改訂版 図説 やさしい構造設計
内容紹介
物理や数学が苦手でも大丈夫!物理学の基礎から学べる建築構造設計の入門教科書・改訂版。2色刷りでさらに見やすくなった豊富なイラスト図解に加え、わかりやすく工夫された丁寧な解説で、複雑な内容もイメージして理解できる。例題をとおして設計法を学び、手順どおりにやれば誰でも解けるように構成した。
体 裁 B5変・200頁・定価 本体2800円+税
ISBN 978-4-7615-2662-7
発行日 2017/11/25
装 丁 KOTO DESIGN Inc. 山本剛史
序章 基礎となる物理学
0・1 仕事
0・2 摩擦力
[1]静止摩擦力
[2]最大摩擦力
0・3 速度と運動エネルギー
[1]速度
[2]運動エネルギー
0・4 加速度と慣性力
[1]加速度
[2]慣性力
0・5 フックの法則
0・6 固有周期
[1]固有周期とは
[2]共振現象
[3]多層建築物の揺れ方と固有周期
0・7 振動とエネルギー
[1]弾性エネルギー
[2]力学的エネルギー保存の法則
[3]減衰する振動
[4]建築物の振動とエネルギー
第1章 構造設計の流れ
1・1 構造設計とは
1・2 構造設計の進め方
1・3 構造設計の方針
[1]中小規模の外力に対する方針
[2]大規模外力(大地震)に対する方針
第2章 荷重
2・1 固定荷重
2・2 積載荷重
[1]室の種類による積載荷重
[2]床スラブの固定荷重・積載荷重の流れ
2・3 積雪荷重
2・4 風荷重
[1]速度圧
[2]風力係数
2・5 地震荷重
[1]地震荷重算定の基礎式
[2]地震荷重の算定式
[3]風荷重と地震荷重との関係
2・6 荷重の組み合わせ
第3章 鉄筋コンクリート構造の設計
3・1 鉄筋コンクリート構造とは
3・2 材料について
[1]コンクリート
[2]鉄筋
3・3 梁
[1]梁に生じる力と鉄筋の役割
[2]曲げモーメントに対抗する梁
[3]釣り合い鉄筋比
[4]主筋量の算定
3・4 柱
[1]柱に生じる力と鉄筋の役割
[2]圧縮力+曲げモーメントに対抗する柱
[3]主筋量の算定
3・5 梁・柱のせん断補強
[1]せん断補強筋とその仕組み
[2]せん断補強筋の規定
[3]せん断補強の重要性
3・6 床スラブ
[1]床スラブ厚の算定
[2]鉄筋量の算定
3・7 地盤と基礎
[1]地盤
[2]基礎
第4章 鉄骨構造の設計
4・1 鉄骨構造とは
4・2 鋼材の性質
[1]応力度-ひずみ度の関係
[2]長所と短所
[3]鋼材の種類と特性
[4]断面形状と寸法表示
[5]許容応力度
4・3 接合法
[1]高力ボルト接合
[2]溶接接合
4・4 引張材
[1]引張材の設計式
[2]有効断面積Anの算定
4・5 圧縮材
[1]圧縮材の設計式
[2]座屈対策
[3]局部座屈
4・6 梁
[1]H形鋼の梁
[2]H形鋼梁の横座屈
[3]梁の設計式
4・7 柱
[1]柱に生じる力と柱断面
[2]柱の設計式
[3]柱脚の形式
4・8 接合部
[1]設計法・名称
[2]継手の設計式
[3]仕口の設計式
[4]柱-梁接合部の形式
第5章 2次設計
5・1 2次設計を要する建築物
5・2 層間変形角
[1]検討目的
[2]検討方法
[3]層間変形角の制限
5・3 剛性率
[1]検討目的
[2]検討方法
[3]剛性率の制限
5・4 偏心率
[1]検討目的
[2]検討方法
[3]偏心率の制限
5・5 保有水平耐力
[1]検討目的
[2]部材の終局耐力
[3]ラーメン構造の崩壊
[4]保有水平耐力の検討
付録
付録1 固定荷重
付録2 風力係数
〈鉄筋コンクリート構造用〉
付録3 コンクリートの許容応力度
付録4 鉄筋の許容応力度
付録5 異形鉄筋の断面積
付録6(A) 梁幅と主筋本数との関係
付録6(B) 柱幅と主筋本数との関係
付録7(A) 長方形梁・T形梁断面計算図表(長期用)
付録7(B) 長方形梁・T形梁断面計算図表(短期用)
付録8(A) 長方形柱断面計算図表(長期用)
付録8(B) 長方形柱断面計算図表(短期用)
〈鉄骨構造用〉
付録9 鋼材の許容応力度
付録10 高力ボルトの許容耐力
付録11 溶接継ぎ目の有効断面に対する許容応力度
付録12 等辺山形鋼の標準断面寸法とその断面積・単位質量・断面特性
付録13 H形鋼の標準断面寸法とその断面積・単位質量・断面特性
付録14 角形鋼管の標準断面寸法とその断面積・単位質量・断面特性
付録15 添え板の最小縁端距離
付録16 細長比による鋼材の長期許容圧縮応力度fc
さくいん
ちょっと参考メモ
1)五重塔の耐震性「均衡ある動きの場の創造」
2)屋根葺き材などの局部的風圧
3)圧縮鉄筋の役割
4)梁上端筋とコンクリートとの付着
5)短柱に注意
6)鉄骨構造[ルート1]の中身
7)鋼材の呼称と鉄筋の呼称
8)保有耐力接合
9)柱脚形式と層間変形角との関係
10)偏心率を小さく抑える方法
本書の目的
筆者は建築系専門学校で構造力学・構造設計を教えている教員です.専門学校で学業に励む若者たちは理系,文系,実業系,大学卒など様々な学習経歴を経て集ってきております.
