図説 建築構造力学

浅野清昭 著

内容紹介

力学の基礎から、ラーメン架構や塑性解析までを四則計算のみで解いていける、構造力学初学者のための入門書。「力」を人の体やスパナに置き換えた易しいイラストで徹底図解しつつも、不静定構造までを網羅し丁寧に解説することで、1級建築士受験にも対応。解けるだけでなく「力の流れ」を見通すことができるようになる1冊

体 裁 B5変・200頁・定価 本体2800円+税
ISBN 978-4-7615-2579-8
発行日 2014/10/15
装 丁 KOTO DESIGN Inc. 山本剛史

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目次著者紹介まえがき正誤情報電子版

序章 力の基礎

0・1 力の表現
0・2 力のモーメント
0・3 分布する力
0・4 力の釣り合い

1章 反 力

1・1 構造物の分類と表現
1・2 単純梁の反力
1・3 片持ち梁の反力
1・4 ラーメンの反力

2章 部材に生じる力(応力)

2・1 応力の種類
2・2 応力の計算法

3章 静定構造の実用的解法

3・1 せん断力図の作図法(矢印図法)
3・2 曲げモーメント図の作図法(その1 スパナ化法)
3・3 曲げモーメント図の作図法(その2 面積法)
3・4 重ね合わせの原理

4章 静定トラスの解法

4・1 切断法
4・2 節点法
4・3 図解法

5章 断面に関する数量

5・1 図心と断面1次モーメント
5・2 断面2次モーメント
5・3 断面係数

6章 応力度

6・1 引張(圧縮)応力度
6・2 曲げ応力度
6・3 せん断応力度
6・4 許容応力度
6・5 許容曲げモーメント
6・6 曲げ応力度と圧縮応力度との組合せ

7章 たわみ・たわみ角

7・1 たわみ・たわみ角の基本公式
7・2 傾斜によるたわみ

8章 不静定梁の解法

8・1 ローラー‐固定梁の解法
8・2 両端固定梁の解法

9章 水平力の分担・層間変位

9・1 水平剛性と水平力の分担
9・2 多層ラーメンの層間変位

10章 不静定ラーメンの解法(たわみ角法)

10・1 たわみ角法公式
10・2 たわみ角法による解法(その1 節点にモーメント荷重を受ける場合)
10・3 たわみ角法による解法(その2 中間荷重を受ける場合)

11章 不静定ラーメンの実用的解法

11・1 有効剛比を利用した解法(節点にモーメント荷重を受ける場合)
11・2 固定モーメント法の解法(中間荷重や水平力を受ける場合)
11・3 せん断力、軸方向力、反力の求め方

12章 座 屈

12・1 弾性座屈荷重
12・2 弾性座屈荷重の中間拘束による影響

13章 塑性解析

13・1 完全弾塑性体
13・2 崩壊の過程と全塑性モーメント
13・3 崩壊荷重の算定法
13・4 圧縮力を考慮した全塑性モーメント

浅野清昭(あさの きよあき)

浅野構造力学研究所所長。1961年京都市生まれ。京都工芸繊維大学大学院工芸学研究科建築学専攻修了。㈱間組技術研究所、〈専〉京都建築大学校を経て、2009年浅野構造力学研究所設立。著書に『図説やさしい構造力学』『図説やさしい構造設計』『絵解きブック構造力学入門』『図解レクチャー構造力学』(学芸出版社)。

これまで、専門学校生、大学生、社会人の方々、様々な目標を持たれた方々を前に構造力学を講義してまいりました。そのなかで感じることは、教室ごとそれぞれに、目標、基礎学力、講義時間、講義回数といった状況が異なり、それに合わせて構造力学のストーリーも工夫していかなくてはならないということです。そのストーリーに合わせて、テキストにも工夫が必要になります。私が教壇に立つようになった当初の担当教室は、数学、物理学をあまり得意としない学生たちが中心でした。市販テキストは高度な内容のものが多く、彼らには適さないと思い、彼らのためのテキストを作成するところから始めました。それが2004年に出版された姉妹書「図説やさしい構造力学」です。ベクトル、三角関数、微積分などを用いずに矢印、三角比と言葉を選び、力の釣り合いだけではイメージしにくいせん断力や曲げモーメントには、矢印図法やスパナ化法で力を理解してもらうこと、力学は大して難しくないと思ってもらうことに力点をおきました。

