建築品質トラブル予防のツボ

仲本尚志・馬渡勝昭 著/日本建築協会 企画

内容紹介

確かな品質の建築をつくるには、設計者・監理者・施工者の協力がかかせない。本書は、トラブルの起こらない建物をつくるために三者が共通して知っておかなければならない建築工事の基本知識とトラブル予防のポイントを「危険予知と予防」の観点からわかりやすく解説する。どこからでも読める、若手~中堅技術者必携の手引き。

体 裁 A5・256頁・定価 本体2800円+税
ISBN 978-4-7615-2565-1
発行日 2013/12/25
装 丁 KOTO DESIGN Inc. 山本剛史


目次著者紹介はじめに
はじめに

第1部 品質トラブル予防の基礎知識

1 建築は「ものづくり」
2 品質トラブルの予知と予防
3 設計責任と監理責任
4 品質トラブルへの備え
5 工事着手前の作法
6 工事着手時の作法
7 工事期間中の作法
8 完成・引渡し時の作法
9 維持保全の作法

第2部 品質トラブル予防のツボ100

1 敷地

001 ハザードマップで危険予知
002 敷地にはリスクが潜んでいる

2 屋上・防水

003 雨水のスムーズな排水は建築の基本
004 ルーフドレンは縦型か横型か
005 保護アスファルト防水で長持ち
006 露出アスファルト防水の注意点
007 シート防水は機械的固定工法に
008 パラペットは外壁扱いに
009 屋上断熱防水は油断大敵
010 屋上機械基礎は最小限に
011 ハト小屋は雨水が入りやすい
012 目地シールは2面接着が基本
013 屋上目隠し壁は耐風型に
014 屋上緑化には灌水設備と排水を

3 バルコニー

015 バルコニーの防水と排水
016 バルコニーの手すりは丈夫に
017 二重床で段差をなくして広々と

4 屋根

018 屋根仕上げに合った屋根勾配を
019 瓦は風で飛ばないように
020 銅板の一文字葺きは熱伸縮する
021 金属折板葺きは水切りと水返しを
022 屋根のメンテナンス動線を確保する

5 地下躯体

023 地下躯体は地下水対策を
024 地下ピット水槽の防水と点検
025 エレベーターピットの湧水対策

6 RC造

026 コンクリート打継ぎの防水対策
027 壁のひび割れは漏水のもと
028 構造スリットは漏水に注意
029 鉄筋のかぶり不足は建築基準法違反
030 コンクリートは密実に
031 化粧打ち放しコンクリートを美しく

7 鉄骨造

032 鉄骨位置は何から決める?
033 開口補強は耐風型に
034 鉄骨あらわし部分はデザインを
035 外壁貫通部の止水はこうする
036 屋外の鉄骨階段は建物から離す
037 鉄骨造の耐火被覆は認定どおりに

8 パネル外壁

038 PCa板のカーテンウォールは等圧に
039 ALCパネルの注意点
040 成型セメント板(ECP)の注意点
041 金属板の注意点

9 外壁石

042 石の選び方124
043 外壁石張りは乾式工法で126

10 外壁タイル

044 タイルの選び方
045 タイルの大きさで張り方が決まる
046 タイルとモルタル、どっちが剥がれやすい?
047 タイル張り外壁には伸縮調整目地を
048 打継ぎ目地部のタイルは剥離しやすい

11 外部建具

049 建具に必要な性能は?
050 アルミ製建具は表面仕上げで長持ち
051 建具の止水はシールに頼らない
052 建具と開口補強は一体
053 雨の入りやすい窓がある
054 窓の結露した水はどうする?
055 建具金物は現物を見てから
056 構造スリットにつく建具の注意点
057 窓の方立はなぜ曲がる?
058 ガラリから入る雨はどうする?
059 鋼製建具はびやすい
060 ステンレス製建具は雨が入りやすい
061 玄関ガラススクリーン足元の防水は?
062 トップライトの注意点
063 シャッターの強風・安全対策

12 ガラス

064 カーテンウォールの性能とは?
065 網入りガラスのひび割れ防止策
066 ガラスで怪我をしないために
067 強化ガラスは自然破損に注意
068 ガラスブロックの弱点
069 高窓の清掃はどうする?

