図とキーワードで学ぶ 建築環境工学
内容紹介
日照・日射、採光・照明、色彩、断熱・結露、人体の温冷感、換気・通風、騒音・音響・振動、都市・地球環境の各項で基本知識をキーワード化して整理し、図表を加えて解説した。また資格試験の問題を使い、理解度チェックを図れるよう工夫した。卒論の研究テーマ選択などのヒントにもなるような最新情報も盛込んだ。
体 裁 B5変・176頁・定価 本体2800円+税
ISBN 978-4-7615-2552-1
発行日 2013/05/01
装 丁 KOTO DESIGN Inc. 山本剛史
1章 日照・日射
1-1太陽位置と日影
(1)太陽高度・太陽方位角
(2)日影曲線
1-2日射と放射
(1)日射量の時刻変化と年変化
(2)直達日射・天空日射・夜間放射
1-3日射による建物の熱取得
(1)日射熱取得率・日射遮へい係数
(2)日照・日射の対策
(3)高機能ガラスによる日照・日射のコントロール
1-4〈Advanced〉直散分離の手法・大気放射量の推算
コラム1建築と太陽信仰
2章 採光・照明
2-1ヒトの目の特性
2-2光の単位
2-3人工光源
(1)ランプの種類
(2)色温度と演色性
2-4照明設計
(1)照明器具の台数算定
(2)照度基準・均斉度
2-5昼光の利用
(1)昼光率
(2)採光の手法
コラム2光の波長と散乱、そして目との関係
3章 色彩
3-1色の三属性と波長
3-2CIE表色系とカラーオーダーシステム
3-3色の心理的効果
3-4色彩計画
3-5〈Advanced〉配色の手法と色の見え
コラム3共感覚を多用してみる
4章 断熱・結露
4-1建物の熱取得と熱損失
(1)熱損失係数と熱貫流率
(2)冷暖房負荷・省エネルギー基準
4-2熱貫流率の算定
(1)熱伝導率と熱伝達率
(2)複合材料の計算
4-3結露
(1)発生のメカニズム
(2)湿り空気線図の活用
(3)内部結露の防止・結露判定
4-4〈Advance〉温湿度の測定
4-5〈Advanced〉非定常伝熱の数値計算法
(1)壁体の時定数
(2)室内外の温度変動の影響
(3)地表面熱収支
(4)理論的背景~差分式の定式化
(5)理論的背景~境界条件
(6)理論的背景~前進差分の安定条件
4-6〈Advanced〉熱・水分の複合移動
コラム4数値流体力学(CFD)へのいざない
5章 人体の温冷感
5-1温熱環境の6要素
5-2温熱環境の評価指標
(1)PMV・SET*・OT
(2)WBGT・DI・局所温冷感
5-3人体熱収支の計算
コラム5環境への共感。そのためのアンテナ。
6章 換気・通風
6-1換気の種類
6-2必要換気量の算定
(1)ザイデル式・換気回数
(2)風力換気・温度差換気
6-3必要換気量に関する演習
(1)ザイデル式応用のバリエーション
(2)風力換気・温度差換気の式の活用
6-4汚染物質の許容濃度
6-5〈Advanced〉換気量と空気質の測定
6-6圧力損失
6-7〈Advanced〉乱流の計算
コラム6地球規模の大気の挙動
7章 音響・騒音・振動
7-1音の物理量
7-2音の感覚
(1)ラウドネスレベル・サウンドスケープ
(2)マスキング効果・カクテルパーティ効果・フラッターエコー
7-3音響設計
(1)遮音
(2)吸音
(3)残響
7-4音の合成と距離減衰
7-5騒音・振動の基準
コラム7「わが国の音楽」を、少しだけ紐解いてみる
8章 都市・地球環境
8-1日本の気象
(1)日本海低気圧・南岸低気圧
(2)梅雨・北東気流・台風
8-2〈Advanced〉大気の水平・鉛直構造
8-3〈Advanced〉気象資料
(1)地上天気図・高層天気図
(2)気象データ
8-4都市の気象
8-5〈Advanced〉リモートセンシング
(1)衛星センサ・航空機センサ
(2)定型の画像処理
(3)画像処理プログラミングの基礎
8-6地球環境
(1)エルニーニョ・ラニーニャ
(2)環境負荷を考える
コラム8気象をゲームで学ぶ
湿り空気線図
索引
参考・引用文献
建築環境工学に関する卒業論文や修士論文を手がけようとするとき、学生たちは往々にして、学部における講義内容と、論文執筆で扱う先端的内容との間に、大きなギャップがあることに気づく。建築環境工学に本気で取り組もうとする学生諸氏に向けて、いわゆる環境工学のメインストリームの内容を漏らさず扱いながら、なおかつ、関連する周辺の、そして最先端の知識をも取り込んで、常にガイドとして活用できるようなテキストを作れないか。本書は、そのような考え方のもとに編さんを試みたものである。
建築環境工学は、建築士試験の突破を標榜し、ミニマムの内容で体系づけるとすれば、一般には「日照・日射」、「採光・照明」、「断熱・結露」、「換気・通風」、「騒音・音響」、の5組10個のキーワードで記述される。そして、「人体温冷感」、「都市・地球環境」の話題が必要に応じてカバーされる。本書では、これらの内容を網羅することはもちろんであるが、さらに高度な内容への橋渡しをすべく〈Advanced〉の表示を付けて、以下の内容についても織り込んだ。
- ①「断熱・結露」に関しては、非定常伝熱の取扱いの手法を詳述した内容を盛り込み、また「換気・通風」に関しては乱流の基本的な考え方に関する記述を加えて、コンピュータによる数値解析を志す学生の入門に資することとした。
- ②「騒音・音響」に関しては、音楽や環境音の積極的創造に関する今日的話題を、また「日照・日射」に関して、建築の歴史的視点からの話題を追加し、アラウンドの知識との連携や境界領域への洞察を促した。
- ③「都市・地球環境」に関しては、わが国の気象の特徴を記述するとともに、高層天気図やエマグラムなどの気象学の知識にも触れ、またリモートセンシング画像の画像処理技術についても紹介した。
- ④実測調査やシミュレーションの手法を学ぶ上で知っておきたい導入的知識は、演習等の具体例を積極的に取り上げて説明した。
建築環境工学の習得には、数値や単位に精通し、計算演習を多くこなすことが必要となろうが、そればかりでなく、建築空間、都市空間の現場に出て、それらの数値がもつ意味を自身で体得することこそ、求められるところである。本書が、快適な空間を創造する力を養うための一助となるならば、幸いである。
2013年3月 飯野 秋成
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