写真マンガでわかる 住宅メンテナンスのツボ
内容紹介
ストックの時代を迎え、長期間にわたり住宅メンテナンスを担える人材のニーズは高まる一方だ。本書は、敷地・基礎から、外壁・屋根・小屋裏・内装・床下・設備・外構に至るまで、住宅の部位別に写真マンガでチェックポイントと対処法、ユーザーへのアドバイスの仕方をやさしく解説。住宅診断・メンテナンス担当者必携の1冊。
体 裁 A5・248頁・定価 本体2800円+税
ISBN 978-4-7615-2560-6
発行日 2013/10/01
装 丁 KOTO DESIGN Inc. 山本剛史
はじめに
序章 なぜいま住宅のメンテナンスか
1 日本の住宅の寿命は短かすぎる
2 ライフサイクルエネルギーを削減する方法
3 メンテナンスをすれば家の寿命は半永久
4 これから拡がるリフォーム市場
5 住宅メンテナンスのアドバイザーになろう
第1章 敷地の確認
001 排水溝まわりに亀裂や陥没はないか?
002 建物基礎取り合い部に亀裂や陥没がないか?
003 擁壁に沈下・割れ・傾斜がないか?
004 敷地の地耐力は問題ないか?
コラム1 Global Rich List
第2章 基礎・土間の確認
005 基礎全周のひび割れはないか?
006 基礎上部の通りに不同沈下の可能性はないか?
007 どのような基礎補強が実施されているのか?
008 土間コン仕上げの「浮き」は叩いてチェック
009 掘り込みガレージ上部に建物がある場合、取り合いはどうか?
コラム2 日本の豊かさのなかで
第3章 外壁の確認
010 外壁左官のひび割れはないか?
011 外壁に通気層があるか?
012 外壁サイディングは指でこすって白くなるか?
013 外壁の石タイルの浮きは叩いて音をきく
014 外壁の土台水切りの継手が離れていないか?
015 外壁シーリングの劣化程度はどうか?
016 換気レジスターは作動するか?
017 フラワーボックスはぐらついていないか?
018 外部に見える木部の塗装は劣化していないか?
019 外部パイプスペースの天端と外壁、基礎の取り合いはどうか?
020 庇と外壁の取り合いはどうか?
021 外部基礎に雨漏り跡はないか?
022 外壁の汚れや藻がでていないか?
023 玄関ドア・勝手口ドアの開閉を確認する
024 サッシ・網戸の開閉を確認する
025 シャッター・雨戸の作動を確認する
026 外壁からの雨漏りがないか?
027 壁体内に結露が発生していないか?
028 外壁と配管・配線の取り合いはどうか?
コラム3 雨漏り診断
第4章 屋根の確認
029 屋根材の劣化状況はどうか?
030 屋根材の板金はびていないか?
031 屋根材にヒートブリッジはないか?
032 屋根材シーリングの劣化状態はどうか?
033 屋根換気トップの固定と劣化状態はどうか?
034 屋根トップライトと屋根材取り合いはどうか?
035 軒樋の雨水流れはよいか?
036 軒の出が短い住宅は要注意
037 フラットルーフのドレン周りとパラペットはどうか?
038 屋根からの雨漏りがないか?
コラム4 安全第一
第5章 バルコニーの確認
039 FRP防水の表面劣化はどうか?
040 バルコニードレンまわりはどうか?
041 オーバーフロー管があるか?
042 バルコニー掃き出しサッシ下端はどうか?
043 バルコニー笠木と外壁の取り合いはどうか?
044 手摺壁の換気はあるか?
045 バルコニー手摺のぐらつきはないか?
046 手摺壁に風抜き穴・段差はないか?
047 笠木板金の継手に異常がないか?
コラム5 住宅からの熱の逃げ道
第6章 内装の確認
048 床・壁の傾斜の許容範囲は3/1000以内
049 フロア木材にささくれがないか?
050 床鳴り(1階・2階・階段)はないか?
051 床と壁の取り合い幅木下に隙間がないか?
052 壁・天井クロスのしわや隙間がないか?
053 タイルの目地切れはシーリング処理する
054 内部左官のちり切れは左官処理する
055 集成材(枠・額縁・笠木)のめくれがないか?
056 定期点検に建具の調整はつきもの
057 内部に雨漏り跡・結露跡はないか?
058 揮発性有機化合物(VOC)の健康被害はないか?
059 和室・畳の注意点
コラム6 究極の極小住宅「塔の家」
第7章 床下の確認
060 床下点検口・床下物入れの蓋のグラつきはないか?
061 床下に給排水漏れがないか?
062 床下に結露が発生していないか?
063 床下断熱材が落下していないか?
064 床下構造に白蟻被害はないか?
065 床下換気はできているか?
コラム7 究極の豪邸「落水荘」
第8章 小屋裏の確認
066 小屋裏に雨漏り跡はないか?
067 小屋裏に結露が発生していないか?
068 小屋裏の換気は十分か?
069 小屋組構造金物のボルトナットはゆるんでいないか?
070 小屋組プレート金物類の異常はないか?
071 小屋筋交い・振れ止め施工はどうか?
072 小屋裏の断熱材に隙間はないか?
073 小屋裏物入れの補強はどうか?
コラム8 プロとアマ
第9章 給排水ガス設備の確認
074 給水給湯管の凍結防止対策ができているか?(寒冷地の場合)
075 給湯器の水漏れはないか?
076 雨水設備が汚れていないか?
