図説 建築環境
内容紹介
大学・高専・専門学校向けのスタンダードな教科書。建築学生にとって必要な建築環境の知識を効率よく学べるとともに、建築設計とのつながりも重視し、デザイン志向の学生も興味を持ちやすい構成とした。2色刷+カラーの見やすい紙面構成で多数の図表により理解を促すことができる。一級建築士試験にも対応した演習問題付き。
体 裁 B5変・172頁・定価 本体2800円+税
ISBN 978-4-7615-2663-4
発行日 2017/12/01
装 丁 KOTO DESIGN Inc. 山本剛史
1章 序論
1 建築環境と人間の暮らしの変化
2 建築環境工学の歴史
3 社会における建築環境
4 各種環境要因の測定
5 人間と建築環境
6 建築環境工学の今後
2章 都市・地域
1 イラストと写真で学ぶ屋外気候と都市・地域のデザイン
2 屋外気候の物理理論
1) 気象と気候
2) 気象・気候要素
3) 太陽の位置
4) 日照と日影
5) 日射と地球放射
6) 建物への入射熱
3 人間とのかかわり
1) 日照の多面的効果
2) 暑さと人間
3) 寒さと人間
4) 屋外温熱環境評価指標
4 都市・建物とのかかわり
1) 都市気候
2) 都市気候に配慮した都市・建築デザイン
3章 光・色
1 イラストと写真で学ぶ光と色のデザイン
2 光と色の物理理論
1) 光と色の知覚
2) 光の測光量
3) 光源の物理的特性
4) 色の見え
3 人間との関わり
1) 順応
2) 明視性の条件
3) 光とサーカディアンリズム
4) 色のイメージ
5) 色の視覚効果
6) 色彩調和
4 建物とのかかわり
1) 日照調整
2) 人工照明計画
3) 建築物の色彩計画
4章 熱・湿気
1 イラストと写真で学ぶ熱のデザイン
2 熱と湿気の物理理論
1) 室内の温度と湿度の変化
2) 伝熱の3形態
3) 対流熱伝達
4) 熱伝導
5) 蒸発による熱移動
6) 物質の温度変化
7) 湿気の移動
8) 結露現象
3 人間とのかかわり
1) 人の体温
2) 体温調節
3) 人と環境の授受
4) 温熱環境6要素
5) 温熱環境の評価
4 建物とのかかわり
1) 建物部材の熱と湿気の移動
2) 建物内の熱と湿気による環境
3) パッシブデザイン
5章 空気
1 イラストと写真で学ぶ空気のデザイン
2 空気の物理理論
1) 流体に関わる物理量
2) 空気環境・換気力学に関わる物理量
3) 換気に関わる流体力学の基礎
4) 換気に関わる流れの基礎式
5) 圧力損失から換気量計算式へ
3 人間とのかかわり
1) 空気環境が人体に及ぼす影響と基準
2) 空気汚染物質と基準
3) 必要換気量と空気質
4 建物とのかかわり
1) 室内の空気環境設計と換気
2) 換気量の計算
3) 自然換気方式
4) 機械換気方式
5) その他の換気方式の分類と換気効率
6章 音
1 イラストと写真で学ぶ音のデザイン
2 音に関する物理理論
1) 音の物理現象と建築音響のかかわり
2) 音波の特性
3) 音に関する物理量と単位
3 人間とのかかわり
1) 聴覚
2) 騒音の評価指標
4 建物・都市とのかかわり
1) 音の伝搬
2) 騒音防止計画
3) 音響設計計画
本書『図説 建築環境』は、建築環境工学の教科書であるが、建築計画原論から発展した分野であることを強調する意味も込めて、このタイトルにさせていただいた。建築環境工学は、機械設備を駆使した工学的技術に重点をおいた教育に比重が移りつつあると言えるだろう。しかし、建築環境工学はあくまでも建築空間をデザインすることで健康で快適な環境を創り出すための知識・技術を教える科目であり、機械やエネルギーを使用することは、最小限にとどめるべきことを強調したいという気持ちの表れである。もちろん、難易度としては、我が国の建築士制度を踏まえて、一級建築士受験のレベルを目標としている。
多くの大学では、建築環境の科目は2年生ないし3年生で必修科目とされていることが多いだろう。まだ、ゼミ配属前であるし、意匠系、計画系を希望している学生も多い中で、必修で教えることの苦労を長年経験してきた立場から考えてみた。講義が始まると同時に、熱貫流率や換気量の計算を教えても、なぜ、建築を学ぶ中でそれが大切なのか、がピンと来ない学生、あるいは意義はわかるけど面白くない、という学生は、少なくない。学ぶ学生のモティべーションを高めるにはどうしたらいいのだろうか、と長年考えてきた。
そこで、思いついたのが、設計演習で出題された課題のエスキスを考えるヒントが得られるような写真や図版をとっかかりにすることだった。2章~ 6章の各章の冒頭は、「イラストと写真で学ぶ○○のデザイン」と題して、建築環境の知識・技術を直感的に伝えて、設計演習で出題された課題のエスキスを考えるヒント、造形のヒントにしてもらう努力をしてみた。形を考えることは設計・デザインの大きな部分を占めるが、その根拠として採光、日よけ、通風・換気、防風、遮音…のイメージを活かすことは、省エネルギー的であり、地球温暖化防止に有効であるし、その上で、美しい造形をめざしてほしいと思う。
また1章は、類書の序論と比較すると、やや個性的なものになっている。これは、編著者のこだわりであるが、建築環境は、単なる技術学ではないので、学問のルーツについては、是非とも触れたかった。産業革命以後の、住宅・都市の劣悪な環境を改善する「正義の味方」のような活動が、建築環境分野のルーツなのだ、ということを知ることも、学ぶモティべーションを高めるだろう。また、R. バンハム(堀江悟郎訳)の『環境としての建築』には、この科目と近代建築史の接点とも言える話題が多いので、本書でも随所で引用をさせていただいた。
本書が、4年生大学はもとより、短期大学、工業高等専門学校、専修学校等で建築を学ぶ学生のよきパートナーとなってくれることを期待したい。
松原斎樹
本書(第1版第1刷)に以下の誤りがございました。読者の皆様にお詫び申し上げますとともに、以下に訂正いたします。
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