マンション建替えがわかる本
内容紹介
旧耐震基準・高経年マンションが続々と建替えに直面するこれからの10年、「改正マンション建替え円滑化法」で何がどう変わるのか?マンション住民・管理組合、管理会社、不動産・建築関係者のための、マンション建替えの基礎知識と最新情報が1冊でわかる本。建替え経験者インタビューなど、具体的な現場情報も多数掲載。
体 裁 A5・168頁・定価 本体2300円+税
ISBN 978-4-7615-2600-9
発行日 2015/08/01
装 丁 KOTO DESIGN Inc. 山本剛史
はじめに
基礎篇 知っておきたい基礎知識
1 マンションの建替え時期はいつ?
1 建物が古くなってきたなと感じたら
2 そのまま放置すると
3 築年数だけでは判断できない「建物の老朽化」
4 「建物の劣化症状」を判断する基準
5 建替えか? 大規模修繕・改修か?
6 簡易判定「安全性判定」と「居住性判定」
7 専門家による判定
8 「旧耐震基準」「新耐震基準」とは
コラム1 東日本大震災と管理組合から寄せられる耐震不安
2 マンションの建替えに関する法律
1 建物の区分所有等に関する法律
2 民法の全員合意の原則とは?
3 「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」制定の背景
4 円滑化法による建替え方法「法定事業」
5 改正円滑化法の成立
6 マンション敷地売却制度の制定
7 容積率の緩和特例
8 円滑化法によらない建替え方法「任意事業」
9 市街地再開発事業とは?
10 建築物の耐震改修の促進に関する法律
11 耐震診断・耐震改修の支援策
12 建築基準法における容積緩和
インタビュー〈建替え経験者に聞く〉アトラス千里山星ヶ丘
コラム2 町内会・自治会、マンション管理組合の違いとは?
実践篇 法改正後の賢い進め方
3 「マンション建替えの壁」突破のポイント
1 ライフスタイルや価値観の相違
2 老朽化に対する認識の差とは?
3 建替え中はどこに住む?
4 建替えの検討費用
5 一時金(自己負担)はどのくらい?
6 「売渡請求」「買取請求」とは?
7 既存不適格建築物
インタビュー〈建替え経験者に聞く〉シンテンビル(左門町ハイツ)
コラム3 マンションの建替えと高齢者
4 費用負担を軽くする
1 「戸数増で売却」と「隣接地の活用」
2 敷地の一部を売却する
3 等価交換方式と権利交換方式
4 親子リレーローンとリバースモーゲージ
5 賃借人がいる場合は? ─ 借家権の消滅
インタビュー〈建替え経験者に聞く〉アトラスタワー六本木
コラム4 大規模災害時の「帰宅困難者対策」条例
5 合意形成を効率的に進める方法
1 合意形成に向けての段階と手順
2 準備段階1 有志による勉強会
3 準備段階2 基礎的な検討
4 準備段階3 管理組合での検討と合意
5 検討段階1 検討する「組織の設置」
6 検討段階2 専門家への依頼内容
7 検討段階3 建替えか修繕・改修かの意向を把握する
8 検討段階4 建替え推進決議
9 計画段階1 計画組織の設置
10 計画段階2 事業協力者の選定
11 計画段階3 区分所有者の意向と建替え計画の調整
12 計画段階4 建替え決議
13 合意形成の三つのポイント
インタビュー〈建替え経験者に聞く〉オーベルグランディオ萩中
コラム5 コミュニティの絆は、こうして深めよう
6 建替え決議後の事業の進め方
1 建替え事業への合意
2 法律面から見た建替えの進め方
3 改正円滑化法による新しい方法
4 事業主体から見た建替え方法
インタビュー〈建替え経験者に聞く〉テラス渋谷美竹(旧美竹ビル)
コラム6 ワンルームマンション規制の影響
7 行政支援策の活用法
1 専門家の派遣
2 早急な整備が望まれる仮住居の対策
3 補助金や助成金を賢く活用する
4 制度融資の種類と活用法
5 税制上の優遇について
インタビュー〈コンサルタントの目から〉建替えが成功するマンションとは?
コラム7 行政機関を上手に活用しよう
8 新たな価値を築く
1 これからのマンション価値とは?
2 改良や改修では得られない価値
3 コミュニティという財産
4 スマートマンションとは?
5 理想のマンションライフ
おわりに
今、多くのマンションが、〝建物の老朽化〟と〝住民の高齢化〟という二つの老いに直面しています。築30年以上のマンションは、平成23年度末に100万戸を超え、さらに平成32年度末には200万戸を超えると推測され、これからの10年、旧耐震基準・高経年マンションは続々と建替え問題に直面するでしょう。しかし、現状の建替え実績は196件、約1万5500戸にとどまっています。
この背景には、建替え費用や仮住居等の資金面の問題と、法改正や都市計画の変更等によって現行法規に適合しない部分がある「既存不適格建築物」等、複雑かつ多岐に渡る法律面の問題があります。また、マンションや管理組合の特性を良く知り、管理組合特有の合意形成を助ける建替えの専門家がまだまだ限られていることや、建替えの初期検討時に説明すべき、管理会社のフロント担当者等に建替えの正しい知識がなく、区分所有者等に正しい提案ができていないことも要因として考えられるでしょう。
国としても、これらの事情や巨大地震の発生に備える必要性から、耐震性不足のマンションの耐震化の促進が喫緊の課題であるとして、建替えの法整備を進め、平成26年12月に「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」の一部改正が施行されました。本書では、この改正で制定された「マンション敷地売却制度」や「容積率の緩和特例」についても解説しています。近い将来必ず来るマンションの建替えについて、検討を開始する際の基礎知識から最新情報までをわかりやすくまとめました。また、建替え後のイメージがつかめる成功事例も多数収録しています。マンション住民・管理組合はもとより、管理会社のフロント担当者、不動産・建築に携わる皆さまの建替え検討時の初歩的バイブルとして、ご活用いただければ幸いです。
日下部理絵・本山千絵