2756-3
発行日 2020/11/20
装 丁 KOTO DESIGN Inc. 山本剛史
introduction はじめに
basic study 建築製図の基本
drawing 1
木 造 篠原一男 白の家(1966)
drawing 2-1
RC造 吉阪隆正 浦邸(1955)
drawing 2-2
RC造 吉阪隆正 ヴィラ・クゥクゥ(1956)
modeling 建築模型をつくる
drawing 3
鉄骨造 広瀬鎌二 SH‐1(1953)
drawing 4
混構造 吉村順三 軽井沢の山荘(1962)
drawing 5
木 造 前川國男 自邸(1942)
appendix
巻末折図
白の家手描きによる図面(断面図・立面図・平面図)、同矩計図、軽井沢の山荘矩計図、前川國男自邸矩計図
本書は『名作住宅で学ぶ建築製図』(初版2008年、第9刷2018年)に、吉阪隆正設計による「浦邸」の図面・資料を追加した増補改訂版です。「浦邸」は初版より掲載したヴィラ・クゥクゥとほぼ同時期に設計された吉阪を代表するRC造住宅であり、相互に比較しながら製図実習を行ってみるとよいでしょう。
建築設計を行なうには、まず、製図板の前を離れ、求める空間のイメージを十分に想像してみることが大切です。また、空間のイメージについてスケッチを描いてみたり、スタディー模型を作ってみたりするのもよいでしょう。建築は、このような思考を経てはじめて創出されるのであり、建築設計の苦楽は、まさにここにあると言って過言ではありません。しかし、このようにして創出された空間のイメージは、当然のことながら、このままでは建築にはなり得ません。この際、空間のイメージを建築として形に表し、さらには他者に伝達をするための手段が必要です。そこで「設計図」が、意味を持つこととなるのです。
重複になりますが、設計図の目的は具体的な建築の構成要素を表記して伝達することにあります。しかし一方で、設計図からは設計者の建築思想や設計の試行錯誤さえも読み取ることが可能です。本書では、日本の近代以降における名作住宅を取り上げ、これによって製図の基礎を学べるように工夫しています。これから建築製図を学ぼうとする学生諸君においては、各建築家がこれらの設計図に意図した空間構成を注意深く理解してイメージし、さらには根気強く、そして確実に実習を行うことが大切です。
なお、今日における建築設計の実務では、CADを使用して製図を行なうことが主流となりました。しかしCADは、コンピュータを使用した便宜的な製図ツールの一つに過ぎません。ですから、まずは自らの手によって、しっかりと製図の基礎や技術を修得し、CADはこの後において活用するのがよいでしょう。
本書に取り上げた設計図の詳細は、必ずしも各事例が実際につくられた状態に一致するとは限りません。これは、オリジナル資料の入手が困難であったのに加え、既に現存していないものもあり、様々な理由から不明点の確認ができなかったことによります。ただし、本書は建築を学び始めたばかりの学生諸君に対して、建築製図をわかりやすく解説することに第一の目的を置いています。このことから、これらの相違に関する更なる追求は行わないこととし、オリジナル図面を尊重した上で、適宜、加筆・調整を行っています。
本書をまとめるにあたって、故・広瀬鎌二先生をはじめ、前川建築設計事務所、U研究室、吉村設計事務所、京都工芸繊維大学の松隈洋先生、東京工業大学の奥山信一先生、ならびにサイト一級建築士事務所の齊藤祐子さんには、資料の提供やその使用に快くご同意を賜わりました。また、学芸出版社の知念靖廣氏には、本書の企画段階から適切なご助言とご尽力を頂きました。心よりお礼を申し上げます。
編者 藤木庸介