ゼネコン技術者が教える 施工現場のトラブル回避100ポイント
内容紹介
バラバラ落ちる外壁タイル、なぜか曲り始めるサッシ、不可解な天井からの漏水。信用失墜につながる竣工後の事故は、施工中の些細な不注意や手順ミスが招くもの。若手だから知らなかったでは済まされないトラブル予防の肝を、研鑽を積んだゼネコン技術者が写真マンガで簡潔丁寧に手ほどき。忙しい若手必携! 5分読み切りの厳選100題。
体 裁 A5・220頁・定価 本体2500円+税
ISBN 978-4-7615-2632-0
発行日 2016/10/01
装 丁 KOTO DESIGN Inc. 山本剛史
1章 躯体工事
1-1:躯体
1 打ち継ぎは弱点?
2 元には戻せないRCのたわみ…
3 設備機器が躯体を損傷?
4 「ボルト」と「ナット」「座金」はセットで一人前!
5 鉄骨をダメにする三つの行為
6 ドブづけボルトの締め付け管理は?
7 どこまで鉄骨の錆止め塗装が必要?
8 鉄骨の塗装はなぜ剥げる?
9 鉄骨柱がRC腰壁を壊してしまう?
10 EXJが悲鳴を上げる!
11 捨コンが建物の精度を決める!
1-2:スラブ・床
12 合成床版の開口補強を忘れてないか?
13 スラブからどうして水が???
14 かさ上げコンクリートが反る!?
15 厨房の床に水が溜まる
16 床のEXP金物はどうして壊れる?
2章 仕上げ工事
2-1:建物外部
17 ALCから鉄筋が露出?
18 ALCはデリケート!
19 ECP(押出成形セメント板)はバイメタル
20 手摺の取り付け方法はだれが決めるの?
21 屋上緑化は建材か?
22 どぶ漬け(溶融亜鉛めっき)鉄骨の穴!?
23 めっきのバリ
24 錆びにくいめっきと錆びやすいめっき
25 SUSは錆びるもの?
26 外壁のタイルが落ちてくる!?
27 ガラスが「自爆」する???
28 溶ける油性ペイント
29 すぐに剥がれる塗装……
2-2:建物内部
30 簡単に剥がれるALC下地のボード壁
31 耐火材の不具合はだれのせい?
32 天井を突き破る吊りボルト!
33 洗面器の周りの損傷!
34 タイルカーペットから異臭が?
35 ガラスが「腐食」する?
36 高価な絵画が落下!
2-3:サッシ・建具
37 避難口の有効寸法が足りない!
38 効果の大きな「小さな庇」!
39 窓の方立頂部が漏水の入口?
40 サッシが壁を壊す?
41 建具の引き残し
2-4:防水・止水
42 防水層立ち上がり端部に雨水をかけるな
43 保護コンクリートが防水層を破断!
44 ゲリラ豪雨でタテ樋の水頭が昇る?
45 雨水排水は2系統で!
46 単純にしたい外壁貫通部の納まり
47 雨が入る鋼製シャッター
48 漏水の原因が花壇?
49 たまにしか積もらない雪でも…
50 防水では止められない浴室からの漏水!
51 シーリングは適材適所に!
52 二面と三面の大きな差
53 シーリングは厚さが必要!
54 シーリングが溶ける?
55 鳥に食われた?
3章 設備工事
56 設備排水が屋根を損傷?
57 空調が原因でスリップ事故?
58 雨漏りではなかった天井のシミの原因
59 「吐く量」と「吸う量」
60 床下で溢れた消火水槽
61 ポンプはあっても釜場がない…?
62 ジャバラ排水管
63 臭いはどこから?
64 触れ合って穴が開く!
65 断熱ウレタンと電気配線
66 雷の被害を防げ!
4章 環境
4-1:音・振動
67 遮音と吸音は全く別モノ!
68 「質量則」で決まる遮音性能
69 「重たい音」と「軽い音」
70 スライディングウォール(可動間仕切)の遮音性能は?
71 自動ドアの音で眠れない!
72 空調室外機がヤカマシイ!
4-2:熱・結露
73 伸びたり縮んだり!
74 タテ樋が破れて室内は洪水!
75 屋根からの音でビックリ!
76 どんな場面でも,熱の伝わり方は3通り
77 結露は断熱で防げるの?
78 結露の元になる水蒸気を取り除け!
79 天井を通り抜ける水蒸気
80 床にも結露するの?
81 庇から水滴が…
82 冷凍庫の床が凍上して盛り上がる
5章 外構工事
83 水溜りがお出迎え
84 自転車が倒れる駐輪場
85 インタロッキング舗装が真っ白に?
86 傾いた犬走り…
87 植栽の「枯れ保証」は何を保証してるの?
88 外構照明による光害
89 アスファルト舗装の陥没
6章 維持管理・現場運営
90 行きたいのに,行けない…
91 笠木を踏まないタラップ!
92 通れない人通孔…
93 施工現場にある消防危険物
94 工期がなくて品質が確保できない!
95 JASSって法律???
96 施工者としての「瑕疵」
97 コンクリートの「ひび割れ」は誰のせい?
98 設計変更に振り回されないで!
99 竣工図通りでない建物!?
100 竣工図(完成図)作成は施工者の業務?
建築は一品生産の受注産業です。二つとして同じ建物はなく、施工条件は物件ごとに異なります。一品生産の現場は建築生産の最前線であり、最後の砦です。しかし一品生産であるがゆえに、建築技術は他の産業と比べてまだまだ未熟な技術といわれています。コンクリートに生じるひび割れの位置さえ、正確に予測することはできません。
ところがそのことを言い訳にして、同じ失敗を繰り返してはいないでしょうか。施工現場の安全管理や品質管理では、発生したトラブルに対し徹底して再発防止対策を講じる必要があります。そんなときに貴重なのが、先人の経験です。
建築生産の最後の砦を守る現場の建築技術者に向けて、表面に出にくい「先人の失敗事例」を共有することで再発防止ができる、そんな着目点で、100の事例を挙げて解説したのが本書です。
建築生産における施工現場の建築技術者の仕事は、設計者のつくった設計図をもとに建物をつくり上げることですが、不具合が発生したときに、設計図通りに施工したから自分に責任はない、指示されなかったから施工しなかった、というような言い訳は、施工者としての信用失墜につながります。発注者との契約書に添えられた設計図通りに施工するという任務遂行は当然のこととして、発注者側は、実はそれ以上のものを期待しています。そのような発注者の思いも汲み取って、適切な対処を施すことも、施工者の任務ではないでしょうか。
近年、施工現場は昔と比べて時間も費用も余裕がなくなり、かつて機能していた現場でのOJT(On-the-Job Training)による先輩から後輩への技術移転もままならなくなっている現状があります。そんな悩ましい現場の技術移転が少しでもスムーズに行えるようにと、汎用性のある項目を厳選してまとめました。
本書が、皆さんの「砦」を守る知恵として活用いただけることを期待しています。
2016年8月 村尾昌俊・臼井博史