13 外壁その他

070 エキスパンション・ジョイントはこう考える
071 免震はこんなに動く
072 軒天井は台風に弱い
073 外装の汚れを少なくするには

14 内部仕上げ

074 浴室の防水と浴槽の防水
075 厨房の床をなぜかさ上げするのか?
076 モルタルが付着する防水がある
077 ALC内壁はスライド工法に
078 仕上げのひび割れには原因がある
079 システム天井の落下防止策
080 天井の耐震性を確保するには?
081 こんなところでも結露する
082 こんなところが熱橋になる
083 内断熱と外断熱
084 断熱材は適材適所に
085 環境にやさしい材料とは?
086 集合住宅は騒音・振動に注意

15 外構

087 外構床のトラブル予防策
088 階段・スロープの防水はどうする?

16 設備

089 近隣の環境に配慮する
090 設備インフラを引き込むとき
091 電気室を水から守る
092 美しい空間は天井から
093 照明の選択は色温度と演色性
094 照明は球替えを考慮する
095 太陽光発電パネル設置時の注意点
096 空調設備性能発揮のポイント
097 エレベーターの注意点
098 エスカレーターの安全確保策
099 雷から人・建物・設備を守る
100 爆発から建物を守る

附表 品質トラブルと予防のツボ242
おわりに

仲本 尚志(なかもと たかし)

1947年大分県生まれ。1970年大阪工業大学工学部建築学科卒業。同年株式会社竹中工務店入社、設計業務に従事。2012年退職。一般社団法人日本建築協会出版委員会委員。2000年3月、神戸大学大学院経営学研究科修士課程科目履修・社会人MBAコース。2007年3月、放送大学大学院文化科学研究科修士課程修了。著書『建築工事の祭式』(共著/学芸出版社)

馬渡 勝昭(まわたり かつあき)

1947年宮崎県生まれ。1970年武蔵工業大学建築学科卒業。同年株式会社竹中工務店入社、設計業務に従事。梅田スカイビル実施設計などを担当。2011年退職。2012年 1月、一級建築士事務所Atelier・YOU設立。2009年より、京都女子大学非常勤講師。現在に至る。

建築に携わる者にとって重要なことは、社会ストックとして長く使い続けることができて、使う人にとって快適で安心できる、確かな品質の建築をつくることである。確かな品質の建築は、設計者、工事監理者、施工者の建築工事に関わる関係者が過去の品質トラブル事例から事象に対する予知能力を高め、クリエイティブな協業による「ものづくり」をすることによって可能となる。

建築をつくる過程において、あらかじめ品質トラブルが発生することを予知できれば予防措置を打つことができる。しかし、予知能力をもつことは、そう簡単ではない。予知能力を高めるには失敗を経験することが一番であるが、建築生産の現場では許されない。先人の失敗に学び、常に品質に対する高い意識を持ち続けることである。技術の伝承も大事なことであるが、建築主の想いに応える関係者のクリエイティブな協業による「ものづくりの心」の伝承が大切である。「ものづくりの心」があれば、技術はついてくるし、進化することもできる。

本書は、品質トラブル予防のための手引書として、第1部で建築工事の生産プロセスの中で、押さえておかなければならない基礎知識を建築の作法としてわかりやすく解説し、第2部で品質トラブル予防のツボ100を整理した。どこから開いても気軽に読めるように配慮した。

建築で大切なことは設計者、工事監理者、施工者がそれぞれの役割を「作法」として体質化して自然体で「ものづくり」を行い、建築主の想いを実現することである。

建築に関わる若手技術者が「品質トラブルに対する予知と予防」という新たな発想で、「ものづくり」の原点に立ち返り、「ものづくりの心」を今一度、確かなものにするきっかけになることを期待している。

2013年12月
仲本尚志
馬渡勝昭

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