「物理学を学んだことがない.」「数学は苦手.」
という人たちも少なからず存在するのです.彼らは構造力学で部材に生じる力の求め方を学び,構造設計へと歩を進めていきます.私たち教える側は,彼らが学んだことのない事柄をあたかもあたりまえのように使うことは決してできません.2004年に出版した姉妹書「図説やさしい構造力学」(学芸出版社刊,2017年改訂版発行)はそのような現状に即して執筆したものです.しかし,その先の構造設計はどうでしょうか? 世の中には構造設計を説く優れた書物が多く存在します.それらはある程度の基礎ができあがった人たちを大きく飛躍させるものであると私は思います.しかしながら,構造力学の基礎的内容を学んだにすぎない人たちにとってはレベルの高い存在に思えてなりません.いきなり本格的な構造物の設計を教えることにはいささか無理があるように思えてならないのです.本格的な構造設計に至る前に,本質的な部分を理解する1ステップを置きたい.そんな教科書の必要性を感じて本書を執筆させていただきました.
本書は構造力学,基礎物理学から構造設計にアプローチしていますので,詳細設計を行うための複雑な算定式は内容からはずしております.また,解き方が構造設計実務での手法と若干異なる部分もありますが,初級者が構造設計にアプローチする1ステップとしてご理解いただきますようお願い致します.
構造設計は敷居の高い分野かもしれませんが,本書を通して少しでも構造設計を身近に感じ,その全体概要をつかんでいただければさいわいです.さらに望むなら,本書を踏み台にして,さらに高いステップへ歩を進めてくれる若者が現われてくれるならば,本書の目的はまっとうされます.
本書の特徴
構造設計に関連する物理学を紹介しています.
構造設計を理解するためには,基礎的な物理学を知っておくことが不可欠です.電車の中で感じる加速度,バネの伸びなど日ごろの出来事が簡単な数式で表現でき,建築物とどのように結びついているのかを知っておけば,構造設計の理解はおおいに進むことでしょう.
基礎的な物理学は,構造設計との関連を解説しながら序章で紹介しています.
許容応力度設計法を対象として解説しています.
構造設計には限界耐力設計法などいくつかの設計手法があります.本書は構造設計の基礎を身につけることを目的としておりますので,旧来からの許容応力度設計法について解説しています.
イメージを大切にしています.
イメージできるかどうかが理解への大きなカギになります.本書ではイラストを豊富にいれ,イメージしながら学習できるようにしています.
例題からの理解を大切にしています.
学習したことを実践してみることは,理解する上で重要なことです.本書では項目ごとに例題を設け,実際に計算しながら内容を理解できるようにしています.
例題には手順を示し,手順にそって解けば答えが得られるようにしています.
「図説やさしい構造力学」に引き続き〈ちょっと参考メモ〉を掲載いたしました.
紹介だけはしておきたい発展的内容を〈ちょっと参考メモ〉として散りばめました.向学心旺盛なみなさんの参考にしてください.
本書作成に尽力いただきました学芸出版社知念靖広様,イラストを担当いただきました野村彰様,内容についてアドバイスいただきました上原孝夫様,塩田隆夫様に,この場をもって厚く御礼申し上げます.また,執筆にあたり様々な文献を参考にさせていただきました.日本建築学会解説書につきましては抜粋させていただきました.この場をもって厚く御礼申し上げます.
平成18年9月1日 浅野 清昭
改訂にあたって
早いもので初版の出版から11年が経ちました.その間,単位の統一,規準の改正などもあり,本書も改訂の時期を迎えました.構造設計の世界に最初の一歩を踏み出そうとする方々の手助けとなれるよう,これからも工夫を続けていく所存です.
平成29年10月1日 浅野 清昭
本書は電子版も発行しております。大学・専門学校等の教科書、もしくは研修等のテキストとしてのご採用をご検討の場合は、こちらをご覧ください。