改訂版 図説 建築構法

南一誠 編著
池尻隆史・石山央樹・岡路明良・村上心・山﨑雄介 著

内容紹介

初学者が知っておくべき建築の標準的な構成方法を解説した入門教科書。大学教員・実務者が設計の基本的な考え方と施工の実例を平易な文章で解説。豊富な2色刷り図版と写真で、分かりやすさを追求した。初めて建築構法を学ぶ学生が要点を押さえられるように工夫された1冊。建築士試験の準備にも最適。

体 裁 B5変・204頁・定価 本体2800円+税
ISBN 978-4-7615-2738-9
発行日 2020/04/10
装 丁 KOTO DESIGN Inc. 山本剛史

本書の採用検討用見本のご請求はこちらから

目次著者紹介はじめに
はじめに

1章 建築構法の基礎

1・1 建築構法とは

1 構法とは
2 時代・地域性と構法
3 構法計画の要点

1・2 構法関連用語の定義

1 部位とその名称
2 主体構法と各部構法
3 単位と寸法

1・3 要求性能と構法

1 建築物と性能
2 構法と性能
3 性能の捉え方
4 構法と基準

1・4 構法の歴史

1 木造
2 鉄骨造
3 鉄筋コンクリート造

2章 構造体の構法

2・1 建築を構成する材料

1 鉄(鋼)
2 コンクリート
3 木材
4 鉄(鋼)、コンクリート、木材の機械的性質
5 その他の建築材料

2・2 荷重・外力と構造の基本

1 建築に作用する荷重・外力
2 力の流れ
3 部材と応力
4 ラーメン構造と壁式構造
5 トラス
6 水平構面と接合部の耐力
7 2次設計
8 耐震・免震・制振

2・3 さまざまな架構形式

2・4 素材による構造分類

2・5 木造

1 木材の材料特性
2 さまざまな木質材料
3 木造建築物の構法の分類
4 在来木造構法の各部位
5 枠組壁工法の各部位
6 木造構法の構造
7 現代の木質構造

2・6 鉄骨造

1 鉄骨鋼材・形鋼の材料特性
2 鋼材を用いた構造とその特徴
3 鉄骨造の主な架構形式
4 接合部の構成と性能
5 耐火性、耐久性

2・7 鉄筋コンクリート造

1 鉄筋コンクリート造の基礎的事項
2 施工法と施工手順
3 RC造の主な各部構法
4 RC造の主な構造形式
5 プレキャストコンクリート(PCa)造

2・8 プレストレストコンクリート(PC)造

1 プレストレストコンクリート(PC)造の基礎的事項
2 PC鋼材と製造・施工法

2・9 鉄骨鉄筋コンクリート造

1 鉄骨鉄筋コンクリート造の概要
2 SRC造の施工法
3 各部の構法

2・10 組積造

1 組積造の概要
2 補強コンクリートブロック造
3 型枠コンクリートブロック造
4 れんが造

2・11 複合構造(合成構造・混合構造)

1 我が国における複合構造の展開
2 合成構造の種類
3 混合構造の種類

2・12 大空間・特殊形状・超高層建築の構法と施工法

1 大空間屋根架構
2 超高層建築
コラム 特殊形状建築構法の施工法

3章 各部位の建築構法

3・1 各部構法の概念

1 主体構法と各部構法
2 接合部の納め方

3・2 地業・基礎

1 土の分類
2 地盤調査
3 水盛り遣り方
4 根切り
5 地業
6 基礎

3・3 階段と手すり

1 階段の部位名称と勾配
2 階段の種類
3 手すり

3・4 屋根

1 屋根の形状と部位
2 屋根の葺き方

3・5 陸屋根の防水

3・6 外周壁

1 壁の種類
2 壁の構成
3 壁材料による種別
4 壁体の要求性能

3・7 カーテンウォール

1 カーテンウォールの概要
2 カーテンウォールの基本性能
3 構成材料
4 構成方式
5 カーテンウォールの取り付け方
6 オープンジョイント
7 ガラスのカーテンウォール
8 環境配慮型の外壁システム

3・8 開口部・建具

1 建具に求められる性能
2 建具の開閉方式
3 建具の仕様
4 板ガラス
5 建具金物

3・9 床・天井・間仕切り

1 床・天井・間仕切りに要求される性能
2 戸建て住宅の内装システム
3 集合住宅の内装システム
4 オフィスビルの内装システム

3・10 建築設備の構法

1 構法計画における建築設備
2 オフィスビルの建築設備の概要
3 戸建て住宅の建築設備の概要
4 集合住宅の建築設備の概要
5 構法計画上の対応

4章 設計実務と建築構法

4・1 モデュール

4・2 スケルトン・インフィル方式とオープンビルディング

4・3 再生構法計画

4・4 現代の構法計画

1 構法計画における最近の対応課題
2 建築生産合理化の概念と構法計画
3 構造躯体の単純化・標準化・規格化
4 工法の特性を反映した構法計画
5 建築躯体・設備・外装のユニット化構法
6 建築内装・設備の複合ユニット化構法
7 構法計画におけるBIMの利用