077 汚水・雑排水のインバート会所に油が溜まっていないか?
078 カランを全部閉栓して、水道メーターボックスの針の動きを調べる
079 散水栓のクロスコネクションに注意
080 ユニットバス・風呂排水は詰まりやすい
081 便器の詰まりはラバーカップで対応
082 水洗器具の止水・ストレーナー詰まりを点検
083 排水トラップの異常はないか?
084 洗濯排水管の接続不良・詰まりはないか?
085 トイレの通気管未設置による排水後のゴボゴボ音はないか?
086 浄化槽の定期清掃点検をしているか?
087 ガス器具の作動に異常はないか聞き取る
088 開放型暖房器具の使用はないか?
コラム9 ブロークンウィンドウズ理論
第10章 電気設備の確認
089 エアコンスリーブ穴の周りに雨水の浸入はないか?
090 床暖房(温水・電気)の作動はよいか?
091 テレビアンテナ取り付けのワイヤーによる雨垂れはないか?
092 24時間換気はスイッチを切らない
093 ソーラー発電機は雨漏りの可能性を高める
094 オール電化のリスク
コラム10 ハインリッヒの法則
第11章 外構の確認
095 ウッドデッキなどにより床下換気が阻害されていないか?
096 扉・フェンスの作動状況・びを確認
097 CB塀のひび割れはないか?
098 びた鉄部の塗り替え時期を確認
099 タイル・レンガの白華現象はないか?
100 電気設備の接続に異常はないか?
おわりに
謝辞
古くから「衣食住」という言葉が使われますが、人が生活していくうえで最も基本的な要素が衣食住です。衣食住のなかで、「衣」と「食」については、現在の日本は世界的にみて素晴らしい水準にあります。ところが、「住」については「ウサギ小屋」などと揶(や)揄(ゆ)されてきました。美しいとは言えない街並みが多く、大多数の日本人が豊かさを実感できないでいます。
私は、住宅業界で35年間、施工面を担当してきた技術屋ですが、苦労して建てた家がいつのまにかなくなっていることがあります。施工に携わった者としては、一抹の寂しさを感じます。まだまだ充分に耐久性はあるはずですが、なぜか解体撤去されてしまいます。
日本では、「住」に関する政策がうまく機能しませんでした。新築後20年も経過すれば建物の評価額がゼロになってしまう税制、改築するよりも解体撤去して新築する方が安いと感じて新築する人、常に新しいものを良しとする国民性などは、日本の常識が世界の常識から乖離している例と言えます。
世界的に見て日本は豊かなはずですが、豊かさを実感できていません。その原因の一つが、住宅を30年程度で解体撤去して、新築住宅に建て替えているシステムにあります。長期の住宅ローンを組んで、払い終わると、即解体撤去して新築住宅に建て替えます。再び住宅ローンが始まるのです。
耐用年数30年と言われる住宅に30年ローンを組むということは、常に住宅ローンの支払いが必要になるということです。銀行への支払いのための生活では、豊かさの感じようがありません。
ところが、30年で寿命と考えられている住宅ですが、実は2倍の60年、あるいは100年の寿命があると仮定すると、住宅ローンのない期間が過半数になります。1年あたりの建設コストや居住コストは半減します。これなら豊かさが実感できるかもしれません。
なぜ住宅は30年の寿命しかないと決められたのかはわかりませんが、現実には30年で解体撤去されています。建物は、メンテナンスをきちんと行えば、半永久的に持たせることが可能です。適切にメンテナンスを繰り返して、悪いところのみを補修し、補修できないところは取り替えます。敷地の地耐力に応じた基礎補強を行い、構造強度などの条件を満たせば、通常のメンテナンスで対応可能となります。特別強度の仕様や高級な仕様にしなくても、可能です。
住宅現場に携わる技術者が、住宅メンテナンスの知識、特に定期点検時のポイントとその対策を勉強すれば、入居者に的確なアドバイスをすることが可能です。住宅会社でメンテナンスを担当する技術者は、入居者にとって、最も長い付き合いとなる職種です(30年以上の付き合いとなる場合もあります)。入居者の満足感に最も大きな影響を及ぼします。きわめて長期間にわたり、住宅の技術者が、ホームドクターとして、入居者との間で良い関係を継続できるならば、素晴らしいことです。
住宅を建てた住宅会社がしっかりと管理していれば、これだけ多くのリフォーム会社は存在できないはずです。住宅会社が途中で管理を放棄するから、リフォーム会社にチャンスが回ってくるのです。リフォーム専門会社がメンテナンスを行うことは多いですが、継続して管理できるかが問題になります。住宅のメンテナンスには技術面の知識・経験と意欲が要求されます。職人の世界では「アタマ・ウデ・ヤル気」が必要と言われますが、技術者の世界でも同様なのです。
メンテナンス担当者のアドバイスを採用するかどうかの決定権は入居者にあります。技術者としては、説得力のあるアドバイスができるように、自分自身の技術水準と説明能力を高めておく必要があります。メンテナンスの技術者は、ホームドクターとしての経験を積むことによって、入居者の幸せに貢献できる素晴らしい職業なのです。
本書では、まず序章で日本の住宅の現状を把握し、続く第1章から第11章で現場定期点検時の確認順に100項目を解説しています。住まいのメンテナンスに携わる技術者の皆様に役立つ内容であると確信しています。
玉水新吾・都甲栄充
本書第1版第1刷に以下の誤りがございました。読者の皆様に深くお詫び申し上げますとともに、以下に訂正させて頂きます。