教える側が、「力」を如何に伝えるかによって、構造力学は難しくも易しくもなり、気分爽快になったり、苦行になったりもします。力は身近な存在であり、決して手の届かない存在ではありません。身近な現象を理解できれば、必ずや構造力学の本道も理解してもらえると私は信じています。ただし、構造を軸に建築を学ぼうとする方々には、ひたすら計算式に向かうということも極めて重要です。その観点から2011年に制作したものが「図解レクチャー構造力学」でした。

ここでは、力の釣り合い、力の重ね合わせといった基本的な原理だけを使って、数学的に構造物を構築していく過程を詳細に示しました。フックの法則などごく基本的な物理法則と基礎的な微積分の知識さえあれば、構造力学の世界が開けていくことを知ってほしいという願いを込めました。

本書「図説建築構造力学」は、先の2作の中間的な内容として作成いたしました。意匠系、住居系の学生も対象としながら、静定から不静定までを網羅し、1級建築士受験にも対応できる内容にしています。

本書の特徴

・内容は静定構造を中心に、不静定構造・塑性解析まで

本書は前半に力の基礎、静定構造を収め、後半に不静定構造の内容を収めました。1冊で力の基礎からラーメン架構、さらに塑性解析までを学習することができます。

・四則計算のみで解説

本編は四則計算のみで解説をしています。文系、デザイン系の方にも学習していただけるよう配慮いたしました。

・イラストによって、力を身近に感じてもらう

特に前半の部分には、荷物を持ちあげる、棒を曲げるなどのイラストを掲載しております。矢印だけが並んだ一見意味の分かりづらい問題も、身近な問題に置き換えることができるのです。問題の意味を理解した上で解けることを重視しております。

・「参考メモ」を設置

本編中に現れる重要な式は公式として紹介しておりますが、向学心旺盛な読者のために、公式がどのようにして導かれたのかを「参考メモ」として要所要所に散りばめております。

・実用的解法の積極的導入

基本的な力の釣り合いをもとに、基礎的な計算法を学び習得することは非常に重要なことです。しかし、計算式だけを追いかけていると、力とはどのようなものなのかという根源的な部分の理解がおろそかになってしまいます。そこで、力や力の流れをイメージし、「なるほど!力ってそうなっているのか、そういうものなのか」と合点してもらうことが重要だと考えています。そこで、矢印図法、スパナ化法、トラス図解法、有効剛比などイメージとして力を捉えられる手法を積極的に導入しています。構造物を見ただけで、力の分布状況がすぐに頭に浮かぶようになってほしいという願いを込めています。

本書がみなさんの目標達成の一助となりますことを心より願っております。

末筆ながら、本書作成に多大なご尽力をいただきました学芸出版社知念靖廣様、岩切江津子様、市場調査をもとに本書内容にご意見をいただきました学芸出版社村井明夫様、いつも親しみのあるイラストで本書を飾っていただいております野村彰様、作成にあたってご意見をいただきました山本康彦様、この場をもって厚く御礼申し上げます。また、いつも私の講義を熱心に受講してくださる学生のみなさんには、この場をもって厚く御礼申し上げます。これからも、基礎構造力学のフィールドをともに歩き回りながら、新しい発見に胸躍らせていきたいものです。

平成26年8月3日

浅野清昭

図説 建築構造力学』初版第1刷 正誤表本書において下記の誤りがございました。深くお詫びいたしますとともに、ここに訂正させていただきます。

2014年12月 (株)学芸出版社

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