索引
出典、作図参考文献、図版提供等一覧
その他の参考文献

編著者

南 一誠

1956年生まれ。1979年東京大学工学部建築学科卒業、同大学院およびMIT大学院修了。専門は建築構法計画、建築計画・建築設計。郵政省大臣官房建築部、建設省官庁営繕部勤務を経て、2005年より芝浦工業大学教授。博士(工学)、S. M. Architecture(MIT)、一級建築士。著書に『時と共に変化する建築』(UNIBOOK)、作品に郵便貯金地域文化活動支援施設(千葉、青森)など。

著者

池尻隆史

1976年生まれ。1998年千葉大学工学部建築学科卒業、同大学院修了。専門は建築生産、建築構法、建築計画。東京理科大学嘱託助手・嘱託助教、千葉大学助教を経て2012年より近畿大学建築学部講師。博士(工学)。

石山央樹

1975年生まれ。1998年東京大学工学部建築学科卒業、同大学院修了。専門は木質構造、建築構法。住友林業筑波研究所主任研究員、中部大学工学部建築学科准教授などを経て、2018年より大阪市立大学工学部建築学科准教授。博士(工学)、技術士(建設部門)、構造設計一級建築士。共著書に『本質を理解しながら学ぶ建築数理』(丸善出版)など。

岡路明良

1963年滋賀県生まれ。1986年東京大学工学部建築学科卒業後、鹿島建設建築設計本部に勤務。1995年ハーバード大学デザイン学部大学院修了。現在、鹿島建設建築設計本部。関東学院大学建築・環境学部非常勤講師。一級建築士。

村上心

1960年大阪生まれ。東京大学工学部建築学科卒業後、同大学院進学、1992年東京大学大学院博士課程満了。椙山女学園大学講師、助教授・准教授を経て2007年教授。1997年TUDelft OBOM研究所客員研究員。2011年より遼寧工程技術大学客員教授。専門は建築構法計画、住宅地計画など。写真家。ハイパースペースクリエータ。博士(工学)。著書に『貨幣・緑・壁』『The Grand Tour ライカと巡る世界の建築風景』(ともに建築ジャーナル)、共著書に『建築再生の進め方』(市ヶ谷出版社)、訳書に『サステイナブル集合住宅』(技報堂出版)など。

山﨑雄介

1951年生まれ。1974年東京大学工学部建築学科卒業。清水建設建築本部、技術開発本部、技術研究所勤務を経て、2014年より芝浦工業大学連携大学院客員教授。一級建築士、一級建築施工管理技士。著書(共著)に『建築生産ハンドブック』(朝倉書店)、『建築生産』(理工図書)など。

この建築構法に関する教科書は、建築を学ぶ学生を主な対象として、建築物の躯体や仕上げ材を構成する材料、部品等の構成方法について具体的な事例を用いて解説している。「建築構法」という言葉は、建築を初めて学ぶ学生にとっては馴染みがないと思うが、「建築物の各部分の構成方法」と理解すると良いだろう。類似する建築用語に、建築工法という言葉があるが、「工法」は工事現場での施工方法を意味している。

建築物は柱、梁、床、基礎などの構造躯体と外壁、屋根、床仕上げ、間仕切り壁、設備機器などとが一体となって構成されている。本書は主に現在、日本で建設されている建築物を対象に、建物の主体構法と各部分の構成方法を解説しているが、その対象は木造の戸建て住宅から、超高層建築、大規模なドーム建築など多種多様である。我が国は南北に長く自然環境の差も大きい。建築物が立地する場所によって、求められる断熱性能などが異なるため、外壁や屋根のつくり方、すなわち各部の構成方法も地域によって異なっている。建物用途によっても、たとえば音楽ホールは高い遮音性能が求められるなど、要求される性能も千差万別である。それぞれの建築物に求められる各部位の性能はいかにあるべきかを理解し、その要求性能に応じて、建築物として最も適切な構成方法を設計することが「建築構法」である。

建築の仕事は新築工事だけではなく、既存建築の改修、増築、模様替え等の工事も多く存在している。歴史的な建造物の保存、活用の仕事もある。したがって、現在、一般的に用いられている建築物の構成方法だけでなく、これまでに使われてきた建築物の構成方法も一定程度、理解しておく必要がある。また海外で設計、施工の仕事に従事する機会も増えているが、海外では日本で一般的に用いられている建材、資材でも入手できないことや、品質が異なることがある。現場で働く技能者の人件費や技術力なども異なる。したがって海外で仕事をする場合は、日本で一般的に用いている構法をそのまま持ち込むのではなく、原点に立ち返って建築物の構成方法について検討することが必要になる。若い読者に期待したいことは、各プロジェクトに最も適切な設計や工事の方法が何かを考える力を身につけることである。本書はそれぞれの建築構法が採用されている背景や条件も含めて、読者が考える力を身につけることを期待している。そのような考える力を身につけていれば、建築に対する新しいニーズや特殊な立地条件、たとえば極地や高い山の上、ひいては宇宙や深海などに建築物を設計することも可能であるはずである。

建築構法は、建築物の構造体、各部分の仕上げ、設備との取り合いなど、建築の構成方法を総合的に設計する分野である。建築の構成方法や建設手段は、時代とともに変化するため、本書では現在、実際に用いられている設計手法、建設方法に基づき記載をしている。我が国の建設業は高度な技術に支えられており、建築を学び始めたばかりの学生には少し難解な部分があるかもしれないが、学生の皆さんが社会に出て従事する仕事の実態であると理解して、取り組んでいただくことを期待する。

南 一誠